PART58 CONFUSED JETーBLACK


真・女神転生クロス

PART58 CONFUSED JETーBLACK





「カグツチがまた黒化する!?」

 突入した超力超人・改の内部で、流れてきた急報に仁也は驚く。

「総員、外部から光線が流入してないか確認!」
「多分大丈夫だろうが………つうかなんで直立したまま擱座してんのに、中は水平なんだ?」

 内部侵入用にしたアンカーを手でいじりながら、アンソニーが周囲に窓や亀裂がないかを確認していく。

「どうする、このまま作戦を続行するか?」
「いや、万が一にでもキュヴィエ症候群を発症したら危ない。一度ここで防陣を張ろう」
「くそ、急いでんのに!」

 機動班の隊員達は悪態をつきながらも葛葉から提供された簡易結界用の楔を周辺に打ち込み、特殊繊維のシートに防護呪文を施した物を張って防陣を形成する。

「外にいる連中は大丈夫か!?」
「分からない。だが、全員アマチュアじゃない。ここじゃこちらの方がアマチュアだ」
「悪魔や魔法の相手なんてどこの軍隊でも教えるか!」
「今相手してんのは巨大ロボだけどな」

 デモニカを着たままだといささか狭い防陣に入った機動班達がボヤく中、仁也は外の状況を確認する。

「そろそろか………」



同時刻 タルタロス周辺

「ちっ、やべえ!」
「どうすんの八雲?」
「まずは安全な所に退避を!」

 カグツチ黒化の報を聞いた八雲がHVナイフを悪魔から引き抜きながらぼやき、両脇で戦っていたネミッサとカチーヤが上空を見上げながら対応を促す。

「ネミッサはともかく、オレはやばいし、カチーヤも試す訳には行かないからな」

 八雲はそう呟きながら、手榴弾を取り出すと無造作に真上へと投げる。

「こいつ!?」
「離れろ! まさか自爆!?」

 あまりの無造作さに周囲にいた悪魔達が一斉に距離を取る中、八雲はGUMPのトリガーを数度引いてセットしていた一斉リターンを実行。仲魔達を回収した直後、手榴弾が爆発する。
小さな手榴弾とは思えない強烈な爆風と爆炎が吹き抜け、巻き込まれた悪魔達が数体吹き飛び、やがて治まる。

「くそ、本気で自爆…じゃない!?」
「こいつは…」

 悪魔達は爆風が晴れた後、そこにある氷の小さなドームに気付く。

「狭ぇ………」
「八雲こっち押さないで!」
「動かないでください!」

 予め用意しておいたカチーヤとネミッサの余剰魔力を封じた物を媒介に、瞬時に氷の防壁を形成した二人だったが、流石に三人入るには少し小さかった。

「ま、この方がいい」

 八雲は更に懐から小さなタンクを取り出すと、それを氷のドームの上部中央に向けてスイッチを押す。
 すると今度は真っ黒な霧、呪符の制作などに使われる特殊な墨が噴出して氷のドームの中を黒く染め上げていく。

