BIOHAZARDnew theory
FATE OF EDGE

第二十四章「発進!STARS最終防衛兵器!」(前編)



「上から行く! 援護を!」
『OK!』
『右舷リニアレールキャノン、ジャミング弾発射!』
『イエス、マム!』

 リンドブルムへと向かって突撃するレンと、その後ろに続くギガスから一発の砲弾が放たれる。
 高速で迫る砲弾はレンを追い抜き、リンドブルムの目前で炸裂。
 内部からアルミ箔のチャフと高熱源体のフレア、更には小型のスモーク弾をまとめてばら撒く。
 無数のジャミング体の前に、リンドブルムの動きが鈍った隙にレンはリンドブルムの直上を取り、サムライソウル3をダブルタップで連射。
 複合型HMAP弾とヒドラ・エクスプローション弾が同一個所に一発ずつ、ちょうど本来の生物なら脊髄上に当たる位置に叩き込まれ、全弾を撃ち尽くしたサムライソウル3を懐へと仕舞いながらレンは全速力で上空から刀を突き出したまま、リンドブルムの首の付け根へと逆さになって突撃する。

「はああぁぁぁ!」

 バーニアをフルで吹かし、刃を深く突き刺したレンが、そのまま体を捻り、リンドブルムの背に降り立つと突き刺したままの刃の僅かに露出している峰に己の拳を当てる。

「おおおぉぉぉ!」

 そのままの低い体勢で、レンはバーニアの推力と己の脚力で突き刺したままの刃を前にリンドブルムの背を駆けながら大きく背を斬り裂いていく。

「おおおおおお!!」

 途中で大きく穿たれた弾痕を繋いでいき、傷口から拭き出す体液を全身に浴びながら、一気にリンドブルムの背を斬り裂いたレンが、そのままの勢いで宙へと踊り出す。

「フレック!」
『来てるぜ!』

 連続した全力使用でバーニアが強制冷却停止となり、突撃した威力のまま落下していくレンを、リンドブルムの下を潜ったギガスがフレックの微妙な速度調整で落下するレンを受け止める。

「どうだ!?」
『ダメ、もう再生が始まってる! そもそも脊髄も無いみたい!』
『どういう構造してるんだ!』
「じゃあ今度は下からだ!」

 トモエとアークの悲鳴と怒声のような通信を聞きつつ、レンは空になったマガジンをイジェクト、まだ余熱の残るスライドを歯で咥え、片手で新しいマガジンを叩き込むとスライドを引いて初弾を装填する。

『内部に複数のエネルギー反応! 分裂体ミサイル来ます!』
「くっ!」
『こちらで撃ち落す! その内に…』
『更に高エネルギー反応! 拡散レーザー発射態勢!』
「手の内を読まれたか………だが、この世界に存在する限り、いかな異形だろうと何らかの理を持っている。それさえ分かれば………」

 一進一退の状況の中、レンは状況打開の方法を模索しながら、サムライソウル3を向かってくる分裂体へと構えた。



「上は派手にやってるな……」
「こっちもだろ」

 上空と前方、双方から聞こえてくる砲声に、船内の緊急指揮所のクリスとバリーが呟く。

「くそっ、撃った端から再生していく……」
「せめてシェリーがいてくれれは対策が分かるかもしれんが」

 ギガント2の破壊された装甲が次々と生体装甲へと入れ替わっていく映像を見ながら、クリスとバリーは今までの経験から対策を講じようと思案する。

「もう少し火力を集中させれば……」
「弾がほとんど残ってない。補充は出来るのか?」

 そこまで言った所で、現状を示す3Dディスプレイの空中と海面に、新たな光点が現れる。

『クリス! 今着いたわ!』
「ジルか!」
『私もいるわよ!』

 大型ディスプレイにSTARSのエンブレムが付いたヘリ小隊の姿が表示され、その一つからハッチを開けてカールグスタフ無反動砲を構える元STARSメンバー、現STARS隊員養成所教官のジル・レッドフィールド(旧姓バレンタイン)が映し出され、続いて海面に水上バイクや高速艇からなる水上機動部隊を率いた元STARSメンバー、クレア・レッドフィールドの姿を確認したクリスが、素早く現状から考えられるフォーメーションを構築していく。

