BIO HAZRD
街消えゆく時………




第三章「忍び寄る死の影」


 上からT字通路を覗き込む一行。上から見た限りではゾンビは見当たらない。見えるのは6体のゾンビの死体と思われしものだけである。

「見える範囲にはいないか。どうする、このまま降りるか?」
「いや、まず俺が行って様子を見てくる。ライアン、悪いが何かあったら上から援護してくれ」
「了解した。気をつけろよ」

ハワードが建物の外横に設置されている非常階段を降り、銃を構え警戒しながら辺りの様子を探っていく。
ライアンも何かあったらすぐにでも撃てるように銃を構えている。
T字付近にゾンビがいないか確認し、ハワードが手を上げ合図をする。ゾンビはいないようだ。
一行は念の為にライアンを見張りとして上に残して降り、全員が降りたのを見届けてからライアンも降りてくる。

「よし、急いでハワードの家に行こう」
「ちょっと待って」

ハワードの家に移動しようとするのをシェイルが止めた。

「いきなりなんだ?急がないとまた襲われるかもしれないぞ?」
「わかってる。けど、調べてみたい事があるの」
「調べてみたい事?」
「あれよ」

シェイルが指差した先にあるのは、倒れているゾンビだった。

「おい、そんなのは後にしろ。もう暗くなり
始めてるから危険が増すぞ」
「ハワードの言う通りだ。それに、時間もあまりないんだ。のんびり調べている暇はない。それはお前が1番わかっているだろう?」

ハワードとライアンが止めに入る。
空は雲っていてわかりずらいが、ハワードの言った通りすでに暗くなり始めている。ハワードの家に行き武器を調達したら、今度はエディを助ける為に医療品の調達をしなければならないのだ。完全に暗くなってしまったら、街灯があるとはいえ視界が制限されてしまい危険だ。射撃も余程訓練された者でなくては光源が乏しいので難しくなる。ハワードとライアン以外は素人だからほぼ不可能に近い。その様な状態でゾンビに奇襲でもされたら対処しきれないかもしれないのだ。
また時間にしてもそうだ。無事に医療品を調達しても、今度は明け方頃までに新聞社に戻り治療しなければエディの命が危険だ。最低でも輸血はしなければならない状態にあるのだ。

「そんなのはわかってる。でも、調べる事で何か対処法を見つけられるかもしれないわ」
「悪い案ではないな。俺は賛成だ。少しなら時間を取ってもいいとは思うが?」

リックの言葉に2人は顔を見合わせ、わずかに思案した。
確かに多少のリスクはあるものの、調べる事によって対処法が発見できればこの先かなりの危険が減ることだろう。

「いいだろう。ただし、5分しか待てないぞ」
「ありがとう。ダン、手伝ってちょうだい」
「言われなくても手伝うよ」

2人は荷物から調べるのに必要だと思われる道具を出し始めた。

「ウェン」
「何ですか先輩?」
「2人が調べている間、念のために2人の近くで見張りを頼む。」
「へっ?ハワードさんかライアンさんのほうがよくないっすか?」
「その2人はT字通路の見張りを頼むつもりだ。そうすると他に銃を持っているのはお前だけだからな、しっかりと守れよ」
「せ、責任重大っすね」

そうこうしているうちに、準備が整った2人は倒れているゾンビに近寄っていった。まずは手前にあった首なしゾンビから調べるようだ。
それを見たウェンも慌てて付いていく。

「近くで見るとかなり酷い損傷状態だね。皮膚組織の腐敗はすごいし、内臓にもだいぶダメージがいってる」
「そうね。それに、この状態で動けるって一体どうなってるのかしら?ここまで酷いとあまりの激痛でショック死するわよ。」
「そうなんだよね。痛覚が麻痺してるのかな?」
「もしくは痛みとして脳が認識してないかね」

