PART20 THREAD BURN(後編)


真・女神転生クロス

PART20 THREAD BURN(後編)




「おい弾切れみたいだぞ」
「チャンスだ、このまま押し潰せ」

 マネカタ達が銃を捨てて逃げだす姿を見たヨスガの悪魔達が、勢いづいて雷門へと殺到しはじめる。
 その様子を確認した八雲は、かすかにほくそ笑む。

「そうは上手くはいかないんだよ!」

 言うや否や、八雲は腰の後ろからコンプピストルを左手で抜き、セットしておいた信号弾を上へと発射。
 放たれた信号弾が上空へと飛んだ所で、信号スモークではなく花火が派手に炸裂する。

「なんだありゃ…」

 いきなりの事にヨスガの悪魔の動きが僅かに止まった瞬間、突然地面から鋭い刃、大剣、魔力弾が放たれる。

「がっ!?」
「ぐふっ!」
「ぎゃはっ!?」
「何かいるぞ!」

 奇襲を食らった悪魔三体が一撃で倒される中、周囲の悪魔達が何かが潜む地面を取り囲む。
 そしてそこから、三つの影が飛び出してきた。

「………」
「やっと出番か」
「うげ、すげえ数………」

 奇襲のために隠れていた穴の中から敵のど真ん中に出たサーフ、ダンテ、修二は、周りを取り囲む悪魔に向かってそれぞれ構える。

「こいつらは!」
「最近出てきた新顔、デビルハンター、そして人修羅か!」
「やっちまえ!」
「シャアアアァァ!」

 襲ってきた悪魔達に、サーフが咆哮を上げながら飛び出し、両腕の刃を縦横に振るう。
 細身ながら鋭利な刃が悪魔を次々切り刻み、飛び交う肉片をサーフはついでとばかりに食い千切る。

「さて、ショータイムだ」

 続かんとばかりにダンテが大剣リベリオンを背にマウントすると、変わりに白と黒の愛用二丁拳銃 エボリー&アイボリーを引き抜き、マシンガンもかくやと言った連射をお見舞いする。

「ぎゃっ!」
「があっ!」
「ぐひゃあ!」

 銃弾の嵐に次々と悪魔達が倒れ、それを踏み越えてくる新たな悪魔達にもダンテは素早く狙いを変えながら残弾数を無視した銃撃を叩き込んでいく。

「オレみてえなのがあんな連中と一緒にされても、な!」

 壮絶な戦いを繰り広げるサーフとダンテを横目に見つつ、修二は拳に魔力を込めて悪魔達を殴り倒していく。

「人修羅ぁ! 貴様も泥人形に味方するのか!」
「あんた等に味方するよりゃマシなんでな!『死亡遊戯!』」

 魔力で構築された光の剣を横薙ぎにし、生じた衝撃波で悪魔達を薙ぎ払った修二が、地面に手を置く。

「来い!」

 修二の手から光が溢れ、それが周囲に光のゲートを形成、そこから彼の仲魔を召喚していく。

「さあ行くよ!」
「参りましょう」
「貴方と共に!」

 召喚されたクイーンメイブ、サティ、槍を持ったケルト神話の英雄、幻魔 クー・フーリンがそれぞれ敵と相対する。

「作戦はとにかく引っ掻き回せ、って事らしい」
「……他忘れたんでしょ」
「ギクッ! ち、ちゃんと覚えてるよ? 確かキドウ防御だかで時間稼ぎして………何だっけ?」
「取り合えず後だ!」