「何だ、何のつもりだ?」
「構うな! 諸共砕いてマガツヒを奪う!」

 最早中が見えなくなっている氷のドームに、悪魔達が殺到する。
 だがそこで、金棒を振りかざしたオニがふと上空を見上げて気付く。

「カグツチが!」
「あ? ああ!?」

 オニの上げた声に他の悪魔達が気付いた時、カグツチは黒く染まり、そこから漆黒の閃光が降り注ぐ。

「おい、こいつは…」
「マネカタが浴びたら石に…」
「ぐ、がああああ!」

 降り注ぐ漆黒の閃光に、悪魔達は思わず動きが止まる。
 ほどなくして、最初に気付いたオニの口から絶叫が漏れ始める。

「おい、どうした…ギャアアァ!」

 そばにいた別のオニが声を掛けるが、絶叫するオニは仲間である者へといきなり牙を突き立てる。

「そうだ、この光は…」
「まずいぞ!」
「ハアアアァ!」
「ゴオオォォ!」

 前回のカグツチ黒化の際に起きた事を思い出した悪魔達だったが、各所で咆哮を上げる悪魔が現れたかと思うと、手近の他の悪魔へと襲いかかっていく。

「くそ! この光は悪魔を狂わせる!」
「あいつ、そのために!」

 ようやく八雲が黒塗りのドームに立てこもった理由に悪魔達が気付くが、すでに周囲は敵も味方も分からないような乱戦になりつつあった。

「暴れてる奴を抑え込め! 殺しても構わん!」
「ダメだ、すげえ力だ!」
「あっちにも出たぞ!」

 混乱は瞬く間に広がっていき、最早戦線すら維持できない程になっていく。

「チアキ様! 黒いカグツチの光を浴びた者達が次々と暴走を!」
「収拾できません! 一時撤退を!」

完全に混戦状態となりつつある戦況に、配下の悪魔達がチアキに撤退を申し出るが、チアキは申し出てきた悪魔達を異形の腕を一閃させて蹴散らす。

「ヨスガの者が何を言っているの? 暴走した程度で殺されるなら、そんな者は必要ないわ」
「し、しかし!」
「ガアアァァア!!」

 そこに一際大きな咆哮が響き渡り、皆がそちらに振り向くと、双口から唾液を撒き散らしながら、チアキへと向かってくるヒートの姿が有った。

「喰奴か!」
「チアキ様をお守りしろ!」
「邪魔ダ!」

 それが特に危険視されている相手だと気付いたヨスガの悪魔達がチアキの周囲を固めようとするが、ヒートのかぎ爪の生えた豪腕がいともたやすくそれを薙ぎ払っていく。

「ダメだ、止まらない!」
「なんとしても止めろ!」

 上空から天使達が攻撃しようとするが、ヒートの双口から放たれた業火が打ち消し、更に天使達を焼き落としていく。

「失セロ………」
「喰奴が暴走するとここまで危険なのか!?」
「いいえ。こいつ、わざと暴走している」

 ヒートが一見デタラメに暴れているように見えるが、的確に自分を狙ってきている事にチアキが気付く。

「こんな状態で、まだ理性が残ってるのか!?」
「いえ、こちらを狙うためにわざと暴走状態にさせてる。とんでもないパワーアップね」

蹴散らす、という表現そのままにヒートが一直線に突っ込んでくるのに、チアキは異形の巨腕を構える

「ガアアァァ!」
「ハアァァ!」

 双方の咆哮と共に、豪腕と巨腕が激突する。
 轟音と共に込められた魔力がぶつかり合い、生じた衝撃波で周囲の悪魔達が吹き飛ばされる。

「なるほど、出来るわね」
「フウ、ハアアアァ…」

 己の巨腕に食い込む鉤爪にチアキの顔が楽しげに歪み、ヒートは唸りながら己の拳を半ば潰した巨腕に更に鉤爪を食い込ませようとする。

「チアキ様と互角だと!?」
「近寄るな、巻き込まれるぞ!」

 凄まじい力と力のぶつかり合いに、吹き飛ばされた悪魔達は呆然と両者のせめぎ合いを見守る。

「ガアアァァ!」

 ヒートがもう片方の鉤爪をチアキの巨腕に突き刺そうとするが、巨腕から伸びた触手がそれを絡め取り、挙句にヒートの首にも絡んでいく。

「惜しいわね。その狂おしい程の力、ヨスガの幹部にもなれるでしょうに」
「ダレガ、キサマラト…!」

 首を締め上げられながらも、ヒートはチアキへと繰り出した腕を引っ込めようとすらせず、更に爪を食い込ませていく。

「セラヲ、キズツケタオマエラヲ、ユルサナイ…!」
「テクノシャーマンの復讐か。アレは惜しい事をしたわね」
「キサマ!」

 暴走の度合いが増していくのか、段々片言になっていくヒートにチアキが巨腕に力を込めながら邪悪な笑みを浮かべ、ヒートが更に激高する。
 鉤爪を更に食い込ませていくヒートだったが、そこへ上空から影が指す。
 僅かに残った理性が反応するよりも早く、その影は容赦なくヒートの双刀の脳天に四腕を叩きつける。

「ガハッ!」
「アートマの暴走時は、身体能力は増すが制御は甘くなる。だからこんな単純な奇襲にも対処出来ない」
「エン、ジェル………!」

 変身したエンジェルの奇襲をまともに喰らい、力が緩んだヒートの首にチアキの触手が更に巻き付き、鉤爪が刺さったままにも関わらずに巨腕でヒートの双頭を掴んで持ち上げる。

「ホント惜しいわ。でも、サヨナラ」

 そのまま一気にヒートの双頭を握りつぶそうとした時、頭上から雷撃が降り注ぐ。

「ちっ! 撃ち落しなさい!」
「食らうか!」

 空中から電撃魔法を放ちつつ、こちらへと向かってくるシエロにチアキは配下達に攻撃命令を出すが、シエロは驚異的な機動でそれらをかわしていく。

「今行くぜブラザー!」
「シ、エロ………」
「やらせるか」

 ヒートの救出に向かうシエロに、エンジェルが合掌してプルパを作り出し、迎撃しようとするが、シエロが何かを投じる方が速かった。
 その投じられた物、特殊アンプル注射器はヒートの体に刺さると、その内容物を自動的に注入。
 するとヒートが喰奴から人の姿へと戻り、緩まった巨腕の拘束から抜け落ちる。