2人はゾンビの体を近くで見て冷静に観察はしているが驚きを隠せないようだ。

「時間がないわ。私はそこの手前の3体を調べるからダンは奥の2体をお願い」
「うん、わかったよ」

2人は時間が限られていることから二手に分かれて調べるようで、シェイルは胸を打ち抜かれてる3体のゾンビに、ダンは頭部に穴が開いているゾンビと首があらぬ方向に曲がっているゾンビを調べるようだ。
ウェンはどっちに付こうか迷った挙句、結局2人の中間で見張りをすることにした。
5分後、シェイルがダンに話しかけた。

「ダン、そっちはどう?」
「最初に調べた奴よりは損傷状態は軽いけど、やっぱり皮膚組織の腐敗だけは酷いよ」
「こっちもよ。それと内部組織について気づいたことがあるんだけど」
「ああ、こっちも不思議な事を発見したよ」
「あの、とりあえず時間だから皆のところへ戻りませんか?」
「それもそうね」

ウェンの言葉を聞いて2人は立ち上がり、ウェンと一緒に残りのメンバーのところへ戻り、戻ってくると同時にリックが2人に話しかけてきた。

「何かわかったことはあるかい?」
「ええ、まだ推測の域のものもあるけどね」
「そうか。なら、行く道すがら聞くとしよう」

一行はハワードの家へ向けて移動を開始した。

「それで、わかったことは?」
「1つ目。倒れて動いていなかったからわかると思うけど、奴らは不死身じゃないわ。頭部か胸部を破壊すればいいみたいね」
「それは本当か?あまり効いてるように見えなかったが?」

その言葉に真っ先に反応したのはライアンだった。先程の襲撃で彼はゾンビの胸部に銃弾を叩き込んでいたが、あまり効果があるとは思えなかったようだ。

「胸部を狙う場合は、心臓を吹き飛ばすか必要以上にダメージを与えて停止させれば倒せるわ。ただそれだと効率が悪いから頭部、つまり脳を破壊するほうが効果が得られるわ」
「もしくは首の骨を折るか切断して信号伝達を絶つって方法もあるよ。これは噛まれたりする危険があるけどね」

ダンも対策の1つを述べた。
人間が体の各所を動かすには、脳から発せられる電気信号が神経を通って筋肉組織に伝え動かしている。この信号を伝達させるには1度首の神経を通らなければならないが、首の骨を折る事によって骨の中にある神経を損傷させ伝達させることを防ぐということだ。また脳は本人の意思とは関係なく体の様々な機能を制御しているので、脳から体への信号伝達が出来なくなると必然的に体の各所の機能が停止し死に至るというわけだ。脳を破壊することでもこれは可能だ。
また心臓は体の各所へ酸素や血液を送っているため、これも破壊したり損傷したりして機能しなくなると死に至るのだ。

「なるほど、弱点がわかったのは大きな収穫だ。頭を狙えば俺やウェンの銃でも倒せるってことだからな。他にわかったことは?」
「2つ目。ここからは推測なんだけど、見た目とは裏腹にゾンビ達の耐久力は上がってるわ。これは痛みを感じていないからだと思うの」
「確かに撃った時に痛みを感じてる素振りはなかったな。どうしてだ?」
「多分だけど、脳が痛みを認識してないか痛覚が麻痺してるかのどちらかね」
「なら、足を撃ったりして進行を遅らせるのは無理か」
「痛みを感じてないから威嚇の類は意味ないけど、破壊は有効よ」
「覚えておこう」

数分後、幸いにもゾンビと遭遇することなく最初の目的地であるハワードの家に到着した。

「うわぁ、なかなか立派な一軒家っすね。家族で住んでるんすか?」
「……中に入るぞ」
「無視っすか?!」

ハワードはウェンの問いには答えず中に入っていってしまった。残りのメンバーもそれに続いて入っていった。
ゾンビが侵入していないか不安があったが、そのような様子や雰囲気はなく、余裕が出来たのかメンバーは辺りを見回し観察した。中は広々としており、調度品に絵が飾ってあったり壺が置いてあったりとなかなか豪華だ。リビングではちょっとしたパーティが出来そうだ。そんな中ハワードは1枚の絵をずらして、裏にあったパネルを操作した。すると目の前の壁がスライドし、地下へ続く階段が出てきた。

