第十章「選抜! 新星誕生!」(前編)


BIOHAZARDnew theory
FATE OF EDGE

第十章「選抜! 新星誕生!」(前編)


 落葉も一段落つき、枝だけとなった木々が生える森に、静かに夜が訪れる。
 夜闇が辺りを暗く染め上げた時、突然落ち葉が積もっていた地面が動いた。
 落ち葉の下にサーモ・コート(赤外線遮断)のシートを被り、野生動物にすら気配を悟られぬよう、静かに進んでいた者が目的の目前でその姿を現す。
 全身を黒いタクティカルスーツで覆ったその人物、暗闇に見える僅かなシルエットで女性と分かるそれは、かけていたサングラスのツルにセットされている小さなダイヤルを操作する。
 サングラスに映る視界に、グラスに内臓されている簡易サーチの結果が表示されていく。
 視界は、注意深く左右へと動き、やがて森の中にある古びた建物へと向けられた。
 だが、簡易サーチの結果は、建物及びその周辺に熱源や機械反応の類を何一つ出していなかった。

「ここも?」

 女性は小さく呟き、その場から動き出す。
 落ち葉一つ舞わせぬよう、足音一つ立てぬように、かつ迅速な動きで女性は建物のそばへと走り寄る。
 見る者が見れば、その動きは訓練されつくされた者のみが成し得る動きである事が見て取れただろう。
 女性は建物の壁に音も無く張り付き、何年も前にガラスが割れたまま放置されたらしい薄汚れた窓から中を覗き込む。
 建物内もその窓同様、放置された長い年月が経っている証拠のホコリを大量に積もらせていた。

「………」

 無言で窓にセンサーやトラップの有無を確認した女性は、思い切って窓を開けて室内へと入ろうとする。
 蝶番が予想以上にきしんだ音を立てた事にわずかにその動きが乱れるが、女性は身軽な動きで屋内へと飛び込んだ。
 着地のショックで、足元のホコリが宙へと舞い上がる。
 かなり分厚く積もっている事から、それが偽装の類でない事を知った女性が、ゆっくりと建物の中を調べていった。
 やがて、建物内部にとうの昔に機能を停止しているエレベーターを発見すると、さびかかっている扉をどうにかこじ開け、空洞となっているエレベーターホール内をライトで照らし出す。
 真下にワイヤーの切れたエレベーターが落ちているのを確認すると、身軽な動きでホール内を落下、エレベーターの上部に着地すると、目前の外れかかったドアから地下階へと潜入する。
 地下も地上同様、分厚いホコリが通路内に溜まり、部屋の扉はどれも電子ロックなぞとうの昔に止まり、半ば開きかかったままの物も見られた。
 慎重に探索を進めていた女性は、〈資料室〉の外れかかったプレートのドアを見つけると、中へと入る。
 その部屋も他の部屋同様荒れ果てていたが、本来その部屋にあるべき資料は、何一つ残されていなかった。

「これで四つ目。どこも大分前に全ての物が回収されている……………」

 疑念を口にした時、背後にかすかな気配が生じる。
 それが何かを考える前に、反射的に女性は太もものホルスターからブローニング・HPを抜きながら振り返る。
 背後の気配に銃口を突きつけるのと、女性の目前に別の銃口が現れるのは完全に同時。
 銃口越しに見えた相手、肩のホルスターに大型のコンバットナイフを指している筋肉質の若い男の顔を見た女性の顔に僅かな驚きが生まれた。

「……何をしているの? フレクスター・レッドフィールド」
「多分あんたと同じ事だ。《ファントム・レディ》」

 昔のコードネームで呼ばれた女性、今はインファ・インティアンと名乗っている人物と、バウンティ・ハンターのはずの男性、フレックはゆっくりとお互いの銃口を下ろす。

「先客がいるかと思えば、あんただったとはな。引退したんじゃなかったのか?」
「過去が離してくれなくてね。あなたも、賞金稼ぎが穴倉探し?」
「色々あってな」

 銃をホルスターに仕舞いながら、フレックは室内にあった動くかどうかも怪しいPCへと近寄ると、腰のポーチから緊急用多機能小型バッテリーを取り出し、PCのコンセントを繋ぐとそれを立ち上げる。

「何か残ってる?」
「………見事に空っぽだ」

 データの痕跡すらない程空になっているPC内部をフレックはしばらくいじり回していたが、やがて鼻を鳴らしてコンセントを引っこ抜いて強引に停止させる。

「どこも同じだ。資料もデータもサンプルも、大分前に根こそぎ持っていかれてる」
「アンブレラの秘密研究所の物をね。明らかにアンブレラ関係者が関わってるわ」
「オレは南米の方を探してきた。あんたは?」
「東南アジアを経由して、ここに。次は地中海の海外線に沿って回って行く予定」
「ここはもう調べている」

