安田しん二レコーディング日記
私、安田しん二のスタジオ、FAB ROCKS REC. HOUSEでの奮戦記です。
FAB ROCKS REC. HOUSEはNon DIGITALにこだわった、
ANALOG専門のレコーディング・スタジオです。

2004年2月1日日曜日
 今日はレコーディング中日(なかび)ですので、レコーディングは行わず、先日のレコーディングで創ったラフ・ミックスを聴いたりしています。実は、「ラフ・ミックスを聴いたりする」と言うのは私にとって、レコーディングをするのと同じくらい大事な時間です。
 私はなるべく毎回、CD−Rにその時レコーディングしてる曲のラフ・ミックスを創る事にしています。ラフ・ミックスに掛ける時間は、バランスをとるだけでも10〜20分程度掛りますが、時には30分以上掛ける事も有りますし、張り切って1時間掛ける時も有ります。ま、その時の気分でかなりラフなものを創る時と、わりとしっかりしたものを創ってしまう時が有りますが、どちらにもそれなりのメリットが有るのです。
 私は、そのどちらのタイプのを創る時でも、いずれにせよあらゆるチェックが出来る様なものを創る様に心掛けています。それから、それを聴いてる時に新たなアイデアが浮かぶ事も有ります。ラフ・ミックスを何度か繰り返し創る事で、よすおさんにも私が目指したい方向性がより明確に伝わり、ミックス・ダウンの本番で私が方向性を見失いそうになった時にアドバイスを貰える事も有り、私はラフ・ミックスを創る重要性をとても感じます。

2004年2月2日月曜日
 今日は外は雨が降っています。レコーディングは夕方から行われました。
 今日は先ず、「雲の上から」からです。先日購入した、オープン・バック・バンジョーをよすおさんが弾きます。フレーズを決め、サビの所にスリー・フィンガー風に入れて行きます。この個所には既にアコースティック・ギターのスリー・フィンガーが入ってますので、バンジョーもスリー・フィンガーを演ってしまうとゴチャゴチャになってしまいます。ですから、音数を整理して入れるつもりです。ですが、シンプルにしたつもりがかえって弾き辛くなってしまい、ちょっと慣れも必要と言う事になり、これは後日に回す事にしました。
 よすおさんが寝室に篭り、バンジョーの練習に入ると、私はその間にこの曲の歌をチェックして行きます。実はメロトロンのピッチにつられて歌ってる所が数ヶ所有り、そこのピッチの直しと、後はほんの1文字なのですが、譜割がおかしい個所が有るので、そこを直そうと言うものです。歌は一度オケ無しの素の状態にして聴いてみます。それからエレピと歌だけで聴き、その後全部のオケを出して聴きチェックします。全部出来上がった時点でよすおさんにもチェックして貰い、おかしい所を再度演ります。そこで分かったのが、メロトロンのストリングスが全体的に高い事でした(それまではそれで歌ってた)。エレピと歌だとバッチリなのですが、メロトロンのストリングスを出した途端に歌のピッチが低く聞こえてしまうのです。因にエレピとメロトロンのストリングスですと、一聴しただけでは分からない程度(真ん中のAで言うと0.5hzもずれてはいないはず)ですが、それでもやはり高いと感じました。不思議なもんで、メロトロンなんて言うのは本来ピッチがかなり揺れてて当たり前なのですが、際どいとそれがかえって歌のピッチに干渉してしまうのです。これはメロトロンに限らずどの楽器でもそうで、私達の様に昔の楽器を使ったり民族楽器を多く使うレコーディングではとてもシビアな問題なのです。ですから、チューニング・メーターだけではなく、必ず歌との関係でピッチを合わせて行く必要が有るのです。
 さて、と言う事で、サビに登場するメロトロンのストリングスを録り直しました。これで気持ち良く聴けます。メデタシ、メデタシ……。

