安田しん二レコーディング日記
私、安田しん二のスタジオ、FAB ROCKS REC. HOUSEでの奮戦記です。
FAB ROCKS REC. HOUSEはNon DIGITALにこだわった、
ANALOG専門のレコーディング・スタジオです。

2004年1月2日金曜日
 あけましておめでとうございます。
 昨年は、年末になって「よすおさんの入院」と言う思わぬ事態でレコーディングがストップしてしまいましたが、今年は私もよすおさんもパワー全開でレコーディングのスパートを掛けて行くつもりです。
 ミラクルシャドウのセカンド・アルバムの完成も間近です。もちろん、楽曲、サウンド、どれをとってもファーストを凌ぐ出来になるはずですので、皆さん是非楽しみに待っていて下さい。

2004年1月8日木曜日
 新春最初のレコーディングです。実は正月に風邪をひき、いまだにそれを引きずってまして、今回は歌は厳しいかなと思ってます。なにしろ、凄い鼻声なんです。因みにここ、FAB ROCKS REC. HOUSEの室内の温度は8℃……。寒い……。

 「高校生になったら」の頭のハモリのギター、ただ一発だけチョーキングしてるだけなのですが、それをエディットします。エディットと言っても、ハード・ディスク上でやるのとは違い(ここは“アナログ・オンリー・スタジオ”ですので…)、録った音をエフェクトして(これもアナログ・エフェクターのみ)ピンポンするだけです。このチョーキング・ギター、たしかにちゃんと音を上げてるつもりなのですが、どういうわけか上がり切って聞えないのであります。多分、音が上がり切るところで、チョーキング・ギターの音が他の楽器の音に吸収されてしまい、聴感上でそう聞えるんだと思います。ですから、このチョーキング・ギターにディレイを掛けて、音を伸ばす事にしました。ディレイと言っても、デジタル・ディレイは使いません。懐かしのアナログ・ディレイを使います。アナログ・ディレイってフィードバックを上げ過ぎると、“キュワンキュワンワンワン……”って言う感じで、延々と音が続きます。それから、ついでにディレイ・タイムを掛ってる途中で短くして行きます。そうすると音程が段々と上がってくるので、それらを利用する事でこの問題を解決しようと思います。
 ディレイ・タイムを弄る役はよすおさんが演ります。私はテープを回します。よすおさんがディレイ・タイムを弄ってる時に、同時にテープ・スピードを落として行きました。こうする事で、録れた音の音程が更に上がります。数回チャレンジしたところで、「これ、良いじゃん!」と言うテイクが録れました。私達の感覚だと、そんなに時間を掛けたつもりはありませんでしたが、時計を見ると結構時間が経ってました。

 続いては同じ曲、「高校生になったら」のタブラを録り直す事にしました。元々のテイク、音は良いのですが、どうもリズムが所々モタって聞えるのです。
 タブラはインドの民族楽器の打楽器で、楽器スタンドなどは無く、この写真ですと写ってませんが、地ベタに丸い輪っかを置いて、その上にタブラを乗せてプレイします。
 変わってるのは、ヘッド(皮)の上を手で擦ることも有り、その時用にベビー・パウダーを使います。ですからよく、プレイする度に白い粉煙が発ってしまいます。
 さて、音を創り、いよいよ本番。それからプレイを試みる事数回、やっとOKを出しましたが、余り“カンカン”と言う様な、タブラらしい音ではなかったので、またまた再度演り直しました。その結果、今度はかなりタブラらしい音で録れました。
 やはりタブラを録り直した事で、楽曲の勢いが増しました。

