安田しん二レコーディング日記
私、安田しん二のスタジオ、FAB ROCKS REC. HOUSEでの奮戦記です。
FAB ROCKS REC. HOUSEはNon DIGITALにこだわった、
ANALOG専門のレコーディング・スタジオです。

2003年8月27日水曜日
 ちょうど1年前に録った「気になる僕の未来の行く末」ですが、あの時は生まれて初めてチャランゴを弾き、ケーナを始めて1週間もしないかみさんに無理やりケーナを吹かせ……、実に無謀でした。で、今回はそのケーナを“私が”演り直すのであります。フレーズもかなり変える事が可能になってるので、思いのままのフレーズを吹く事にしました。実はうちのかみさん、ケーナをあれから猛特訓し、今では私よりも巧いのですが、今日は他にスケジュールがあって来れません。ですので、ケーナ・ソロ(ソロまで出来る様に!)のところを後日2人でハモる事にし、その他のフレーズは忘れないうちに録ってしまおうと言う事で、今日は私一人でケーナを入れます。
 使うケーナはルーチョ・カブールのケーナ。私の一番のお気に入りです。以前、「くよくよしないぞ」と言う曲でこのケーナを吹いたのですが、その時よりはチューニングが何故か高いのです。これは吹く力が強くなったからでしょうか?
 さてフレーズを決め、いよいよレコーディング開始。ですが、マイクのセレクトが悪いのか、音が細い。2度ほどマイクを変え、やっと思い通りの音色になりました。マイクの立て方にも問題はあった様でした。ケーナの吹く息がマイクにぶつからない様にとばかり意識したせいで、テープへの入力が小さく、なんとも消極的な音色になってたのです。マイクに対してケーナが真正面では、“吹かれ”の問題は確かに有りますが、ここはヴォーカル用のウィンド・スクリーンを使う事で見事解決しました。バックの楽器は、フォルクローレの楽器ばかりではなく、歪んだエレキ・ギターやドライブしたベース、音圧の凄いドラムと、どれも音が強いので、ここは生楽器のケーナがパワー負けしない様に録らないといけません。勿論、吹く時にその様に演奏すると言うのが前提ですが……。
 テクニック的にもポルタメントやトリル、それにビブラートと使う事が出来、やはり1年間がんばって良かったです。しかし、本当の事を言うと、レコーディングには随分と時間が掛りました。楽器を吹いてる途中、湿気などで音が出し難くなったり、あまり吹きすぎて、指にタコ、唇は痒くなるし、腹筋には力が入らなくなるは、おまけにケーナが反ってきました。でも、なんとか最後までちゃんとプレー出来て、まあ一安心。
 レコーディングが終了し、かなり汗をかいてる事に気付き、近所の日帰り温泉へゴー!『赤沢日帰り温泉』と言う最近出来たばかりのスーパー銭湯ならぬ、スーパー温泉とでも言いましょうか、施設の充実振りは見事です。おまけにそこの露天風呂から観る景色の素晴らしい事!こんな所で思いっ切りケーナを吹いたら、さぞ気持が良いだろうなぁ……、でも、お風呂の湿気でケーナは(楽器は)辛いだろな……やっぱり…。

2003年8月28日木曜日
 今日は「気になる僕の未来の行く末」のチャランゴを録り直します。以前は、借り物のチャランゴを使い、レコーディングしましたが、今回はあれから一年、練習も相当しましたので、更にチャランゴらしいプレイが出来そうな気がします。前回のチャランゴのプレイ、先ず何が今と違うのか……。音です。前回のは爪がほとんど伸ばされていない状態で弾いたので、基音がかなり低いのです(チャランゴは爪が命……、でも当時はそんな事分からずに弾いてました)。ですから、逆にそのチャランゴのプレイを残して、新しくチャランゴを入れても、フレーズさえぶつからなければサウンド的には全く問題は無いので、元のプレイも残す事にしました(リズムの方も、あまり複雑なカッティングをしてないので、フレーズ的にもぶつかりにくい)。と言うわけで、今回はチャランゴよりもそれの一回り小さいワライチョの方が相性が良さそうです。ペドロ・ソトのワライチョを使う事にしました。ワライチョはボディーがチャランゴよりも一回り……二回りくらい小さいのですが、ネックの長さはほぼ同じ。ボディーが小さい分だけ弦長が短いのですが、私の場合それでもチューニングはチャランゴと同じ、(左、又は構えて上から)GCEAEと言うヤツです。チャランゴとワライチョ、弾き比べるとかなり音が違うのですが、レコーディングして他の楽器も入ったりすると同じ様な印象になります。その辺はチャランゴより逆に一回り大きいロンロコとは違ってきます。ロンロコは正しく“ロンロコの音”と言うの有りますが、ワライチョはチャランゴの音の下(低音)をスッと抜いてしまった様な音の為、その下の所に何か他の楽器の倍音か原音が入ってしまえば印象は大差無くなるのです。しいて言えば、ワライチョはチャランゴよりも深みの無い素朴な音です(“音色”は似てて“音質”が違うって言い方……、う〜ん、分かりにくいかなぁ)。
 ここで話は逸れますが、私が知ってるチャランゴの種類を紹介しておきましょう。
 チャランゴより一回りも大きいロンロコ、今回使ったワライチョ、それに私は所有してませんが、ソプラノやバリトンと言ったバリエーションも有る様です。それからポトシ地方で使われてる鉄弦チャランゴというのも有り、こちらは独特の奏法とチューニングで個性的です。ボディーも木で出来てる物や、キルキンチョと言うアルマジロの殻で出来てる、ゾッとする様な物も有ります。こちらは木の物よりもきゃしゃで扱い難い反面、音量は無いのですが味わい有る素朴な音が魅力です。
 それから、いつか『アンデスの家ボリビア』で見せて頂いた事が有るのですが、レネ・ガンボア作のギターとチャランゴのダブル・ネック、チャランギターなんてのも有ります。これがナカナカ面白い物で、チャランゴがギターの中に入れ子で入ってるのであります。音も、ギターのそれは“ザ”・ボリビアの音がしてました。チャランゴの方は、ギターと一体化してるお陰で、かえって持つ時に安定してて弾き易いという印象でした。ライヴなんかの時は威力を発揮しそうです。


ホームへ戻る レコーディング日記目次へ 前ページへ 次ページへ