 一番付き合いの長いクイーンメイブに修二が睨まれる中、クー・フーリンが先陣を切って槍を振るう。

「クー・フーリンの言う通りだ! どうこう言ってる暇は無い!」
「心得ました。『マハラギダイン!』」
『ドルミナー!』

 サティが火炎魔法で周囲を薙ぎ払い、クインーメイブが睡眠魔法を掛ける中、修二は押し寄せるヨスガの軍勢向けて、突撃を開始した。

『破邪の光弾!』

 修二は左手に集束された力を、光の弾丸として眠りこけた悪魔達に次々と撃ち放つ。

「ぎゃ!」
「かはっ!」
「起きろ! 怯むな!」
「怯んでほしいな〜、と思うんだけど」

 向こうが体制を立て直すのを見た修二は、威力はあるが、こちらの体力を確実に削る技の連発を止め、襲ってきた悪魔に向けて拳を繰り出す。

「あっちに比べて地味だねっ! どうにも!」
「気にする程でもございません、人修羅殿!」

 修二の隣に並んだクー・フーリンが槍で敵を薙ぎ払い、突き刺していく。

『ベノンザッパー!』
『アギダイン!』
『マハジオダイン!』

 クー・フーリンの毒を帯びた穂先が薙ぎ払われ、サティの火炎魔法とクイーンメイブの電撃魔法が炸裂し、数多の悪魔が倒れるが新たな敵が迫ってくる。

「きりがねえ!」
「しかし、ここは持ち堪えねば!」
「きゃあ!」

 悲鳴がした先を見た修二が振り向いた先で、クイーンメイブが羽交い絞めにされている姿を見る。

「喰、喰う〜!」
「なんだこいつ!?」

 口からよだれを垂れ流しながらクイーンメイブに喰らいつこうとするティターンに、修二が全力の拳を顔面へと叩き込んでやる。
 頭部が半ば陥没したティターンが倒れていきながら、その姿が白い戦闘服姿へと変わっていく。

「まさか喰奴!?」
「他にもいます! 何か酷く飢えた目をした者達が!」

 サティの言葉に、修二が押し寄せてくる悪魔達の姿の中に、稀に明らかに正気を失ったような姿が混じっているのに気付く。

「それだけじゃないようだぜ」

 いつの間にそばに来ていたのか、ダンテがリベリオンの刃に貫かれた、仮面をつけた奇怪な怪物の姿を見る。

「確かこれ、シャドウって奴じゃ!」
「さっきからたまに混じってきてやがる。オレもこの仕事長いが、こんなのは見た事が無い」
「他の世界から飛ばされたって連中が他にも大勢いるのか!?」
「マトモじゃない連中ばかりだがな!」

 崩れて消えていくシャドウをリベリオンを振るって投げ捨て、ダンテが新たな獲物に刃を振るう。

「一体どうなってんだ!」



「本当か!」
「ま、間違い有りません! ヨスガの中に喰奴やシャドウの反応が有ります!」

 風花からの報告に、ロアルドが顔色を変える。

「交戦中の連中からもそういう報告があるぜ。喰奴は倒すと白い格好した人間に変わるそうだが」

 キョウジの言葉に、ロアルドの顔色が更に変わった。

「カルマ協会の兵士だ! まさかここにまで!?」
「いえ………動きに統率性がありません。これは、暴走?」
「……そうか、恐らくこちらと同じ、異世界跳躍に巻き込まれた者達の末路、という事か」
「腹減ってついでに混じって飯にありつこうって訳か。厄介だな……」
「数はそれ程多くありません。雷門前に一番多くいるようですが、全く問題無いみたいです」
「そりゃ、あそこには一番戦力割いたからな〜、どうにかしてもらわないと困る」
「問題は撤退のタイミングだ。遅くても早くても問題になる」
「それは、まあなるようにするしかないな」
「待ってください! 何か、極めて大きい反応が!」
「ち、もう大物が来やがったか………」



「この野郎!」

 八雲の振るう雷神剣がケルト神話のカラスの姿をした戦争と愛という背反の概念を司る女神、魔獣 バイブ・カハを貫く。
 さらに刀身から生じた電撃がその両脇にいた他のバイブ・カハも絡めとり、動きが止まった所にP90アサルトマシンガンの5.7mm弾をフルオートで薙ぎ払ってやる。

