PART35 DARK GUILD


真・女神転生クロス

PART35 DARK GUILD





「ナイトメアユニットの破壊を確認」
「ほう、面白い事になったようだな………」
「面白い? 死者の国に生者が来るのがかな? それとも、こちらの邪魔が来るのがかな?」
「さてな。それに、馴染みの顔も混じっている」
「こちらもだね、どうするんだい?」
「決まっている。排除するだけだ………」



「リーダー………どうしてここに?」
「どうしてって言われても困るな。気付いたらここにいた、としか言いようが無くてね」

 呆然としている八雲に、雅宏は飄々とした口調で答える。

「それにここは一応あの世って奴らしいからな。死んだ奴がいるのは当然だろ」
「そりゃそうだ」

 二人が顔見知りらしい事を悟った真次郎が口を挟み、キョウジも頷く。

「そうだな、お互い色々聞きたい事はあるだろうけど、まず一番最初に、どうやってここに来たんだい?」
「カロンと契約した。冥界の問題を片付ける代わり、一時的にオレ達の侵入を許可しろってな」

 雅宏からの問いに、キョウジが説明しながらカロンとの契約の証のコインを見せた。

「次はこちらからだ。貴方達はどうやって集結した?」
「どうもこうも、目が覚めたらってのもおかしいが、意識がはっきりしたら荒野のど真ん中で、襲ってくる化け物と戦ってたら、似たような事してた奴同士、集まっちまっただけだ」
「簡単に言うとそうなるかな? まあ僕は目が覚める、っていうのもおかしいけど、意識がはっきりしたらこの中にいてね。あれこれ調べてて、試しに外に出たらいきなり悪魔に襲われた所をゲイリンさんに助けられて、しばらく二人でここを拠点にしてたら、ゲイリンさんが荒垣君とチドリ君を見つけてきてね」
「つまり、こっちも似たような状況なんですね………」
「パラレルワールドって奴かな? 正直信じられなかったが、どうやら信じるしかないか……最初ゲイリンさんが葛葉の人だって聞いて安心したら大正時代とか言うし、荒垣君達は特別課外活動部とか言うし、このブルージェット号はシュバルツバース探索とか出てくるし、もう頭がこんがらがりそうだったよ」
「この世もあの世も一緒か」
「こっちの方が更に色々こんがらがってるけどな」

 美鶴の問いにあちこちから意見が飛び交い、結局双方あまり変わらない状況だけが判明した。

「一つ聞きたいのだが、ブルージェット号のクルーは誰かいなかったか?」
「いや、亡骸はあったけど………」
「そうか……この船はシュバルツバース突入直後に悪魔の奇襲を食らい、壊滅状態になったからな………」
「あ、ひょっとしてデータにあった他の船の人?」
「自分はシュバルツバース調査隊、レッドスプライト号、機動班所属の只野 仁也陸曹長であります」

 自己紹介しながら敬礼する仁也に、雅宏は少し複雑な顔をする。

「レッドスプライト号、確か四隻ある中の旗艦だったね。え〜と、勝手にここ使ってたけど、大丈夫かな?」
「それは構わない。使用不可能と判断して破棄した物だ。むしろクルーを弔ってもらって感謝している」
「ついでに聞きたいんだけど、他のは?」
「……無事なのはレッドスプライト号だけだ。他の船のクルーは全滅、レッドスプライト号も多数の戦死者が出ている」
「そうか………この船の状態から予想はしていたけどね」

 思いため息を一つつくと、雅宏は話題を変えた。

「それで、わざわざこっちに来たって事は、そっちで何か起きたって事かな?」
「巨大な冥界の門が両国に開いている」
「そこから亡者と戦闘用アンドロイドが湧き出してきて、それを処理するためにオレ達が来る予定だったんだが、こちら側の敵対勢力の策にはまり、予想以上の人員で冥界に来る羽目になった」

 小次郎とアレフが答えると、何人かが苦い顔をする。

「とにかく、詳しい状況は作業をしながらにしよう。先程のユニットの解析と、ベースキャンプへの通信を確保したい」
「なるほど、そうだね。下のラボが一応使えるはずだから、使いたいならそっちへ」
「じゃあこっちは通信を。使えりゃいいんだが………」

 仁也の提案に雅宏も頷き、アンソニーがデモニカのデータを元にブルージェット号の通信システムの復旧を試みる事にする。

「八雲、解析に回ってくれ。オレは通信の方に回ってみる」
「了解、キョウジさん」
「他は使える物、武器弾薬その他を集めよう」
「食料は陰気帯びてるかもしれないから、術者のチェックが済むまで口にするな」
「武器関係だったら、少し集めといてるのがあるぜ」

