第六章・悪魔の再来


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第六章・悪魔の再来


薬局を出てすぐそいつは姿を現した。黒ずくめの切り裂き魔が・・・

「あいつがアディスにウイルスを感染させた奴です」
「な、なんてことだ。まさかここであいつに会うなんて」

三人の視線がシーバスに向けられた。

「知ってるんですか?」
「あいつはBOWという生物兵器で、コードネーム”ジャック・ザ・リッパー”」
「まんまだな」

ジャックザリッパーの右腕には、腕の代わりに大きな爪が肘から伸びていた。

「なにがなんでも俺らを切り裂きたいらしい」

アディスは静かに蛍雪を抜き放った。

「ジャックこいつを使え」

そういってP90を手渡した。

「いいのか?」

「ああ、どのみちこいつには銃が効かないし、まだこいつもある」

腰のホルスターに入っている二丁のイングラムをぽんと叩いた。

「ありがたく使わせてもらうよ」
「来たぞ!」

リッパーは爪とナイフを地面を滑らせながら突進してきた。
アディスを除く三人が同時に攻撃を仕掛けるが、ナイフと爪で叩き落しながらスピードを緩めることなく突進してきた。

「くそ!化け物め!」

その時、アディスがリッパーに向けてイングラムをばら撒いた。
リッパーはそれをなんなく叩き落した。しかし、そこで不思議なことが起きた。目の前にいるはずの人物がいないのである。

「どうやら、死にかけたおかげで体が強化されたらしい」

突然の声に振り向くとそこには刀を上段から振り下ろすアディスの姿があった。金属のぶつかる音が響き渡った。なんとそいつは突然の攻撃だったにもかかわらず刀をナイフで防いだのである。

「決まったと思ったんだがな」
「フシューーー」
「三人は周囲を警戒していてくれ、俺はこいつを片付ける」
「わかった」

その後アディスとリッパーは一旦距離を置いた後、再び切りかかった。
アディスの下段をバックステップで避けた後、リッパーがジャンプし、爪とナイフに体重を乗せて切りかかるが、アディスはそれをサイドステップで避けると今度は横なぎの一撃を浴びせた。着地の瞬間に放たれたその一撃は見事に胴に命中した。

「ヴシャーー!」

苦痛の声を上げながらもリッパーはなおも切りかかってきた。

「しぶといな」

すると、アディスは居合いの構えを取った。

「なんで鞘にしまうんだ!」
「いいんだあれで!」
「え?」

シーバスは困惑した。
リッパーもさすがに二度目という事もあってか、急に慎重になった。二人はじりじりと横に移動しながらタイミングを図った。
その時、アディスが足元に落ちていた缶を踏みバランスをかすかに崩した。しかし、このたったコンマ数秒のことでもこの勝負では致命的である。

「シャッ!」

リッパーがアディスに向かって突進し、爪とナイフで十字を書くように切りかかった。

「悪いが、俺のが早い」

次の瞬間、リッパーは神速の一撃によって、両腕を根元近くから完全に切り離された。

「ヴォーーー!」
「現代に蘇りし切裂き魔よ、地獄で罪を償うがいい」

そして、横なぎの一撃によって、リッパーの頭を切り捨てた。

「すげぇ・・・」
「あのリッパーがこうも簡単に・・・」
「行こう、長居は無用だ」
「ええ・・・行きましょう」

四人は再び走り出した。
彼らが行って数分後、リッパーの死体に子犬ほどの大きさの生物が触手を伸ばし、リッパーの体と徐々に同化していき、数秒後には完全に一体には長さが数十センチにも及ぶ爪が生え、右腕の付け根近くには、大きな目が辺りを見回していた。
そして、リッパーは歩き出した。自分を殺した者に復讐する為に。

その様子を、影で見ていたものがいた。
金髪に黒のサングラスをし、全身を黒のタクティカルスーツで身を包んでいたそいつは、静かに微笑むと、リッパーの尾行を開始した。

「邪魔だ!」

そう言うと、ジャックはP90をゾンビの大群に向けて掃射し、薙ぎ倒していったが、一向に数は減らなかった。

「何体いるんだ!まったく!」
「ネイシー!俺が援護するから今の内に弾を補充しろ!」
「ごめん!お願い!」

あと少しというところで、一向はゾンビの大群に遭遇してしまった。

「おいジャック!なんで手榴弾使わないんだ!」

アディスが武器を刀からイングラム二丁に変え、元の命中率を限りなく無視した正確さでゾンビの頭を撃ち抜きながら叫んだ。

「あ・・・その手があったか!忘れてた!」
「ジャックのバカー!」

三人にあらゆる罵声をあびせられながらジャックは手榴弾を一個取り出し、ピンを抜きゾンビの大群に向けて投げた。

「伏せろー!」

四人はその場に伏せた。
通常よりも火薬の量が多い特製手榴弾がゾンビをまとめて吹き飛ばし、あたりにはばらばらのゾンビが飛び散っていた。
爆発で死ななかったゾンビもいたが、微々たる数ほどしかいなかった。