「ジル! ヘリ部隊は目標周囲を旋回! クレアは水上部隊を半円陣形! 動きを止めれば狙い撃ちされるぞ!」
『了解!』
「FIRE!」

 ロング・トムの21発目の155mm砲弾が炸裂し、ギガント2の状態が揺らぐ。

「攻撃開始!」
「アタック!」

 それを気に、上空を滞空していたヘリ部隊と、海上機動部隊が同時に攻撃を開始する。

「今の内に負傷者を運び出せ!」
「ロケット弾がもう無え!」
「対戦車ミサイルはどこだ!」

 空中と海上からの機動部隊のロケット弾や小型ミサイルの波状攻撃にギガント2が晒されている間に、地上部隊が体勢を立て直すべく目まぐるしく動く。

「オオオォォォ!」
「ガアアアアァァァ!」

 再編の時間を稼ぐべく、ムサシとロットが咆哮を上げつつ、国斬丸とバーニングタスクを手にギガント2の足元へと向かって突撃をかける。
 国斬丸の巨大な刃が、人間で言えばアキレス腱に当たる部分を斬り裂き、バーニングタスクがさらにそこへと突きこまれ、断面にレーザーをばら撒いて焼いていく。

「いい加減、たおれやがれぇ!」

 突撃の勢いのまま反転し、再度ムサシは足を狙おうとするが、その頭上に影が指す。

「危ねぇ!」
「ムサシ!」

 ギガント2のチェーンガンがムサシへと向けられようとするのに気付いたスミスとアニーが、カドゥケウスとカオス・メーカーをギガント2の腕へと向けて連射、狙いが反れた弾丸はムサシのライト・パワードスーツをかすめて周辺に弾痕を穿つ。

「その足、もらったぁ!」

 大上段に国斬丸を構え、大きく跳び上がりながらムサシが巨大な白刃を振り下ろそうとした時だった。
 突如として伸びた無数の触手が、ムサシの体を絡め取る。

「なんだこれ!?」
「まずい!」

 それが、ギガント2の生体筋肉の一部から生えてる事に気付いたスミスが、ムサシを絡め取った触手を焼き払おうとカドゥケウスを向けるが、更に無数の触手がこちらへと伸びてくる。

「クリス! スーツ部隊以外は退かせろ! こいつはやばそうだ!」

 無数に伸びてくる触手が、周辺にある物に無差別に絡みつき、締め上げて破壊していくのを見たスミスが通信に叫びながら、自分はむしろ前へと突撃する。
 スミスの駆るヘラクレスにも無数の触手が絡みつくが、パワーと機動性に物を言わせ、強引にそれを引き千切ってムサシの救出へと向かう。

「触手プレイは興味ねえんだよ!」
「スミス! 肩借りっぞ!」

 スミスが開けた突破口を、その背後からロットが駆るウェアウルフMk2が突進、そのままの勢いでヘラクレスの肩を借りて跳躍する。

「頭引っ込めてろムサシ!」
「ちょっ…」

 一気にムサシの元へと寄ったロットが、ウェアウルフMk2の右腕にセットされた、格闘用高周波振動ロングクローを振るってムサシのライト・パワードスーツの表面一部ごと触手を切り裂く。

「かすった! 今ちょっと中身かすった!」
「黙ってろ! 食らいやがれぇ!」

 戒めから解き放たれたムサシと一緒に落下しながら、ロットはバーニングタスクを射出。
 内蔵されたジェットエンジンで噴煙を上げつつ、バーニングタスクがギガント2の膝あたりにドリルを旋回させて深々と突き刺さり、ある一定の深さまで刺さると、自爆してその地点を大きく穿った。

『総員、あそこを狙え!』

 クリスの指示の元、無数の照準が一斉にギガント2の膝へと向けられ、すさまじいまでの集中砲火が放たれる。

『全弾撃ち尽くせ! 倒しちまえばこっちのモンだ!』

 バリーの指示が飛ぶ中、過剰とも言える攻撃が突き刺さり、とうとうギガント2の巨体が大きく傾げていく。

「行ける!」
「倒れるぞ! 退避!」

 転倒していくギガント2に、周辺にいた者達が慌てて逃げ出す。
 その中、逆に向かっていく二つの影が有った。

「アニー! スラッシャーフォーメーション!」
「OKムサシ!」

 転倒していくギガント2の、僅かに繋がっているだけの膝にアニーがカオス・メーカーの超高速弾を連射で叩き込む。

「今度こそ、その足もらったああぁぁ!」

 一度地面すれすれまで身を低くしたムサシが、刃を上へと構えて一気に跳ね上がる。
 国斬丸の背のイオンブースターが吹き上げ、イオンの煌きと共に上昇した刃が、カオス・メーカーの穿った弾痕を斬り裂き、繋いでいく。