「何!?」
「半暴走状態を解除した?」

 予想外の事にチアキとエンジェルも一瞬動きが止まり、その隙にシエロは急降下してヒートを回収すると飛び去っていく。

「逃がすな!」
「無理だな、あの速度では…」

 チアキが配下に号令を掛けるが、飛行速度では群を抜いているシエロの姿はすでに遠ざかっていた。

「デビルサマナーには喰奴を鎮める術があるとは聞いていたが、これもその内の一つか」

 変身を解除して落ちていた注射器を手にしたエンジェルは、その僅かに残った中身を注目する。

「暴走する事も最初から見越してたって事? セラって娘以外にもそんな手があったなんてね………」
「もしくは、セラが使い物にならないからこんな手を使ったか、だ」
「なるほどね。アレが壊れたとしたらもったいない事をしたわ」
「そうだな、だがまずは部隊を再編する必要が有る。これ以上は増えないようだからな」

 エンジェルは上空のカグツチが黒化から戻っていく事を確認すると、視線を各所で暴走した悪魔達で混乱しているのを見る。

「他に止める方法は?」
「マグネタイトを大量に摂取すればいい。おそらくはこの注射器の中身もそれだが、生憎とここでは用立てられない」
「そう、分かったわ」

 それだけ聞くと、チアキは暴走して仲間へと襲いかかっている配下へと向けて、異形の巨腕を向けた。



「どうやら収まったか」
「そのようね」

 黒き閃光が収まったのを確認した小次郎と咲が、仲魔と協力して周辺の悪魔の死骸を重ねたシェルターから顔を出す。
 カグツチの黒化前は四方全てが敵とも言える状況だったが、暴走した悪魔の引き起こす混乱に、むしろ各勢力はそちらの鎮圧に駆り出されていた。

「これは予想外の結果、いや予想してしかるべきだったか」
「身内の敵が一番怖いのはどこも一緒ね。他の人達、無事?」
『こちらアレフ、問題ない』
『こちら修二、目の前で暴走した奴が暴れてえらい目に有った………』
『こちらフリン、問題ない』
『ライドウ、問題なし。結界が間に合った、技術班も全員無事。ただこの解体した核弾頭とやらはどうすればいい?』

 各所からの安全報告を聞きながら、咲はレールガンの残弾を確認する。

「この混乱が力任せに終息させられるのも時間の問題ね」
「超力超神・改にタルタロス、どっちも今侵入されるわけにはいかないからな。まだ行けるかパスカル?」
「グルルル………」

 刀を振るって血糊を落としながら、臨戦態勢に入る小次郎の隣で、仲魔のケルベロスも唸りを上げながら突撃準備に入る。

「もう一暴れするぞ」
『おおっ!』

 小次郎の号令に仲魔達が一斉に応え、白刃を手にした小次郎と共に、未だ混乱状態の悪魔達へと向かっていった。



「今のはちょっとやばかったか………」
「間に合ってよかったわね」

 超力超神・改への突入口となっている大きな破損箇所の前で、キョウジはレイホゥが張った結界から周囲を確認する。

「突入した連中は無事だろうな?」
「中までは光が届かなかったみたいね」
「そりゃよかった。こんなんに突入されたら事だ」

 キョウジはそう言いながら、結界内にまで突入してこようとして返り討ちにした暴走悪魔の死骸を見る。

「やっぱ、こんだけデカけりゃ欲しがる連中は多いか」
「中にはまだマガツヒが大量にあるかもしれないからね。またすぐ来るわよ」
「核だけでなくこのデカブツも首尾よく動けなくできたかと思えばこれかよ。動き回られるのとどっちがマシだったか」

 ぼやきつつポケットから取り出した櫛で髪をなで上げたキョウジが、櫛をしまうとGUMPを取り出す。

「このデカブツ、押し寄せてくる有象無象、そしてオレ達。どこが先に音を上げるかな」
「上げられたら困るわよ、中の人達が」

 GUMPのトリガーを引いて召喚体勢に入るキョウジの隣で、レイが合掌して詠唱体勢に入る。

「中身が片付くまで、もうしばらく粘るとするか!」
「ええ」

 悪魔達が体制を立て直しつつあるのを見ながら、キョウジは仲魔を召喚し、レイホゥは攻撃魔法を解き放った。



「外は相当な混乱状態らしいな」
「悪魔ならキュヴィエ症候群は発症しないが、暴走する事はあるらしいしな」
「だが、それが収まったらこちらに攻めてくるだろうな………」

 超力超神・改の一角、仁也達とは別の機動班を中心とした突入チームが、だいぶ変わってはいるがギガンティック号のデータを元に動力炉を目指していた。

「システムがかろうじて動くレベルだが、まだ動力は生きてる。止めたら倒れたりしないだろうな?」
「いっそ完全に壊れた方がいいかもしれないぜ」

 色々懸念する者達の中、突入チームに参加していたレイジが呟く。

「それは一理有るが、こいつに使われてるのはトカマク起電機だ。下手に破損すると放射能漏れを起こす」
「じゃああんたらのも原子力で動いてんのか。それ知ったら市民が暴動起こすかもな」
「起こす力が残ってるか、だがな」
「それはdon‘t speakですわ」