「おい・・・やけに威力高くなかったか?」
「・・・ごめん。前余りにも暇だった時に、日曜大工感覚で手榴弾を何個か改造したんだ」

物騒極まりない言葉を無視して再び四人は歩き出した。そして、数分後には目的地であるアンブレラビルに着いた。

「後何時間残ってる?」

シーバスは時計を見て

「あと二時間だ」
「そうか・・・みんな、残弾はどれだけある?」
「俺はM4が今入ってるので最後。シグは使ってないから前と一緒」
「えーとP90のマガジンが今入ってるの入れて後一本、ベレッタはさっき使った分を引いてあと十発。手榴弾がまだ六個ある。」
「私は後、十五発」
「俺は、後一丁六十発ずつだ」
「意外と余裕だな」
「そうだな」

そして四人はビルの中へと入っていった。
しかし、電気が止まっているため四人は階段で屋上まで行かねばならなかった。

「ここ何階まであるんだ?」
「たしか十五階だったと思うが」
「なんとかなるな。よし、急ごう」
「ええ」

四人は階段を出来る限りの速さで上って行った。
五階ほど上がったところでブレインが二匹階段の踊り場を陣取っていた。

「くそ、こんな時に」
「みんなここで待っててくれ」

そういうとアディスは静かに上っていき。踊り場にいる二匹の首をほぼ同時に切り落とした。

「さっきのリッパーの時でもそうだったけど、なんであんなことできるの?」
「Tウイルスの影響で身体能力が強化されたみたいなんだ」
「なるほどね。死にそうになった甲斐はあったな」
「二度とごめんだけどね」

そして、再び階段を上り始めた。
八階まで言ったところで少しの小休止を取り、また上っていった。
その時、今まで聞いた事のない足音に、四人はその場で止まった。

「今度はなんだ?」
「わからん。しかし、三匹分の足音がする」
「シャッ!」

突然上から聞こえた声に全員が視線を上に向けると、緑色の皮膚をした爬虫類のような生物が落下しながらするどい爪で切りかかってきた。
四人は急いでその場から離れ、一階下のオフィスに逃げ込んだ。

「ハンターだ。なんであんな奴がここに」
「理由はともかく、早くしないと時間が・・・」

時計を見ると、残り一時間を切っていた。

「あいつらは集団で行動し、群れをなして襲ってくるから注意が必要だ」

突然廊下へ通じるドアが砕け散った。そして、その忠告を行動で示すかのように、三匹のハンターは連携攻撃を仕掛けてきた。

「クソ!」

シーバスがM4をハンターに向けて撃つが、ハンターは咄嗟に机等に隠れて回避すると、ネイシーに襲い掛かろうとした。

「甘いぜ!」

ジャックはいつの間にかハンター達の真横の位置に移動していた。そして、P90をすかざず掃射した。

「ピギャーーー!」

断末魔の声と共に、先頭にいたハンターが全身に弾を浴びて絶命した。
しかし、残りの二匹には致命傷を与えられなかった。しかも、逆上したハンター二匹がジャックに襲い掛かった。

「こ、この!」

あわてて引き金を引くが、すぐに弾切れを起こしてしまった。

「やべ・・・」
「ジャック!」

アディスが咄嗟に両手のイングラムをフルオートで掃射するが、一匹倒したところで弾が切れた。
その時

「なめんじゃないわよ!」

掛け声と共にネイシーはハンターに向けてグロックを連射した。
すると、そのうちの一発が、ジャックを切裂こうと爪を振り上げていたハンターの頭に命中。その直後、ハンターの頭が粉々に吹き飛んだ。

「何が起きたんだ?」

ハンターの返り血をもろに浴びたジャックが言った。

「多分、この前作った特殊弾頭の一発がたまたまネイシーのグロックに装填されてたんだと思う。」
「お前の家にそんな弾あったか?」
「危険すぎたから処分したつもりだったんだけど、一発通常弾に混ざってたのに気づかなかったんだな」
「まあいいや助かったし」

四人は再び階段を上り始め、残り三十分のところで屋上に着いた。

「あれから何にも出てこなくて助かった。」
「信号弾は?」
「俺が持ってる」

そういって、シーバスは腰から信号弾を取り出すと、空に向けて打ち上げた。
十分後、ヘリがビルの上空に到着した。

「助かった。」

四人がそう感じた時、突然奥の方の床がいきなり爆発したように砕け散り、そこからリッパーが姿を現した。

「そんな、奴は完全に倒したはずなのに!」

するとリッパーはどこから持ってきたのか、右手に持っていた鉄骨を上空で待機していたヘリめがけて投擲した。
鉄骨は見事に命中し、ヘリは急激に高度を落としていき、数十秒後地面に激突、爆発炎上した。

「そんな・・・唯一の脱出手段だったのに。」

四人は絶望した。しかし、四人の絶望はいつのまにか怒りへと変わり、その怒りはリッパーに向けられた。

「よくもヘリを落としてくれたな」

シーバスに続いてジャックが

「この代償は高くつくぜ!」
「あんたは絶対に許さない!」

さらにネイシーが続き、最後にアディスが言った。

「今度こそ、地獄に送ってやる!」

四人はそれぞれの武器を構えた。
そして、悪魔との最後の戦いが幕を開けた。






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