「光背一刀流、《昇陽斬》!」

 駄目押しの攻撃で、完全に断裂したギガント2の足が血しぶきと共に離れていく。
 だが次の瞬間、双方の断面から無数の触手が伸び、互いに絡み合って引っ張ったかと思うと、千切れたはずの断面を接合していく。

「! そんなのありか!?」
「やべぇ!」

 落下中で身動きが取れないムサシに向かって、ギガント2の銃口が狙いを定める。

(間に合わない!)

 残弾を撃ち尽くしてリニアシリンダーを交換するアニーが、わずかに弾丸の発射が間に合いそうにない事を察しつつ、カオス・メーカーを向けようとした時だった。
 炎と共に弾丸を吐き出そうとするギガント2の腕に、超高速で飛来した何かが激突、その狙いをそらしてムサシを救う。

「イヤアッ!」
「え?」

 その超高速で飛来した物が、気合と共に身を翻らせ、そのままチェーンガンの脇を駆け上がると、給弾チューブに一撃を加えて破砕する。

「間に合った!」
「シェリーか!」

 ギガント2のチェーンガンを片方作動不能にした人物が、ベルセルク2をまとったシェリーだという事に気付いたスミスが、サイズの違い過ぎる相手に平然と格闘戦を挑む姿に笑みを浮かべる。

「スミス! ヘラクレスのモードをFFにシフト! パスは『CHANGE ATLUS』!」
「完成したのか!」

 スミスがヘラクレスにシェリーの教えてくれたパスコードを入力、するとヘラクレスの内部モニターに、こちらへと向かってくる巨大なカーゴジェットが映し出された。



「合体信号を確認!」
「マシンハート起動!」
「カーゴ開放!」
「リニアカタパルト、セット!……さっき生身で飛んでったバーキン博士は無事ですか?」
「多分大丈夫だと思うよ、射出!」

 カーゴジェットの牽引していたカーゴがハッチを開放し、その中に格納されていた物がリニアカタパルトで射出、同時に制御用バーニアが起動し、それは目的地へと向かっていった。



「おい、あれはなんだ!?」
「で、デカイ!」
「シェリー隊長が準備していた切り札だ! 起動まで絶対手を出させるな!」

 こちらへと向かってくる巨大な機影に、驚愕しつつも戦闘を行っていた者達は驚愕しつつも、残った火力を結集させていく。

「アリがゾウに勝てないと思わない事ね!」

 シェリーがそのままギガント2の腕を駆け上がり、拳を振り上げる。

「切ってダメなら、叩き潰すまでよ!」

 肘の位置まで来たシェリーが、ギガント2の肘関節部にベルセルク2で強化された猛烈な拳の連打を叩き込み、ラストに大ぶりのフックを叩き込む。

「次っ!」

 シェリーを潰そうと迫るもう片方の手に、シェリーは逆にこちらから向こうへと飛び移り、チェーンガンと装甲の隙間に身を滑り込ませる。

「こっちは武装させてる暇が無かったから、剥がさせてもらうわよ! ウアアアァァ!」

 下から己の背丈ほどはあるチェーンガンの連結銃身を抱えたシェリーが、全身の筋力とベルセルク2の強化筋力を併用し、強引にチェーンガンをギガント2から引き剥がしていく。