『紅蓮華斬殺!』

 その隣で、啓人がミックスレイドで押し寄せる悪魔達をまとめて切り刻む。

「あまり大技を使うなよ。オレ達はあくまでここを通さなきゃいいんだ」
「それは分かってますが………」
「にしてもすげえな向こう………」

 敵のど真ん中で壮絶な乱戦を繰り広げる三人の姿に、順平は戦いながらもそちらに見とれていた。

「とくにあのダンテって人、無茶無茶つええ………ホントに人間か?」
「間違っても真似しようなんて思うなよ、素の戦闘力の桁が違う。業界トップクラスって奴だからな」

 そんな会話も知らず、ダンテが悪魔を踏み台に高々と跳躍し、真下に向けて銃を連射して次々と打ち倒し、さらに着地と同時に押し寄せてきた悪魔達をリベリオンの一閃で薙ぎ払う。

「うわ、かっこいい……」
「《スタイリッシュ・ハンター》なんて通り名も持ってたな、意味がよく分かった」

 文字通り桁違いの戦闘力に、啓人も思わず見とれた所で、襲ってきた悪魔に慌てて剣を振るう。

「だが、強過ぎるのも問題だな……」
「何で?」
「それは…」

 八雲が口を開こうとした時、突然GUMPがけたたましいアラーム音を鳴らす。

「うわ、何だ!」
「やっぱ目つけられたか……しかも、魔神級だと?」

 それが、エネミーソナーの警告音だという事に気付いた八雲が、サングラス型ディスプレイに映し出されるデータに思わず苦悶を漏らす。

「召喚士殿!」
「上か!」
「ガルルル!」

 仲魔達が睨んだ方向、虚空からいきなり巨大な雷がダンテの傍へと降り注ぐ。

「ちっ……」

 舌打ちしながらダンテが落雷を避け、落雷が地面を大きく穿つ。
 だがそこで、そこに巨大な影がある事に皆が気付いた。
 影はゆっくりと立ち上がると、片手にハンマーを持ち、屈強な筋肉で覆われた巨体を露にする。

「まさか、雷神 トール!? そんな大物がヨスガにいたのか!」

 予想外の大物、北欧神話でその名を知られた怪力と何でも砕く鉄槌を持った雷神、鬼神 トールがダンテを見据える。

「やるな、デビルハンター」
「まさかあんた程の大物に出会えるとはな」

 ダンテも恐れの無い眼でトールを見据え、無言で両者が睨み合う。

「おお、トール様!」
「トール様が来てくれたぞ!」
「やべえ、まさかあいつが来るとは………!」

 トールの姿を見たヨスガの悪魔達が色めきたち、一度闘った事がある修二は予想外の展開に焦りを感じていった。

「人修羅、異形の人魔、悪魔使い、神降ろし、そしてデビルハンター。ヨスガの世を拓くのを邪魔する者は、ヨスガの気高き強者として、この鉄槌で血祭りに上げねばならぬ。まずは貴様だデビルハンター、いざ尋常に勝負せよ!」
「来な、ショータイムだ!」