 各員がそれぞれ動き出す中、ふと八雲は足を止めて雅宏の方を見た。

「リーダー、オレ………」
「瞳、いやネミッサ君は少し雰囲気変わったね。あとそちらの人は?」
「あ、葛葉所属術者、カチーヤ・音羽です。八雲さんのパートナーを勤めてます」
「葛葉? じゃあ今君は葛葉の一員なのか」
「ああ、あの後スカウトされてね。実を言うとあの事件の最後に、ネミッサも死んだはずなんだが、何でか地獄から黄泉帰ってるし」
「なんでネミッサが地獄確定!?」
「ははは、僕もこうやって死んでるはずなんだが、何でかまた悪魔とのトラブルに巻きこまれてるし、お互いさまじゃないかな? 他の皆は元気かな?」
「瞳はアメリカの大学に行ってるし、ランチはフリージャーナリストでたまに会ってる。シックスは趣味が高じて裏のガンスミスやってるし、ユーイチはそういや飛ばされる前までは一緒に仕事してたんだが、どうなったんだあいつ?」
「皆が元気なら、それで何も問題ないさ。さて、それじゃ始めようか」
「カチーヤ、ネミッサと一緒に物資の確認を頼む。リーダー、一応自壊する前のコピーが…」

 口元まで出た言葉をあえて飲み込み、八雲は雅宏と共に謎のユニットのプログラム解析へと取り組み始めた。



「こちらラテン1、現在目標までえ〜と500m。変なのがあちこちに湧いてる。どうぞ」
『あまり近付きすぎないで、吸い込まれる危険性があるから』
「ラテン1、了解」

 拡大化した冥界の門のそば、ギリギリで安全を確認できる距離でシエロが冥界の門の外縁部を旋回、偵察をしていた。

『それで、現状の状態は?』
「腐った奴か身の無い奴ばっか。そしてすげえデカくて深〜い穴。なんかオレぶるってきた………」
『とりあえずは安定してるようね。それじゃあ第二段階へ』
『了〜解♪ ピクシー1発進するよ〜』

 レイホゥの指示を受け、対悪魔用隠行・防護措置が施されたUAVが離れた場所に設けられた臨時指揮所から発進する。
 発進直後から、UAVからもたらされたデータを、観測班のクルー達が読み上げていく。

「各センサー、異常無し」「観測データ、随時レッドスプライト号へ送信中」「周辺悪魔反応複数確認、しかしピクシー1への接近は確認できず」
「今の所は順調ね」

 拡大した冥界の門の再調査及び、飲み込まれたメンバー達の安否確認のために派遣された調査班の指揮を取るレイホゥが、隠行呪だらけのUAVとそれに乗っているピクシーを軍用双眼鏡で観察していた。

「近隣、と言うには遠い場所から悪魔の反応が僅かにあります。目立った動きはしてないみたいですが」
「どこかの偵察か、ただの通りすがりか………何か妙な動きするようだったら教えて」

 周辺の安全確認を行っている風花に、アドバイザーとして来た祐子が注意を促す。

「さすがにここまで拡大すると、近付く物好きはいないようだわ」
「そうか。シエロはそのまま周囲を旋回、一定の距離を保て」
『了解ブラザー、けどあのリトルシスターだけで大丈夫なのか?』
「防護術式は張り巡らせてあるそうだ。有事に備えて、脱出装置も組み込んである。その際の回収は頼む事になる」

 調査班のサブリーダーとして来ているゲイルの支持が飛び、シエロはそのまま冥界の門から一定の距離を保って旋回を続けていく。

「ピクシー1、冥界の門上空に到達」
「機体に現状損傷無し、ただし妙なストレスがかかっている模様」
『なんかちょっと気持ち悪い………』
「それくらいは我慢して、あとで好きなだけケーキおごるから。何か下に見える」
『何も見えないよ〜? 下はものすごい深い穴が開いてるだけ』

 ピクシーはコクピットに取り付けられた小型画面に映し出される、機体各所のカメラの映像を見ながら周囲を警戒し、UAVはそのまま穴の中央部へと向かう。

「そろそろ通信システムを起動させます」
「出力はゆっくり上げろ。どんな些細な物も漏らすな」
「私のペルソナなら、手伝えるかもしれませんが………」
「何拾うか分からないから、後でね」
「出力上昇、ただノイズがかなりひどい………」
「関係ないのは無視して。亡者の怨嗟とか交じりそうだけど」
「……そう言えば何か変なのが聞こえるような」
「MK型治療器は用意してあるぞ」
「待った! 微弱だが、通信波をキャッチ! 増幅します!」
「こちらからも送信、状況を確認」
「今なんとか………」
『こち………界ベース……応答せよ。こちら冥界ベースキャンプ、応答せよ』
「こちら冥界の門観測班、そちらからの通信を確認、現状を報告されたし」

 通信機にデモニカ姿のクルーが映し出され、歓喜の声が周囲から洩れる。

『現状を報告、門拡大に飲み込まれたメンバーは二名行方不明、他は一名除き全員生存』
「一名って?」
『オレは元から生きてない、数えなくていい』

 レイホゥの問いに、代わりに通信ウインドゥに出たキョウジ(故)が答える。

「あらキョウジ、その姿は随分久しぶりね」
『落ちた衝撃で前の体がダメになったからな。代わりが一つくらい出来るかと思っていたんだが』
「……どういう意味です?」
「考えない方いいわよ」