「アアアアァァァ!」

 絶叫のような咆哮と共に、チェーンガンの留め金が千切れ、接合金具が弾け飛んでいく。

「すげぇ………」
「やっぱウチの隊長人間じゃねえ………」
「……え〜と」

 プラズマランチャーで応戦していたSTARS第六小隊の隊員達が、肉弾戦でギガント2を破壊していくシェリーの姿に驚嘆と畏怖を覚える。

「危ない! 右腕!」

 エネルギーパックの搬送係をやっていたリンルゥが、僅かに動いたギガント2の腕に気付いて叫ぶ。

「撃てぇ!」

 即座に放たれたプラズマの固まりが、ギガント2の腕に直撃して動きを止める。

「危ねえ、肘潰れてやがんのに………」
「新入り、よく分かったな」
「え? そう言えば……ひょっとしてあれのパイロットって……」
「来たぞ!」

 リンルゥの疑問は、こちらへと到着した巨大な機影の前に中断する。

「そうか、合体か!」

 スミスがそれの操縦方法に気付いた時、ヘラクレスの機体が全バーニアを限界以上の出力で噴射し、その巨大な機影の喉元にあるスペースへと向かい、そこへ収納される。

『Control unit Union.Control SYSTEM Nerve connection』

 格納と同時にヘラクレスは完全に固定され、機体内部に幾つものコードが出てくると、それらがスミスの義腕や義足、さらには義眼にまで接続されていく。

『聞こえてる?』
「おうヒロか、どうなってんだこれは?」
『OSすらまだ完成してないんだ! 完成している分を君の制御系に強引に直結するしか方法が無い! 相当な負荷が…』
「昔やったぜ。なんか懐かしい感じだ……」

 己の機械仕掛けの部分に強引に接続し、流れ込んでくる情報が、初めてパワードスーツに乗った時と似ている事にスミスは逆に笑みを浮かべる。

「そういや、こいつの名前は?」
『対地球外戦闘生命体対処用防御兵器、コードネームは《ATLUS》』
「アトラスか、いい名前だ」

 壮絶な笑みを浮かべ、スミスはアトラスを起動させた。
 地面へと降り立ち、アトラスがギガント2と向きあう。
 全長はほぼ同じ、ギガント2の頑強そうな機体と比べ、やや細身で優美な外見をし、その胸部と両腕にSTARSのエンブレムと《ATLUS》のロゴが燦然と刻まれている。
 かつてアンブレラ事件でその存在が明らかとなった地球外生命体《クトゥルー》、その同型存在の再度の地球への飛来、及び敵対を危惧したシェリーがそれに対抗するために、密かに協力者を集めて計画、建造していた大型防衛兵器が、本来とは少しばかり違う目的でその雄姿を晒していた。

『持って15分、急造の機体だからそれが限度だ!』
「それだけありゃ、おつりが来る。それに、ガキの頃の夢がかなったしよ……」
『夢?』
「ああ、子供心に思ってたもんだ。いつか、地球を守るスーパーロボットのパイロットになりたいってな。かなえられるとは思ってなかったけどよ………それじゃあ行くぜぇ!」

 カーゴジェット内の管制室モニターに表示されているアトラスのパイロットモニターが、すでにスミスの脳内アドレナリン量が危険値を突破している事に智弘の頬を生温かい汗が滑る。

「興奮剤でも投与したんですか?」
「そんな機能ないはずなんだけどね…………」
「素でこれか………どこからこんなパイロット………」

 アトラス開発スタッフ達が何かものすごく不安な物を感じる中、アトラスがギガント2へと向かって拳を振り上げた。



「来るぞっ!」
『分かってる!』

 すれ違い様に、リンドブルムが全身から放つ放射レーザーに、フレックがギガスを左右へと振りながらかわしていく。

「まだこれだけのレーザーを放てるのか? どんだけのエネルギー量を保有してる………」

 ギガスの上部装甲にしがみ付き、振り落とされないようにしながらも、レンはリンドブルムのレーザーの威力が衰えない事に驚嘆する。

『ちっ、また後ろに!』
「速度も運動性も向こうが上か………」

 すでに反転してこちらへと向かってくるリンドブルムを見たレンは、今までのリンドブルムの行動パターンを脳内で整理していく。

(落ち着け、何かあるはずだ………無敵なんて物は存在しない。何か見落としている事は………)

 レンが納刀していた刀に手を伸ばそうとした所で、その手に軽い痺れが走る。

(静電気?  いやこれは帯電?)