 宣言と同時に、両者が動く。
 振り下ろされた巨大な鉄槌が、横に跳んだダンテの影をかすめて凄まじい衝撃と共に地面に巨大なクレーターを穿つ。

「おわあ!」
「ここにまで!?」
「やべえ、援護を…」
「させるな!」
「トール様の邪魔はさせん!」

 離れた距離にいた雷門前の八雲達の所にまで振動が伝わり、たたらを踏みながらも援護に向かおうとした八雲にヨスガの悪魔達が一斉に襲い掛かる。

「くそ、ヒートアップしやがって!」
「だめだ、手一杯だ!」
「トリスメギストス!」『デスバウンド!』

 完全に防戦に回ってしまった八雲が、サーフと修二も同じような状況に陥っているのを見ながら、必死に打開策を思案する。

「ここは、ダンテの旦那に頑張ってもらうしかないか?」
「けど、あいつものすごく強そうですよ!」
「強そうじゃなくて強いぜ、ありゃ………けどな」

 トールの鉄槌を掻い潜り、ダンテのリベリオンがトールの腕を裂き、放たれた電撃を喰らいつつもエボニー&アイボリーがお返しとばかりに連射される。

「今の所互角だ。それに陣形が崩れた! 直に大挙して来るぞ!」

 八雲の言葉通り、トールとダンテの戦いに気取られていた悪魔達が、徐々にこちらへと向かってきていた。

「もう少し踏ん張れ! その後は尻尾巻いて逃げるぞ!」
「い、今すぐじゃダメ?」
「そうも言ってられないようだけど!」

 順平の弱気な発言は、啓人の言葉と悪魔が振り下ろされた剣を受け止める音にかき消される。

「しゃ〜ねぇなぁ、わかったぜ!」

 気を取り直した順平が大刀を構え直す。

「さて、他に大物が来なけりゃ…」

 八雲の不安は、GUMPからの再度のアラーム音で現実の物となる。

「今度は、空か!」



「アテナ!」『ヒートウェイブ!』
「やるね〜」

 シエロと編隊を組むように飛ぶアイギスが繰り出したペルソナ攻撃に、数体の悪魔達が薙ぎ払われる。

「手足ボロボロで運び込まれた時心配だったけど、これなら問題ナッシング!」
「この飛行ユニットの制御プログラムはあなたの飛行データを元に構築されています」
「え、マジ? じゃあ負けてらんないぜ!」

 シエロが更にスピードを増し、その翼で次々と敵を斬り裂いていく。

「こちらも負けねえぜ!」
「おお!」

 仲魔の中で残っていたセイテンタイセイとガルーダが手にした棍やカギ爪を振るい、皆が必死の戦いを演じていく。

「ヒュ〜頑張るねブラザー。これなら何とか!」
「! レーダーに高出力反応! アリサモード!」

 オプションでつけてもらった内臓型エネミーソナーの反応を確かめるため、アイギスは付加機能を発動。
 額のヘッドセットの右側からモノクル型ゴーグルが飛び出し、そこにアリサからもらったデビルアナライズデータが投射されていく。

「なんだあいつは?」
「構わねえ、やっちまえ!」

 前方に見えた異質な存在にシエロも気付いたが、セイテンタイセイが構わず突っ込んでいく。

『プロミネンス!』
「ぎゃはっ!」

 目前まで迫って棍を振り下ろそうとしたセイテンタイセイが、強烈な白熱の火炎魔法で吹き飛ばされる。

「エネミーサーチ! 敵、大天使級 ラファエル!」

 アイギスの指摘通り、そこには青い服をまとった天使の最高位である四大天使の一人、「癒す者」を意味し、生命の樹を護る存在とされる大天使 ラファエルが剣を手に立ちはだかっていた。

「おお、ラファエル様!」
「ラファエル様だ!」
「皆さん何をしているのです。千晶様はお怒りですよ」
「も、申し訳ありません」

 ラファエルの参戦で沸き立つ悪魔達だったが、千晶の名が出された事で緊迫が走る。

「し、しかし向こうもかなりの手練で」
「言い訳は結構です」
「がは……!」

 言い訳をし始めたアークエンジェルの胸を、ラファエルの剣が貫く。
 血反吐を吐いたアークエンジェルが、力を失って地面へと落ちていった。

「そ、そいつはあんたの仲間じゃねえのか!」
「ヨスガに必要なのは強き者。身も心も弱い者は必要ありません」
「なんだと、てめえ………」

 ラファエルの言葉に、シエロが普段の陽気さからは考えられない憤怒を沸き立たせていく。

「仲間を大事にしねえ奴が、強いなんてオレは認めねえ!」
「同感です。あなたには護りたい人がいないのですか?」
「私が守るべきはヨスガのコトワリのみ。そして貴方方はそれを阻む石ころにしか過ぎません」
「石かどうか、オレの腹の中でじっくり考えさせてやるぜ!」
「私は戦います! 護りたい人達のために!」