2004年2月3日火曜日
 今日は午前中のみです。先ずは「雲の上から」のサビによすおさんがオープン・バック・バンジョーを入れます。少し硬くなってるのでしょうか?ノリがいつもよりぎこちないです。よすおさんはヘッド・フォンの片耳を外してプレイしてるので、Bメロを聴かせる時にスピーカーからオケを流し、サビの直前でその音をしぼり、そしてレック・ボタンを押します。その所為かは分かりませんが、暫くするとノリがつかめて来た様です。こうなるともう早いです。因に1番〜2番〜3番と言う順序で録って、ノリが良くなって来たら、もう一度1番を録り直したりしました。それから、サビの他に、1番と2番の間の短いインターの所にもバンジョーを入れ、試しにイントロにも入れてみました。しかし聴いてみると、イントロにはやはり入れないほうが良いと判断し、すぐにバイアスを掛けてしまいました(消す事)。因に私達のレコーディングでは、「念の為残す」と言う様な事はあまりしません。プロ・ツールスなどと違ってトラック数には限りが有りますし、「レコーディングはドキュメントだ!」がモットーの私達は、その時の判断を大切にしたいと思うからです。不思議な事に、「やっぱり残しておけば良かった」と思う事は、私達の場合ほとんどと言って良いほど有りません。
 さて、続いてはお待ちかね(?)、ペダル・スチール・ギターの登場です。よすおさん、結構良い感じです。これもサビだけの登場です。結局、この曲はサビの部分がカントリーや昔のカレッジ・フォークな感じで、それ以外はメロトロンなどをふんだんに使ってブリティッシュな感じになってます。今回は、カントリー系の楽器をよすおさんが、ブリティッシュな感じを私が担当し、「2イン1」的な不思議なサウンドになりました。

 と、ここで大事件発生!MTR(マルチ・トッラク・レコーダー)が故障してしまいました……(ーーゞ。ところが偶然、今日は午後からはゲストの青ちゃんがここに来て研究会をするつもりだったので、青ちゃんに相談する事にしてみました。故障と言っても、動くには動きます。ただ、そう言う状態で無理やりにMTRを動かすと、後で取り返しのつかない事に生りかねません。メーカーももうこの時間じゃあやってないだろうし、今日はどうせ何も出来ないので、「今この事を考えても暗くなるだけなので、忘れよう!」と言う事になりました。流石青ちゃん、良い事言います。青ちゃんが明日の朝一でメーカーに連絡を取ってくれるそうです。と言うわけで、いきなり気分が楽になり、悠長に飲み会が始まってしまいました(いつの間にか、“研究会”が“飲み会”になってしまってた)。
 それにしても、私達が困った時には、いつもスーパー・マンの様に現れてくれる我らが兄貴分の青ちゃん(青ちゃんマンです)、いつも頼りになります(それとも青ちゃんが来るから困った事が起きるのか……、うそうそ、うそですよぉ)。

2004年2月4日水曜日
 朝になりました。MTRが壊れた件ですが、さてどうしましょう…。コントロール・ルームに行ってMTRを診てみましたが、やはり自然治療はなされてません。当たり前です……。
 青ちゃんがオタリテックに電話してくれてます。オタリテックの技術者の方に伊豆まで来て貰う事になるのですが、来週の私の予定となかなか都合が合いません。すると先方さん、「今日はいかが?」と。。。。ラッキー!今日が1番ベストですよ!しかし、故障カ所を説明してると部品の在庫が1つ無い事が判明……。やっぱり、そうは都合良くは事は運ばないもんです。そこで青ちゃんマンの「ねえ、なんとかならないの?ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ……」の必殺“ねえ攻撃”。その結果、オタリさんから折り返し連絡を貰える事になり、一度電話を切りました。そして待つ事ホンの数分、「有りましたぁ〜!1個だけ有りましたぁ!」。青ちゃんマンの必殺“ねえ攻撃”のお陰で、必死に探してくれたのでしょう。「俺も今度使おう!ねえ攻撃!」って、それは青ちゃんが演るから効果があるのです。私なんぞが演ったら、どっかのバカか変態にしか思われないと思います。注意しましょう。
 結局、午後3時頃には来てくれる事になり、それまで私達は伊東の干物屋さん、『山国』に行って青ちゃんのお土産を買いに外へ出ました。ここの干物屋さん、私とよすおさんは“顔”です。よすおさんは昔、この辺りの干物屋さん全部に行ってみて、ここが一番良いと思ったのだそうです。因に私は焼き魚って一切食べられないのですが、ここの干物だけは「うめえ〜!」と言って食べれるのです。お店の人達もとても親切で、私達は一度行くと結構長居してしまいます。今回青ちゃんを初めて連れて行きましたが、彼は試食で焼いてくれた干物を食べ、目から鱗状態、感動してます。青ちゃんのいつものパターンとして、目が真剣モードになり、興奮してるのが分かります。干物を食べてるのにエンジニアリングをしてる時の青ちゃんになってます。でも、頼むからここでは“ねえ攻撃”しないでね(この後、興奮してしまった青ちゃん、ここに大事なバッグを忘れて行くのです)。
 この後、「せっかく伊豆に来たんだから、寿司を食べに行こう!」と言って、青ちゃんを寿司屋に連れて行くのですが、青ちゃんはさっきの干物の感動が忘れられず、「寿司のインパクトが干物のインパクトに負かされてしまう」と言うのです。寿司が干物に負ける……、凄い事です。でも、寿司も美味しかったですが…。
 寿司を食べた後、駐車場で車に乗り込もうとしたら、私達の目の前をオタリテックの車が通って行きました。「おっ、随分早いなぁ。まだ2時だぜ!」。私達は焦って後を追いかける事になりました。スッタモンダの末、オタリテックの車と途中で合流成功!
 この後、オタリテックのI氏の尽力でFAB ROCKS REC. HOUSEのMTRは見事復活を果たしたのでした。ありがとうございました。