 理解出来ない、というかしたくないキョウジの話に、通信班クルーがそっとレイホゥに聞くが、レイホゥは苦笑いしてはぐらかす。

「じゃあリーダー達は無事なんですね!?」
『今ここにはいないが、さっきまでは問題ない』

 風花が半ば割り込むように通信機に向かって叫び、キョウジからの返答に安堵したのか思わずへたり込む。

「よかった、皆無事なんだ………」
「他の行方不明者は?」
『ダンテ氏とライドウ氏が不明、ただしこちらで接触したカロンという悪魔からの情報では、一時的な物との情報があり』
「カロンが言うなら大丈夫そうね。それで、他の人達は?」
『カロンと契約し、冥界に向かわせた。ただ冥界との境界とされる川を越えた時点で、通信が不安定。シグナルは届いているから、大丈夫だとは思われるが、詳しい事は不明』
『通信繋がったって? あらゲイル』
「アルジラか、お前は残ったのか?」
『喰奴が冥界とかいうエリアに入ると危険かもしれないって言われてね。こっちは散発的な襲撃が数回あっただけで、問題無いわよ』
「襲撃? アレの?」
『いいえ、亡者だかいうのが少し。メティスはこっち着てから見て無いわ』
『カロンも現状は把握しきれてないが、何らかの組織勢力が冥界に居るのは確からしい』

 向こうからの報告に、観測班は顔を見合わせる。

「てっきり、あのゴスロリロボがあの世に溢れてるかと思ってたが………」
「さすがにそれはないでしょ。ただ、作って動かしてる連中がいるのは確かね」
「何者なんでしょうか?」
「検討もつかないわね………」
「あれだけの戦闘機械体を送り込んでくるとなると、かなりの組織と見るべきだ」
『詳しい事は、向こうに言った連中の報告待ちだ』

 キョウジ(故)の一言で、取り合えず討議が中断する。

「それで、帰還の方法は?」
『事が済めばカロンが戻してくれる事になっている。そもそもここは生者のいる場所じゃねえからな』
「………キョウジ、あんたは大丈夫なの?」
『まだ向こう岸に行く気は無いからな』
「状況は理解した、このまま通信態勢を維持。一時間事に定時連絡を」
『了解、まあ今ベースキャンプに残ってるのはほとんどデモニカが損傷したか、負傷者ばかりで他にどうしようもない』
『何か起きたら連絡する』

 とりあえずの無事を確認し、皆が胸を撫で下ろす。

「克哉さんに連絡ね、一応全員無事だって」
「問題は、彼らの帰還までこちらで大規模な問題が起きないかという事か」
「こっちはこっちでどうにかするしかないわね………」



「全員生存、そのまま冥界に向かったか………」
「ひとまずは安心していいのか? あの世に向かったというのは聞いて安心できるとは思えんが」

 届いたばかりの情報に、克哉は一息ついたが、たまたまその場にいたロアルドは顔をしかめる。

「生きたまま冥界に行けるよう、カロンという悪魔と契約を交わしたらしい。向こうもかなり大変な事態になっているらしいが」
「それはこっちもだ」

 そう言うと、ロアルドは克哉のデスクにあるレポート、冥界の門拡大直後から数を増やしつつある威力偵察らしき敵襲の報告を指差す。

「下では、こちらの戦力が半減したという情報がすでに広まっている。シジマに限らず、ヨスガやムスビの動きも活発化している。未確認だが、何らかの勢力と接触や交戦したらしいとの噂もあるな」
「情報収集の人員を増やしたい所だが、この街の警備も固めなくてはならない。市民にも少しずつ前回のミッション失敗の噂が広まりつつある。これはここでかなりマズイ………」
「悪い噂ほど早く広まるからな。生存の噂でも流せればいいのだが………」
「噂のコントロールは難しい。下手をすれば逆効果や更なる混乱の元になる」
「厄介な事だな………」
「冥界での作戦が早期に解決して、無事に帰還してくれる事を祈るしかないか。街の警備体制を一考するべきだろうか?」
「そうは言ってもな。これ以上割り振れる人員もいない。どうにか割り振りするしかないだろう。さすがにこれをここでやりたくないしな」

 ロアルドが己のアートマをさすり、克哉も顔をひどくしかめる。

「ヴィクトル氏とレッドスプライト号の技術をあわせれば、悪魔化ウイルスの再現も可能かもしれないが、確かにそれは最後の手段だ。獅子身中の虫どころでなくなる」
「やれやれ………あの戦闘アンドロイド、何体かこっちに回してほしい物だ」
「量産とは愚かな事だ、とヴィクトル氏は言ってたが………」