 フレックはポケットからハッキング・ツール兼用のメモリスティックをインファへと投げ渡す。
 それを手に取ったインファの顔が怪訝になる。

「やはり、あなたは…」
「お互い、詮索は無しにしとこう。オレはこの後すぐ日本に行かなきゃならんないんでな」
「日本? あそこにはめぼしい施設は無いと思ったけど?」
「部署変更の研修、とだけ言っておく」

 インファを残し、フレックは通路へと出る。

「そうだ、あんたの娘は元気だそうだ。少しばかり落ち込んでたらしいがな」
「そう…………無事なら、それでいいわ」
「それだけか?」
「今は………それだけよ」
「………そうか」

 沈黙だけをその場に残し、二人はそれぞれ次なる目的地へと向かって空となった研究所を後にした。



「釈放よ」

 重々しい音を立てて、特殊合金製の牢が開かれる。

「またここに入るような事のないようにね」
「入れたの母さんじゃないか………」
「文句あるの?」

 牢の中に収監されていた囚人、ではなく治療中の怪我人だったレンが母親の方を恨みがましい目で見るが、自分よりも鋭そうな母親の視線に無言で視線を戻す。

「なまったかもな……少し修行を」
「今日中に傷一個でも作ったら、また収監ね」
「…………」

 ミリィの言う事に一切の虚偽を感じなかったレンは、今日一日は大人しくしておく事を心に決めて牢の並ぶ通路を通り抜ける。
 抜けたすぐ先で、彼を待っていた人物がいた。

「傷は大丈夫?」
「問題ありません、課長」

 壁に背を預けながらレポートを見ていたキャサリンは、そのレポートをレンへと手渡す。
 それの中身をチェックしていくレンの顔が怪訝な物へと変わっていった。

「……空?」
「そう。FBIとSTARSが双方総力を上げて世界中のアンブレラ研究所跡漁ったけど、どこもとうの昔にもぬけの殻」
「何者かが、回収した?」
「間違いないわね。今それが誰かを全力で当たらせてるわ」
「それなら、オレも……」
「そういたいのは山々だけど、あなたは私の部下で一番優秀な捜査官であると同時に、FBIでもっとも高い個体戦闘力を持つ人間でもあるわ。有事に備えて待機しなさい。命令よ」
「了解」

 どれも同じ内容しか記されていないレポートを読み終えたレンが、復唱しながらそれをキャサリンへと返す。

「課長」
「何?」
「待機はどれくらいだと思います?」

 レンの質問に、キャサリンはしばし俯いて黙考した後、自らの予想を口にした。

「向こうもそろそろ修理が終わってるはずね。そこから更に準備を重ねたとしたら………遅くても、一月、短ければ、来週にでも」
「そこまでは早くないでしょう。前回、シェリー隊長にこっぴどくやられた件の対処法を構築しているはず。そして、それもそれほど手間取らないでしょう」
「こっちはようやく残務処理終えたばかりだってのにね」

 この半月の超過勤務を示すように、大分痛んでいる髪をかきあげながらキャサリンが顔をしかめる。

「そうそう、外のドッグと射撃場に顔出しときなさい。あなたの意見を聞きたがってるはずよ」
「ドッグはともかく、射撃場? 銃に関しちゃオレより詳しい人間はここには何人も……」
「ま、行ってみてのお楽しみね」
「?」



STAS本部 屋外臨時巨大ドッグ

 半月前まで屋外演習場の一部だったはずの場所に、異常な物が存在していた。
 学校のグラウンドぐらいは簡単に入りそうな巨大なテントが、その場に鎮座している。
 イベントなどで普通に使われそうな囲いつきのテントが、一見しては冗談としか思えないような巨大さで建つ様は異様以外の何者でもない。
 だが、その中で行われている事は更に異様だった。
 テントの中には、万能旗艦《ギガス》がその巨体を横たえ、その周囲をSTARSのメカニックスタッフ達が忙しく走り回って検査と整備に負われている。

「班長! 概算出ました」
「ああ」

 メカニックスタッフを束ねる寡黙な老主任が、部下達がまとめた概算表に目を通していく。

「……本当かこれは」
「ええ、智弘さんに手伝ってもらって何度も計算しなおしましたが、間違いありません」
「なんだってこんな化け物を……」
「お〜い、操作系の調整終わったぜ」

 チェック表片手に搭乗口から降りてきたカルロスが、いつもにも増して険しい表情の老主任の様子に気付いた。

「何だデビット、こいつに何か妙な物でも付いてたか?」
「カルロス、こいつのスペック表を見たか?」
「ああ、こいつ一機で大型空母並の出力持ってるとかって奴だろ。ウソだかホントだか………」
「こっちでチェックしたらそいつは嘘だと分かった」
「やっぱ水増しか」
「逆だ、スペック表の倍近い出力がある」
「なっ、倍!?」