 今日のレコーディング、私の体調が余り良くないので、集中力もこんなところで限界が来てしまった様です。今日のところはここで御開きです。

2004年1月9日金曜日
 風邪が直らず、ちょっと苦しいですが、今日もレコーディングを続けます。

 「君がいるから」〜「くよくよなんかしないぞ」のメドレーの後半部分、フォルクローレ(「くよくよなんかしないぞ」)のところのサンポーニャを入れ直します。以前入れた時のテイクは、私のプレイが下手くそでほとんど使い物にならないので、フレーズを含め、全てやり直します。
 使うサンポーニャはペルー製のマルタで、ボリビア製のに比べると低音管が太めになってます。チューニングはA=440hzよりは多少低めです。音が低い場合は、管の中にお米とかを入れてチューニングを上げます。それも管によって、バラつきが有るので、お米の量はそれぞれ違います。私はヘッド・フォンをしてるので、よすおさんが「ン〜、その音は少し低いなぁ〜」とか言って、音程のチェックをしてくれます。

 結局、午前中は2トラック録りましたが、後で聴いてみて、チューニングもまだ怪しいし、フレーズ的にもどうもしっくり来ないので、午後からまた全て録り直しする事にしました。フレーズはもっとシンプルな感じにする事にしました。とりあえず休憩と気分転換も兼ねて、外へ御飯を食べに行く事にしました。と言うわけで、大好物の『福々亭』の塩ラーメンを食べ、帰りにウォーキングをして、スタジオに戻り、サンポーニャの録り直しです。
 鼻がつまっててサンポーニャを吹く状態としてはかなり辛いものが有りましたが、なんとか無事終了。今日のところも、早めですがここで御開きです。

2004年1月20日火曜日
 いよいよ「君がいるから」〜「くよくよなんかしないぞ」のメドレーの後半部分、フォルクローレ(「くよくよなんかしないぞ」)のところのケーナを入れ直します。実はもう余分なトラックは一切無い為、意を決して元のテイクは消さなくてはなりせんが、今回はチャランゴ、ワライチョ、ロンロコの3本の棹モノも録り直す事にしたので、そこのトラックから使っていきます。いずれにせよ、結局はトラックを消すのですが、やっぱり録った時は最高の出来だと思ってたものなので、最初は消すのに尻込みしてしまいました……。トラック・シート(どこのトラックに何をレコーディングしたかを記とく表。レコーディングでは、これがないと大変な事になります)を見ると、この曲のケーナなどを録ったのは大体1年程前と記してありました。私はトラック・シートには、録ったパートとその日付は勿論、どんな機材を使ったかも書いておきます。ですから、トラック・シートを見ると、当時使ったマイクとマイク・プリ・アンプ、コンプレッサーなども分かるわけです。これは私にとって、料理人で言うところのレシピ・ノートの様な役目もしてくれます。
 さてと、使用するケーナは私が自作したモノです。これぞ「自分で創った曲を、自分で作った楽器を使い、自分でレコーディングする」と言う、究極の自給自足的録音!なんのこっちゃよく分からなくなりましたが、何しろ、勿論自分が作った楽器を使って録音すると言うのは初めてですので、私はとてもカンゲキしております。……と息巻いたのは良かったのですが……。……結局主旋律は自分の作ったケーナを使いましたが、下のパートはルーチョ・カブールのケーナを使いました。ケーナはあまり長く吹いてると、唾液とかで音が出難くなる気がします。私のケーナの歌口は、ルーチョのケーナのをほぼコピーしたものなので、楽器を持ち替えた時でもそれほど違和感は有りませんでした。
 それから今回は、この2本のケーナの他に、裏メロのパートも入れてみました。ですが、毎回入るわけでは有りませんでして、この曲は1コーラスを全部で4回繰り返すのですが、その最後の回にだけです。ところが、やはり同じ楽器で裏メロを入れると、音域で干渉し合い、音が抜けて来なくなります。そう言う場合はミックスの際に何か工夫をするか、それでもダメならすっぱりと諦めるつもりで、一応録っておきました。
 やはり、ケーナを録り直してみて、以前のモノより良くなったと言う印象は有りました。明日は、これらのケーナをピンポンしてトラックをまとめ、いよいよ棹モノです。