「こっちだ」

ハワードに促されるまま進んでいき、着いたところは銃器が飾ってあった。
ハンドガンにショットガン、マシンガンやライフルまでがあり、数は少ないが1人最低1丁は行き渡りそうだ。

「どれでも好きなものを持っていけ。一応、使いやすいの選んだほうが無難だ」

そういってハワードは正面に飾ってあったライフル、M16A1を手に取りマガジンに弾を込め始めた。

「随分と物騒な物を持ってるんだな。もっとも、この状況じゃありがたい存在だがな」

そういってライアンも物色し始めた。残りもそれを見習って各々が銃を手に取っていく。
そんな中ウェンだけが銃を選ばずに何か別な物を探していたので、リックが声を掛けた。

「どうしたウェン、選ばないのか?」
「銃はもうすでに持ってるっすから、弾だけ分けてもらおうかと」
「そうか、あまり無茶はするなよ。それと1つ質問だ」
「なんすか?」
「いやな語尾に『〜す』ってよく付いてるがなんでだ?社で働いていた時は付いてなかったと思うが?」
「ああ、これは癖みたいなもんっすよ。子供の頃から何故か付いちゃうんっすよ。人前では出さないようにしてるんすけど、緊張して話し方が戻っちゃったみたいで。直した方がいいっすか?」
「いや、そのままでいいさ。なんとなく聞いただけだからさ」

そう言ってリックはまた銃を選び始め、ウェンは弾薬を探し始めた。しばらくして、全員の準備が整った。
リックは威力の高いリボルバーのルガー・Bホーク、ダンはサブマシンガンのイングラムを2丁と日本で有名なアニメの怪盗が愛用しているワルサーP38、ライアンはもとから持っていた銃と警察がよく使うショットガンのレミントンを使うことにした。シェイルはウェンと同じタイプのベレッタを使うようだ。

「皆、準備は整ったか?予備の弾薬は多めに持っていけよ。」
「OKっす」
「こっちも大丈夫です」
「あれ、ハワードさんは?」

辺りを見てもハワードの姿はなかった。恐らくは上に戻ったのだろう。

「もう上に行ったみたいだな。俺達も行こう」

上に戻ると机やソファ等で窓が塞いであった。ゾンビが入って来れないようにとの配慮だろう。
しかし、ハワードの姿が見当たらない。

「2階にいるのか?」

呼びに行こう動きだそうとしたらタイミングよくハワードがリビングに入ってきて、その姿を見た一同は驚愕した。
服は軍で着る迷彩服で手にはライフルを持ち、背にはライアンと同じタイプのショットガンを背負っている。左腰にはデザートイーグル、両太腿にはグロックを2丁身に着けている。まるで戦争に行くような格好だ。

「すごい装備だな。」
「これぐらいの装備はあったほうがいいだろう」

ライアンが半分飽きれたように呟き、ハワードは感情を込めずにそれを返した。

「念のためにトランシーバーを渡しておく。4つしかないから2人で1つと考えてくれ。有効範囲は1キロ程しかないが、範囲内にいれば必ず送受信できる」

すでにハワードが1つ身に着けているにで、ライアンとリックとダンが残りを身に着けることにした。
それから一同はこれからの事を再確認する為に地図を広げた。目指す場所は医療道具が充実している病院だが、この様な状態でまともに機能している病院はないだろう。そこで近くにある診療所を目指すことにした。ここから3キロ程離れた場所に小さいながらも緊急時に備えてあらゆるものが揃っている診療所だった。

「問題はどうやって行くかだな」
「歩いていくのはもう危険だな」

外を見るとほとんど明かりがない状態で街灯の明かりが点灯し始めていた。時間もいつの間にか18時を回っていた。
もはや、徒歩で移動するのには危険な状態だ。

「どうする?」
「あ、また屋根の上を移動するのはどうっすか?」
「いや、この辺りはもう高さがバラバラだから無理だな」
「打つ手なしか?」
「車を使うってのはどうかしら?それなら安全にかつ速やかに移動もできるし」