 予想外の言葉に、カルロスの顔色が変わる。

「それじゃあ、あのスペック表に書いていた速度も何も」
「大嘘だ。こいつ一隻で大国相手に戦争が出来る」
「どうみたって、STARSの予算でまかなえる代物じゃねえな………パーツから何から全部寄贈って本当か?」
「さっき最後の荷物が届いた。マニュアルからスペアパーツに至るまで、いたれりつくせりだな」
「何考えてやがるんだ、こいつを造った奴は………」
「聞きたいですか?」

 背後から聞こえた声に、カルロスが振り向く。
 そこには、ギガスの方を見ながらこちらへと向かってくるレンの姿があった。

「Jr、もう傷はいいのか?」
「ええ、迷惑をかけました」
「かけてんのはこっちだ。それと、お前はこれが何のために造られたのか知っているのか?」
「多分、ですが」
「そいつはオレも分かる。だが、信じられない」
「どういう事だ?」

 レンは胴体部に刻印されているコード名の下で、足を止める。

「こいつを造った男は、非常識な事しか考えていない男でしてね。恐らく常人では考えもしない異常事態に対処する事に余念が無い」
「たとえば?」
「そう、たとえば、このサイズでしか渡り合えない〈敵〉との戦闘用とか」
「…………冗談だろ? デルラゴ級ですらせいぜい20mなんだぞ?」
「いや、明らかにそのためと思われる武装が幾つかついている。こいつは指揮用でも運送用でもあるが、それでいてなお、格闘艦だ」
「……オレ、こいつでドッグファイトする自信なんてねえぜ?」
「正規パイロットが来るまで頑張る事だな」

 渋面でギガスを見るカルロスだったが、ふと搭乗口の隣にある小さなプレートに気付いた。

「そういや、あのプレートなんだ?」
「ああ、製造プレートらしい。日本語で何が書いてあるか分からないが」

 搭乗タラップを登ったレンは、『空中万能指揮旗艦 DXC―03《GIGAS》』と刻印されたプレートを間近で見ると、その上部分に張られてあったラベルを無言で剥ぎ取る。
 その下からは、まったく違う漢字の文字列が現れた。

「Jr、なんて書いてあんだ?」
「対巨大怪獣最終決戦用突撃戦か…」
「もういい」

 タラップを駆け上がったカルロスはレンの手からラベルを奪い取ると無言でそれを元通りに張り直す。

「できれば、こいつがただのデカイ運送機のままであればいいんだがな」
「そうですね……」

 ギガスの装甲版に手をあて、その冷たい感触を感じながらレンは脳内にある一つの結論を心の内にだけ留める。

(あいつがこれを送ってきたという事は、こいつの戦闘力が必要になる可能性が少なからず有るという事か。他に何のためかは考えない方が無難だな………)

 まかりなりにも警察組織が持つにはあまりにも巨大すぎる戦力に、レンはこれからの戦いに一抹の不安を感じていた。



「腰をもうちょっと落とせ!」
「はい!」
「腕が下がってきてっぞ、まだ100発も撃ってない!」
「は、はい!」
「狙いがずれてる! もっと速く正確に!」
「はいっ!」
「……何をやってるんです?」

 本部地下の屋内射撃場に来たレンは、そこのレンジの一つで射撃練習をしているリンルゥと、それを指導しているスミスを発見した。

「お、やっと釈放されたかJr」
「もう大丈夫なの?」
「一応」

 銃を握ったままこちらを見るリンルゥの表情が、この間と大分違っている事にレンは気付いた。

「いきなり銃の練習か? この間は当たってはいる程度だったけど」
「だから練習してるんだよ!」
「なぜ?」
「自分で母ちゃん探しに行きたいから、銃の扱い教えてくれとさ」

 スミスの言葉に、レンは疑惑の視線をリンルゥへ、さらにその視線を彼女が撃っていた的へと向けた。

「筋はけっこういいな」
「そう?」
「オレもそう思う」
「いいだけだがな」
「その通りだ」
「え?」

 レンとスミスのやりとりに、リンルゥが自分が撃った的を改めて見る。
 一応、狙った所にはだいたい当たってはいるが、大きく狙いを外れている物も少なからず有った。

「撃つからには絶対狙いを外すな。99発当たっても、100発目を外して死ぬ事もある」
「でも、そう簡単に当たる物でも」
「動いてもいない的の狙った場所に当てられない腕じゃ、ゾンビすら倒せない。貸してみろ」

 リンルゥの使っていた銃を手にしたレンは、それが新品である事を知ると顔をしかめる。

「CZ75の初期型復刻モデルか。どこからこんなレア物………」
「アークおじさんがくれた」
「だあ〜、オレ狙ってたけど買えなかった限定物だぜ。アークの奴、どうやって手に入れやがった?」
「そんなにすごい銃?」
「精度はかなり高い。扱う人間によっては持ち腐れになるがな」