2004年1月21日水曜日
 先ずは、昨日録った「くよくよなんかしないぞ」のケーナをピンポンしてまとめます。“ピンポン”と言うのは卓球やお寿司のたくわん&きゅうり巻の事では有りませんでして、レコーディングのスタジオ用語です。何の事かと申しますと、例えば、私達がレコーディングで使うMTR(マルチ・トラック・テープ・レコーダー)には24つのトラックが有り、24種類の楽器や歌などのパートを録音しておく事が出来るのですが、これが意外とアッという間に埋まってしまうのであります。コーラスなどは3声を1人で重ねると、もうそれだけで3トラック埋まってしまうわけです。それらを1トラックにまとめると、また2つのトラックが空く事になります(正確には移籍先を3トラックの隣のトラックにはまとめられませんので、移籍先には最低でももう一つ隣のトラックを使います。そして、1トラックを新たに使う事により、元の3トラックを空ける事が出来ると言う事です)。つまりその、トラックをまとめる事を「ピンポン」と呼ぶのであります。
 午後はチャランゴとロンロコ(チャランゴを一回り大きくしたもの。私はチャランゴより5度低くチューニングしております)、ワライチョ(チャランゴを一回り小さくしたもの。今回はチャランゴと同じチューニングにしました)を録り直します。それぞれ使うマイクロフォンとマイク・プリ・アンプを別の物にしてレコーディングして行きました。ロンロコを録音してる最中、指をフレットの端にぶつけてしまい、切れてしまいました。痛い〜。でもなんとか無事終了し、今日も早めですがこれでレコーディング終了です。

2004年1月22日木曜日
 今日は去年の10月録り始めた曲を演ります(インディアン・フルートで始まるやつです)。どういうわけか、この曲のレコーディングは途中で止まったままでしたが、実はこの曲はタイトルも決ってませんし、詞もまだ完成してないので、とりあえずここではタイトルを「永遠の踊り子」とでもしておきます。
 先ずは例によってケーナです。最近、ケーナを吹く機会が随分多いですが、ピッチの方もやっとA=440hzまで上げられる様になりました。ニュアンスもけっこう良い感じで付いてきましたよ。と言うわけで、この曲にケーナを入れましたら、私はグッと来てしまいました。これぞ自画自賛!……お恥ずかしい……。
 それからクラップを入れました。マイクもマイク・プリもコンプも全て1950年代頃の機材を使いましたが、これが中々雰囲気有ります。今日は感激する事が多いなぁ〜。でも集中し過ぎて疲れてしまいました(この根性無しがぁ!)。今日はレコーディングはこの辺で終り。夜はよすおさんと鍋をつつき、酒を飲みながらケーナとチャランゴでセッションしてました(毎晩ですが…)。

2004年1月23日金曜日
 「永遠の踊り子」にメロトロンを入れる事にしました。私のメロトロン、テープが戻らない時が有るので、裏で誰かが見てないといけないのです。ですが、FAB ROCKS REC. HOUSEでの作業は私とよすおさんの2人。結局、よすおさんがテープのレック・ボタンを早めに押し、その後私がメロトロンを弾いてる場所に移動して、その個所が終ったら直ぐさまコントロール・ルームに戻り、そしてレック・アウトすると言う方法しか無かったので、そのやり方で録音しました。プレイ中に私が「あっ!間違えた!ゴメン」と言うと、よすおさんは(メロトロンのテープの戻りを座って監視してるので)メロトロンの後で立ち上がり、コントロール・ルームへ駆け足で戻ります。何回やった事でしょうか?よすおさん、ごくろうさん……。
 その後は、サイド・ギター&ギター・ソロです。ギターはギブソン335を使い、マーシャル・アンプ(今回初登場かな?)をなんとウーマン・トーンで演りました。但し、ソロに関しては、ウーマン・トーンですとどういうわけか弦の音量バランスが相当崩れたので、ファズを使いましたが…。それでもかなり昔っぽいです。
 後は曲頭にもうちょっとダビングをすると、この曲のオケはほぼ完了になりますが、それは後日に演る事にします(さぁ〜、何を入れようか!)。

