第十三章「襲来! 混沌の魔人達!」(前編) 静かな闇の静謐(せいひつ)が、光によって霞んでいく。 地平の向こうから、いつもと変わらぬ輝きに満ちた太陽が、ゆっくりとその姿を現してきた。 「いい朝だね」 窓から差し込んでくる朝日を見ながら、その人影は呟いた。 「作戦決行まで、まだ時間があるな……」 その人影、中性的な顔立ちをした人物は、懐から小型モバイルを取り出して時間を確認し、一人呟く。 「とても楽しみだよ、兄さん」 くすりと笑うと、シートに身を沈める。 だが、ふと何かに気付いたのか周囲を見回す。 「? なんだろ? 今何か………まあいいや」 何かを感じた気がしたが、無視して再度シートに身を沈め、程なくしてその口から静かな寝息が漏れ始めた……… 同時刻 STARS本部 「くぁあ………」 大きなあくびを漏らしつつ、夜勤明けのカルロスが通路をとぼとぼと歩いている。 「くっそ、アトレの奴また新しいイカサマ覚えやがったな。絶対見破ってやる………」 何か危険な事をぼやきつつ、昨夜の負け分のオゴリを脳内で考えていたカルロスが、ふと何かに呼ばれた気がした。 「? 誰だ?」 何気なく振り向いた先、正面の壁に貼ってあったポスターの一部が、彼の目の前でいきなり剥がれ落ちた。 「ん? なんだ?」 ジャパンアニメマニアの隊員が持ってきたとかいう、日本特有のやたらと目の大きい少女キャラを使った、一応テロ防犯を呼びかけるポスターから剥がれ落ちた部分をカルロスは拾い上げる。 ポスターに斜めに入っていた《CAUTION!!(注意)》のロゴ部分だけが、まるであらかじめ切り取り線でも有ったかのようにキレイに切り抜かれているのを見たカルロスが首を傾げる。 「何を使った? 切り損ねもないし、壁に傷もついてねえ………まるで……」 (カルロス) また誰かに呼ばれた気がして、カルロスは振り向いて周囲を探る。 だが、早朝の通路にいるのは彼だけだった。 「どういう事だ?」 カルロスは、切り抜かれた《CAUTION》の文字を、唾を飲みこみながら凝視していた……… 「行くぜぇ!」 「来い!」 フィールドの中、黄金色の大型パワードスーツ《ヘラクレス》と、純銀の格闘用パワードスーツ《ウェアウルフ》が対峙する。 「おおお!」 ウェアウルフを駆るロットが、背部バーニアを吹かして一気に間合いを詰めていく。 「はっ…」 短い嘲笑と共に、ヘラクレスを駆るスミスは両手の大型レールガン《タスラム》を速射。 「喰らうか!」 ロットは各所のバーニアを吹かし、無茶としか言いようの無い機動で弾丸を次々とかわし、すれ違い様、右手に握られた《ハウリング・ロッド》をタスラムの片方へと叩きつける。 轟音と共にハウリング・ロッドから放たれた衝撃波がタスラムの装甲版をひしゃげさせ、大きく陥没させる。 「やるな!」 脚部ホバーを吹かして機体を反転させながら、スミスが残ったタスラムをウェアウルフに向けようとする。 だが、その銃口に唸りを上げて旋回する《スパイラル・タスク》のドリルが突き刺さる。 「これで使えねえ」 「そう思うか?」 完全に銃口がふさがれているに関わらず、スミスがためらいなくタスラムのトリガーを引いた。 放たれた弾丸がスパイラル・タスクと激突し、タスラム内部で爆発を起す。 「ちぃっ!」 「ぐっ!」 極至近距離で起きた爆発が、二機のパワードスーツを双方吹き飛ばす。 (装甲はこっちが厚い! ダメージは向こうが上のはずだ!) 体勢を立て直し、眼前に並んでくるダメージ情報をチェックしながらロットはヘラクレスの方を見る。 左腕に深刻なダメージを受けてるヘラクレスに、ロットがハウリング・ロッドをかざして襲い掛かる。 「甘いぞ」 スミスはハウリング・ロッドの一撃で損傷していたタスラムを無造作にウェアウルフへと向かって放り投げる。 「そんな物…」 避けようとするロットの視界に、ヘラクレスの胸部20mmガトリングが旋回を開始したのが飛び込んでくる。 (20mm? この装甲には…) 放たれた20mm弾が、ウェアウルフの間近へと迫っていたタスラムの弾倉部を撃ち抜く。 続けて起きた爆発が、ウェアウルフの機体を大きく揺らす。 (無駄だ! 装甲は多少破損するだろうが、ダメージは…) 体勢を立て直そうとしたウェアウルフの頸部を、一気に間合いを詰めてきたヘラクレスの手が押さえ込む。 「装甲の上からでも、こうやればダメージが通る」 最大出力で、ヘラクレスがウェアウルフを頭から地面へと叩きつける。 「ちいっ!」 衝撃と共に、機体へのダメージが次々と表示される向こう側で、ヘラクレスが拳を振りかざすのが見えた。 