シェイルの出した案に反対意見は出ずに車を使って移動することとなった。幸いにもハワードが1台所有していたのでそれを使うことにしたが、問題が1つ出てきた。その車は最大で4人までしか乗れないのだ。メンバーは6人いるので、必然的に2人はここに残って待機することとなる。
話し合った結果ウェンとリックの2人が待機、他の4人で診療所に調達に行くこととなった。

「気をつけて行けよ。」
「ああ。そっちこそ留守は頼んだぞ。それと扉の鍵は掛けとけよ」
「わかった」

調達班が無事に出発したのを見届けてから扉に鍵を掛けた。

「これでなんとかなりそうだな」
「そうっすね」
「無事に調達したら、あとは社に戻って助けを待つだけだな」
「残してきた人達は大丈夫っすかね?」
「大丈夫だろ、シャッターを下ろしてきたし。とりあえず、今は体を休めておこう」

だが、彼らは気づいていなかった。仲間に忍び寄ってきている死の影に。


 同時刻 新聞社3F

「へぇ、それは大変でしたね」
「そうなんじゃよ。旅先で文無しになったときは慌てたもんじゃ」

ダグラスとシーバは調達班が無事に戻ってくるのを待ちながら他愛もない話をしていた。リッキーは少し離れた椅子に座って机に突っ伏す様に眠っている。

「そういえばお前さん、何故使い捨てカメラなんぞ持っとったんだ?」
「いやぁ、娘の学校で催し物があるっていうんでカメラを持っていこうとしたら壊れていまして。その代用品ですよ。あ、これが妻と娘です」

そういってダグラスは懐から写真を1枚取り出した。それには妻と娘と思われる女性が写っていた。

「ほぉ、綺麗な奥さんにかわいい娘さんじゃな」
「ええ、自慢できる妻と娘でした」
「でした?」

何故か過去形の言葉が出てきてシーバは疑問に思った。普通なら『でした』ではなく、『ですよ』などが出てくるはずだ。

「昨日避難命令が出てから避難所に行ったのですが、その避難所がゾンビの大群に襲われて2人とも……」
「す、すまん事を聞いてしまったな。悪かった」
「いえ、気にしてないんで」

そうは言うものの落ち込んでいるのが目に見えているので言葉に詰まってしまった。しばし沈黙が支配する。
先に言葉を出したのはシーバだった。

「そうじゃ、2階に給湯室があるみたいじゃからコーヒーでも入れてくるとしよう。ちょっと待っとれ」
「あ、それなら俺が」
「いいから座っとれ。自慢じゃないがワシが入れるコーヒーはウマイんじゃよ」

そう言ってシーバはすぐに部屋を出て行った。
2Fに着いたシーバは部屋のドアを開け、真っ暗闇の部屋に電気を点けようとスイッチに手を伸ばした。しかし騒ぎのゴタゴタでコンロに繋がっていたチューブが抜けてガスが漏れ、ガスが部屋に充満していたのだ。
だがシーバはその事に気づかずにスイッチを入れてしまった。その瞬間ガスは爆発し、シーバは一瞬でその炎に巻き込まれてしまった。

その爆発は当然3Fにも伝わってきていた。

「なっ、何だ!」

突然の出来事にダグラスは一瞬なにが起きたがわからなかったが、爆発の影響で自分の上の天井の一角が崩れてきたのを見て咄嗟にその場から離れた。
天井は崩れ、あと少し反応が遅れれば下敷きになってしまっていただろう。

「今のは爆発?下からのようだけど、シーバさんは無事なのか?」

確かめに行こうとした時、異変に気づいた。リッキーが倒れているのだ。

「おい、リッキー!大丈夫か?」

近づき揺さぶりながら声を掛けるが、反応はなかった。まさかと思い脈を測ろうとした時、もう1つの異変が起きた。

”ガサッ”