2004年1月26日月曜日
 今日は「永遠の踊り子」の頭のところにバンジョーを入れてみようかと思い、よすおさんにオープン・バックのバンジョーを借りて来て貰いました。ところがこのバンジョー、何処かの倉庫に永年眠ってたと言う物で、見るからに怪しいです。トップに張ってあるヘッドも、レモとかのしっかりした物ではなく、弦も本来5本有るところ4本しかないです。しかも、弦が4本しかなくてもテナー・バンジョーとかではなく、明らかに元は5本目が有った跡が有ります。
 オープン・バックのバンジョーとは、普通のバンジョーとは違い、ボディーの裏側が無く、そのまま開いてる物です。普通ですと、ここに「リゾネーター」と呼ばれる木の部分が有るはずなのですが、それが無い分音量は有りませんが、音は柔らかく素朴な感じがしますです。モダン・フォークなどで良く使われる事が多い様です。例えば、或るメーカーの製品どうしを比べてみても、リゾネーター付きの物に比べ、それが無い分安く、廉価製品ですと最近では2万円位で買える物も有るようです。そうなると私も色々考えてしまいました。私はそんなの(2万円位の廉価製品)で充分なのじゃないかなぁ〜と。結局、多少の調整は必要としても、ヘッドはレモ社製であり、オープン・バックと言う事で、木の部分はネック部分の他にはサイドだけなわけです。と言う無理やりな納得の付け方で、電話注文(本来はインターネットでする事が出来るのです…)してしまいました!品物は在庫がメーカーにしかない為、木曜日の午前中にFAB ROCKS REC. HOUSEに届く事になってます( ^^)V。

 続いて、「気になる僕の未来の行く末」のテープをセットしました。
 実はこの曲のドラムの録音時、最後の方でバス・ドラムのペダルのスプリングが外れてしまい、そのままプレイしてるのです(ツイン・ペダルの左足側でしたので、ツイン・ペダルを使用時以外は問題がないのでしたが…)。その当時は、ベースと一緒にノン・ストップでプレイしていて、ノリも良かったのでそのままにしてたのですが、今聴くと音の方もなんとなく抜けが悪くなっています。つまり音のサウンド像が大きすぎて、ドラム・サウンドの占領度が高く、他の楽器のダビングを沢山重ねた今となっては、ドラムと他の音とで陣地争いをしてしまっていて、それらの相性がギリギリのところまで来てしまってるのです。でもそれは、それ程致命的な問題でも無く、あまり神経質になる必要はないのではとも思ったりしてしまいます。本来、こう言う時は試しに録ってみるのが一番良いのですが、実のところトラックの余りは無く、「一応録っておいて、悪ければ元のを使おう」と言う様な余裕は有りません。ここはキッパリと決断する必要が有ります。よすおさんと2人で聴いてみても、「直さないでも別におかしいと言う事はない」と話すのですが、でもやっぱり「迷う様なら思い切って演り直せ!」が私達の鉄則なので、思い切ってみる事にしました。今日はその準備をして明日の午前中にトライします!

2004年1月27日火曜日
 今日は「気になる僕の未来の行く末」のドラムの差し替えです。色々とこだわって演ってたら、結局1日経ってしまいました。予定を大幅に遅れさせてしまいましたが、かなりイメージが変りました。他の音とも相性良いです。よすおさんと「明日はついでにベースも演り直そう!」と言う事になりました。おいおい、このままどんどん録り直して行くんじゃあないだろなぁ……。そんなバカなぁ。

2004年1月28日水曜日
 「気になる僕の未来の行く末」のベースを録ります。実は昨日ドラムを録り終り、トラックが1つだけ余ったので、其処にベースを入れる事にしました。使用するベースは前回と同じ、ギブソンのSGベース、EB−IIIです。よすおさんがベースの調整をしてる間、私はマイクとかのセッティングをし、ベースの調整が終わるのを待ちます。
 音の方も前回のベースと聴き比べられるので、案外早く前回のレベルまでは上げる事が出来ました。後は付加価値分のレベル・アップです。前回は何も録ってない所にいきなりドラム&ベースで録ったので、今回は他に録ったトラックなどとも聴き比べることにより更に良い抜け方をして来ました。そうこうしてるうちに、音色も決まり、いよいよレコーディング開始!……と思ったら、アッという間にテイクを録りあげてしまいました。よすおさん、流石!