 リンルゥの隣でマグを交換したレンは、リンルゥの狙っていた的の隣の的を狙うと、トリガーを引いた。
 放たれた9ミリパラベラム弾が人型をした的の額を貫いたのをリンルゥが確認した時には、続けて放たれた弾丸が心臓の位置を貫く。
 連射は止まらず、頭部中央、喉、胃、肝臓など確実に致命傷になる場所を正確に撃ち抜き、更には同じ場所に1cmと離れず再度弾丸を撃ち込んでいく。
 スライドが後退したまま止まり、弾丸が尽きた事を知らせるとレンは構えていたCZ75をゆっくりと降ろす。

「すごい……」
「扱う人間によっては、これくらい当たり前の銃だ。昨日今日の付け焼刃で扱えると思うな。弾丸の破壊力なんてたかが知れている。確実に急所に当てなければ弾とリスクの無駄遣いだ」
「う………」
「まあ、まだ一週間もしてないのにこれだけ撃てりゃマシだろ? もっと酷い新人なんて腐る程いやがったからな」
「新人研修でいきなりM500なんて撃たせて何人か骨折させたのは誰です?」
「あれは鍛えてない方が悪い」

 呆れながらCZ75をリンルゥに渡そうとした所で、レンはその手を止めてリンルゥの手首を掴む。

「? なに?」
「かなり無理をしているな」

 手首を返し、レンはリンルゥの手を裏表共にしげしげと観察する。
 薬指や親指の付け根に出来ている血豆は射撃練習による物だし、手の甲の痣は格闘技の訓練による物だ。
 手の平に走る、恐らくは大型のナイフでも取り落とした時についたであろう切り傷がふさがっている事まで確認したレンは、CZ75を返さずにレンジの棚に置いた。

「一度テーピングでもしてもらってきた方がいい。その様子だとそろそろ潰れるぞ」
「まだ大丈夫!」
「豆なんて潰しとけ。どうせ次がすぐ出来る」
「レア物血まみれにするつもりですか? 手の甲の痣で握力が昨日より落ちてるはず。潰れた直後に取り落として暴発させる可能性があります」
「道理で。そこまでは気付かなかったな」
「な、何で分かるの?」
「昔自分でやったからな」

 図星を言い当てられたのか、驚くリンルゥの手首を掴んだままだったレンは、手首から手を離すと、今度は二の腕を掴み、挙句そこを軽く揉む。

「何してんだよ! セクハラ!?」
「少し静かにしてくれ」

 レンの目が真剣なまま、二の腕から上腕、肩へと手は移動し、反対の腕、そして足へと移る。

「……そういう趣味だったの?」
「鍛えてはいる。だがスポーツの筋肉だ。戦闘用じゃない」
「そ、それがどうかした?」
「使い物にするには、もっと根幹的なとこから鍛えなおさないとダメだ」
「じゃあそれ教えて!」

 間髪入れずに言ってきたリンルゥにレンはハナを小さく鳴らす。

「筋肉の疲労から見て、格闘技はシェリー隊長で、ナイフはカルロス隊長か。教わる相手は間違ってないが、教わり方が間違ってる」
「そうか? シェリーもカルロスも妙な事教えちゃいないぞ」
「スミス隊長、この調子だと彼女が使い物になるのにどれくらいかかると思います?」
「筋がいいからな。三〜四ヶ月ってとこか」
「そんなにかかるの!?」
「習って覚えるのと使いこなすとじゃ大きな差がある。実戦で使いこなすには、反射レベルまで鍛えなくてはならない。まあ普通の奴を相手にするにはそれくらいでなんとかなるだろう」
「……あの怪物達相手だと?」

 レンとスミスは顔を見合わせると、二人して顎に手を当てて考え込んだ。

「あの、ちょっと………」

 男二人の沈黙に耐え切れず、リンルゥが声を掛ける。

「はっきり言っちまっていいのか?」
「その方がいいでしょう」
「何をだよ?」
「幾ら訓練を積んでも、あいつら相手には戦えない」
「え………」
「何でかって言いたいだろ? 教えてやれJr」

 レンはしばし悩んだ後、リンルゥが撃った後の的を見ながら口を開く。

「リンルゥ、撃つ時にどこを狙ってる?」
「どこって、スミスさんに教わった通り、まず胴体を………」
「ゾンビ相手に効くと思うか?」
「あ」
「訓練された人間なら、当たりやすく致命傷になりやすい胴体を狙う。人間だったら胴体のどこにあたって重傷になるし、痛みで行動にも大きく影響が出る。射撃術に限らず、大抵の戦闘術はその事を想定、構築されている。お前が教えられているのはそういう類の物だ」
「変だよ、それじゃここにいる人達、全員無駄な技術持ってる事になるよ?」
「簡単なこった、ここにいる連中はオレもJrも含めて、その技術を徹底的にマスターしている。だからアレンジができんだよ。心臓狙って効かないなら頭を狙えばいいし、片足撃っても動きが止まらないなら両足撃てばいい。人間相手には不要な戦い方だがな」
「そういう戦い方をするには、一週間やそこら鍛えた所じゃどうにもならない。鍛えぬき、知り尽くし、そして改変させる。それがここでの戦い方だ。無理せず母親の言う通り、静かに生きてく事を考えた方がいいだろう。安全な場所が必要なら用意する」
「………やだ」
「もう一度言う。馬鹿な事は考えるな。お前が危険にさらされる事を誰も望んではいない」
「絶対やだ!」