 シエロとアイギスが同時に飛び出しつつ左右に分かれ、ループを描きながらラファエルの左右から同時に迫る。

『獣の眼光!』

 だがラファエルが剣をかざすと、そこから走った閃光が二人の目を眩く焼きつかせる。

「くわっ!」
「これは……!」

 視界を遮られ、二人の動きが鈍った間にラファエルの姿が掻き消え、次の瞬間シエロの背後に現れる。

「やべ!」
「遅い」
「がああっ!」

 回避も間に合わず、シエロの片翼がラファエルの剣で切り裂かれる。

「まず………!」
「シエロさん!」

 体勢を崩して落下していくシエロをアイギスが追うが、その背後を更にラファエルが追いかける。

「くっ……!」
「追う必要は無い、お前も落ちろ!」
「させるか!」
「クエエェ!」

 そこになんとか追いすがったセイテンタイセイの攻撃と、ガルーダの羽ばたきが巻き起こす旋風がラファエルに襲い掛かる。

「雑魚が!『メギドラ!』」
「ギャア!」
「つ、強い!」

 背後を振り返ったラファエルが、純粋な魔力で構築されたすべてを焼き尽くす神の炎で二体を焼き尽くす。
 一撃で限界を迎えたセイテンタイセイとガルーダが存在限界を超え、その体が細かく崩れるように分解しつつもそれぞれの主の元へと戻っていく。

「間に合って! アテナ!」『ディアラハン!』

 地表間近まで落下していくシエロに、アイギスが回復魔法を掛けてやる。

「くぉ、のおおお!!」

 地表近くで巨大なループを描きつつ、シエロがなんとか空へと再度飛び上がる。

「助かったぜブラザー」
「一応、私は女性型です」
「じゃあシスターか? まあいいじゃん。問題は………」
「強いです、かなり」
「ああ」

 とうとう二人だけとなってしまったシエロとアイギスが、編隊を組みながらこちらを見ているラファエルと距離を取る。

「作戦遂行上、ここで撤退は認められません」
「当たり前だ。今ちらっと見てきたが、こっちの兄貴もあんたの仲間も必死になって戦ってた。オレらだけ退場ってのは無しだぜ」
「……私に考えがあります。ただし、この手を使えば以後の空戦が不可能となります」
「オイオイ………」

 シエロがさすがに否定しようとした時、突然今までで最大の雷鳴が轟く。

「何だぁ!?」
「あれは!」

 アイギスが視線を下に向け、地表をサーチ。そこ見つけたのは、トールのハンマーをまともに喰らって吹っ飛ぶダンテの姿だった。



「ダンテ!」
「ち………」

 砲弾のように吹っ飛び、悪魔を数体巻き添えにしてようやく止まったダンテの姿に、修二が思わず駆け寄ろうとするがそれを、他の悪魔達が押し寄せて妨害する。

「やるじゃねえか………」
「我が鉄槌の裁きからは逃れられぬ」

 口から鮮血を垂れ流しながら呟くダンテに、トールがハンマーを担ぎ上げながらゆっくりと近付き、周囲の悪魔達は無言で道を開けていく。
 だが、ふいにトールがハンマーを上へとかざし、それに何かが弾かれる。
 刃を弾かれながらも、トールの頭上を跳躍したサーフがそのまま反転しつつダンテの前に立ち、その刃をかざしてトールを威嚇する。

「人魔風情が、崇高な勝負を邪魔するか」
「…………」
「トール様の邪魔だ!」
「そのしれ者を殺せぇ!」

 周囲の悪魔達が一斉に襲い掛かるが、サーフは両腕の刃を瞬時に繰り出して左右から襲ってきた悪魔を斬り裂き、口から凄まじい吹雪を吐き出して他の悪魔達を凍りつかせていく。