 さて、今日はMTRも直った事だし、「朝日を見に行こうよ」のBメロにアルパでアルペジオを入れようと思います。青ちゃんがせっかく来てるので、録るのをお願いしちゃいました。よすおさんにはディレクションとテープを回して貰う役目を演ってもらい、私はアルパを弾きます。このアルパと言う楽器は、南米産のハープで、私のはペルー製。ペルー製は基本的にはガット弦が張ってあるのですが、高音部だけはスチール弦なのです。ですが、今回はそのガット弦の所の音域だけを使いました。これはアルパを知らない人が聴きますと、多分ガット・ギターと日本の琴の中間の様な音に聞こえると思います。

2004年2月5日木曜日
 今日はどうも調子が出ません。段々私達は“朝型”から“夜型”になって来てる様です。朝起きた時間も10時半位でした(いつもは私が8時頃に起き、よすおさんを9時頃に起こします)。
 と言うわけで、夕方までウォーキングをしたり、アコーディオンを弾いたりしてました。話しは変りますが、私のアコーディオン、凄く重いんです。マジで弾いてると、次の日は筋肉痛になります。

 「さあ、何もしないのもなんだから、そろそろ演らなくちゃ」…って事で、「永遠の踊り子」の歌を録ります。この曲、先日ラフ・ミックスの仮歌を聴いて、その後歌詞をかなり直しました。それから、思ったよりキーが低いので、結構大変かもしれません。
 この歌録り、ウォーミング・アップにはかなり時間が掛かりましたが、結局なんだかんだで1時間程で録り終わりました。それからよすおさんとチェックに入ります。ところが、この曲のオケのピッチ感もかなり微妙な感じで、歌のピッチもちょっとのところでおかしく聞こえてきます。メロトロンが入ると必ず起きるのですが、今回はそれだけでは有りません。チャランゴ、ケーナなど、独特のピッチ感を持った楽器を使ってるので、色々と大変なのです。それから、2本のエレキ・ギターも微妙なピッチ感で雰囲気を出してます。今回はかなり苦労しそうです。
 歌のピッチのチェックですが、今回は先ずは歌とギター1本とで聴きます。その次にベースともう1本のギターとで。それからアカペラで聴き、最後にオケ全体とで聴きます。大体この4つのパターンでチェックして、1つでも疑問が残ったら、演り直します。最終的には、オケ全体で聴いてOKなら問題は無いと思われますが、今回はそうではない様です。例えば、上手く演ると、この4つのパターンのどれを聴いてもOKになります。つまり、ミックス・ダウンをして、CDになった時に、リスナーはそれぞれ色々な状況で聴く事になるわけですが、その状況によってのオケとのバランスで聞こえ方は違うのです。例えばベースとだけピッチ感が悪かった場合、低音がよく出るスピーカーなどで聴いた時に、歌のピッチが悪く聞こえるのです。その逆も有りますし、色々なパターンでそう言う事が考えられるのです(ヘッド・フォンやカー・コンポなどでも)。これは私達の様に、昔の楽器や民族楽器などを使ってレコーディングしていると、よく起こりうる問題です。