 同じく同行していた南城とエリーがレイジのぼやきに釘を刺す。

「出来れば、NaoかMakiにも来てほしかったのですけれど」
「市街防衛のペルソナ使いをまとめる人間は必要だったし、園村はドクターストップ中だ。それに、あの神取が作ったにしては、この巨大ロボには色々不審な点が多い」
「一理有るな」
「そうなのか?」

 ペルソナ使い達の会話に、機動班が首を傾げる。

「もっとも、あの男の考えている事を理解出来る奴なんて早々いないだろうがな」
「それだけはNo mistakeですわ」
「そんなに危険な男なのか?」
「ギガンティック号をこんなにしちまった時点で十分危険だろ」

 ボヤきを交えながら進んでいた突入チームが、動力室手前で一度足を止める。

「元のままなら、あの先だ」
「まて、内部から反応有り。しかもこれはデモニカ?」
「別働隊が先に来たのか? そんな連絡は…」
「待て」

 首を傾げる者達を差し止め、レイジがアルカナカードを取り出す。

「ここにいる奴、やばいぞ。かなり出来る」
「ああ、これはまずい………」

 機動班達を手で制しながら、南条も刀に手をかけつつ、前へと出る。

「ペルソナ反応って奴か? しかし…」
「ここで待て、オレ達が様子を見てくる。それと放射能は漏れてないだろうな?」
「ここでの反応は出てないから、多分………」
「桐島は念の為控えててくれ」
「イエス、お気をつけて」

 レイジと何条が注意深くドアの前に立ち、他の者達がデモニカや持参の機材で色々チェックしていく。
 意を決したレイジの前でドアが開かれ、警戒をそのままに二人は中へと足を踏み入れる。
 小さく唸りを上げる動力炉、その上に腰掛けている小柄な赤いデモニカの姿にレイジは思わず息を呑んだ。

「あなた誰? ここに何の用?」
『気をつけろ、彼らはペルソナ使いのようだ』

 赤いデモニカから放たれるどこか幼さを感じる声に、その相手が恐らく少女である事、そしてそのサポートAIの発する警告にレイジは警戒を更に高めた。

「オレの名は城戸 玲司」
「私は南条 圭」
「ここには兄貴を止めに来た」
「兄貴?」
「いるだろ、神取が。お前は神取の仲間か?」
「違うわ。たまたまここに来て援助と引き換えにコレの完成・起動まで警備を頼まれただけ。それももう終わった」
「じゃあなんでここにいる?」
「只野 仁也」

 その名をデモニカの少女が呟くと同時に、少女の全身から殺気がほとばしり、二人は思わず構える。

「私の目的はそいつだけ。彼もここに来ているんでしょう?」
「………ああ、来ている」

 下手に隠し立てするとむしろ危険と判断した南条が腰の刀の柄に手をかけたまま、肯定する。

「なら、伝えて。ここに来るか、それとも全てを殺しながらこちらから行くか」
『彼女は本気だ。不必要な戦闘はこちらも望む所ではない』

 あまりに危険な少女の要求に、サポートAIが更に言葉を追加する。

「断ったら?」
「まず、貴方達から殺す」

 そう言いながら、腰に下げているブレードに手を伸ばす少女に、レイジはとっさにアルカナカードをかざそうとする。

「それと神取ならこの上、管制室にいるわ。そこから動く事は無いと思う」
「………交換条件という事か。いいだろう、ここは退いて彼に伝える」

 神取と合う前に彼女との戦闘は危険と判断し、なおかつ互いに不必要な戦闘は避けようとしていると判断した南条はゆっくりと構えを解いた。

「伝えるが、肝心のあんたの名前は?」
「アレックス。彼は知らないでしょうけど」
『私はジョージ。我々の目的は只野 仁也だけだ』
「分かった」

 警戒はそのまま、二人はゆっくりと動力室を出る。

「聞いていたか?」
「ああ、だがなんだあのデモニカ? オレ達のより新型みたいだが………」
「そこは分からない。だが、あいつは危険だ」
「半端じゃねえ殺気を放ってやがった。腕も相当立ちそうだ」
「ここは一度退いて別働隊と合流しよう。神取だけでも危険だが、動力室にあんな危険人物に陣取られては作戦を見直さなくてはならない」
「外からDevil Summonerの方々を呼んだ方がいいかもしれませんわ」