「出来るな、なら貴様も」
「待てよ」

 迫るトールから己を護ろうとしていたサーフの肩を、リベリオンを杖にして立ち上がったダンテが掴んで止める。

「まだ、こっちの見せ場は終わってないぜ」
「……その負傷では無理だ。撤退しろ」
「そいつはどうかな」

 サーフを無理やりのかせ、ダンテがトールの前へと進み出る。

「ほう、ハンター風情が気骨はあるか」
「もっといい物もあるぜ。だから、来な」

 ダンテが片手を突き出し、トールを招いて挑発する。

「ならば死ね!」

 トールがハンマーに雷をまとい、ダンテへと一気に迫る。

「ダンテ!」
「……くっ!」

 修二とサーフが助けに行こうとした時だった、ダンテが片手を眼前にかざすと、その手に小さな雷光が走り、次の瞬間ダンテの全身を雷光が覆う。

「これは……!」

 雷光に覆われたダンテに向けて構わずトールがハンマーを振り下ろしたが、そのハンマーを漆黒の手が受け止める。

「ダ、ダンテ?」
「……これは」

 雷光が途切れたそこにいたのは、漆黒の翼を持ち、同じく漆黒の体を赤い燐光が覆う一人の悪魔だった。

「お、おいダンテさんか、あれ!?」
「あの人も喰奴!?」
「いや、違う………ハーフプルートだって噂は聞いてたが、ここまでとはな………」

 突然の全く予想外の事に、敵も味方も唖然としてその漆黒の悪魔を見る。
 その漆黒の悪魔は無造作にトールのハンマーを弾き飛ばすと、雷光をまとった大剣をトールへと向けて繰り出す。
 たった一撃で、今度はトールの体が先程のダンテのように吹っ飛んでいった。

「ば、馬鹿な!?」
「貴様、何者だ!」

 周囲の悪魔達が誰何しながら一斉に漆黒の悪魔に襲い掛かるが、その漆黒の悪魔の両手に握られた奇怪な二丁拳銃が凄まじい速度で電光を連射し、襲い掛かった悪魔達は瞬時にして駆逐された。

「やはり、ダンテなのか」
「ああ」

 サーフの言葉に、漆黒の悪魔の姿となった魔人ダンテが答える。

「そ、そんな奥の手隠してたのかよ!?」
「まあな」

 やや声が変わっている物の、普段通りのダンテの口調に修二がややびびりながら呟く。

「その姿、そしてその力、まさか………」

 強力な魔人の一撃を喰らいつつも、立ち上がったトールが魔人ダンテを見る。

「貴様、スパーダの力を持つ者か?」
「スパーダは、オレの父だ」

 その名に、周囲の悪魔達が一斉にどよめき始める。

「スパーダ?」
「スパーダだと?」
「魔剣士スパーダ!」
「裏切り者スパーダ!」
「スパーダの息子!」
「裏切り者の血を引く者!」

 どよめきは小波のように伝わっていき、やがてその声は怒号となって周囲に響いていく。

「な、なんだこれ………」
「ダンテさんのお父さんって、有名人?」
「……魔剣士スパーダとは、とんでもない名前が出てきたな」

 まるでこちらを忘れたかのように、悪魔達が魔人ダンテを取り囲む。
 その異様過ぎる光景に他の者達も唖然とする中、八雲は前にデビルサマナー用のデータベースにあった伝説を思いだしていた。

「今から2000年くらい前、人間界に突如として魔界と繋がる巨大なゲートが出現し、そこから魔界の王が率いる大軍勢が侵攻を開始した事があったらしい。人間達はなんとか力を合わせてそれに反抗しようとしたが、魔界の軍勢の力はすさまじく、瞬く間に追い込まれた。
救いを求めて祈りを捧げ続けた人間達に、一人の悪魔が正義に目覚め、人間達の先頭に立って戦い、そしてとうとうその悪魔と人間達は魔界の軍勢をゲートの向こうに押し戻し、ゲートの封印に成功した。
その悪魔の名が《魔剣士スパーダ》、今では完全に伝説扱いされている存在だが、息子がいたとはな……」
「すんげえ話……でもこの状況から見ると……」
「本当みたいだね……」

