BIOHAZARD
TemptFate

第四章 非情なる暴帝


クリス、ジル、レオンは地下へ通じる階段を発見した。

「ここだな。よし、行こう」

三人は地下二階の培養室に向かうべく階段を一段一段慎重に降りていった。
ところが、階段は地下一階までで途切れていた。

「別のところにもう一つの階段があるのかな?」

「見て、ここに案内図がある」
「ここが今いるところだから、この先の十字路を右に行き、その先の角を左に真っ直ぐ行けば階段ですね」
「行こう」

三人が再び歩き始めた時、突然少し奥にある左右のドアからハンターが三匹づつ一斉に飛び出してきた。

「く!」

先頭のクリスがすかさずG36Cを掃射し、先頭の一匹を倒した。
ところが、ここでハンター達は二手に分かれ右の三匹はクリス達には目もくれずに階段を駆け上がっていった。
しかし、残りの二匹はクリス達に攻撃を仕掛けてきた。

「これなら!」

レオンはすかさずM16を指切短連射、サイレンサーのおかげで音は三割程度まで抑えられていた。
低く重い音が数回したのと同時に、ハンターは頭を撃ちぬかれて絶命していた。

「助かったよ」
「どういたしまして」

そこでジルは持ってきていたデジカメにハンターの写真を収めた。

「一応証拠になるしね。」
「二年前の時は酷かったな」

二年前の潜入でもここと同じ目に会い、証拠の入ったディスクはBOWとの戦闘中に紛失し、研究所は自爆装置によって吹き飛んでしまったからである。

「でも今回はしっかり証拠を手に入れたわ。」

そういってデジタルカメラを指差した。

「そうだな」

あらかた写真を撮り、持ってきていた携帯パソコンに細かいデータを入れると、そのデータを保存した。

「これでオッケー。行きましょう」

十字路まで来た時、クリスの無線機に通信が入った。

「こちらクリス、どうした?・・・本当か!今俺達は・・・」

すさまじい音と共に右手の通路の数メートル先の壁が砕け散り、中からタイラントが現れた。

「クソ!なんでタイラントまで!」
『今どこだ!』
「地下一階の・・・」

その時、通常では考えられない速度で近づいてきたタイラントは右の腕をクリスめがけて振り下ろした。

「速い!」

可能な限りのスピードで後方に下がって間一髪攻撃を避けたものの、無線を落としてしまったため、無線はタイラントの拳で粉々に粉砕された。

「この!」

タイラントめがけて三人は攻撃を加えるが、防弾コートのせいでほとんどの弾がはじかれた。頭にも数発当たったものの、タイラントは進行をやめずにどんどん距離を縮めてきていた。

「やっぱり心臓を破壊しないとだめか」
「でもあのコートをどうにかしないと」

しかし、三人の装備ではあのコートを突き破るだけの威力のある武器はない。
その時、突然タイラントが身をかがめタックルを仕掛けてきた。
あまりのスピードの速さに戸惑いながらも三人は一斉に左右に飛びのいた。
クリスとジルは通路の左側に、レオンはその反対に飛びのいた。
すると今度はハンターがクリス達側の通路の奥から二匹、レオン側の通路の奥から一匹現れた。

「こんな時に!」

全員がハンターを仕留めようと武器を構えた時、タイラントが十字路に戻ってきた。そして、レオンに向かってタックルの構えをした。

「くそ・・・そうだ!」

レオンは何を思ったのか、ハンターに向かって全力で走った。
直後、ハンターとタイラントが同時に動いた。
すぐに距離が縮まっていく。
ハンターが飛び掛ってきて爪で切りかかってきた。

「今だ!」

それを狙ってレオンはすぐそばにあったドアの中に飛び込んだ。
幸いカギはかかっていなかった。
攻撃を外したハンターはすぐに態勢を立て直して再度レオンを攻撃しようとしたが、その直後にレオンを狙っていたタイラントのタックルをもろに受けて吹き飛ばされた。
ハンターはその一撃で叫ぶ事もなく絶命した。

「あ、危なかった。あんなの食らったら一発であの世行きだ」

レオンは立ち上がって廊下の先を見た。
タイラントは勢い余ってレオンのいたところから数十メートル進んだところで停止していた。
レオンは部屋の中に何か役に立つものはないか急いで見回した。
休憩所だったらしく、部屋にはソファーが二つ向かい合って設置してあり、その間には机が置いてあった。
ソファーには頭を撃ちぬかれた警備員と思われる死体があった。自分で頭を撃ちぬいたのか、手には銃が握られていた。

「ん?内ポケットに何か入ってる」

レオンは内ポケットに入っていた手帳と箱を取り出した。レオンはまず箱の中身を確認した。

「こ、これは!」

そこにはなぜか5・56ミリ弾十発が入っていた。
不思議に思い箱の表面を見てみると、そこには黒文字で5・56ミリAP(徹甲)弾と書いてあった。

「何でこんなのをもってるんだ?」 

その時、タイラントがドアを突き破って入ってきた。
レオンは後ずさりして距離を置こうとしたがすぐに壁に突き当たってしまった。

「隙を見てこの部屋から出ないとこっちが不利だ」

タイラントは机などを踏み潰しながら近づいてきて、ある程度近づいたところで左のストレートを繰り出した。
レオンはギリギリのところでそれをかがんで避けた。
すると、左腕がめり込んで抜けなくなったのかタイラントの動きが止まった。
その隙にレオンはタイラントのすぐ左側をすり抜けて廊下に出た。
するとハンターを倒したクリスとジルが走ってきた。