 冷徹な言葉に、リンルゥはむきになって反論する。目には涙が浮かび、拳は強く握り締められている。
 どうあっても訓練も母親の捜索も止めるつもりがないらしいリンルゥに、レンは無言でその脇を通り過ぎる。
 そして通り過ぎたと思った瞬間、レンの足が高速の動きでリンルゥの脛を払った。

「ふえ?」

 衝撃すら与えない妙技の足払いに、リンルゥは何が起きたかも分からず、その場で転倒する。

「あ痛ぅ………」
「この程度すら反応できないのでは、返り討ちに合うのが関の山だな」
「い、今のは不意打ちだったじゃないかよ! そんなの…」

 むきになって反論するリンルゥの視界の片方が、突然ふさがる。
 不思議に思ってまばたきを数度した後、それが一瞬の間に、眼球に触れる寸前まで突き出されたレンの人差し指だと気付いた。

「ここの連中がこれからする戦いはこういう戦いだ。常識も倫理も存在しない。ただ相手の隙をついて一撃で倒す。しかも確実に破壊する方法を持って。自分が壊されたくなければ大人しくしている事だな」
「じゃあ、その戦い方覚えればいいだけじゃないか! 教えてよ」
「そう簡単に覚えられると思うのか? ここにいる人間達が今の戦闘技術を身に付けるのに何年を費やしたと思う? しかもチームで補い合ってようやくそのレベルに到達している。己の長所を活かし、短所を補える仲間がいて初めてあの異形達と戦える。一人で何でも出来るなどとは思うな」

 指を突きつけたまま放たれるレンの言葉が、淡々とリンルゥの心に押し迫る。
 その一言一言に一切反論できないリンルゥは、沈黙という行動を持ってそれを受け止めるしかなかった。
 完全にうなだれてしまったリンルゥからようやく指を外したレンは、なぐさめるそぶりすら見せずその場を立ち去ろうとする。

 そこでいきなり顔を上げたリンルゥは、涙目でレンを睨みつける。

「じゃああんたは何なんだよ! あんたは一人でゾンビの大群でも何でも倒しちゃうじゃないか! 自分が特別だからそんな事…」
「13年だ」

 振り向きもしないまま、レンは指を右手で一本、左手で三本立てる。

「剣術は5歳から始めて、免許皆伝をもらったのが18歳。師匠より二年は遅れた。そしてアメリカに留学して更に修行を積んで一人前になったのはさらに四年後。お前は筋がいいから、それくらいやれば何とかなるかもな」
「合計17年…………」
「家の息子は3歳から始めて同じくらいかかったぞ」
「三歳………」
「強くなるとはそういう事だ」

 その一言だけを残し、レンは射撃場を去る。
 通路をしばらく歩いた所で、仏頂面をしているアークと遭遇した。

「随分ときつい事言ったようだな」
「相変わらず地獄耳ですね」
「念のため言っとくが、口でどうこう言ってどうにかなるような簡単な性格してないぞ、あの娘は……」
「そうですか……」

レオン長官も若い頃そうだったんだろうか? という問いはあえて胸の内に秘め、レンはその場を後にしようとする。

「そうだ、ちょっと手伝ってほしい事があるんだが」
「刀は母さんに取り上げられてまだ返してもらってませんが」
「刀はいらない。ある意味もっとやっかいな仕事だ」
「は?」



 会議室のデスク上に、音を立てて用紙の束が置かれる。
 その量にレンの頬が少し引きつったが、一番上の用紙を見て眉間に少しシワが寄った。

「………履歴書ですね」
「ああ、なんでか最近それが大量に送られてきてな」
「新人募集ですか?」
「殉職しちまった奴もいるし、三戦目があるって聞いて辞めちまった奴もいる。それでどこかの新聞がSTARSで人員が不足してるなんて勝手に書いたのが一週間前。次の日から世界中から届いてな………人手は欲しいが、そうそう増やす訳にもいくまい」
「最低限の経験者にしぼってみたらどうでしょう? 軍や警察関係で」
「それでその量だぞ。お前に選別できるように英語と日本語の奴だけにしておいた」
「なるほど………」