鈍い衝撃が幾度となく響き、やがてロットの視界がブラックアウトする。 〈YOU BREAK!〉の表示と共に、機体が起こされる。 「くそっ! また負けちまった」 悪態をつきながら、パワードスーツ用シュミレーターの中からロットが体を引き抜いていく。 「まだ新型に慣れてないんだよ。突っ込み所を間違えると難しい機体みたいだしな」 隣のシュミレーターから、スミスが体を引き抜く。 『これで32戦目、勝率はロット9:スミス23。大規模な負け越しだね♪』 「うるせー!」 《ギガス》内部シュミレーションルームに、サポートAI『TINA』の陽気な声が響く。 「もう一回!」 「おう、やるか!」 『……準待機態勢で、完全徹夜訓練は止した方いいと思うよ?』 シュミレーションルームの観戦用ディスプレイに、現在の時刻と外の夜明けの様子がリアルタイムに映し出されていく。 「もうそんな時間かよ」 「道理で目がちと疲れてくる訳だ。朝飯前に一寝入りすっか?」 「オレはもうちょっとやる」 「ロット、お前も少しは休めよ。女房子供に二階級特進の恩給やりたくなけりゃな」 「女房は先週ガキと一緒に出てっちまったよ」 「またかよ、今度の原因は何だ?」 「おとなしく寝てれば直るのに、体機械にするなんて何事だ、なんて言ってやがったなぁ………」 「オレん時は何も言われなかったな。まあ足も目も爆弾で吹っ飛んじまったしな」 「理解の有る女房でうらやましいねぇ~。ウチのなんざ…」 「それ以上言いたけりゃ、女房に詫びのプレゼントでも贈ってからにするこったな」 呆れ顔で注意しながら、とりあえず顔でも洗おうとスミスは通路へと出て洗面所へと向かう。 「まったく、あいつも腕は悪くないんだがな……今度こそ女房とはダメかもな」 洗面所まで辿り着いたスミスは生身の方の手だけ水をすくい、義眼にかからないように注意しながら顔へと浴びせる。 「あん?」 呼ばれたような気がして、スミスが顔を上げる。 正面の鏡には、確かに人影らしき物が映っていた。 「ロットか…」 スミスが振り返るが、その先には誰もいない。 「おや?」 気のせいだったか、と思いながら再度鏡を見たスミスは、そこに確かに人影が有るのをはっきりと見ていた。 「なんだこれは?」 思わずそう言った時、違和感に気付いた。 その人影は、生身の左眼には見えず、右の義眼にだけはっきりと見えていた。 にも関わらず、その人影がどんな人物かは見えてこない。 (スミス) 「だ、誰だ?」 疑念にかられたスミスの義眼に、突然エマージェンシーサインが浮かび上がる。 《Dangerous Approach!(危険接近)》の文字が視界の中で激しく明滅し、そしていきなり消える。 それと同時に、人影も視界から完全に消えていた。 「今のは、故障か? それとも………」 素早いキータイピングの音が、研究室内に響き渡る。 「生育過程のカテゴリーを、少し変えてみれば…………」 「こんな時間から熱心ね」 聞こえてきた声に、キーを叩いていたシェリーが振り返る。 そこには、コーヒー片手のミリィが立っていた。 「ついさっき思いついた事が有ってね。すぐに検証してみようかと思って」 「仕事もいいけど、子供の面倒ちゃんと見てる? 家に帰る暇が無いからって、家族全員でここに寝泊りなんて感心できる事じゃないわ」 「ご飯くらいは、一緒に食べようと思ってね。私が小さい時は、いつも一人で食べてたから………」 「誉めるとこか叱るとこか、判断に悩むわね。トウジ君がここのロクデナシに変な事仕込まれないといいんだけど。昨日カルロスにカード教わってたわよ」 「ヒロがここに来させたくないって言ってた理由はそれか……」 入力したデータのシュミレーションに目を映しながら、シェリーが目じりを揉む。 「ミリィこそ、こんな時間に何を?」 「なんとなく起きたら、目が冴えちゃってね。こういう時はロクでもない事が起きる事多いから、目覚ましを」 「虫の知らせとかって奴?」 「かもね」 話していた矢先、突然ディスプレイがブラックアウトする。 「あれ? 故障かな?」 配線を確かめようとしたシェリーの目に、キーボードにもマウスにも触れてないのに文字がタイピングされていくディスプレイが見えた。 《注意!》《NEAR DANGER!》《気をつけろ》《CAUTION!》《すぐそこまで》等といった、日本語と英語が入り混じった文字列が瞬く間にディスプレイを埋め尽くしていく。 「何これ? まさかウイルス?」 ディスプレイを謎の文字列が埋め尽くした所で、画面内に次々とウインドゥが浮かび上がってくる。 