 己の手を見たレンが、先程全身に浴びたリンドブルムの体液が微かに帯電している事に気付く。

(電気、いやイオン? あいつの動きは明らかにイオンクラフトかエーテルクラフト、だがそれだけであの機動性は…………)

 脳内に浮かんだ疑問を整理していくレンが、ふとリンドブルムの羽ばたく翼を見て一つの可能性に気付いた。

「トモエ! 相手の旋回時のイオン濃度のデータは!」
『え、待ってレン。今送るから!』

 通信機からレーザーデータポインターで送られてきたデータを網膜に投射させたレンが、それに予想通りのデータが有る事を確認する。

「翼だ! あれ自体が巨大かつ強力なイオンクラフト、あれを破損させれば、あいつの運動性は半減する!」
『でもどうやる気だ! 胴体や首ならともかく、あんな動きまくる大きな物………』
「オレがやる! あいつに追い越される時に機体を反転させてオレをあいつの上に落とせ!」
『無茶だ! 狙い撃ちされるぞ!』
「オレ一人なら大丈夫! それより来る!」
『レンの案を承認するわ! 追い抜かれる直前に機体を反転、その後離脱!』
『了解!』

 リンドブルムの口から強力なレーザーが放たれるのを横へと機体を振ってかわすと、フレックはそのまま逆噴射をかけつつ、ギガスを反転させていく。

『今だっ!』
「おおっ!」

 リンドブルムが真下に来ると同時に、レンはギガスの機体を蹴って飛び出し、同時にバーニアを全力噴射する。
 それに気付いたのか、リンドブルムの全身から拡散したレーザーが放たれ、レンは左右に移動しながらそれをかわしつつ一気にリンドブルムへと肉薄していく。
 肌が焼けそうになるほどの至近距離でかすめていくレーザーに目もくれず、レンはリンドブルムの胴体に降り立ち、その上を走りながら柄へと手を伸ばす。
 そこへリンドブルムの分裂体が襲い掛かるが、それが爆発するよりも早く、銀の閃光が走る。

「邪魔だっ!」

 一撃で両断された分裂体が背後で爆発する中、レンの手にした刀がリンドブルムの右の翼の付け根へと叩きつけられる。
 だが予想以上に弾力に飛んだ翼に、白刃はある程度めり込んだ時点で止まる。

「急所の守りは堅いか、ならば!」

 レンの体が旋回して刃を引き抜き、更に回転して全く同一個所に斬り付け、更にその傷を深くする。

「おおおおぉぉぉぉぉ!」

 回転は更にその速さを増していき、バーニアの推力も使って高速のコマと化したレンが、旋回する刃で斬り付け、引き抜く動作を高速で繰り返してチェーンソーのようにリンドブルムの翼を斬り裂いていく。
 最後の一刀で完全に切り離されたリンドブルムの片翼が宙へと舞う中、レンの回転が止まる。

「光背一刀流、《連水月(れんすいげつ)・天輪(てんりん)》」

 バランスが崩れたのか、傾いていくリンドブルムの上を、機影が横切る。

『そっちももらった!』

 機を見ていたフレックが、加速させたギガスのウイングレーザーエッジで、残ったもう片方の翼をすれ違い様に切り飛ばす。

「ついでだ!」

 目に見えて動きが遅くなっていくリンドブルムの胴体上を疾走したレンが、跳ね上がりながら刀を大上段に構え、ついでとばかりにリンドブルムの尾を斬り落としながら落下していく。

「今だフレック!」
『おお!』

 フレックが逆噴射でギガスを急減速させつつ、機体を空中でもがくリンドブルムの下へと潜り込ませる。

『グラップルアンカー射出!』
『イエス・マム!』

 キャサリンの号令と同時に、射出されたグラップルアンカーがリンドブルムへと突き刺さり、ギガスとリンドブルムを特性ワイヤーで完全に繋いだ。
 リンドブルムの胴体中央に、まるでぶらさがらるかのように位置を固定したギガスの砲口が向けられる。

『これなら絶対に外し様がないぜ!』
『両舷リニアレールキャノン、プラズマ弾発射!』
『イエス・マム! 撃ちま〜す♪』

 必死になってもがくリンドブルムに向かって46cmの高速砲弾が発射、リンドブルムに接触すると同時に近接信管が発動し、中のプラズマを反応させながら放出、まばるいばかりの光がリンドブルムの体を焼き尽くしていった。
 光が消えていくと、そこには僅かに形を止めた炭が浮かんでおり、完全に力を失って海面へと落下していった。
 アンカーを切り離しながら、ギガスはリンドブルムの残骸をかわすと、レンの着地位置へと機体を滑り込ませる。

「一丁あがりだな」
『ああ、ざっとこんな物だ』

 ギガスの搭乗口へと辿り着き、完全に限界に達したモーションバーニアユニットを切りながら、レンは海面に浮かぶ波紋を見届けると機内へと入っていった。




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