 山積する諸問題に、二人はどうにか対処をするべく、頭を巡らせ始めた。



「ヤイル・カメ〜ン!」『ヤイル・カメ〜ン』

 蓮華台、本丸公園で開かれている仮面党定例集会に、多くの党員が集っていた。

(……また増えたな)

 彼らを束ねる杏奈が、党員の中にマネカタやデモニカ姿の者が最近混じってきた事に、党員に見えないように嘆息する。

「本日はみんなに嬉しい知らせがある。先程の作戦に参加した折、消息不明になっていた同志イシュキックと、同じく作戦に参加していた者達の生存が確認された!」

 杏奈の報告に、党員達から歓喜のどよめきが起こる。

「同志イシュキックは、外界で起きた混乱を終息のため、更なる危険へと立ち向かっている。我らのなすべき事は、同志達が帰還するまで、この街を守り抜く事にある!」
『ヤイル・カメ〜ン!』『ヤイル・カメ〜ン!』

 杏奈の宣言に、党員達が一斉に手を挙げ、掛け声を上げていく。

「だが注意せよ。敵は色々な手段で我らに妨害や攻撃を仕掛けてきている! 連絡を密とし、危険と判断したならば、決して無理をしてはならない! 戦っているのは我らのみではない事を忘れるな!」
『ヤイル・カメ〜ン!』

 杏奈の鼓舞に、党員達が一斉に返礼をする。

(………あかり、早く帰ってきてくれないかな)

 実質的幹部は自分一人なのに対し、世情を反映してか更なる拡大をしていく仮面党に杏奈は心中密かに疲労しつつ、それを見せないまま集会は解散していく。

「ご苦労だったな」「お疲れ〜」
「周防、シルバーマンも来てたのか。怪我はもういいのか?」
「うん、もうすっかり。あのレッドスプライト号の医療室、すごいハイテクでさ」

 何時から来ていたのか、同窓生の二人の姿に杏奈は安堵の顔を見せる。

「なんか、人数増えてない?」
「勧誘してる訳でもないんだけど、最近入信希望者が相次いでね」
「あまりいい兆候じゃない。かつての仮面党事件の時と似ている」
「言わないで周防、自覚はしてる。せめてあかりが戻ってきてくれたら、もうちょっと事態は変わるかもしれないけど」
「変な新入り増えるだけじゃない? あの子そういう雰囲気だし」

 リサの言葉に、杏奈は少し前に党員から提出された『イシュキック様親衛隊設立案』―提出してきた党員達の目が何か危なかったので適当な理由を付けて握りつぶした―を思い出し顔を曇らせる。

「いっそ、二人で入らない? 幹部待遇で」
「やめておく」「さすがにまずいよ、そんなに困ってるの?」

 かつての敵にすら声を掛ける状態に、達哉とリサは顔を見合わせる。
 そこで達哉の懐で携帯電話が着信音を響かせた。

「はい達哉………了解、すぐに向かう。リサ、青葉区方面に中規模な敵襲、念のため増援に来て欲しいそうだ」
「OK情人、じゃあまたね♪」
「ああ」

 即座にバイク二人乗りで青葉区へと向かっていく二人を、杏奈は軽く手を上げて見送る。
 だがそれと入れ違いに、こちらへと駆け寄ってくる仮面党員の姿を見て杏奈の目が鋭くなる。

「レイディ・スコルピオン様! 七組が平坂区で挙動不審な人物を発見、スパイの可能性ありとの報告が!」
「私か他に対処できる者が向かうまで不用意に接触するなと連絡。喰奴だったりしたら最悪だ」
「了解しました!」

 仮面党員からの報告に指示を出しながら、杏奈は先程の二人と反対側へと向かう。

(世界の破滅を傍観したいと願ったはずが、破滅から護る側になってるわね………ホントにあかり早く帰ってこないかな………)

 用意された車に乗り込みながら、杏奈はかつて望んでいたのとは間逆の現状に、内心嘆息しながらも、大急ぎで現場へと向かっていった。



「ガアアァ!」

 咆哮と共に突き出された爪が、とっさにかざされたアークエンジェルの盾ごとその体を貫く。

「がはっ……」

 吐血、絶命したアークエンジェルを無造作に投げ捨て、喰奴の姿から人間へとヒートは戻っていく。

「こいつで最後だな」
「ええ、もうこれは偵察ってレベルじゃないわね」

 その背後で雷神剣を振るって鞘へと収めたたまきが、周辺の状況を確かめる。
 シバルバーの外縁部に当たる場所には無数の破壊痕や攻撃魔法の跡、多数の薬莢や血痕が散らばっていた。