「ブラクラって奴? 妙な物でも拾った?」 「違うわ! まさかハッキング…」 そこで、ある一つのウインドゥが浮かび上がった所で動きが止まる。 それは、消去したはずのリンルゥのDNAデータだった。 「! これは完全に消したはず……」 「ねえ、これ…」 ミリィが何かを言おうと時、そのウインドゥの備考欄にまた勝手に文字が入力されていく。 《She is needed.(彼女が必要になる。)》 「どういう事? いったい誰が………」 「ちょっと待って。彼女の父親って…」 またディスプレイがブラックアウトし、そして先程まで使っていた画面へと戻る。 「元に戻ったみたいね……」 「なんだったの?」 「分からないわ」 パソコンの調子を再度確認していたシェリーが、先程まで無かった筈のテキストファイルがディスプレイに出ているのに気付く。 「何これ?」 何気にそれを開いて見ると、そこには短い文章が1行だけ書かれていた。 『Trouble is made to you(迷惑をかける)』 (ミリィ)(シェリー) 誰かに呼ばれた気がして、二人は振り返る。 しかし、あるのはPCの演算音が響く空気だけだった……… 朧な意識の中、レンは己を自覚した。 (ここは?) 全てが霞のような不安定さの中、自分がそこにいる事をレンは確認する。 (これは、夢か?) 人外の者と戦うために鍛え上げた感覚は、無意識の中でも何かを掴み、それが夢となって現れる事が有る、と師匠から言われた事をレンは思い出していた。 実際、何度かそういう夢は見た事が有る。しかし、ここまではっきりと夢と分かる物は初めてだった。 そこで、レンは霞の中に誰かがいる事に気付いた。 (誰だ?) 目を凝らし、その人影を見極めようとするが、それは周囲同様、霞んで見極める事が出来なかった。 『聞こえているか………レン』 すこしかすれる声で、その人影が呼びかけてくる。 今までの夢でもまったく経験の無い事に、レンが警戒心を抱いた。 (オレを知っている?) 『知らせるんだ、皆に』 (知らせる、何を?) 『STARS最大の危機が、すぐそこまで迫っている』 (STARS最大の危機!? それは一体!) 『この危機を乗り越えた時、全ての真実が明らかになるだろう。迷うな。お前の迷いは全ての迷いに繋がる』 (待ってくれ! あなたは一体………) 『お前自身の信ずる物を、貫き通せ。その手で』 いつのまにか、夢の中でレンは普段の墨色の小袖袴に身を通し、右手に刀を、左手に銃を握っていた。 そして人影が急速的に遠ざかっていく。 だがそれに反比例するようにその姿が小さくなりながらも、はっきりしてきた。 レンと同じ墨色の装束と墨色の髪を持った後ろ姿、そしてその背に浮かぶSTARSのエンブレムが。 (まさか!) 「父さん!?」 叫びながら、レンはベッドで跳ね起きる。 「今の夢は………」 ついさっき見た物に、レンは呆然として自問する。 その耳に、何かが響く音が聞こえてきた。 音のする方を見ると、枕もとに立てかけてあった愛刀が、僅かに鞘走った状態で小さく鳴動していた。 それを手に取り、鞘から抜き放つ。 抜き放たれた白刃は、朝日を浴びながらしばし鳴動していたが、やがて静かに鳴動は収まっていく。 「STARS最大の、危機………」 夢の中で言われた事に、レンが生唾を飲み込んだ………… 朝食を取る間もなく、STARSの隊長達が会議室へと集まってくる。 「何だ、こんな朝っぱらから。会議は9時からじゃなかったのか?」 「何か分かったのかもしれないぞ」 「まさか次が起きたのか!?」 口々に推測しながらも、各隊長達は会議室に足を踏み入れる。 そしてそこに異様な空気が漂っているのに気付いた。 「何してる、早く座れよ」 「すぐに始めるわ」 何か異様に張り詰めているカルロス、シェリー両隊長に他の隊長達が顔を見合わせる。 (何が起きてるんだよ?) (こっちが聞きたい!) 小声で耳打ちしつつ、他の隊長達も各々の席に座る。 席に座った所で、カルロスの隣に座っているスミスや、末席に座っているレンの様子に気づいた。 スミスは腕組みしたまま目を閉じ、レンは両手を膝において姿勢を正している。 両者に共通しているのは、いつ懐から銃を抜いても違和感が無いくらい、鋭すぎる殺気が放たれている事だった。 (やべえぞ、これは………) 事情はまったく理解出来ないが、何かがあった事は雰囲気で分かる隊長達が無言で目配せする。 そこに、外から騒々しいヘリのローター音が響き、しばらくして騒々しい足音を響かせて人影が飛び込んでくる。 「何があった!?」 