 ただならぬ状況に、離れた場所で今後の対策を考えるが、一時撤退以外の策は早々出てこなかった。

「確か山岸君は他にも誰かいるとも言っていたな」
「ペルソナ使いがもう一人いるって話だが………」
「それらしいのは感じませんわね。私達のPersonaは彼女ほど感知に優れてませんが………」
「まさか、外に出ていったのか? すごい混戦状態だぞ?」
「それは難しいな。下手な実力ではすぐにやれるだろうし、実力者だとしたら目立たない訳がない………一度タルタロスとも連絡を。どうにも気にかかる事ばかりだ」
「あんだけ苦労して核弾頭無力化したと思えばコレか………」

 機動班の一人がぼやきつつ、通信作業へと移った。


「は? 動力室にヒトナリにすげえ恨み持った女の子が?」
「何だそりゃ………」

 別働隊から届いた急報に、アンソニー始め、他の機動班が一斉に首を傾げる。

「ヒトナリ………お前まさか未成年に手出して逃げてきたんじゃないよな?」
「それは絶対に無い。そもそもそれだけ恨みを買う覚えも無い」

 アンソニーの失礼過ぎる問いをきっぱりと否定した仁也だったが、その謎の少女の殺意がどうしても気になっていた。

「で、どうする? 向こうはあんたを指名らしいぞ」
「若い娘から指名か、殺気こもってなければ喜ぶバカはいるんだろうが………」
「………行ってみるしかないだろう。なぜこちらをそんなに恨むのか、その原因を知る必要が有る」
「問答無用で殺されるなよ? 人によっちゃ羨ましい死に方だろうが」
「そりゃお前だろ」

 アンソニーの更に失礼な警告を他の班員が突っ込むが、仁也は無言で装備の確認をする。

「作戦上、動力室を抑えるのは必須だ。恐らく守護を呼ぶのに十分なエネルギーが未だ蓄積されている可能性が高い」
「そいつは分かってるが、一緒にいるペルソナ使いから相当やばいって情報も来てるぜ」
「外のベテラン連中にも来てもらいたいが、難しいだろうな………」
「どちらにしろ、呼ばれてる当人が行かなくてはならない。どんな結果になろうとも」

謎の少女に会う覚悟を決めている仁也に、他の班員達は顔を見合わせて頷く。

「まずは別働隊と合流だな」
「分担してこいつの無力化を行う作戦だったが、その前に無力化しなけれならない奴がいるようだし」
「新型デモニカを着てるって情報もある。問題は中身の方だろうが………」

 作戦内容の変更を考慮しつつ、全員が武装を確認していく。

「アーサーにミッション内容変更を打電。動力室にいる謎のデモニカ装備者を無力化する」
「外にいる連中にもこの件を通達、来れるようなら増援に来てくれと」
「システムが把握出来れば、外の敵を内部に誘導して迎撃出来るんだが………」

問題が次々山積みになっていく中、誰もが戦意だけは失わずに対処法を模索していく。

「別働隊の居場所は?」
「動力室前からこちらに向かってる。すぐに合流出来るだろう」
「あまり動力室で派手な戦闘はしたくないが、外の連中がなだれ込みそうだったら、動力室の停止もしくは破壊も検討しないとダメか?」
「何が溜まってるか分かった物じゃないがな………」

 装備の確認を終えた一行は、そのまま動力室へと向かう。

(オレにそこまで殺意を持つデモニカをまとった少女、一体なぜ………?)

 歩を進めながら仁也は自問自答したが、答えは一向に出なかった。



「は? そっちに戻れ? ………そうか分かった。少し待て」

 キュヴィエ症候群防護のための墨で全身を染めたまま、八雲が通信に答えつつ、最後の手榴弾を目の前のヨスガの軍勢へと放り投げる。

「手持ちの発破もコレで最後だ。ヒートの奴がかなりかき回してくれたしな」
「でも、今退いたら立て直される可能性も…」
「でもコレだし」

 黒化カグツチの光の影響とヒートの無謀とも言える突撃のおかげで、かなり混乱状態にあるヨスガの者達を前に、八雲は最後のマガジンをソーコムピストルに装填、元から白い肌と銀髪が墨でまだら模様になっているカチーヤが警戒するが、なぜか染まってないネミッサが完全に弾切れしたアールズロックのトリガーを引いてその事を知らせる。

「さすがにこの数相手は少し無茶が有ったか。もっとも最近いつもこんな感じだがな」
「撤退してタルタロスに籠城するんですか?」
「それしかないんじゃな〜い? 立て籠もりは慣れてきたし」
「違わねえのがな………山岸、そちらに戻せるか?」
『ちょっと待ってください! さすがに乱戦状態だと…』
「分かった、距離を取る事にする。他にケツに火が付いてる奴がいたら、そいつも戻しとけ」
『オレ! オレも! って熱ぃ!』