「食いきれねえぜ、こんなしょっちゅうじゃあよ」
「無理に食べる必要ないでしょ。お腹壊すわ」
「シエロじゃねえんだから。そんな馬鹿はしねえさ」

 衣服についた返り血を拭いもせず、ヒートは鼻を鳴らす。

「たまきさん」
「ちょっとこっち来て!」

 迎撃に参加していた達哉とリサが、襲ってきた悪魔から何かを見つけて叫ぶ。

「これ見てこれ!」
「これって、通信機!?」

 どこから用意したのか、軍用にも使われる高出力通信機を倒した悪魔が所持していた事にたまきも驚く。

「ちっ、やられたな。こいつら死兵だ。構成から見て、ヨスガだな」
「ああ、道理で『お前ら生きてたのか!』なんて言ってきた訳だ………」

 舌打ちしながらタバコに火をつけるパオフゥに、うららが戦闘中に悪魔に言われた事を思い出す。

「これでアサクサでオレらがばっくれた事はヨスガにバレた訳だ」
「まあ時間の問題だったんじゃない?」
「ムスビにシジマ、ヨスガと下の三大勢力はほぼ全部一度は襲撃かけてきてるし。問題はそこじゃなくて、ここは正真正銘、彼らにとって宝の山だって事ね」
「占拠は出来なくても、ここの連中を露骨にさらおうとしてやがるしな」
「今の所それは防いじゃいるが、マガツヒってのを絞られると、人格変わっちまうくらいきついらしいな」
「ヨスガとムスビのリーダーもそれが原因でおかしくなったって英草君言ってたしね〜」

 それを聞いていたデモニカ姿の機動班メンバー達が、何かを思い出したのか肩を竦めて僅かに体を振るわせる。

「死なないのがマシか、死んだ方がマシか………」
「悪魔の拷問なんて考えたくもないな………」
「実際ひどい物です。ボクらも絞られてましたから」

 後片付けの手伝いに来たマネカタ達の言葉に、全員が顔をしかめる。

「けどこのままじゃ、モグラ叩きにも限度があるわよ。キョウジさん達、無事なら人手半分でいいから戻してくれないかしら?」
「あの世なんて早々簡単に戻れる物じゃねえんじゃねえか? 知りたくはねえけどな」
「そうでもないぜ、意外とな」

 たまきとパオフゥのぼやきに、ヒートが含みの有る笑みで答える。

「そういや、エンブリオンのメンバーって前世の記憶あるんだっけ」
「少し違うらしいがな。詳しい事はセラに聞け」
「そう言えばセラちゃん、最近ヴィクトル博士とゾイ先生の両方に見てもらってるらしいわね」
「体調があまりよくないから、無理させるなってゾイ先生は言ってた」
「あいつがいねえと、喰奴連中暴走したら抑えるの事なんだがよ………」
「待て」

 後片付けを任せて撤収しようとした矢先、突然ヒートが回収された通信機を引っ手繰る。

「ちょ、何を…」

 リサが文句を言う間も無く、ヒートは通信機を地面へと叩きつけた。

「激氣! 何すんの!」
「どうやら、力だけの連中じゃなかったみてえだ」
「………そういう事かよ」

 散らばった部品を見たヒートとパオフゥがその中に有った物を見て再度舌打ちしつつ、ある部品を摘み上げる。

「何それ?」
「盗聴器だ。どうやらこいつが回収されるのも予想の範疇だったみてえだぜ」
「それって、今の話聞かれてた!?」
「だろうな」
「やば!」

 思わずリサやうららが口を塞ぐが、すでに遅く、パオフゥは電源が入ってない事を確かめて盗聴器を回収する。

「前も似たような事があったな。またカルマ協会か?」
「さあな。オレも動いてないのにノイズが聞こえたから気付いただけだ」
「よく聞こえたわね………それも喰奴の能力かしら?」
「兄さんに報告する。他に似たような事が起きているかもしれない」
「とんだ情報戦ね、まったく………夢崎区の方はどうなったかしら?」



「アメン・ラー!」『集雷撃!』
「ギャア!」

 電撃魔法をまともに食らい、スリランカの伝承に伝えられる、鷲の姿をした魔物―飛天族 グルルが地面へと叩き落される。

「大人しくしろ!」
「ここは完全に包囲されている! 逃げ場などない!」
「く………」

 杏奈を先頭にした仮面党と、元エミルン学園OBペルソナ使い達に囲まれ、グルルが喰奴から人へと戻っていく。

「喰奴はこれだから厄介だぜ………」
「変身してねえと、エネミーソナーかペルソナ感応じゃないと見分けつかねえしな」

 市民に溶け込むように私服姿の喰奴を拘束しようと、用心しながらマークとブラウンの二人が近付こうとした時、喰奴が懐へと手を入れる。

「待て…」

 それに気付いた南条が制止しようとするが、直後閃光が炸裂した。

「くわあ!?」「ちぃっ!」

 近付いていた二人が思わず声を漏らし、周囲にいた者達も突然の事に思わず目を塞ぐ。

「いかん、逃げる!」「しまった!」

 南条と杏奈が叫ぶ中、閃光に紛れて喰奴が逃げ出そうとする。
 そこへ、突然投網が投じられ、包囲を飛び越えようとした喰奴を見事に絡め取った。

「おら、大人しくすんだよ!」
「用意しててよかった〜」
「お見事ですわ、Yukino」

 葛葉で用意してもらった、注連縄で編まれた投網で喰奴を捕縛したゆきのに、麻希とエリーが手を叩いて喜ぶ。

「がああ、ちくしょう! 放せ!」
「誰が放すもんか!」
「自爆の可能性もある! 気をつけろ!」
「任せて!」
「ようし、警察署直行〜」
「実刑くらうど? ってな。ぎゃははは!」