2004年2月6日金曜日
 「永遠の踊り子」のレコーディングは更に続きます。
 今日は、この曲のサビに更にもう1本のギターを入れるつもりです…、と言っても、エレキではなく、アコースティック・ギターで。アコースティック・ギターはマーチン000−28を使い、よすおさんに弾いて貰います。最近のよすおさんは、リズムの取り方が申し分なく良いです。音創りをしたら、ストロークの内容を決め、本番に入ります。最初は3回有るうちの3回目のサビはストロークではなく、アルペジオにしようと思ってたのですが、合わせてみると、やはりストロークの方が良い様でしたので、アルペジオの案は撤回し、ストロークを力強く入れる事にしました。
 さて、この時点で一応予定してるパートを全て入れたつもりでしたが、何か今一つ物足りない気がします。先ず、この曲のサビはハードなのにキーが低く、「歌にパワー感を持たせられてない」と言う事なのでしょうか。と言う分けで、ここは一丁、ジハモ・コーラスで決めたいと思います。私達はよく、ジハモを歌のエフェクター代わりに使います。つまり、エコーとかを掛けない変わりに、ハモやユニゾンなどで、リード・ヴォーカル・パートに立体感を持たせるのです。
 私達が使う言葉、“ジハモ”とは、リード・ヴォーカルのラインに沿ってハモを入れる事だと私は解釈してます。ホントのところは良く分かりませんが、“ジハモ”の“ジ”の字は多分、“字”と言う字で良いのでしょう……って、なんだかよく分からなくなっちゃいましたが…。因みに、“ウー・アー”は「ウー♪」とか「アー♪」とかって、ハーモニーを付ける意味で使ってます。
 巷では、ジハモを演る場合(ウー・アーならなおさら)、例えば同じ歌詞の場合は一度だけ歌い、あとはコピーして余所の個所に貼り付けてしまうって事が多々有ります。ですが、それって味気ないですよね。リスナーはまったく同じものを一つの曲で何度も聴かされるわけです。それはオケにも言えると思います。同じ曲の1番と2番、ただ歌詞が違うだけってのも味気ないですもんね。演奏の情感もそれぞれ違うわけだし、アレンジだって違っていいと思います。コーラス・アレンジも然りです。となると、今回のジハモは、ハモのパターンを少しずつ変えて行ったらどうかなと…(それでないとアナログで演ってる意味は無い様な…)。
 最初はユニゾンから始まり、ハモも2声から3声へ、それからその3声のハモの和音の積み方も段々変えていきます。最後はかなりヴォルテージを上げ、それにオブリ的なアドリブ風ヴォーカルを入れます。巷ではヴォーカルのアドリブをよく“フェイク”って言いますが、本来“フェイク”とはごまかしとか偽モンの意味で、最近では私はあまりフェイクって言い方はしないです(昔は私もフェイクって言ってたんだけど…)。このアドリブ・ヴォーカル、かなりキーを上げました。今日はかなり調子が良いです。ここのところよく歌ってるので、喉が出来上がっている様です。
 高い声の話になりましたが、私は高い声を地声で出す時、喉は開けない感じで出す様にしてます。普通は、高い声を出す時に顎が上がりますが、(簡単に言いますと)私はその逆にしてます。つまり喉の筋肉と腹にグッと力を入れて、鼻の奥に声を通す様に声を出すのです。すると、高い声が出てる時、丁度目頭と目頭の間の鼻の上の辺りが“ジ〜ン”と響いて、声が高く出せます。これは文章では上手く説明出来ませんが…。例えば喉を開けて大声を出すと直ぐにつぶれてしまいます。ですから、その様な時は喉を開きっ放しにせずに、グッと力を入れて締める様にすると、喉がつぶれません。しかし、柔らかく歌ってる時には、ワザとそうしてビブラート代りに使う事も有り、そうすると歌の語尾をハスキーな感じに出来ます(但し、私はこの時、腹筋の力だけは抜かない様にしてます)。

2004年2月7日土曜日
 今日は「永遠の踊り子」の続きを演ります。先ずは、「偽装ライヴ」と言うわけではないのですが、どうしても拍手などが欲しいところが有ったので、そこに拍手を入れました。これはもう雰囲気モノなのですが、この曲にはとても効果的だと思いました。
 続くは、アコーディオン。最近、けっこう練習してたので、わりと早めに良いテイクが録れましたが、結局最初予定してたよりも多くの個所に入れる事になりました。アコーディオンは見た目以上に重く、腕の筋肉がかなり痛いです。ちょっと、情けない……。
 アコーディオンが入った時点で、「永遠の踊り子」に関しては、現在予定している所までのテイクは全て録れました。一応、これでラフ・ミックスを創って、暫く客観的に聴いてみるつもりです。