 今日はいよいよ「朝日を見に行こうよ」のリニューアル版のレコーディングです。色々事情も有り、今日はこれを仕上げないといけなくなってしまいました。
 「朝日を見に行こうよ」のリニューアル版ですが、以前、1stアルバムの時のマルチ・テープから、胡弓(二胡)、ドラムス、パーカッション、リード・ヴォーカルを取り出し、新しいマルチ・テープに移植し、それに新たにベース、ピアノ、それにフレットレス・ベースを入れたままの状態で放ったらかになってたのです。先ずはそれを聴いてみます。すると、思ってたよりもピアノの音の重心がちょっと高いかなとも思いましたが、ま、問題はないと思います。
 と言うわけで、エレキ・ギターのバッキング・パートとソロ・パートを録る事にします。バッキング・パートはリッケンバッカー360とヴォックスのアンプと言う、我々にとっては定番な組み合わせで演りたいと思います。基本的には、1stのバージョンと同じ様に入れるつもりですが、あまり淡々と演るべきではないと思い、先ずは私が弾くと言う事にしました。ピアノの倍音を意識した所為か、ギターの音も硬めに調整します。
 後半(最後のサビの後)のリズミカルになる所のカッティングはかなり良くなったと思います(私は自称、ナイル・ロジャースと言ってましたが、よすおさんに笑われてしまいました)。ここには新たにフレットレス・ベースが入っていて、音に厚みも出てます。
 そしてお次は、ギターのソロ・パートを録ります。初め、何か笛の様なモノで演ろうかとも思ったのですが、やはりエレキの印象が残ってるのと、「最近笛ばかり吹いてる気がした」と言う、ちょっと気まぐれな感覚で、エレキのソロと言う事にしました。やはりここはビブラート・アームを使いたいので、テスコのスペクトラム5を使います。勿論、アンプのリヴァーブは掛けたままで録ります。

2004年1月29日木曜日
 今日は「朝日を見に行こうよ」の続きです。その前に発見、ピアノの音ですが、2トラック使ってたので、私はてっきりLRでステレオだと思ってたら、なんと1本はバーカスベリーのピック・アップで録った、高域用予備チャンネルだったのです。ですから、同じ音量を出すと重心が高くなってしまうのは当たり前。これで少し気が楽になりました。しかし、そうなると昨日のリッケンで録ったギターとの相性が崩れてしまいます。……ン〜、困った。
 問題は後回しにして(いいのか?そんな事で!)、今度はリッケンの12弦入れます。弾き手はよすおさん。実は私は、リッケンの12弦は330と360の両方持ってますが、今回は360で演ります。私の330はハイ・ゲイン・ピック・アップが付いていて、360のよりもパワーが有る分、ソロやリード・パートなどで良く使いますが、360の方はトースター・トップ・ピック・アップが付いていて、今回のようにバッキングなどで「いかにもリッケン!」と言う音を演出してくれます。入れるのは前奏のみ。“ジャラ〜ン”と弾き、昨日のリッケン360の6弦とでステレオ効果を出すつもりです。