「大丈夫か!」
「大丈夫、それよりこれを見て!」

レオンは先程手に入れた弾を見せた。

「そんなのどこから!」
「話は後です。これを装填する間の時間稼ぎを頼みます」
「わかった」
「まかせて!」

レオンは急いで弾の装填にかかった。M16のマガジンを抜き、通常弾を抜いて代わりにAP弾を装填していった。
直後、タイラントが部屋から出てきた。

「喰らえ!」

タイラントの進行を少しでも抑えようと攻撃をするが、一向にスピードを緩める気配がない。
あと五メートルほどの距離になった時

「二人とも下がって!」

レオンが徹甲弾を装填したM16をタイラントの心臓に向け、引き金を引いた。
セミオートで正確にタイラントの心臓付近に弾を撃ち込んでいった。
しかし、タイラントは進行を続けていき、ついにレオンの目の前に来た。それと同時にM16の弾も切れた。

「だめか」

その時、タイラントの体が前後に揺れ、そのまま仰向けに倒れて動かなくなった。

「ふう・・・助かった」

レオンはその場で尻餅をついた。

「よくやったなレオン。しかし、あの弾はどこで?」
「俺が入った部屋に自殺した警備員の死体があって、その死体の内ポケットの中に」
「なんでそんなとこに?」
「さぁ・・・あ、そういえば手帳もあったんだ」

そういってズボンのポケットに仕舞っておいた手帳を取り出し開いてみた。
最近になって書き始めたのかまだ二ページしか書いていなかった。
一ページ目はその日の出来事や愚痴などが書いてあるだけだったので、次のページに進んだ。

10月26日
今日は昨日と違って良いことがあった。ここに来る前に、知り合いのハワードに頼んでおいた弾が届いたのだ。注文どおりの出来に気分は最高だった。趣味の銃の弾集めで集めた数は覚えているだけで何十発・・・いや一種類につき十発づつ手に入れているから何百発にもなる、さすがに仕事場に持ってくるのはまずいからここにはこのカスタム弾しかない。早く家に帰ってこの弾を他のコレクションと一緒に並べて鑑賞したい。

三人は日記を読み終えると、改めてこの手帳の主に感謝した。

「この人の変わった趣味のおかげで助かったわけね」
「そうだな」

その時、最初に来た道の奥からカルロスたちが走ってきた。

「クリス無事か!」
「なんとかな」

そう言ってタイラントを指差した。

「どうやって倒したの?」
「俺が入った部屋にあった死体のポケットの中に入ってた徹甲弾で心臓を撃ち抜いたんだ」
「なんで死体にそんなもんが?」

レオンはカルロスたちにも手帳を見せた。

「変わった趣味をお持ちの方だったのね」

その時、見慣れない顔があることにクリスが気づいた。

「君は?」
「ああ、そういえば名前を言ってなかったな」
「ケンジ・ナカムラといいます」
「クリスだ」
「ジルよ、よろしく」
「レオンです」

お互いの自己紹介の後、クリスはいくつかの質問をケンジにした。

「ケンジ、この研究所にいるBOWの数はわかるか?」
「えーと、タイラントが今倒した奴一体だけで、あとはハンターが十体いる」

そこでカルロスが会話に入った。

「上にいた時三匹倒したぞ。」
「俺達は六体倒した。ということは残り一匹か・・・」
「ケンジ、培養室にあるサンプルの入った金庫は開けられるか?」
「主任しか暗証番号を知らないんだ。だから僕では開けれない」
「そうか。とにかく培養室に行ってから開け方については考えよう」
「そうだな」
「じゃあとっとと行こうぜ」

クリス達八人は培養室に向けて再び進み始めた。


−クリス達が培養室に向かって数分後−
タイラントの死体の前に一人の青年が立っていた。年齢はネイシーやジャックと同世代ぐらいの容貌をしていた。
青年はブロンドの髪をしており、全身を黒のタクティカルスーツでつつみ、両手にはP90を手にしており、両足のレッグホルスターには5・7ピストルが一丁ずつ収められていた。
彼が死体を調べている時、後ろに気配を感じ咄嗟に両手のP90を向けた。

「俺だよ」

後ろに立っていた青年はサングラスをかけており同じ黒のタクティカルスーツに身をつつんでいた。腰には日本刀が一振りぶら下げてあり、肩にはスリングでP90がかけてあった。
銃を向けていた青年は相手を確認すると銃をおろした。

「頼むから声をかけてくれ、危うく撃つとこだったぞ」
「悪かった」

二人はその場で簡単な情報交換をした後、クリス達の後を追って培養室に向かった。

この時二人は気づいていなかった。タイラントの心臓が再び脈動し始めた事に・・・






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