 その最初の一枚、オーストラリア軍の軍人で本籍がバイオハザードで壊滅した都市・ノースマンになっている物を見たレンは思わず頭をかきむしる。

「目つきが座ってますよ、こいつ」
「それならまだマシだ。表にはそんな連中がマスコミと一緒にずっと居座ってやがる。最初は教習所に叩き込んでジルに仕込んでもらおうかとも思ったが、すでに三桁突破してる状態じゃそれもままならん」
「長官はなんて?」
「本当に使えそうな奴なら入隊許可させるって言ってたぜ。問題はこの中からどうやってそれを選ぶか………」
「いっそ、全員で模擬戦でもやらせて、それで勝ち残った者という事で」
「この人数を一人ずつやるのか? 出来ればもっと簡単に実力を………」

 ふとそこで、アークの目がレンをまじまじと見つめる。

「どうかしましたか?」
「そうか、その手があったな」
「はい?」



三日後 STARS屋外演習場

 あらゆる屋外戦闘の演習のため、本当の町並みのようにビルや一軒家、大型スーパーやなぜか回転寿司店まで模したありとあらゆる建物が並ぶ大型の演習所を前にして、大勢の人間が集合していた。
 主に若い屈強な男性、しかも警察や軍の制服に身を包んだ者が多いが、女性やまだ子供と言って差し支えない年齢の者、挙句はどうみても定年を過ぎているような老人までもが集っている。
 全員番号のついたゼッケンを胸につけ、そして共通して完全に座った目をしてこれから行われる事の説明を待っていた。

「よくもまあこんだけ……」
「300近くいってるらしいぞ」
「一次選考に筆記でもすれば良かったんじゃない?」
「問題作るだけで一苦労だな。世界中から集まってきて言語統一もままならん」
「混ぜるなよ………」

 手に結果判定入力用のPDAを持った試験官を務めるSTARS隊長達が、予想を遥かに上回る人数に絶句していた。

「軍や警察関係者はともかく、どうみても筋者まで混じってやがる。誰だあんなのにまで許可したの」
「向こうのヤクザはミリィの知り合いだとさ。先生にいつも世話になってる恩返しだとかで」
「あら、クァン司令も来てるわね。責任取って軍辞めたとは聞いてたけど」
「後ろに並んでいる半裸の筋肉軍団はなんだろう………」
「おい向こうにバリーの奴がいるぞ」
「……孫が居る年で何考えてやがる? 辞めさせてくる」

 オーストラリアと中国を中心とした、世界中から集まってきた入隊希望者達に、STARS隊長達は頭を抱え込みそうになる。

「また、随分と来てますね……」
「お、準備できたかJr」

 手に木太刀(金属の芯を入れて真剣と同じ重さにした木刀)を持ち、腰のガンベルトにペイント弾を装填したマガジンを大量に吊るしているレンが、居並ぶ入隊希望者を見ながらその隊長達の隣へと並ぶ。

「言われた通り、模擬戦用完全武装してきましたが、模擬戦の内容は?」
「今発表する」

 レンの少し後に、拡声器片手のアークと、その後ろに大量の銃を乗せたワゴンを持ったSTARS隊員達が続く。

『テステス、マイクテスト。それでは、これより説明に入ります』

 アークの隣に何人かの隊員達が立ち、同時に複数の言語で通訳に入り、居並ぶ入隊希望者がこちらへと向き直った。

『ご存知の通り、ノースマンの事件以来我がSTARSでは激戦が続いており、すでに二桁の殉職者と、それに続く退職希望者が出ております。しかし、懸命の捜査にも関わらず、今だ事件の全容はつかめておらず、今後同様のテロが発生する可能性は少なからず有ります』

 入隊希望者の間に、「やはり」という空気と緊張が走る。

『我々としても、更なる事件の解決のために戦力の補充が急務であり、ここに大勢の入隊希望者が揃いました。しかし、我々が欲しいのは猫の手ではなく、一騎当千のスペシャリストなのです』

 アークの言葉に、少なからず動揺が起こる。
 それぞれの言語で不安を話す者達の前で、アークはさらに言葉を続けた。

『よって、今ここで勝手ながらこちらの判断で実力を確認させていただく。ルールは実戦相当の模擬戦。軍・警察関係者なら知っているかと思いますが、こちらにペイント弾を装填した銃を用意しました。これを使用し、実際に戦ってもらう。模擬戦ルールにより、手足ならば二発、胴体・頭部ならば一発で死亡判定、失格となります。そして模擬戦の内容は』

 そこでアークは一度言葉を区切り、レンの方を見た。

『今この場で間違いなく最強の戦闘力を持つ人間、FBI特異事件捜査科捜査官にして、《ブラック・サムライ》の異名を持ち、今回の事件でも多大な活躍をしている彼を相手にしてもらう』
「あの、ひょっとしてオレ一人で?」
『もちろん』

 模擬戦の内容に、入隊希望者達に驚愕と懐疑の意思が広がっていく。

「300人をたった一人で相手にしろと………」
『彼に対して死亡判定を出せた者は、今までの経歴その他を一切不問として入隊許可を出すとレオン長官からの許可ももらっている。質問は』