飛び込んできた人物、どこかから超特急で帰還したらしいアークが、荒い息で会議室を見回し、そこに満ちている空気に気付くと顔をこわばらせた。 「……何があった?」 先程と同じ言葉を、アークは喉から搾り出すように吐き出す。 「今から説明します。……少し信じられない話かもしれませんが」 レンの静かな声に、アークは黙って席についた。 「そろったようね。始めましょう」 なぜかレオンの隣に座っているキャサリンの声に、困惑と共に会議が始まる。 「本来の予定は二時間後だったけど、レンから緊急の用件があるって言われてね。朝早くに集まってもらった訳」 「すいません、どうしても話さなくてはならない事ができまして」 「何か分かったのか?」 アークが問い質す中、レンは静かに言葉を紡ぎ出す。 「夢を、見ました」 「夢?」 飛び出した言葉に、隊長の一人が思わずオウム返しに呟いてしまう。 「夢の中で言われたんです。『知らせろ、STARS最大の危機が迫っている』と」 「いや、さすがに夢なんてのは……」 「オレの所にも来た」 予想もしてなかったレンの話に困惑を深める隊長達に、カルロスの言葉が更なる波紋を広げる。 「夢じゃなく、起きてる時にな。何かが『注意しろ』と知らせてきた」 「こっちもそうだ『危険接近』だとよ」 「私の所にも来たわ。ミリィも一緒にね」 カルロスのみならず、スミスやシェリーまでもが不可思議な現象を告白する。 恐らくはこの中でもっともそういう事に縁遠い〈科学者〉のシェリーの口からもそのような事を告げられ、歴戦の隊長達はこの組織に入って一番の困惑を感じていた。 「アーク、何か分かった事は?」 「相変わらずだ、何も分からないという事が分かった」 それまで無言だったレオンの言葉は、アークの返答によって無意味な物へと変ずる。 「夢、ね。今まで何度かそういう夢を見た事は聞いたけど、今回はとびきりね」 「自分でもそう思います」 それほど動じていないのか、キャサリンは小さなため息と共にレンの方を見た。 「さて、情報源は怪奇現象四つ。かつて偶然が七つ重なって起きた事故があったけど、どうするのかしら?」 いたずらでもするような笑みで、キャサリンがレオンを見た。 この奇妙な情報にもレオンは表情を微動だにさせる事は無かったが、代わりに一つの質問がその口から放たれた。 「それは、誰だった?」 「………少しだけ見えたのは、オレと同じ装束を着た東洋系の後ろ姿でした。背に、STARSのエンブレムを背負った」 異音が会議室内に響き渡る。 それは、スミスの義腕が目の前のテーブルを握り潰した音だった。 「やっぱり、そうかよ………」 「ああ、そうだろうな………」 顔を手で覆ったカルロスの口から、苦笑が漏れる。 誰かがその事を問い質すより早く、レオンの口が開いた。 「総員に第一級待機体勢。全小隊、即時出撃可能状態を取れ」 「長官!?」 「アーク!」 「世界各国警察にホットラインを構築、随時情報収集を。ICPOを通じて各国首脳に警告を発信。各国諜報機関ともホットラインを構築、可能性が高い場所の割り出しに全力を注げ。以上だ」 『了解!』 異議を唱える暇も無く、カルロス、シェリーの二隊長にスミス、レンが敬礼して会議室を飛び出す。 他の隊長達も困惑を隠しきれない状態で、とにかく命令を実行するべく席を離れていく。 「珍しいな、確証も無しに動くなんて」 その場に残った三人の中、アークが相変わらず表情を変えないレオンを見て呟く。 「明け方近くの事だった」 「?」 何の脈絡もなく、レオンが独白を始める。 「誰かに呼ばれた気がして、目が覚めた。そして声を聞いた気がした。懐かしい声が一言だけ『気をつけろ、レオン』と」 「四つじゃなくて五つだったのね」 キャサリンが思わず笑みを浮かべる。彼女にしては珍しい、嫌味も何も含まれてない笑みを。 「彼は、誰よりも強く、そして気高かった。あの時も、そして今でもSTARSは彼に護られているのかもしれない…………」 「そう、なのかもな。さて、仕事するか」 「そうね」 「輸送機全部エンジン回しとけ!」 「全種武装を確認! 急げ!」 「スーツのバッテリーありったけ充電しろ!」 各隊長達の指示に従い、STARS隊員達が忙しく出動の準備を進めていく。 「総員一級待機!? 次が起きたのか!」 「何か聞いてないのか!?」 「知らないのか? なんでもブラックサムライの親父さんが隊長達の夢枕に立って危険が迫っているとか言ったらしいぞ」 「おいおい、そんな事でいいのかよ……」 「それが、見たのカルロス隊長やシェリー隊長らしいぞ。お陰であの二人無茶苦茶殺気だってるぞ」 「ばか、格納庫行ってみろ。