 こちらを完全無視して、魔人ダンテに今にも襲いかかろうとしている殺気満々の悪魔達の様子に、順平と啓人はある意味納得していた。

「殺せぇ!」
「裏切り者の子を生かしておくなぁ!」

 最早トールとの決闘すら押しのけ、ヨスガの悪魔達が一斉にダンテへと襲い掛かる。

「ふっ……」

 だが魔人ダンテは冷笑と共に、異形の大剣を横薙ぎに振るい、雷光と共に襲い掛かった悪魔達が両断されて吹き飛ぶ。

「すげえ………」
「さっきとは比べ物にならない………」

 四方八方から襲い掛かる悪魔達を、魔人ダンテは次々と斬り裂き、穿ち、吹き飛ばしていく。

「……こちらA班、フェイズ3へ移行する」
「な……」
「3って、撤退するんですか!?」

 八雲の通信が、呆然と魔人ダンテの戦いを見ていた順平と啓人をこちらに振り向かせた。

「敵が全部ダンテに集中している。撤退するなら今だ」
「けど!」
「それにな、あれに近寄ったらこっちが巻き込まれるぞ」
「おわ〜!」

 八雲の言葉を証明するように、巻き添えを逃れてきたサーフと巻き添えで吹き飛ばされた修二がこちらへと向かってきている。

「……確かに」
「けど、確か上空と同時にって話じゃ?」
『啓人さん!』

 順平が何気なく上空を指差した所で、アイギスの切羽詰った声が通信機に響いてくる。

『こちらアイギス! D班は私とシエロさん以外壊滅! 敵、大天使級 ラファエルと交戦中! 状況打開のため、空戦用オルギア発動許可を申請します!』
「ラファエルだと!? そっちにもそんな大物が来てるのか」

 八雲の声に焦りが混じる。

「でもアイギス! もしオルギアを発動して倒せなかったら!」
『空戦用オルギアは陸戦用と違い、飛行用のマグネタイトの過剰供給を主とするため、私へのダメージは軽微です! 以後飛行は不可能になりますが、現場を打開しなくてはフェイズ3へ移行できません!』
「………しかし」
「迷うな! フェイズ4に移れば問題無い! 重要なのは決断のタイミングだ!」
「シエロもいる。問題は無い」