 ざわめく者達の中、最前列から一つの手が上がる。
 そちらを見たレンは、そこに見覚えの有る顔があるのを気付いて顔を僅かに曇らせた。

「年齢制限は?」
『もちろんない。もっとも、彼に当てられればの話だけどな』

 その手を上げた人物、ゼッケンを付けているリンルゥの問いにアークはあっさりと許可の返答を出す。

『戦術、フォーメーション、その他いかなる戦い方もOKだ。なんなら人質を取っても構わない。ただし、彼は木刀でも一撃で人を殺せる程の腕前を持っているので、怒らせない事を推奨する。それでは、開始』

 いきなり発せられた開始の言葉に、最前列にいた者達数名が即座に反応した。
 レンがまだアークの方を向いてる隙に、ワゴンから銃を奪うように取ると、それをレンの方へ向けてトリガーを引こうとした。
 しかし、瞬き一回分の時間が経過しただけで形勢は逆転した。
 向けられた銃口へと振り向きながら、たった一歩の踏み込みでレンは間合いを詰め、手にした木太刀を振るった。
 銃口を向けていた者達は何が起きたかも理解する暇も与えられず、その手から銃を弾き飛ばされる。
 たった一瞬の逆転劇に、皆が気付いた時には、弾き飛ばされた銃は地面へと落ちていた。

「27番、49番、146番失格と………」
「ちょっと待った!」
「まだ始まったばかりだろうが!」

 手にしたPDAに失格判定を入力するカルロスに、当人達が猛反発する。
 だが、カルロスはその抗議をしばし聞き流した後、ため息を吐き出しながら理由を説明する。

「お前ら、利き手を切り落とされてもそう言えるのか?」
「う………」
「しかし……」
「ましてや、刃物使いの間合いでのんきに銃抜こうとするようなド素人は用無しだ。ゼッケン置いて帰るように」
「くっ」

 歯軋りしながらゼッケンを外す者達をよそに、レンは訓練用の街中へとすでに姿を消していた。

「なんて奴だ、こうなりゃ数で勝負だ!」
「早い者勝ちだ!」

 わらわらと無数の手が用意された銃へと伸び、それを手にした者達が続々とレンの後を追う。
 しかし、すぐに後を追わずに冷静に事の推移を見守る者や、用意された銃が足りずに順番待ちをする者も多かった。

「さて、何人残ると思う?」
「全滅に20ドル」
「同じく全滅にアンバーハウスのGDピザ一枚」
「全滅にカナダ・クリーク(※カナダ産赤ワイン)1ケース」
「……賭けにならねえな」

 ほとんどの隊長がまったく同じベットに対し、シェリー一人が意味ありげに残った人物の一人を見ていた。

「そうね、一人残るに50ドル」
「なんだ、大穴ねらいか?」
「さあて、ね………」

 シェリーの視線は、一人で何か作戦でも考えているらしい、リンルゥに向けられていた。



「向こうに行ったぞ!」
「追い込め!」

 驚異的な速度で走るレンの後を、銃を手にした入隊希望者達が追いかける。

「くそ、早ぇ!」
「逃がすな!」

 体勢をまったく崩さず走るレンに、どう見ても素人丸出しの動きで迫る入隊希望者達だったが、レンが横道へと入った所を追って一斉に横道へと入る。

「!? いないっ!」
「どこに消えた!」
「確かにこっちに曲がったぞ!」

 確かに曲がったはずなのに、横道にはレンの影も形も無い。
 その姿を探して追っていた面子が横道の奥へと入った所で、路面のマンホールのふたが少しだけ開き、そこから何か円筒形の物が二つ吐き出される。

「え?」

 たまたま真正面でそれを見た物が、それが何かを判断する前にその円筒形の物体、模擬戦用のペイント手榴弾は横道の中央で炸裂。
 そこにいた全員の体に塗料を撒き散らした。

「おわっ!?」
「なんじゃこりゃ!」
『7番、12番、14番、26番、33番、52番、57番、60番、67番、85番、88番、90番、91番、92番、全員失格』
「くそっ!」
「お先に」