 投網の上から更に電磁波遮断用のアルミシートを被せ、まだもがいている喰奴が連行されていく。

「もう少しパトロールの感覚を縮めた方がいいかな?」
「かもしれんな………今エネミーソナーだけでも汎用化できないかテスト中とも聞いている」
「スパイが紛れ込むなんて、今まで無かったから……」

 尚也と南条と杏奈が三人とも顎に手を当てて考え込む。

「考えすぎは逆効果よ。もうちょっとリラックスしないと」
「それもそうだね」
「一応周辺の捜索はした方がいいな」
「仮面党員は予定シフトで警戒続行。無理な戦闘は控えるように」
「ヤイル・カメ〜ン!」

 麻希の助言に、三人は悩むのを止めてそれぞれ後始末に取り掛かる。

「オレ達のペルソナだと、そんな遠距離まで分からないからな………風花ちゃんなら分かると思うが………」
「下からまだ戻ってきてないし、そもそも二人だけ残された事かなり気にしてたから、そのまま下に残るかも」
「むう、戦力不足とは言わんが、人手不足になりつつあるのは確かか」
「トップクラスの人達が軒並み落っこちたからね………」
「先生の所にも、セラピー受けに来る人が行列作ってるわ………仮面党や調査隊の人達も大分混じってるみたい。この間、城戸君も来てたし」
「レイジが? 意外と言えば意外……」
「奥さんに自警団で無理してるんじゃないかって言われて、どうすればいいだろうって相談だって」
「………妻子持ちはそういう問題もあるな。少し城戸の持ち周りを減らしておこう」

 周囲を封鎖していた警察官達が状況検分を始める中、徐々に珠阯レ市内に満ちていく不穏な空気を、ペルソナ使い達は感じずにいられなかった。



「よくないね、色々と。あ、寿司の事じゃないよ大将」
「当たり前でぃ!」

 がってん寿司のカウンターに陣取り、いつも通りエンガワを頬張っていたトロの言葉に、その両隣に座っていたレイジとサーフが僅かに頬を動かす。

「具体的には」
「それが困った事に、色んな噂が出てはすぐ消えるを繰り返してててね……まあ噂が定まらない限り、具現化する事もないから安心といえば安心なんだけど」
「どうやってもドンパチの音は響くし、とうとう街中までスパイが出やがったらしいからな………」
「悪い噂にならないように、僕もなんとかしてみてるけど、自信は無いな……ただ、最近これらの異変は、もっと大きな異変の前兆だって噂が出始めているらしい」
「前兆?」
「そこから先はまだ出来てないらしいけど、こういう噂はどう出るか分からないからね………あ、大将アガリお代わり」
「はいよ!」

 口直しのお茶をすすりつつ、トロがもたらした情報にレイジは今までの経験から影響を考える。

「それと、何者かが下の三大勢力に接触してるって話知ってる?」
「……似たような事は前にもあった」
「どうやら、別の人達らしいよ。下の調査から上がってきた人達から聞いた情報だから、信憑性は高いと思う」
「一体今、何がどうなってやがる………」
「そこまでは分からないな〜………」
「参考になった」

 それだけ言ってサーフは席を立ち、レイジも後に続こうとする。

「悪いが、冷やかしは勘弁してほしいんですがね」
「冷やかし?」
「いいよ、僕がおごるよ。二人に握り一人前ずつ」
「へいよ!」
「いや、今日は早く帰るって言ってるんで………」
「おっと、所帯持ちは大変だね。こっちの彼には土産用の二つ、おっと子供用も一つ」
「へい、毎度!」

 席を立った二人に戻るようトロは促すが、レイジがそれを断ったのを見て、注文を変更する。

「悪いな、いいのか?」
「はは、僕に出来るのはこうやって噂を集めたり広めたりする事くらいだからね。前線に出る人達には頑張ってもらわないと。特に城戸君は無理されても困るだろうし、奥さんと子供が」
「それはそうだが………」
「へい、土産二人前と子供用一人前!」
「ああ、ありがと。じゃあまた何か分かったら教えてくれ」
「そうするよ」

 土産を手に店を出ていくレイジを、サーフが無言で見送る。

「意外かな、彼が家族のために戦ってるのは」
「……分からない。だが、アイツが必死なのは分かる」
「はは、学生時代の彼は君によく似てたよ。いやもっと酷かったかな? 変われば変わる物だね」
「………」