 続きましては、久々にレコーディングを再開する曲、「R&Bチャンチャカ」です。これは勿論仮タイトルで、実はこれに歌詞を書いてきました。タイトルも一応「人生は楽しまなきゃダメさ」と付けました。この曲はもう何年も前にレコーディングが止まってしまった曲です。実はその時の歌詞も有るのですが、どうもイマイチだったので、今回ようやく歌詞が出来て、とてもホッとしております。
 さて、歌詞も出来た事ですし、早速歌を録りたいと思います。この曲は、歌詞をメロディーにハメてリズムに乗せるのがとても難しい曲です。ですから、リズムの“縦の線”にはかなりシビアにならないといけません。ある程度声が出来てきた時点で、よすおさんにもチェックして貰い、歌を仕上げていきましたが、曲自体は2分ちょっとと短めでしたので、結構早く録り終ってしまいました。
 それから、久々にこの曲を聴いてみて、……録り直しパートと追加パートは結構有りそうです。これもラフ・ミックスを創って、暫く聴き込んでみるつもりです。

2004年2月15日日曜日
 いよいよ永かったレコーディングの大詰めに入ります。予定では今週と、その他にあと1週間位で録りを全て終えるつもりですが、またその時になって「あっ、これ録り直そう!」なんて言い出すかもしれません。いずれにせよ、ミックス・ダウンが終るまでは私の気まぐれは続くのですが…。
 レコーディングするパートも残り少なくなってきたのですが、今、「テレビ塔の空(青い東京タワー)」に大きなメスを入れようかと考えてます。先週歌を録った「人生は楽しまなきゃダメさ」もコーラスをふんだんに入れ、1950年代のドゥー・ワップ・グループの雰囲気をプラスするつもりです。それから、ウエスト・コースト・シティ・ポップ風の「憶えているかい」ですが、この曲、サビはいきなりフィル・スペクター風と言う展開をしてるのですが、そこに更にメロトロンのコーラスを入れるつもりです。そうなるとどうなるでしょうか?かなりコントラストの付いた面白いサウンドになりそうです。それから、ハモンド・オルガン(私のはポータBと言うやつで、一応トーン・ホイールです)&レスリー・スピーカーと言う組み合わせはまだ1度も登場してませんが、どこかで登場するはずです。

 今回のレコーディング、一応15〜16曲位完成するつもりですが、2ndアルバムに全部入り切るでしょうか?その他にも、レコーディング途中の曲や未レコーディングの曲が8曲位と、実は1stの演り直しをやりかけたモノも数曲有ります(その内の2曲が今回の「朝日を見に行こうよ」と「青い東京タワー」)。

 今回のレコーディングでは、今までの1960年代〜70年代のヴィンテージ楽器の他に、様々な民族楽器なども登場しました。レコーディングも都内のレコーディング・スタジオを使わず、全て伊豆のFAB ROCKS REC. HOUSEで全て行いました。そして何よりも、ゲスト・ミュージシャンを使わず、私とよすおさんとでほとんどのトラックを録ってしまい、その結果、オリジナルティーがより増し、正しく「ミラクルシャドウ・サウンド」が出来上がりつつあります。
 録音に関してですが、ここ最近「宅録」と言う言葉が有りますが、私達の感覚では決して宅録ではなく、昔のミュージシャンがよく行ってた「何処かの農場や古城、または山小屋などに録音機材を持ち込んでレコーディングした」と言う様なつもりでやって来ました(どこが違うの?)。音のクオリティーの方でも、「純アナログ・サウンド」を目指しつつも、「ロー・ファイ」などと軽く言われてしまわぬ様、努力して来たつもりであります。ちょっと大袈裟かもしれませんが、そんなレコーディングの第1部最終章が、今これより始まろうとしております。テンションも今までに無く高く上がってきました。私は、今日一日はラフ・ミックスを聴いたり、好きなCDを聴いたり、最近買った数十枚のCDをじっくりと聴き、その心の準備をするつもりです。幸い、今のこの時点で風邪もひいてませんし、喉の調子も絶好調です。