スミスさんがすげえ形相で新型調整してたぞ……」 「けどよ、最新ニュースでも特に妙な事は言ってないぞ」 口々に噂しながら、隊員達が何気なく待機室で誰かが付けっぱなしにしたテレビから漏れてくるニュースに耳をすませる。 しかし、流れてくるのは普段とあまり変わらないようなニュースばかりだった。 さしたる緊急ニュースもなくニュースが終わり、今日の占いコーナーへと変わる。 「やっぱ、偶然じゃないのか?」 「ちょっと待て。オレはこのスリム・ナンバー先生の占いを見ないと一日が始まらんのだ」 「おいおい………」 こそこそと待機室へと入った隊員が、辛口で有名な占い師の占いを凝視する。 『今日の最悪の運勢は、星の名前が付く組織にいる人ね。世界の平和のため、命がけで戦う一日になるわよ。ちょっとでも気を抜いたら必ず死ぬから、そのつもりで。ラッキーアイテムは空中戦艦と日本刀。ラッキーフーズは勝栗に昆布に打鮑、それに酒杯。せいぜい死なないようにね』 「………わあぁ! スリム・ナンバー先生の占いも最悪だああぁ!」 「落ち着け、それ以前にどんな占いしたらこんな結果が出るんだよ………」 「そこ! 何やってんの!」 シェリーに怒鳴られ、隊員達がクモの子を散らすように各々の準備へと戻っていく。 「今日の運勢も最悪、一体何が起きるっての………?」 シェリーは湧き上がる不安を感じられずにいられなかった。 「なあ」 「なんだ?」 完全重武装に身を包んでいるカルロスが、パワードスーツ着用時のアンダースーツ姿のスミスに声をかける。 「あいつに、他に何か言われたか?」 「いんや、何も」 自分用のヘラクレスの最終チェックを済ませたスミスが、カルロスの方を向きもせずに答える。 「化けて出るなら、顔くらい見せろってんだ」 「急いでたんだろ。こっちから会いに行こうなんて思うんじゃねえぞ」 「定年退職して老後に年金で一山当てたら考えるよ」 「スってもオレんとこ借金来んなよ」 「誰が行くか」 「じゃ、何か起きたら起こせ」 「あ?」 最終チェックが済んだヘラクレスに半身をもたれさせ、スミスが目を閉じる。すぐさまその口から寝息が漏れ始めた。 「のん気なこった」 「そうですか? 殺気出したまま寝る人なんて初めて見ましたが………」 そばにいたメカニックスタッフが、まるで猛獣が寝ているような感覚を覚えながら寝息を立てるスミスを恐怖の混じった目で見ていた。 「オレもそうすっか。夜勤明けだしな」 「え?」 スミスの隣に並ぶようにヘラクレスに半身をもたれさせたカルロスの口からも、寝息が漏れ始める。 そろって寝息を立てる猛獣二人を、注意する勇気がある者は誰もいなかった。 隊員寮の一室、まだ着慣れていないタクティカルスーツのチャックを閉めようとした所で、自分の指が震えている事にリンルゥは気付いた。 「大丈夫?」 同室のアニーが、見かねて愛銃のワイルダネス・ハウルをいじっていた手を止める。 「うん、多分」 「初陣だからね。それ位がちょうどいいのよ」 「そ、そうかな?」 「あたしの時なんか、勢いこんで突撃して9パラ五発程食らったし」 「……なんで生きてるかな?」 「防弾の上からだったからね。ムサシは倍食らってたけど」 ワイルダネス・ハウルを腰のホルスターに収めながら平然と言い放つアニーに、リンルゥはタフさの違いを痛感していた。 「カルロス隊長にも言われたでしょ? 新人の間は臆病な方がいいのよ。ここは下手な特殊部隊よかよっぽどハードだしね」 「う~ん」 脛のスティックホルスターにレンから渡された護刀・玲姫を差し込んだリンルゥは、先程から早鐘のように打っている心臓をなんとかなだめようと深呼吸をしてみる。 「朝食食べた? 出動かかったらそんな暇無くなるわよ?」 「食欲全然無いよ………」 「トーストだけでもかじっておいた方いいわよ? 食べ過ぎない程度に」 「そうかな……」 準備を整えた二人が、部屋を一緒に出る。 そのまま取り留めの無い話をしながら通路を歩いていた時、ある部屋から妙な声が聞こえるのに気付いた。 「なんだろ?」 リンルゥがあまり使用されてないその多目的室のドアを開くと、その中の光景に絶句する。 「オン キリキリ バサラ ウン ハッタ! オン キリキリ バサラ ウン ハッタ!」 その部屋の中央ではありあわせの木材で組み上げられた護摩壇で炎が燃え上がり、それを前にした完全武装のレンが一心不乱に手印を組み、真言を唱えている。 「な、何コレ………」 「しっ」 レンの後ろに、正座して控えていたトモエが口に指をあてて沈黙を要求する。 