それは紙を踏む音だった。シーバが戻ってきたのと思い振り向くと、そこには重傷のはずのエディが立っていた。

「おい、あんた。動いちゃ駄目だろう、おとなしく寝ていない、と……」

元の場所に寝かせようと近づいて、すぐに異変に気がついた。エディの体は所々が腐敗し、目が白濁色に濁っていた。すでにエディはゾンビと化していたのだ。

「そ、そんな、噛まれていないんじゃ……」

その姿を見てゆっくりと後ろに下がっていく。それに反応してかエディもゆっくりと前進してくる。
と、同時にリッキーが立ち上がった。それを見たダグラスは助けてもらおうと声を掛けようとして固まった。腐敗こそしていないが、目が白濁色に濁っていたのだ。

「嘘、だろ……」

この時、ダグラスは呆然としていて目の前に迫っていたエディの存在を忘れていた。気がついた時には既に肩を掴まれていた。物凄い力で掴まれて振りほどけそうになく、その首に喰らいつかれてしまった。

「ああああああ!」

喰らいつかれた痛みでダグラスは悲鳴を上げ、そのまま倒れた。それに覆いかぶさるようにエディも倒れてきて、その勢いで顔に喰らいついた。
声にならない悲鳴を上げながらダグラスは暴れるが、上から体重を掛けられているので振りほどけない。さらにゾンビとなったリッキーまでもが、ダグラスの体に喰らいついてきた。2体ののゾンビの襲われてその体を喰われていく。最早痛みの感覚はなかったが、自分の肉が離れていく感覚だけはわかった。
噛み付き、喰い千切るという動作をダグラスは笑みを浮かべながら見ていた

(こんな事が現実にあってたまるか。そう、これは夢なんだ。頼む、早く夢から覚めてくれ!)

そう思いながら必死に祈った。次第に体からは力が抜け、意識は薄れていき闇に落ちた。

数時間後、彼が目覚めたとき目の前には銃を構えた美しい女性が立っていた。彼女は後にこの街を脱出に成功した人間だが、彼にはわかるはずもなかった。彼にとって今目の前にいるのは、自分の”食欲を満たすための単なる獲物”に過ぎないのだ。彼はその女性を喰らおうと歩を進めた。
瞬間、何かが連続して彼の体を貫き、彼の意識は再び闇の中に沈んでいった。2度と覚めることのない闇へ……



 調達班出発から2時間後、ハワード家

時計の針が20時を回った。すでに調達班が出発してから2時間が経っており、未だに連絡は入らない。さすがに心配になってきて2人は気が気じゃなかった。
もしかしたら皆やられてしまったのか、という最悪の状況を考えては頭から振り払っていた。時計の針が20時30分になった時、リックが持っているトランシーバーから声が流れてきた。

『こちらダンです!リックさん聞こえますか!?繰り返します…』

2人は顔を見合わせた。皆無事だったんだと喜び、ダンの呼びかけに答えた。

「こちらリック。よかった、皆無事のようだな。医療品は手に入ったか?」
『医療品は手に入りましたが、ライアンさんが化け物に襲われて重傷なんです!』

2人は一瞬言葉を失った。ライアンはショットガンを持っており、そう簡単にはやられないはずだ。しかもダンは”ゾンビ”ではなく”化け物”と言った。これはゾンビ以外にも得体の知れないものがまだいるということになる。ショットガンを持ったライアンが重傷を負わされる程の化け物とは一体何なのだろう?
考えを巡らしているうちにまたダンの声が流れてきた。

『もう少しでそっちに到着するので、すみませんが鍵の方を開けといてください!』
「わかった!」

急いで玄関に向かい鍵を開け、戻ってくるの扉の前で待つ。1分も経たないうちに車のエンジン音が聞こえ家の前に停車した。扉を開けると、医療品が大量に入っていると思われるボストンバックを担いだダンとシェイルが入ってきて、それに続いて全身を血で真っ赤に染めたライアンがハワードに連れられては入ってきた。
これから持ってきた道具でダンとシェイルが治療をするというが、言っている本人達の顔は暗かった。誰が見てもわかるくらいに手遅れの状態だったのだ。
それから1時間後、ライアンは苦しみながら息を引き取った……






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