 八雲が半ば怒声を上げ、珍しくサーフもそれに同意する。

「分かった! 許可する! でも無理したらダメだ!」
『了解しました! 空戦用オルギア《イカロス》発動!』



「《イカロス》発動!」

 発動と同時に、アイギスの背のスクランダーユニットと両足のストライカーユニットからありったけの小型ミサイルが射出される。

「その程度!」

 噴煙を上げて迫る小型ミサイルをラファエルは剣の一閃で斬り落とす。

「スクランダー、ストライカー両ユニットリミッター解除! マグネタイトタンクブロー!」

 しかしその隙にアイギスはありったけの燃料用マグネタイトをユニットに送り込み、双方のユニットから溢れ出したマグネタイトの燐光が噴き出していく。

「行きます! アテナ!」

 ペルソナを発動させると同時に、アイギスの体が軌跡のみが残る超高速で移動していく。

「これは!」
「やるじゃん♪」

 航空力学を無視した鋭角の軌跡を伴いながら、アイギスがラファエルへと襲い掛かる。

「こっちか…」
「こちらです!」

 相手の反応すら許さず、超高速のアイギスがペルソナ諸共ラファエルに体当たりし、相手の体勢が揺らぐと再度別角度から攻撃を加えていく。

「ぎ、が、ぐはっ!」

 どこから来るかも分からない超高速の連続攻撃が、ラファエルの体に次々と深手を刻み込んでいく。

「ふざけるな!『獣の眼光!』」

 あと一歩という所で、ラファエルが閃光を発する。

「うっ……」
「そこか!『プロミネ…』」
『ジオダイン!』

 閃光に照らし出され、真下から迫っていたアイギスの姿が露になる。
 そこに向けて白熱の火炎魔法を放とうとしたラファエルの腕に、電撃魔法が炸裂する。

「ぐっ!」
「こっちを忘れてもらっちゃ困るぜブラザー!」

 アイギスが攻撃をしている隙に、上空を取ったシエロが、電撃魔法を放ちながら急降下していく。

「行くぜシスター!」
「了解であります!」

 上空から迫るシエロと、真下から迫るアイギスが申し合わせたかのように突撃しながら己をキリモミ旋回させていく。

「おらあぁぁ!」
「逃さない!」
「うぎゃあああああぁぁぁ!!」

 高速でキリモミ急降下したシエロの翼がラファエルの右半身を、超高速でキリモミ上昇したアイギスのペルソナがラファエルの左半身を引き裂き、絶叫を上げながらラファエルの体が限界を迎え、崩れていく。

「おっしゃあああ!」
「こんな所じゃ負けません! ……でも後はお願いします」
「え?」

 勝ち名乗りを上げたシエロのそばで、アイギスの装着していた飛行ユニットが両方オーバーヒートを起こし、それらをパージしながらアイギスの体がゆっくりと落ちていく。

「ちょ、おい!」
「大丈夫であります。着地にはなんら問題ありません」

 片手を上げて宣誓しながらも、落下速度がぐんぐん増していく。

「現在高度確認、落下速度推定。対衝撃準備、アテナ!」『ラクカジャ!』

 落下しながらも落ち着いて防御魔法をかけるアイギスだったが、ふと真下にいたA班の面々がなんとか慌てふためきながら受け止めようとしているのが見えた。

「補助ブースター起動」

 そこで両太ももにつけていた小型ブースターを噴射させ落下速度を減衰、ちなみに真下でブースターの余波でまくれたスカートの中を凝視していた修二が仲魔のクイーンメイブとサティに張り倒される。

「補助ブースターパージ、着地体勢」

 速度が十分に落ちた所で燃料の尽きたブースターを切り離し、トンボを切りながらアイギスが見事な体勢で着地する。

「アイギス!」
「大丈夫か!?」
「大丈夫です」

 大慌てで啓人と順平が駆け寄るのに、笑顔を見せながらアイギスが立ち上がる。

「それはよかったけど……なんでメイド服?」
「メアリさんが貸してくれました。淑女の戦闘服だと聞いてます」
「え〜と……」
「無駄話は後にしとけ」

 なんと言えばいいか啓人が迷う中、八雲の声と同時に複数の雷鳴が轟く。

「フェイズ3に移行。A班D班は撤退、雷門を完全閉鎖する!」

 八雲の指示を遮るかのように、魔人ダンテとトールが繰り出す双方の攻撃が、雷光と雷鳴となって周囲に響き渡り、それに巻き込まれた悪魔達が吹き飛ばされていく。

「ダンテ! 任せるがいいか!?」

 八雲の誰何に、ダンテはこちらに背を向けたまま、無言だが片手で親指を上へと立てて見せる。

「よし、巻き添え食わん内に逃げるぞ」
「そうしよそうしよ」

 誰も反対意見を述べない中、アイギスを加えたA班が慌てて雷門の中へと入り、外門の門扉が閉ざされる。

「結界用意!」
「はい!」

 雷門内側で待ち構えていたレイホゥと祐子が、拍手を打つと結界生成のための詠唱を始める。

「そっちは無事か!」
「大丈夫だ!」
「かっこよかったよアイギス!」
「ありがとうございます、ゆかりさん」
「部隊の再編と弾丸の補充を! 急いで!」

 合流した面々が互いの無事と検討を報告しながらも次の準備に取り掛かる。
 戦いは、更なる乱戦の様相を呈し始めていた………



 糸と糸が寄り集まり、立ち向かう先には果てない戦いが続く。
 戦いの果てに待つのは、果たして………





感想、その他あればお願いします。


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