 八雲の通信に重ねるように、修二からの絶叫のような通信(どうやら実際に火が付いてるらしい)が響く。

『りせちゃん手伝って! 他に戻してほしい人は?』
『こちら小次郎、まだ少しは持つ』
『こちらアレフ、超力超神・改の方が近い。そちらに向かう』
『こちらフリン、もう少し周辺戦力を削いでおこう』
『こちらキョウジ、総員どっちか近い方に合流してくれ。混戦がいつまで続くか分からねえが、そぞろ次の段階に移行だ』
『…サーフ、エンブリオン回収を依頼』
『こちらライドウ、現在核弾頭を移送中。すまないがそちらには戻れそうにない』
『そいつはとっとと持ってってくれ………いや、それともカグツチに放り込むか?』
「コトワリと一緒に放射性物質の開放は最悪じゃ………」

 戦場から撤退しつつ、背後に残しておいたスタングレネードやスモークグレネードをありったけ投げながら、八雲はため息を漏らす。

「核弾頭処理出来る悪魔ってそういや聞いた事ないな」
「探せばいるんじゃない?」
「取り敢えずそれは後で!」

 追ってくる悪魔達に残った魔力で攻撃魔法を放つネミッサや、残弾で弾幕を張るカチーヤが続く中、八雲は周囲を見る。

(喰奴連中もかろうじて残ってるが、そぞろ限度か。どこかの勢力が立て直しに退いてくれば御の字だが、この状況じゃ無理か)
『設定できました! エスケープ・ロードします!』
「頼む」

 徐々に追い詰められている感がしつつも、八雲はその場で足を止め、他の二人も動きを止めた所でその体がその場から消える。

「くそ、逃げられた!」
「逃げる先は決まっている! 追撃だ!」

 混乱状態からなんとか回復しつつあったヨスガの鬼や天使達が、転移先をタルタロスと決めてそちらへと向かっていく。

「だいぶかき回されたわね………」
「最初からこの事態を予想していたのだろう。退き際も見事な物だ」

 暴走者の返り血で全身を染めたチアキとエンジェルが、八雲達の撤退の手際良さに舌打ちする。

「逃げるのばかりが上手い連中よ。アサクサではそれでマガツヒを手に入れそこねたし」
「戦いと言う物を熟知している。悪魔使いはどいつも手練揃いだ」
「まあいいわ。どちらにしろ、あの塔を落とせばいいんだし」

 半面血に染まった顔を歪ませた笑みを浮かべ、チアキはタルタロスへと残った手勢を向かわせた。



「全員生きてるか?」
「大丈夫です」「ネミッサも」
「し、死ぬかと思った………」

 エスケープロードでタルタロスに戻った八雲の声に、カチーヤとネミッサは普通に応えるが、一緒に帰還した修二は肩で大きく息をしながら床に座り込む。

「すぐに喰奴達も来るぞ。マグネタイトの用意は」
「こちらに」
「足りればいいんですけど」
「暴走しないだろうな?」
「あの、取り敢えず顔吹いた方が…」

 外からの帰還者を迎えるために風花を始め、課外活動部や機動班のメンバーがエントランスに詰め、各種準備をしていた。
 程なくして喰奴達も帰還し、全員が一斉に変身を解く。

「全員無事か? 心身両方」
「やや不安定な人もいますが、大丈夫みたいです」
「さすがに、あの光の下で乱戦はきつかったな………」

 八雲の確認に風花は全員をアナライズし、代表するようにロアルドが状況を告げてくる。

「状態に構わず、マグネタイトを摂取しとけ。暴走しかけた奴もいるしな」
「ヒート、さすがにあれは無茶だって」
「フン」

 八雲が率先して喰奴用のマグネタイトバーを配る中、それを受け取りながらアルジラが釘を差すが、当のヒートは鼻を鳴らしただけでマグネタイトバーにかじりつく。

「残念ながらのんびりしてる暇は無い」
「だろうな、程なくして各勢力がこの塔に押し寄せてくる。カグツチ開放にはこの塔を登るしかなさそうだからな」

 八雲の言葉に、ゲイルが被せるように呟く。

「残った機材抱えて、上に退避だ。ここは完全に封鎖する」

 八雲もボヤくように言いながら、タルタロスの入り口を塞いでいる緊急用シャッターを叩いて強度を確認する。

「一応、緊急時用の防弾シャッターだが………」
「防弾なんぞ気休めだからな。一応補強はしてるが………」

 シャッターに貼られているレイホゥや裕子が用意した呪符を見ながら、八雲は外の軍勢がなだれ込んだらひとたまりも無い事を予感していた。

「取り敢えず、これを運べばいいんだな」
「丁寧に運べよ、一応精密機械だらけだから」
「入り口から離れろ、完全に塞ぐぞ」

 マグネタイトバーをかじりながら、ヒートがエントランスに置きっぱなしになっていた機器を抱え上げ、八雲が安全確認している脇で、機動班がレッド・スプライト号から持参した緊急補修用の硬化エポキシをシャッターの上から吹き付けていく。