「ああ、これレン兄ちゃんの占いだよ。陰陽師風の」 「こ、これが……」 「黙っててって」 トモエが再度注意するが、レンは気にした風でもなく、真言を唱え続ける。 (どこだ? 奴らの次の目的地はいったいどこだ!?) 精神を集中し、レンは真言を唱え続けて気を高めていく。 気が高まった所で、護摩壇の前の棚に用意しておいた抜き身の刀を手に取り、同じく置いてあった鼎(かなえ=儀礼用の金属製の水入れ)に左手の人差し指と中指だけを立てて他を握る刀印と呼ばれる印を組んで指先を鼎の水に浸し、その水で刀身に梵字を書き連ねていく。 「我、五行相生の法を用い、金気を用いて相生とし、水気を用いて水鏡と成す!」 レンは左手で棚に置いておいた呪符を数枚掴み、それを刃で一気に貫いた。 「臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 列! 在 ! 前!はっ!」 左手で左右、上下に刀印を動かす早九字と呼ばれる印を切ると、レンは呪符を貫いた刃を鼎の水面へと突き刺した。 しばし、その状態で護摩壇の燃え盛る炎だけがその場を支配するが、いきなり刃に突き刺された呪符が一気に破裂し、続けて鼎が四つに分かれて周囲へと吹き飛んだ。 「きゃあっ!」 「うわっ!」 「ええっ!?」 「くっ!」 爆発物でも爆破したかのように周囲に鼎の中の水が飛び散り、思わず女性三人が悲鳴を上げる。 「これは………」 「何? 失敗?」 「分かんない、こんな事は一度も……」 恐る恐る室内に入ったリンルゥが、ふとそこに落ちている鼎の破片の一つを拾う。 「あれ? なんだろこれ」 その破片には、ヒビが集まって《刃》の漢字を作っていた。 「どういう事?」 「ちょっと、こっちも!」 トモエも別の破片を拾うと、そこにはヒビが《嵐》の字を刻んでいた。 「まさかそっちも!?」 残った二つをアニーとレンが拾う。 それには、《鏡》と《鋼》の二つが刻まれていた。 「《刃》に《嵐》……って事はこれ!」 「4エレメンツとかの!」 「そうか、そういう事か!」 四つの字を見たレンが、歯を強くかみ締める。 「奴らの目的地は!」 「ああ、だから今日は忙しくて…あれ?」 準備が一段落した隊員が、自分の携帯電話で会話していた途中で、いきなり会話が途切れる。 「圏外? おかしいな、最新型だぞ……」 「ちょっと待て、オレのもだ」 「お~い、誰かアンテナ見てきてくれ~ テレビが映らんねえぞ~」 寝息を立てていたはずのカルロスが騒動に目を覚ます。 そのまま黙って会話を聞いていたカルロスが、自分の通信機のスイッチを入れてそこから派手なノイズが聞こえてくると即座にスイッチを切った。 (ECMだと? 連絡なら有線の電話でも使えばいいだけ、いや!) 「総員戦闘体勢!!」 跳ね起きると同時に、カルロスはありったけの大声で叫ぶ。 その声を聞いた隊員達が、お互い顔を見合わせるとすぐに持っていた銃を構えていく。 「すぐにレオンに知らせろ! 奴らの目的地は、ここだ!!!!」 同時刻 STARS本部正面ゲート前 「先程より、急に動きが慌しくなったSTARS本部ですが、今だ正式なコメントは発表されておりません。一部の情報筋では、三度目のバイオテロ発生の噂も流れており、確認が急がれております」 「何かコメントを!」 「やはり三度目ですか!」 STARSの慌しい動きを嗅ぎつけ、ゲート前に押し寄せたレポーターや記者達がゲート前に立つ守衛役の隊員達にマイクを向けるが、誰も口を開こうとしない。 (どうするよ、これ……) (知らないわよ、とりあえず何も喋らない方いいわよ) 小声で話し合いながら、隊員達がマスコミに辟易としている所で、変化が訪れた。 「あれ? 映像来てないぞ?」 「おい、マイクがいかれた。代わりを…」 「局とのリンクが切れたぞ!」 次々と起こるトラブルが、マスコミの間に広がっていく。 「何かやった?」 「何をだよ?」 首を傾げる隊員とマスコミの背後に一台の大型バスが乗りつけた。 「ハ~イ、こちらが目的地です~」 てっきりマスコミの増援かと思ったバスからは、バスガイドに連れられた観光客らしき老若男女がゾロゾロと降りてきた。 (ここは観光地じゃねえぞ………) バスガイドがマスコミを押しのけながら、ゲート前まで近寄ってくる。 「それ以上近寄るな! 現在全待機状態による一級警備体制だ! 5m以上近付けば危険人物と見なす!」 「見学したいんですけど、ダメですか?」 「そんな許可が降りるか! 帰った帰った!」 警告を無視して近寄ってきたバスガイトを、隊員が押しのけようとする。 