JUST THE LIMIT

序章

薄暗い部屋に一人の男が呼び出された。
その男の目は鋭く、全身からは周りを威圧するような覇気が漂っていた。

「オーディン様、お呼びですか?」

オーディン、北欧神話に出てくる最高神の名で呼ばれた二十代後半ぐらいの男が振り返ると同時に話を始めた。

「テュール、実はお前に殺してもらいたい奴がいる」

北欧神話に出てくる軍神の名で呼ばれた男は、それを聞いた瞬間目つきがさらに鋭くなった。

「誰ですか?」
「お前が我が部隊の予備員扱いにされている理由を作っている男だ」

その言葉に男の目は見開かれ、全身からは目に見えそうなぐらい鋭い殺気が放たれていた。

「もしこの件が片付けばお前は晴れて我が部隊に入ることができるだろう」

それだけ聞くと、男は部屋を出ようとドアのほうへと向かっていった。
男が部屋を出ようとしたところで後ろからオーディンが最後に一言付け加えた。

「舐めてかかるな、仮にも我が部隊に入る素質を持った奴だからな」
「…承知しました」

そう言うと男は部屋を出て行った。

「あいつなら、奴を殺せると思うが…」

オーディンと呼ばれた男の顔には僅かに不安の色があったがすぐにそれはなくなった。

「まず…ないな…覚醒にはDrシューベルトの措置が必要だし、仮に奴が生き残ってもこちらの被害はそうないからな」

自分に言い聞かせるように呟くと、オーディンは椅子に深くかけるとすぐさまデスクトップPCを立ち上げて次の仕事に取り掛かった。
この命令がその後行われる壮絶な戦いの開幕のベルになろうとは、この時知るものは誰もいなかった。






NEXT
小説トップへ
INDEX


Copyright(c) 2004 all rights reserved.