「セメントか、出来るなら鉛で埋め尽くしたい所だが無いしな」
「結界でも張れるだけ張っておきましょう。少しは足止めになるかもしれません」
「一応クレイモアも用意しておいた。最後に設置するぞ」
「………タルタロスにここまで厳重態勢しいたのは初めてです」
「入り口塞いで、結界とかいうの張って、ブービートラップまで………」
「ここは任せるぞ、撤退だ」

 手際よく進んでいく閉鎖準備に、風花だけでなく啓人も唖然とする中、残った機材を抱えた明彦に促されて慌てて上階へと向かう。

「そうだ、八雲さん。シャドウの大量発生の原因、前に電霊と戦った階に有ったみたいです」
「何?」
「純平がそこまで行って、そこにいた悪魔倒したら出なくなったらしいんですけど、どうやってもそこから上に行く方法が見つからないって。あのナナシとかいう人に付いてるダグザとかいう神様自身がそう言ってたそうです」
「上に登る方法知ってるとしたら、八雲さんだけじゃないかとも………」

 風花と啓人の説明に、八雲は首を傾げる。

「ネミッサ、お前ダンテと一緒にあそこまで行ったはずだよな?」
「うん、でも階段とか無かったよ?」
「見落としか、前はあそこで派手にやって調査してる暇とか無かったからな………」
「どちらにしろ、ここに攻め込まれたら、珠阯レ市に戻るか、上に登るかしかないんじゃないかと………」

 啓人がおずおずと言うのに、八雲は用意してあったカロリーバーをかじりながら嘆息する。

「あっちも今襲撃受けてるそうだし、こっちを空ける訳にもいかん。フリンが戻ってきたら、防衛班と登頂班に分けて上を目指すしかないな」
「上まで登った所で、なんかコトワリ考えてんのか?」

 座り込んだままだった修二からの問に、八雲は即答した。

「知るかンな事。どの道、このままだとカグツチも真っ黒になるかもしれんしな」
「あ、それはやべえ。もうコトワリ云々はほっといてとっととカグツチ開放するかな?」
「それって大丈夫なんでしょうか?」
「さあ?」
「何だったらネミッサが開放してみる?」
「それが一番マズイ事になりそうだが、最終手段には使えるな」
「どんな最終手段だよ………」

 今後に付いてあれこれ意見が飛び交う中、最後に残ったフリンも帰還してくる。

「全員、こちらかあちらに入ったようだ。今後は籠城戦になる」
「数の上ではこちらが不利だ。戦力的には悪くはないと思うが」
「面子だけは揃ってるからな。多少アレなのも多いが、オレも含め」

 フリンの報告に、ゲイルが冷静に状況を分析、ついでに八雲が余計な突っ込みを入れる。

「とにかく、上に本拠を移そう」
「忘れ物ねえな? ここは完全に閉鎖するぞ」
「これ以上何を?」

 フリンにうながされ、全員が上階へと続くターミナルに向かう中、八雲はカチーヤ、ネミッサと殿に付く。

「いけるか?」
「回復はしました」
「じゃあ一気に行くよ!」

 チャクラポッドで魔力を回復させた二人が、同時に氷結魔法を入り口へと吹き付ける。

「なるほど、凍らせて密閉する訳か」
「こいつらのならそう簡単に溶けん。それでも時間稼ぎ程度だろうが………」

 様子を見ていたロアルドが感心する中、最後の封鎖が終わるとその場から全員が消える。
 程なくして、封鎖された入り口をぶち破ろうとする音が、エントランスに響き始めた。



「タルタロスは完全籠城態勢に移行したそうだ」
「あちらはあちらでどうにかしてもらうしかないな」
「こちらもだけどね」
「動力室と管制室は任せるしかなさそうね………」

 超力超神・改の内部で合流した小次郎、アレフ、咲、ヒロコが現状を確認しつつ、足元に転がる無数の悪魔の屍を眺める。

「システムの管理権を奪えれば、もう少し楽になるんだが………」
「そちらはまだ向こうが握ってるらしい。動かせないわけではないが………」

 小次郎が艦内ドアを操作しようとするが、エラーが表示されるだけで、アレフが手動で操作して敵の侵入を阻もうとする。

「管制室よりも問題は動力室ね。これを動かすための種々のエネルギー、狙われるには十分よ」
「何かかなりの実力者が占拠してるらしいけど………」

 咲とヒロコが元の図面と内部探索の差異から推測される艦内図に目を通しながら、抑えるべき要所をチェックしていく。

「どの勢力も、目の色変えて守護を召喚しようとしている。この状況では、果たして創生とやらも上手くいくかは謎だがな………」
「カグツチの変質が進んでいる。果たして開放していい物なのか?」
「どの道、高尾先生が言うには開放しない限り、この受胎東京はこのままらしいわ」
「現状で私達が出来る事は、ここを死守して守護の召喚を妨害する。それしかなさそうね」