しかし、バスガイドの力は不自然な程に強かった。 「どうしても見たいんですが……」 「止まれ! それ以上近寄れば発砲する!」 「でも見たいんです」 にこやかに笑いながら、バスガイドが懐に手を入れる。 そこから、大型のコンバットナイフが取り出されたのに、周囲のマスコミ達が仰天した。 だが、隊員達はそれを見た時にはすでにトリガーを引いていた。 乾いた発砲音と共に、顔面を撃ち抜かれたバスガイドが地面に倒れ込む。 「う、撃たれました! 武装した女性がいきなり…」 驚きながらも仕事をまっとうしようとするレポーターの前で、顔面が真っ赤に染まっているバスガイドが平然と立ち上がる。 その双眸は、ルビーのように真っ赤に染まっていた。 「なんだこいつ!」 「全員下がりなさい! 安全は保証できないわ!」 隊員達が銃を構えた時、バスガイドと一緒に降りた観光客達も、その双眸を赤く染め、手にナイフやスタン・スティック、ハンドガンやサブマシンガンが握られていた。 「キアアアァァ!」 奇声と共にバスガイドが隊員達に襲いかかろうとした時、隊員達の背後から黒い旋風が吹き抜けた。 旋風はそのままバスガイドの脇を通り過ぎ、止まる。 その手には、抜き放たれた白刃が握られていた。 「サムライ!」 「すぐに警報を…」 一瞬でバスガイドの首を斬り落としたレンが振り返った時、とんでもない物が視界に飛び込んできた。 首が落ちていく中、その場に立っていたバスガイドの首の断面から、何かが這い出してくる。 無数の尖った小さい足が突き出され、それに不釣合いな小さな胴体が首から這い出し、小さな繊毛と牙の生えた口から、甲高い奇怪な鳴き声が周囲に木霊した。 「これは、プラーガか!」 「まさか、そんな……」 「向こうも!」 こちらへと近寄ってくる観光客の何人かの頭がいきなり吹き飛び、そこから寄生虫《プラーガ》がその姿を現し始める。 「T―ウイルスだけなく、プラーガまで……」 「緊急警報! 正面ゲート前に敵襲! 敵はガナードタイプ! 数は約30! 現在ブラックサムライが交戦中!」 ゲートに設置されている緊急用のコールボックスからマイクを引っつかんだ隊員が叫ぶ中、レンは白刃を手にプラーガに寄生され、その下僕とされた人間の慣れの果て《ガナード》へと突撃していく。 「はぁっ!」 振り下ろされた刃が、ガナードの喉の半ばから食い込み、そのまま胸を肋骨と寄生したプラーガごと断ち割る。 レンの左手は即座に懐からサムライソウル2を引き抜き、横手のガナードの胸に連続して弾丸を叩き込む。 しかし、そのガナードの動きが止まらないを見たレンが銃口を跳ね上げ、頭部に弾丸を叩き込む。 断末魔を上げるガナードの眼窩や耳からプラーガの足が突き出るのを見たレンは小さく舌打ち。 (胸部寄生型と頭部寄生型、見分けは困難か) 背後から銃口を向けてきたガナードに対し、レンは目前のガナードの襟を掴み、そちらへと突き飛ばす。 ガナードの放った弾丸はあっさりと盾にされたガナードの体を貫通し、身をひるがえしたレンの袖の一部を千切り飛ばす。 (ホットロード(炸薬増量薬莢)のAP(徹甲)弾! 下手な防弾は効かないか!) 「撮れ、撮るんだ! スクープだぞ!」 「リンクはまだか! 生放送で流せば視聴率20%は固いぞ!」 「帰れマスコミ! 手前の死体写真がピューリッツア賞飾りてえか!」 レンがガナードとの戦闘を繰り広げる背後で、必死にカメラを回し続けるマスコミ達を守衛の隊員達が追い散らそうとする。 「はああぁっ!」 背後の騒ぎを無視して、レンは刃を下にした刀をガナードの口から真上へと向けて突き上げ、更にそれを一気に下へと切り下げる。 股間近くまで両断されたガナードが倒れる背後で、別のガナードがサブマシンガンの銃口をレンへと向けた。 だがトリガーが引かれるよりも早く、そのガナードの眼窩と胸をそれぞれレンとは別の白刃が貫いた。 「レン兄ちゃん!」 「半分はこっちでどうにかする!」 駆けつけたムサシが双刀を引き抜き、アニーがワイルダネス・ハウルを抜いて銃を持ったガナード達の頭と胸を次々と撃ち抜いていく。 「BOWの次はガナードとはな!」 「20年前に駆逐しきれてなかったのね!」 「この場で駆逐する!」 三つの白刃が舞い、三つの銃口が硝煙と弾丸を撒き散らす。 斬撃、速射、そしてその複合に特化した三人の前にガナードは次々と倒れていき、最後の斜めに両断されたガナードから這い出したプラーガを、44口径ホローポイント弾が撃ち抜いた。 「これで最後?」 「もっとすごいのが来るのかと……」 「いや、もう来ている」 ガナードを駆逐して一安心したケンド兄妹に対して、レンは更なる緊張を持ってガナード達が乗ってきたバスを睨みつける。 