BIOHAZARD
TemptFate

第五章 ワクチン確保


クリス達は地下二階に降り、ナカムラの案内のもと培養室に向かった。
ゾンビの数が少ない事を疑問に思い、ケンジに心当たりはないか聞いてみたところ、研究員の約半数がワクチン完成後急に人事異動でこの研究所を去っていたのであった。
さらになぜか人事異動直後に実験用のBOWが送られてきたことがわかった。
その時、目の前のドアから突然ゾンビが出てきた。

「はぁ!」

掛け声と共にネイシーが抜刀し、ゾンビの頭を切り飛ばした。
ゾンビは数歩歩いたあと倒れて動かなくなった。

「相変わらず鮮やかだな」

クリスの言葉にネイシーは

「まだまだよ私なんて」

彼はもっと強かった・・・

その後も何度かゾンビの襲撃を受けつつも無事目的地に着いた。

「ここが培養室だ」

その部屋はほこり一つないほど清潔に保たれており、机の上にはフラスコなどの実験器具が散乱していた。
その他にも遠心分離機などが置いてあった。

「金庫はどこに?」
「培養室の奥にある。」

ケンジは培養室の奥にあるドアを指し示した。

「あの部屋に入るには研究員の指紋認証が・・・」
「どうした?」
「壊されてる」

ドアの取っ手部分にある指紋認証機が何者かによって破壊されていた。

「どうします?」
「レオン、君が中の様子を見てくれないか?」
「わかりました」
「なんでレオンなんだ?」

カルロスの問いに

「中は狭いからライフルだと咄嗟の攻撃がしづらいが、レオンのデザートイーグルなら威力もあるし咄嗟に反応しやすいからな」
「なるほどね」
「クリス、バックアップを」
「わかった」

レオンは慎重にドアを少し開け中を確認し、一気にドアを開けた。
すばやく辺りを見回すが、誰もいなかった。

「大丈夫のよう・・・」

その時、上からなにかが抜ける音がした。
レオンは咄嗟に銃を上に向けた。その先にはなぜかハンターがいた。

「な、なぜハンターが!」

ハンターは爪を振り下ろし、レオンはデザートイーグルの引き金を絞った。
レオンの50AE弾はハンターの振り下ろした腕を貫通し、肩に当たった。
しかし、同時にハンターの爪がレオンの肩を捕らえていた。

「ぐわ!」

レオンは肩を抑えてうずくまった。

「レオン!」

クリスは再びレオンに攻撃しようとしているハンターの頭にライフル弾を撃ち込んで完全に息の根を止めた。

クリスはレオンに駆け寄り、傷の具合を確認した。

「大丈夫、少しかすっただけですから」
「いや、大丈夫じゃない・・・」

ナカムラが言った。

「どういうことだ?」
「最近のBOWは感染範囲を拡大させるためになんらかのウイルスを拡散させる装置が付けられている。ハンターの場合は・・・」
「爪か!」

ジャックが言葉を引き継いで言った。

「恐らくな、早くワクチンを打たないと」
「しかし金庫の番号がわからないと」
「壊せないのか?」
「無理だ、この金庫は厚さ二十センチのチタンで出来ているから・・・」

その時ナカムラがあることを思い出した。

「そういえば主任が前に僕を含めた研究員数人にクイズを出してたな」
「それがどうかしたのか?」
「それを解くと金庫の番号が分かるらしいんだ」
「本当か!でその問題とは?」

ナカムラは必死に思い出そうとして頭を抱えた。

「レオン大丈夫か?」
「あんまり・・・だんだん体中が痒くなってきた」

レオンの容態は急激に悪化していった。

「おいナカムラ早く!」
「えーと・・・たしか日本で有名な漫画に出てくる主人公のスイス銀行の番号はって問題だった」
「わからん・・・」
「私も・・・」
「俺も・・・」
「俺もわからん・・・」
「私漫画あんま読まない」
「その主人公の職業は?」

ジャックが突然ナカムラに質問した。

「たしかヒントとして出てたなそれ。たしかスナイパーだよ」
「なら番号は56513だ」

ジャックの言った番号をナカムラがテンキーで入力すると、ロックを示す赤いランプが緑の解除に変わった。

「開いた!」

中にはワクチンの入ったアンプルが二本と無針注射器が二本置いてあった。

「急いで注射しろ!」

ナカムラは手早くワクチンを注射器にセットしレオンの腕の静脈に注射した。

程なくしてレオンの容態が安定してきた。

「レオン、大丈夫か?」

シーバスの質問に多少苦しみながらも答えた。

「ああ、なんとか・・・」
「五分ほどここで休もう」

クリスの意見に反対するものはいなかった。

「そう言えばジャック、なんで答えが分かったんだ?」
「昔俺の親父が読んでた漫画に出てたのをたまたま覚えてたんだ」
「なるほどね・・・」
「しかしワクチンの入ってる金庫の番号をクイズの答えにするか普通?」
「うちの主任変なんです・・・すごい情報通で以前は本社の地下金庫の番号がクイズの答えだった気が・・・」
「どうゆう奴だよ・・・」

ナカムラは主任の変人ぶりに改めて身震いした。
五分が経過し全員が装備を整えた。

「行こうか」
「行く前にバリーに連絡した方がよくないか?」

シーバスの意見にクリスは同意し、腰に下げていた長距離無線を取り出した。

「こちらクリス、バリー聞こえるか?」
『こちらバリー聞こえる。どうぞ』
「任務完了。すぐに来てくれ」
『わかった、十分ほどでそちらに着くから準備して待っていてくれ。どうぞ』
「分かった。では十分後に、オーバー」

通信を終えると、通信機を腰に戻した。

「ヘリは十分後にここの上空に到着する。それまでに着陸ポイントを確保するぞ!」
『了解!』

全員が行動を開始しようとした時、ネイシーが全員を引き止めた。

「待ってみんな。話したい事があるの」
「なんだよネイシー。帰ってからじゃだめなのか?」

ジャックの質問にネイシーは。

「今すぐがいい」
「なんだ?」
「いきなり質問。ハンターの動きがやけに統制されてたと思わなかった?」

その質問に全員が思案した。

「確かに言われてみれば」
「でも仮にそうだったとしてもそれがどうかしたのか?」
「BOWの完全制御が可能となっているのかも」

ネイシーの発言に全員が硬直した。

「そんなまさか・・・」
「だが従来のハンターに比べると確かに今回のハンターは戦略的な攻撃をしてきた。そう考えれば説明がつく」

全員が全員この事実に恐怖していた。

BOWの完全制御。これにより、BOWの脅威は以前の比にならないほど跳ね上がる事になる。

「とにかくここから脱出しよう」

クリスの意見に全員がうなずいた。

「そうだな」
「早く上に行ってヘリに乗って脱出しよう」
「対策はそれからだな」

それぞれ不安を抱いていたが、ここに来るまでにアンブレラから送り込まれていたBOWはすべて倒したため残っているのはゾンビだけという安心感が漂っていた。

その先にBOW以上の強敵がいるとも知らずに・・・






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