 トロの話を無言で聞きながら、サーフは出された握りを口へと運ぶ。
 最初の一口で妙な硬直をしているの気付いたトロが慌ててアガリを頼むまで、しばしの間があった。



同時刻 受胎東京 イケブクロ

「なるほど、喰奴にそんな弱点があったとはな」
「ええ、ネックはセラと呼ばれるテクノ・シャーマン」
「そいつさえどうにかしてまえば、向こうの戦力はガタ落ち、いや勝手に自滅するかもしれへんな」

 かつてマントラ軍の本営、現在はヨスガの本陣となっているビルの最上階、そこの主である千晶の前に、二人の人間がいた。
 病的なまでの白い体を持った少年と、眼鏡をかけてスーツケースを手放さない関西弁の少年、他でもない、ストレガのタカヤとジンだった。
 二人が持ってきた盗聴器からの情報を聞いた千晶が、口元を歪むような笑みを浮かべて渡された受信機のイヤホンを床へと無造作に放り投げる。

「人修羅とデビルサマナー達にはいっぱい食わされたけど、そいつらは今穴に飲まれて地獄の底、喰奴の弱点も分かった。後はどうやってあそこまで行くかね」
「それはそちらでどうにかしてください」
「そこまで責任は持てへんで。ほなさいなら」
「待ちなさい」

 その場を去ろうとするストレガの二人を、千晶は呼び止める。

「貴方達の目的は何? なぜヨスガに味方するのかしら?」
「ふふ、あえて言うなら、貴方方の目指している事が、我々の目的に近い、と言った所でしょうか」
「力こそが絶対、確かにその通りや。今の世界、無駄に生きてる人間が多過ぎやさかいな」
「それは、貴方達も創世を目指すという事かしら?」

 千晶の問いかけに、二人は振り返って笑みを浮かべる。

「どちらかというと、逆でしょうね」
「悪魔と人間の紛い物だけの世界、ある意味、ワイらの理想の世界や」
「へえ………それでは言っておくわ。これを恩だと思わない事ね。ヨスガのコトワリを邪魔するのなら、容赦なく、潰す」

 千晶はそう宣言しながら腰掛けていた物、かつてマントラ軍を率いていたゴズテンノウが宿っていた像の頭部を、異形の右腕で砕き潰した。

「さて、それはどうでしょうかね?」
「また会った時のお楽しみや」

 あえて返答を避ける二人に、千晶も口を歪ませて笑う。

「そうね、それじゃあまた今度」
「ええ、それでは」

 表面上はにこやかに、その実凄まじい殺気を飛ばしあいながら、千晶はストレガの二人を見送る。

「上空都市への威圧攻撃は継続、状況に変化があれば、一気に攻めてマガツヒを絞れ」
「はっ!」「おおせのままに」

 そばに控えていた配下に指示を出し、千晶は部屋から外に出、視界に広がる荒野を見下ろす。

「これが理想の世界か………どんなコトワリを持っているのかしらね………」

 その呟きは、風に紛れて誰にも聞かれる事無く、消えていった。



「オオオオォォ」「アアアアァァ」

 怨嗟の声を上げながら、無数の思念体がまとめて消し飛んでいく。

「ち、なんて奴だ………」
「これは………」

 その様を見ていた勇と40代目ライドウは相手の凄まじい力に舌打ちする。
 ムスビが本拠地としているアマラ回廊に突如として現れた侵入者達、特にその中心となっている相手を前に、二人は警戒を高める。

「なるほど、マガツヒと呼ばれるエネルギーの流れが、そのままある種のワームホールを形成しているわけか」

 思念体を一撃で消し飛ばした相手、陰陽神 ハリ・ハラの姿をしたジェナ・エンジェルは周囲を興味深げに見回し、そして眼前の二人を見る。

「そしてここを根城にしているのは絶対孤独を掲げるムスビと呼ばれる勢力、間違いないな」
「ああ、その通りだ。あんたらは?」
「私はジェナ・エンジェル。カルマ協会を率いる者だ。創世という物に興味があったので、ここを調査しに来た」
「へえ………それでアンタが掲げるコトワリは?」

 苦々しい表情の勇に、エンジェルは不敵な笑みで返す。

「私は全てに等しくチャンスを与えたい。誰もが己の力で生きる世界をな」
「それなら千晶のとこに行きな。ヨスガのコトワリに似てるぜ」
「この後、そうするつもりだ。だが、ただ行っただけでは芸が無い」
「……ならば?」
「例えば、我らともっとも主張が異なる勢力を削いでから、とかな」