 さて、そうこうしてると、宅配便屋さんがやって来ました。私が注文したオープン・バック・バンジョーが届いたのです。今回買ったのは、BLANTONと言うメーカーの物で、『イシバシ楽器』のウエブ・サイトで注文し、送料と消費税を入れても2万円弱と言う強力なコスト・パフォーマンスを誇るモデルです。友達にコレを買った事を言うと、「えっ!?2万円の楽器なんかでレコーディングなんかしちゃうのぉ?」と言われましたが、私のイメージに合ってれば、いくらの楽器であろうと良いんですぅ。
 さて、この楽器どんなもんでしょうか?だいたい、棹物は特にそうですが、「現物を弾かずに買う」と言うのは結構タブーなんですよね。ですから、かなりの賭けでもあります。「2万円の馬券を買ったと同じ様な……」いやいや、そんな楽器に可哀想な事を言っちゃいけませんね(反省)。荷物は段ボールの箱に入れられて送られて来ました。中を開けると、ソフト・ケースがあり、その中に更に何かで包まれてました。流石新品!さて、いよいよ楽器との御対面です。「ジャジャァ〜〜ン!ベビィちゃ〜ん!」(私はよく、こう言います)、出て来ました出て来ましたよぉ〜、オ〜プン・バァ〜ックのジョンバァ〜がぁ(因み今回はオチは有りませんので、期待なさらないように)。キレイデス……、当たり前かぁ、新品なんだからね。私はいきなり弾いてみました。嬉しいです。やっぱり「楽器を買う」と言うのは……。暫く弾いてると、よすおさんに「おい、チューニングぐらいちゃんとしろよ!」と叱られてしまいました。ま、たしかに。でたらめの調弦で弾いてても、なんの音楽かわからない怪しいモノ(それが音楽と呼べるモノなのか)でしか有りませんし、ま、普通は聴いてる人が気持ち悪くなってしまうでしょう。「ハイ、よすおさん!」と私はすぐによすおさんにバンジョーを手渡しました。私はピアノ所に行き、「Gの音で良い?」と言って、ピアノのソの音を出してあげました。よすおさんがちゃんと調弦したバンジョーを弾く音を聴くと、これがかなり良い感じです。やはり、借りてきた怪しいバンジョーとは全然違います(あちらはやっぱり、ヘッドが良くないのです)。ペグとかはやはり安っぽいですが、馬券…いや2万円のバンジョーは大合格でした。ただ、やはりまだ新しいので、フレットがざらついています。しかし、これは弾き込んで行けば良い事ですので、問題なしです。このバンジョー、ソフト・ケースと「誰でもすぐ弾けるバンジョー・ブック」なる物が付いていて、この小冊子がなかなか面白いです。バンジョーの歴史や、種類なども紹介されていて、勉強になりました。

 バンジョーとの御対面式を終え、「朝日を見に行こうよ」のレコーディングに戻ります。
 さて、次はよすおさんにマーチン000−28、アコースティック・ギターを弾いて貰い、バッキング・パートを構築して行きます。この6弦アコースティック・ギターのパートは、新品の弦でキラキラした感じにするではなく、中域の胴鳴りにスポットを当て、そのかわり、キラキラした高域の倍音がところが欲しい所には、別にギルドの12弦ギターを入れました。
 続いては、「朝日を見に行こうよ」のBとインター部分にヴォックスのコンチネンタル・バロック・オルガンを入れます。このオルガン、ハモンドとはちょっと豪華さが違い、こちらの方がチープな音です。昔、イエスの初代キーボーディストのトニー・ケイが、ステージ上でこのヴォックスのオルガンをハモンドに見せかける為、木の板で枠を作って周りを囲んでたところ、何かのひょうしにその板が倒れ、このオルガンがハモンドでない事がお客さんにバレちゃって、赤っ恥をかいたと言う事を聞いた事がありましたっけ。

