第二章 故郷で起きた事件


人と怪物の狭間で



第二章 故郷で起きた事件


「この装備はおまえのパワーをより引き出すためのもので
両足の下腿部と両腕の前腕部に装着するものだ」

機内で今回の作戦用に支給された新装備の説明を受けた、
どうやらこれはXMRT−00のために新しく設計された装備だということ、
XMRTはタイラントをも超える戦闘能力を持っているが、
パワーと防御という二点だけはタイラントよりも劣っている、
この装備はパワーをタイラントとほぼ同レベルに引き上げるという話、
これでさらなる戦力アップを見込めるがもう一つの装備の説明も受けた。
もう一つの装備は新開発された高性能炸薬を搭載した小型ロケット弾、
懐中電灯くらいしかない大きさでも破壊力はヘリに搭載する物以上に強力らしい、
一発だけしか用意できなかったそうだが見せられた後に説明が始まった、
まずは下腿部へ装着した装備のアタッチメントにセット、
数秒の時間が過ぎるとロケット弾を発射、
信管は遅延信管を使っているということだそうだ、
そしてこれは軽装甲目標を対称とした物らしい、
予想はつくがタイラントと戦闘したときの必殺武器ということだろう、
タイラントは生命の危機に瀕するとより強くなって復活する特性を持つ、
しかしバラバラにされると復活することはない、
タイラントが復活してくるところを何度も演習で見ていたのだが、
バカみたいに生命力の高いタイラント相手はいつも気分が悪かった。
「一回で死ね」と常に思っていて今回はそんな思いをしないで済むという可能性が出てくる、
そんなことを考えているとパイロットが「そろそろだぞ。」と声をかけてきた、
咄嗟に外の景色を眺めてみると見慣れた町並みが広がっていた。

「おい、ここっておれの故郷だぜ」
「なんだよそれ、まぁいいや、早く言って町のヒーローになってこいよ」

そんな会話を交わすとパイロットは高度10m程度の高さでホバリングさせ、
パネルを操作すると後部のカーゴハッチを開けた、渡された装備を両腕両足に装着し、
M4A1アサルトライフル+M203グレネードランチャーやSP2009を点検して、
全ての装備の確認が終わるとパイロットや随伴員へ向けて親指を立てる、
そしてカーゴハッチから「ジェロニモー!」と叫び声をあげつつ飛び降りた。

「ズシン」とアスファルトを砕きながら地面に着地してすぐさま走り出す。

「早く明菜のところへ行かないと」

明彦は非常に焦っていた、中島明菜、彼女は明彦の幼馴染であり、
失踪同然に町を離れる直前まで交際を続けていた女の子であった。
中学へ入って一年してから明彦は町を離れたがその後の明菜の詳細は不明だ、
もしかしたらいなくなったことを怒っているのかもしれない、
何も言わずに町を離れてしまったことを一言謝りたい、
その思いが今の明彦を動かす原動力となっている、
明菜の住んでいた家に向かって走り続けていると案の定ゾンビと出くわした。

「数は三つ、邪魔だ!」

持っている銃は使わずにゾンビの体を足場に一体づつ空中三段蹴りでゾンビの頭部を吹き飛ばす、
多少なりとも腕力や脚力が新装備の力で強化されているとはいえ、
腐敗が進んで脆くなっているゾンビの肉体はいともたやすく吹き飛ぶ、
そのせいで腐臭が漂う事態になるのだがお構いなしに明菜の家へと走った。

ヘリで移動してくる道中にて「事故発生から六時間が経過」との情報を受け取っていた。
事故発生=バイオハザードが確認されてから六時間、
それは最初の感染者が発生してから相当な時間がたっているという事実を物語っていた、
時間と共に被害の範囲は拡大する一方で犠牲者もそれだけ増え、
時間が経てば経つほど二次感染による変異体の発生数も増えて行く、
走りながらこの街でどのような変異体が発生する可能性が高いか考えた。

「ゾンビ犬や大型化した鳥類、そして昆虫の変異体か、大型の動物がいないことは幸いだな」

この街で暮らしていた頃に見た建物や山などから推測されるもの
そして改めて移動してくる最中に見た昔とは違う新しいものとを比べる、
そこから発生するであろう変異体の推測を始めた、
山にはサルやイノシシはいるのだがクマがいないことは幸いだった、
あれだけの大型獣がさらに大型化しておまけにウイルスの影響を受ける、
それにより凶暴化したものを相手にするのは少々厄介だ、
倒すにしても強力な攻撃手段を持っていなければ厳しい物になる、
変身すれば倒せるのだが生命力が高くそう簡単には倒せない、
相手にするのは面倒なためできるだけ回避したい相手でもあった。
ヒグマみたいに大型で凶暴な物がウイルスに感染したらどうなるか?
300kg台後半のヒグマが仕留められたという話を聞いたことがある、
それだけデカイものとなると体長は二メートルを超えていると想像できた、
体重もあることだからそれに付随して横幅もかなりのものだろう、
通常でそれだけのものがもしウイルスに感染したらどうなるのだろうか?
軽く想像してみたが薄ら寒い物が背中に走り始めた、
かなり恐ろしくて凶暴なものが浮かんでこともあり、
考えるのをやめてしばらく走っていたら明菜の家の前に到着したので一応は玄関の呼び鈴を鳴らした。


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