 後から追ってたので手榴弾の爆発に巻き込まれなかった者が、いそいそとマンホールのふたを開ける。
 同時に、ふたに固定してあったペイント手榴弾のピンが外れた。

「あ……」

 直後、マンホールから吹き上げた塗料がマンホールに入ろうとしていた全員にまんべんなくかかっていった。


「サポートもトラップ確認も無しか。完全に素人だな」

 本物の街さながらに作られた下水道の中、レンは響いてきた爆発音にトラップの成功を確認した。

「前から思ってたが、ここの人達はオレを過大評価し過ぎじゃないか? 300対1の模擬戦なんて聞いた事もないが………」

 今まで幾度かここで行ったSTARSとの模擬戦の内容とその際に覚えた地図、それに現在の武装を脳内で計算しながら、レンは次の手を考える。

「いたぞ!」
「こっちだ!」

 複数の声が後ろから響いてくるのを聞いたレンは、下水道の中をひた走る。
 後ろからの足音が段々多くなってきた所で、レンは突然足を止めた。

「今だ…」

 それを好機と見たのか、追ってきた面子が銃口を向ける。だが、トリガーを引くよりも早く、レンが逆にこちらへと突撃してきた。

「!?」

 先頭の中央部にいた男が、レンの刺突をみぞおちに食らって崩れ落ちる。

「野郎!」
「この距離なら」

 左右にいた中年男と若い女が同時にレンへと銃口を向けたトリガーを引いた。
 しかし、コンマ数秒の差でレンは下へと沈むようにしゃがみ、放たれたペイント弾は互いの衣服に塗料をぶちまける。

「撃ちまくれ!」

 後続の者達が一斉に銃口を向け、トリガーを引こうとする中、レンは手近の一人の襟を掴み、足を払って手前へと引き寄せる。

「痛い痛い痛い! やめてくれ〜!」

 盾にされた男の背中に塗料の花が無数に咲き乱れる。

「おい、ちょっと待て!」
「構うか!」

 何人かが思わず銃撃を止めるが、大多数は平然と銃撃を続ける。
 だが無造作な乱射はすぐに弾切れを起し、銃撃が止まった。
 その隙にレンは盾にされて悲痛な顔で膨大な涙を流している男を投げ捨て、慌ててマガジンを交換しようとしている者を下段から斬り上げる。
 真剣ではないとはいえ、肋骨の下を縫うように放たれた斬撃を食らった男が一撃で崩れ落ち、返す木太刀が隣の男の胴を横薙ぎにする。

「あ……」
「う、撃て!」

 先程銃撃を止めた者達が再度銃撃を行おうと構えるが、瞬時にレンの左手は懐に潜り込み、サムライソウル2を抜いた。
 抜いた時にはすでにセーフティーは解除され、横へと振り抜きながらトリガーが連続へ引かれる。
 放たれたペイント弾はレンの左手側に並んでいた者達の胴体や顔面に炸裂し、盛大に塗料を撒き散らす。
 右手側にいた者が慌ててトリガーを引こうとした時には、木太刀がその腕を打ち上げ、銃を上へと弾き飛ばす。
 弾き飛ばされた銃が下水道の床に落ちる時には、レンを除くそこにいた全員が塗料を浴びるか、打ち据えられてその場に転がっていた。

「おい、あっちだ!」
「全員やられてる!」

 別の集団の声が迫ってきているを聞いたレンは、落ちていたM―8コンパーチプルライフルからまだ残弾がある奴を拾うと、セレクターをフルオートにして声のする方向へとペイント弾をばら撒いた。
 遠くから悲鳴やくぐもった声が聞こえたが、戦果も確認せずに残弾の尽きたM―8をその場に投げ捨てながら去っていく。

「つ、強過ぎだ。あいつ…………」

 去っていくレンの背中を見ながら、盾にされた男は思わず呟いていた。



 屋外演習場の一角、演習内容確認用のモニター室に映し出される各所の映像をSTARSの隊長達は確認しつつ、失格者を次々とリストから削除していく。

「1番代全滅、10番代は16と18番以外、20番代は…」
「今全滅した」
「24番、38番、119番、リタイヤ宣言。他にリタイヤしてきてるのは?」
「銃全部持ってこさせろよ、貴重な備品だ」
「担架もっと用意して! 何人か救援に向かわせて!」
「72番、失格になったのに更に攻撃しようとして返り討ちにあってる。ありゃ骨くらいいったな………」
「素人は大体終わったんじゃね?」

 ぞろぞろと来る失格者をSTARSの隊員達が手当てしたり返却された銃の点検を進める中、今まで動かなかった者達が腰を上げ始める。

「我々も参戦する。武装を」
「おう、頑張りな」
「バット小隊、作戦開始」
「司令、ご指示を」
「第一から第二はポイントCへ第三は突撃の準備!」

 先遣隊でマップの作成やレンの戦闘状況を確認していた軍や警察の関係者達が、武装が揃った所で一斉に行動を開始する。
 まずオーストラリア警察やオーストラリア軍の者達が、訓練された動きで街へと突入していく。
 その後には、クァン司令を指揮官とした中国人民警察、人民軍合同部隊が、綿密な作戦を立案最中だった。

「さて、これからが本番か」
「Jrの居場所は?」
「B地区のスシバーの中、銃撃戦の真っ最中………あ、今片付いた」
「もう三分の一以上片付いてるな。半分は素人の同士討ちだが」
「これからが見所だな……」

 モニター室の画面の中、最後のペイント手榴弾を投じたレンに、隊長達の視線が注目した。
 この後から始まるであろう、本当の実戦レベルの戦いが繰り広げられるのを。


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