 四人の結論が一致した所で、全員が振り返って構える。そこでは、今閉じたばかりの扉をこじ開けんとする悪魔達の怒声と攻撃音が響いていた。

「一つだけはっきり言えるのは、シジマもヨスガもムスビも、この世界を任せるにはいかないという事だけだ」
「その点は同じ意見だな」

 将門の刀を構える小次郎に、ヒノカグツチを構えるアレフが同意する。

「結局、やってる事は変わらないわね」
「そういう運命なのよ、お互いね」

 レールガンに新しいマガジンを装填する咲に、槍を構えるヒロコが苦笑する。

「ここに来たのは運命かもしれない。が、戦うのはあくまで自分の意思だ」
「オレ達だけじゃない。他の者達もそうだろう」

 小次郎とアレフが視線を鋭くする中、とうとう限界に達した扉がこじ開けられ、そこに二つの切っ先が同時に突き出された。



「派手にやってやがるな」

 タルタロスに押し寄せるヨスガの軍勢と、超力超神・改に押し寄せるシジマの軍勢を一歩引いた所で見ながら勇は呟いた。

「どっちも守りは硬そうだ。こっちは数はともかく、質は負けてるからな………ライドウの奴はうまくやってるのか?」

 無数の思念体を引き連れながら、勇は状況を一時静観していた。

「こいつを使えないかと思ったが、どう見ても壊れてるよな………」

 自分の隣、超力超神・改に大ダメージを与え、そのまま放棄されたタイタニア・キャノンを小突きながら、勇はぼやくしかなかった。

「ダメだ、完全に壊れてる」
「内包エネルギーも枯渇しているようだ」
「使い捨て前提か、未完成だったのかもしれない」

 タイタニア・キャノンを調べていた思念体達が口々に呟き、それが更に勇の気を重くさせた。

「修二の奴、こんなモン持ってる連中と手組んでたとはな………あの巨大ロボ一時封じた力といい、どこまで力手にしてる?」

再度半ば残骸と化したタイタニア・キャノンを小突きつつ、勇は表情を険しくする。

「あちらの悪魔使いはどうやってか知らないが、あの中に移動出来るようだしな………こちらもそれが出来れば…」

 呟く勇だったが、そこで頬に冷たい感触がした事に気付き、上を見上げる。

「今度は雨かよ」

 上空に本来受胎東京に存在しないはずの黒雲が湧き、にわかに雨を降らせ始めた事に勇は更に表情を険しくする。

「一体、今ここはどうなってやがんだ? 守護を呼んで、本当にコトワリが開放出来るのか?」

 変質が進んでいく受胎東京に、勇が今更ながら疑問を感じ始めた時だった。

『さあね。でもやってみたら面白いんじゃない?』
「誰だ!?」

 突然響いた聞き慣れない声に、勇は慌てて周囲を見回す。

『こっちだよ、こっち』
「こっち、て………」

 そこで勇は、残骸に残る表示モニターに、ノイズと共に映る人影に気付く。

「誰だ、お前?」
『一応こういう者』

 モニターの中に映る若い男は、そこに桜の代紋が描かれた手帳を見せる。

「警察? どうせこの状況でいる奴じゃ、ロクでもない奴だろ」
『ご明答。さて、ここで一つ提案だ。実はこの今映っているモニター、そこの塔に繋がってる』
「は? 何を言って…」

 唐突な相手の言葉に勇が首を傾げるが、そこで突然モニターから手が出たかと思うと、モニターから画面に映っている男がこちらへと出てきた。

「な………」
「面白いだろ? マヨナカテレビってこちらじゃ呼んでた。この雨の降っている間、ここからあの塔、正確にはそこにある画面から中に入れる」
「そんな事が…」
「それで提案だ。今なら君と君の軍勢をあの塔の中に送れる。代りにちょっとばかりこちらを護衛してほしい。どうにも、話の通じそうな連中がいなくてね」
「………あんた、とんだ悪徳警官みたいだな」
「まあね」

 突然の提案に勇は戸惑いつつ、思わず笑みを浮かべ、相手も笑みを返してくる。

「その提案、乗ったぜ。守護は中に入ってから考えよう」
「OK、じゃあ雨が止む前に…」
「その前に、オレは新田 勇。ムスビのコトワリを掲げる者だ。アンタは?」
「ああ、足立 透。しがない警官さ」
「しがない、ね………」

 どこかうそぶく相手、透に頬を歪ませながら、勇は雨の降りしきる中、ノイズの走るモニターへと向かっていった。



 混沌の渦巻く中、光を探してあがく糸達。
 だが、闇へと導かんとする者達もまたあがき続ける。
 その結果待つ物は、果たして………





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