「よく見ろ、一人足りないはずだ」 「一人? 誰が……」 「! 運転手!」 アニーが叫びながら素早くシリンダーを交換し、ムサシがレンの背後で双刀を構える。 マスコミ達も各々のカメラをバスへと向けた所で、純白の装束に身を包んだ人物がゆっくりとバスから降りてきた。 「もうちょっと持つと思ったんだけどね」 運転手の帽子と白手袋を投げ捨てたその人物が、微笑と共にレンを見た。 「やはりお前か、ジン」 「お久しぶり。兄さん」 射殺さんばかりの眼光で睨むレンに対し、運転手の格好から着替えたらしい《刃》のジンは微笑を絶やさない。 「でも、どうして今日だって分かったのかな? 誰にも内緒だったのに」 「お前の瘴気は見つけやすいからな………」 詳細を言わぬまま、レンは右手の備前景光を正眼に、左手のサムライソウル2を刃の背に当てて構える。 「そうかもね、今日は全員で来たから」 「全員?」 「おい、あれを見ろ!」 レポーターの一人が空を指差して叫ぶ。 ムサシとアニーがその指差した方向、ちょうど自分達の背後を見て絶句する。 「こいつは!」 「ええ!?」 ジンと対峙したまま、レンもそっと背後を見る。 そして、はるか上空から無数に落ちてくる物に気付いた。 「まさか、降下用ポッド!」 「その通り」 ジンが肯定すると同時に、ポッドの一つがSTARS本部へと突き刺さる。 空から落ちてくる無数の降下用ポッドが、次々とSTARSの建物、敷地を問わず突き刺さっていく。 「さあ、パーティーを始めようよ」 正面ゲートの間近にも幾つかのポッドが突き刺さり、白煙を上げたポッドの一つが開いていく。 そこから、全身を甲殻のような物が覆った、頭部が異様に小さなゴリラにも見えるような奇怪な生物が飛び出す。 その長く伸びた両腕には、鋭く尖った鋭利そうな爪が伸び、そこから何か液体のような物が滴っていた。 「ハンタータイプ!? いや違う!」 「知らないわ、あんなの!」 「新型か!」 「あれは《スロウター(虐殺者)》、今回用意したのでは一番の小物かな」 ポッドから飛び出したスロウターが、こちらを見ると大きく飛び上がってくる。 「こいつ!」 守衛に立っていたSTARS隊員が手にしていたH&KM―8コンパーチプルライフルのトリガーを引いた。 驚異的な跳躍力に弾丸のほとんどは標的を捕らえられないが、それでも何割かはスロウターの体を捕らえた。 だが、その全身を覆う甲殻の前に、5.56mmNATO弾はあっさりと弾かれた。 「ライフルが効かない!?」 「どけっ!」 落下しながら爪を振り降ろしてくるスロウターに、ムサシが飛び出してカウンターで甲殻の隙間に双刀を突き刺した。 これはさすがに効いたのか、双刀に串刺しになりながらもスロウターが絶叫を上げながら暴れまくる。 「この野郎!」 至近距離で、NATO弾がスロウターの顔面へとフルオートで叩き込まれる。 顔面までをも覆う甲殻に弾丸は弾かれるが、それが存在しない口腔、眼窩に突き刺さり、その頭部を完全に肉塊へと変えた所でようやく動きが止まる。 「な、なんて奴だ………」 「ムサシ!」 予想以上の難敵に、ムサシが思わず喉を鳴らした時、アニーが叫ぶ。 残ったポッドも次々と開き、そこから続々と見た事も無いBOWが出てきていた。 「くっ」 「どこに行くのかな?」 身をひるがえそうとしたレンに、ジンがいつの間に抜いたのか、レイ・ガンの銃口を突きつける。 「悪いけど、兄さんの相手はボクだよ。分かってるだろう?」 「ああ、そうだろうな」 「レン兄ちゃん!」 「サムライ!」 「行け! こいつの相手は、相手できるのはオレだけだ! そして知らせるんだ! あと三人来ていると!」 「へえ、そこまで知ってるんだ」 あまりにも危険な意味のジンの肯定に、ケンド兄妹と守衛の隊員達は顔を見合わせると、本部の方に向かって走り出した。 「じゃあ、始めようか」 「ああ」 ジンが腰の刀をゆっくりと抜き、レンは構えを崩さない。 「FBI特異事件捜査課捜査官、レン 水沢。流派は光背一刀流・改」 「アザトース・4エレメンツが一人、《刃》のジン。流派は………光背一刀流・変偽(へんぎ)とでもしておこうかな………」 両者の拮抗に、周囲のマスコミ達が一言も発せずに見守る中、二人の足が僅かに地面をすって前へと突き出される。 「いざ」 「参る」 二つの白刃が、同時に繰り出された……… |
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