 さて今日のメインは、オープン・バック・バンジョーとの御対面や「朝日を見に行こうよ」のレコーディングだけでは有りません。いよいよ…、いよいよメロトロンのテープを掛け替える事を決心しました。以前から、予備のテープを持ってたのですが、これをメロトロンのラックに付け替えるのは大変な作業と聞き、躊躇しておりました。しかし、メロトロンと言えばやはりコーラスです。私の今までのテープにはコーラスは入ってなかったので、当然メロトロンを使ってもコーラスは登場しませんでしたが、いよいよ大決心し、メロトロン・コーラスを登場させる事にしました。
 作業は「大変そうだなぁ…」とビビってる、相棒のよすおさんと2人で行いました。言い忘れましたが、私の持ってるテープは、子どもの手の平位の大きさの小さなリール、3個に分けられて有ります。メロトロンの鍵盤数(=テープの数)は35ですので、1個のリールは11〜12本のテープが、それぞれテープ編集用の粘着テープで直列に繋がっております。元のテープを他のリールに移し、それからラックに新たなテープを掛けて行くのですが、聞いた話ですと、慣れてる人でも2人掛りで半日作業と言う事でしたので、相当の覚悟が必要です。よすおさんが、「先ずは1本だけ取り換えてみようか」と言うので、それを実行しました。この1本だけ取り換える作業に2〜30分は掛ったのでしょうか。単純に考えただけでも「30分×35回」は気が永い話です。私はよすおさんに「どうやれば一番効率が良いか、常に考えながらやろうよ」と言いましたが、2人の役割を上手く分けれる様になったのは既に3個目のリールに入った頃でした。ですが、最後の1個は45分程度で出来てしまったので、最初の1個目に比べるとかなり効率を上げる事が出来ました。作業に入ったのが20時30分頃で、1個目のリールを付け終った時点で22時を過ぎていて、更に全体の作業終了が0時30分頃でしたので、だいたい4時間位掛ったのでしょうか?夕食の時間になったのは、午前1時を過ぎてからでした。
 しかし、メロトロンのコーラスの音はやはり圧巻です(余談ですが、私のテープはストロウブスが使ってた物です。ですからテープのリールにその事が書かれています)。
 今日は、ヘトヘトに疲れたのと、“憧れの”コーラスの音を使えると言う感動とが入り交じってますが、どっちにせよ明日からが楽しみです。
 よすおさんもおつかれさん。

2004年1月30日金曜日
 昨夜は就寝が朝方の4時半をまわってましたが、私はいつも起きる8時には目が覚めてました(年寄りの様だ)。
 今日は「朝日を見に行こうよ」のサビにメロトロンを入れます。勿論、昨日付け替えた音、コーラスを使います!テープを付け替えた事で変わった事、なんとメロトロンの調子が以前よりも良くなりました(例えばテープの戻り、何故かピッチも安定してます)。
 このメロトロンを入れた事でかなりイメージは壮大になりました。
 メロトロンの後は、ローズ(エレクトリック・ピアノ)を入れます。と言っても、ほとんどパット代わりで、音の広がりを付けさせる為の裏技ですが、場面によって、昨日録ったアコースティック・ギターとどちらかが中域をカヴァーする様な感じで使いたいと思います。
 さて「朝日を見に行こうよ」の最後は、歌にダブリングを加えます。普通はデジタル・ディレイかハーモナイザーなどでやれば簡単ですが、勿論私達は実際にもう1本歌って、完全アナログ方式をとります。ピッチやタイミングは勿論、息の抜き方やビブラートなど、元のヴォーカルにピッタリになる様にします。ダブリングを録る場合、わざとラフに演る場合も有りますが、あまりラフに演り過ぎると、かえって歌がサウンドの奥に引っ込んでしまう事も有るので、その場合は要注意です。
 「朝日を見に行こうよ」はこの時点で一旦終了です。ラフ・ミックスを創って、後日それを聴きながら、客観的な判断をして行くつもりです。何か更に良いアイディアが出ましたら、勿論実行するつもりですが、今のところはここで完成です!ヤッホー!

 今日は、最後に「永遠の踊り子」の頭にバンジョーを入れます。バンジョーはよすおさんが弾きますが、イメージ通りになりました。
 そして、最近書き上げたばかりの歌詞で仮歌を録り、ラフ・ミックスを創ります。歌詞のチェックや、サウンドのチェックはこれで後日に回しますが、正直言って何かもう一味欲しいところです。いよいよ“必殺、アルパ”の登場でしょうか?


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