 エンジェルがそう言うと、背後にいた者達が一斉にアートマを輝かせ、喰奴へと変じていく。

「へえ、そういう事か」
「最初からそのつもりのようだな」

 勇が片手を上げると、無数の思念体が周囲に渦巻き始め、前の闘いで片腕のままの40代目ライドウも残った腕で白刃を構える。

「このアマラ回廊は戦術・戦略的にも利用価値が極めて高い。譲り渡してもらおう」
「出来る物なら、やってみなぁ!」

 アマラ回廊の中で、二つの勢力が激突した。



「………」
「あの、先生? ゾイ先生?」
「ん? ああメイビーか、なんだ?」
「どうかしたんですか? 怖い顔して………」

 レッドスプライト号の医療室で、難しい顔をして電子カルテを睨んでいた医療班の女性クルーが、助手的立場の別の女性クルーが声をかけてきた事にようやく気付く。

「ちょっとな。彼女の事で」
「ああ、セラちゃんですね。怪我は治りましたけど、元から体弱いみたいですし、大丈夫なんですか?」
「今の所は安定している」

 医療用カプセルの一つで、定期的治療を受けている少女を見たメイビーだったが、ゾイは別の問題を見つけていた。

(投薬に脳外科手術、しかも遺伝子改造の痕跡まで………こんな少女に、なぜここまでする必要が?)
「う、ん………」

 そこでカプセルの中のセラが目を覚まし、ゾイは電子カルテの画面を切った。

「具合はどうだ?」
「かなりいいです。傷ももう良くなりました」
「薬はちゃんと飲んでいるな?」
「はい」
「あまり無理はしないように。君の仲間のように無駄に体力と食欲が有り余ってるわけではないだろうからな」
「そうですね」

 セラをカプセルから出しながらのゾイの助言に、セラは正直に答えていく。

「お仲間さん、心配して交代でレッドスプライト号の前に来てますしね。特にあの赤毛の人」
「ヒート?」
「あの人なんか、セラさんの治療終わるの待ってるか、戦ってるかの二つしかしてないんじゃないかって話も出てます」
「ヒートらしい」

 メイビーが治療のために脱がせた上着をセラに手渡しながら笑う二人に、ゾイも吊られて笑みを浮かべる。

「メイビー、送ってやれ。それとセラ、戦闘は血の気の有り余ってる連中に任せて、前線には出ない方がいいだろう」
「けど、私の歌が届かないとエンブリオンのみんなが………」
「無線とかではダメなのか? まあその辺はあちらでも考えているだろう。ではお大事に」

 メイビーに送られていくセラを見送ったゾイだったが、医療室の扉が閉まるとそばにあったコンソールから業魔殿のヴィクトルへと送るため、セラの現状を細かく記した電子カルテをまとめておく。
 最後に、こちらの設備でも現状維持が限度、との一文を添えて………



「それで、用件は?」

 突如として現れた客人に、氷川は興味深そうな顔で問いかける。

「そうだな、まずはそちらの現状を問いたい」

 その客人、氷川に劣らず不遜な雰囲気をまとった男は、不躾な質問を投げかけてきた。
 だがその男の後ろには、氷川の警護をしていたはずの悪魔が躯となって転がっている事から、すでにその男が只者ではない事を示していた。

「それを聞いて、どうする?」
「確認をするまでだ。現状では、シバルバーの出現、冥界の門の拡大、その他色々な状況変化に伴い、マガツヒの流れが大きく変わってきている。守護を呼ぶためのマガツヒが無くて苦労してるのではないかね?」
「よく調べた物だな。そんな所まで」

 氷川が男にそう言いながら、その視線を鋭くする。
 だが構わず男は続けた。

「私はある目的があって動いている。そして、その目的のために彼らがいささか邪魔でね。半分程は君が冥界送りにしてくれたが」
「なるほど。だがそれと君がここに来た件の関係は?」
「私なら、マガツヒを集束できるシステムが作れる、と言ったなら?」
「……どのようにして?」

 男は答えず、ある分厚い資料を氷川へと投げる。
 それをキャッチした氷川は資料に目を通していき、その目が驚愕に見開かれたかと思うと、徐々に興味と歓喜の入り混じった物へと変わっていく。

「ふ、ふふふ、こんな物を思いつくとはな………自分に匹敵する天才を始めて見たよ」
「お褒めに預かり光栄だ」

 氷川がすでに己の提案に乗ってきてる事に、男は肩をすくめるように謝礼を述べる。

「目的はあの街の守護者の排除、という点で一致している訳だな」
「ああ、そして君は守護を呼ぶといい。その時私が君の味方か敵か、それは約束できないがね」
「構わん。これの製造に力を貸そう。そう言えば、君の名をまだ聞いてなかったな」
「私の名は神取、神取 鷹久だ」

 氷川と神取、二人の闇の天才は互いに含みのある笑みを浮かべ、互いの手を握り締める。
 氷川のもう片方の手に握られた資料の表紙には、《Reverse・Deva SYSTEM》と書かれていた………


 冥府の縁へと落とされた者達を案じながらも、糸達は残った力を集め、闇に講じようとする。
 だが、闇は更に更にその暗さと深さを増しつつあった。
 その何よりも暗き闇の底にあるのは、果たして………





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