BIO HAZRD
街消えゆく時………




 1998年10月1日ラクーンシティ郊外

今、1人の男がこの街を出るために走っている。しかし、走っているといっても右足を引きずりながらなので大してスピードは出ていない。
男は足を怪我していた。しかも腿の部分の筋肉がごっそりとなくなっており、そこから大量の血液が流れ落ちているという重傷だ。
普通ならすぐにでも病院に行くべきなのだが、男はそうしなかった。急ぎこの街を出なければならない理由があるのだ。
第一、この状況でまともに機能している病院があるはずがなかった。街には死が充満していて、病院とて例外ではない。
ここに生きていた生物は皆死んだ。否、正確にいえば彼らは生きている部類に入るだろう。
ただし、普通の人間ではない。生者の肉を喰らう”ゾンビ”としてである。この街のいたる所にいて生きている者を襲い、時には同族を襲いその肉を喰らっている。アンブレラが開発したウィルス兵器が街に流れ出したのが原因だ。
もはやこの街は死んでいる。いっそのこと自分も死んだらどんなに楽か……
だが、男はそうはしなかった。彼の手にはアンブレラが開発したウィルス兵器についてデータが入ったディスクを持っているのだ。
これを世に公表すればアンブレラは確実に潰れる。
この悪夢の犠牲者の為にも、これを託して死んでいった者の為にも諦める訳にはいかなかった。
男は力を振り絞り、街を脱出するべく走った……






序章


〔1998年7月24日 ラクーンシティ郊外のアークレイ山地にて最近行方不明者が多数ある為、地元警察R・P・Dが特殊部隊S.T.A.R.S.(スターズ)のブラヴォーチームを投入し事件の解決を試みる。
同日 調査に向かったブラヴォーチームの連絡が途絶えた為、同部隊のアルファチームを調査に向かわせるものの、彼らからの連絡も途絶える。
 翌日25日 特殊部隊S.T.A.R.S.の隊員5名が明け方に帰還。事件調査及び残りの隊員の安否については不明。
 8月8日 地元警察より先日の事件についての発表がある。アークレイ山地に投入した特殊部隊全12名のうち、7名が死亡。詳細については伏せたままとなる。
 同日 死亡した隊員の遺族・知人らが詳細について公表を求めるが、地元警察はそれを拒否。以後も黙秘したままとなる
 8月中旬 奇妙な事件が多発。同時に化け物を見たという証言が相次ぐ。……〕

「……はぁ、随分と物騒なことが起こってるんだなこの街は。」

1998年9月20日ラクーンシティ新聞社3F。
ため息をつきながら男、ウェン・リッヒマンは資料を机の上に置いた。つい数日前にこの街に来たばかりの彼は友人に紹介してもらった新しい職場で、ここ最近の資料を読んでいた。新聞社で働くというのは初めてなので、見習い兼雑用として働きながら合間をみて資料を読ませてもらっていた。

「しっかし、特殊部隊12名中7名が殉職か。特殊部隊っていうぐらいだから相当訓練をしているはずだよなぁ?7名も死んだってことは、かなりヤバい事件だったはず……。」
「どうした新入り、何をさっきからブツブツと独り言を言ってるんだ?」

声を掛けてきたのは、ウェンの教育係として面倒をみているリック・バーレンだった。面倒見がよく温厚な彼は、社内ではかなり頼りにされていた。

「あっ、リック先輩。7月に起こった事件について、ちょっと考え事をしていたんですよ。」
「7月?ああ、もしかしてアークレイ事件のことか?興味を持つのはいいが、あまり首を突っ込むなよ。かなりヤバい事件だったらしいし、変な噂が流れているからな。」
「変な噂、ですか?」
「ああ。詳しくはわからんが、この事件についての詳細を調べようとした記者が何人か行方不明になってるらしいんだ。」
「ゆ、行方不明……。それまた随分と物騒なことですね。」
「他にも、化け物を見たって人が結構たくさんいるみたいだしな。」
「ば、化け物ですか……。」
「まぁ、あくまでも噂だがな。一応、用心することに越したことはないぞ。」

そう言うとリックは仕事に戻っていった。


(ん〜。事件の真相が知りたいような気もするが、先輩がやめろって言うんだ。素直にやめとくか。それに化け物ってのも怖いしなぁ。)

そんなことを考えながらウェンは仕事(資料読み)に戻った。
しかし数日後、彼らは事件の真相を知る事となる。これから街に起こる恐怖とともに……






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