 さて、レコーディングが終盤になりますと、いつもですと、「どの曲のどのパートがまだ録り終ってないか」と言う表を作り、録り終わる度にそれをマジックで塗りつぶすと言う事をするのですが、今回は多分しないと思います。一応表を作ってみたのですが、今までそんな作業的に演って来たわけではなく、もっと感覚的にレコーディングしてたからです。ラフ・ミックスを聴いたり、その曲のマルチ・テープを聴いた時に何かを感じたら、新たなパートを足したり、録り直したりと言う事を続けてきたので、これからも最後まで毎度毎度その調子で演って行きたいと思います。ま、良く言えば「感覚重視」、悪く言えば「気まぐれの行き当たりばったり」なのですが…。こんな事で本当にレコーディングは終るのでしょうか?ちょっと心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫です。私も少しは“大人”になった………つもりです。

2004年2月16日月曜日
 昨日は「咽、絶好調!」と言ってた私ですが、情けない事に、朝起きると扁桃腺が……痛い…。イソジンでうがいをし、なんとか咽の痛みはやわらいだものの、凄い鼻声です…。よりによって、どうしてでしょうか?

 ですが、それでも“やる気満々モード”の私であります、夕方にスタジオに到着するなり、歌入れの準備にとりかかり、「憶えているかい」と言う曲の歌を録り直す事にしました。声は鼻声でも、なんとかなりそうです。点鼻薬で鼻腔を広げて鼻の通りを良くするのですが、それでも鼻声は直りません。しかし、時と場合によってはこの鼻声がかえって“味”になる事だって有るのです(強がりです…)。
 この曲には既に歌が入っていたのですが、今迄入ってた歌はちょっと味気ない感じがしてました。そこで、もうちょっと優しく歌ってみる事にしたのですが、鼻声であるのが幸いし、これがホントに良い雰囲気になったのです。ただ、鼻の調子が悪いと、ピッチを正確に保のが難しく、いつもより苦労したのですが…(トラックも1トラックしか使えませんし…)。

2004年2月17日火曜日
 朝、よすおさんが初めて私より早く起きました。これは快挙です……と思ったらお腹が痛いんだって。結局、また寝てしまいました。

 今日は「テレビ塔の空(青い東京タワー)」のドラムスを録り直します。そのためにはトラックをいくつかつぶさないといけません。今迄のこのドラムは3トラック使ってますので、先ずはそのうちのどのトラックかがリズムのガイドに成らないか、ヘッド・フォンで聴いてみます。するとスネア・ドラムのトラックがガイドとして使えそうだったので、残りの2つのトラックは新しい録音先に決めました。それから鈴を録ってあったのですが、リズム楽器である鈴のこのトラックも「新しい録音先」にさせてもらいました。
 ドラムを倉庫から出してくるのですが、よすおさんが寝込んでる為、1人でやらないといけません。どうせならと、いつものラディックのセットではなく、2タムの方のセット(1969年製?)を出して来る事にしました。このセット、実はレコーディングで使うのは初めてかもしれません。1人で倉庫をゴソゴソして、暫くするとよすおさんが起きてきました。
 今回は、セッティングする場所は同じなのですが、ドラム・セットの向きを変えてみました。それから、ドラムのヘッドも張り替え、いつもよりも新鮮な気持ちでレコーディングを開始出来ました。「テレビ塔の空(青い東京タワー)」のドラムが録れたら、そのままのセッティングで「約束しましょう」にもドラムを入れました(シンバル類は換えました)。こちらはシェーカーとクラップだけで、ドラムが入ってなかったのですが、試しに入れてみる事にしました。すると、雰囲気がとても良かったので、そのまま録音してしまいました。と言うわけで、一気にドラムを2曲も録ってしまい、なんだか沢山ノルマをこなした様な気持ちになってしまいました。

 続いては「テレビ塔の空(青い東京タワー)」のベースも録り直しました。使用するベースは、なんとジャズ・ベース…って普通っぽいでしょうか?私達は普段ヴァイオリン・ベース、リッケン4001、SGベースなどをよく使いますので、ジャズ・ベースを使うとかえって新鮮です。

 午後は青ちゃんともう1人お客さんがやって来ました。今日はこれでレコーディング終了!…となるはずが、今日の夜の飲み会の買出しに行くと言うので、私はお留守番する事にしました。どうせならと、「テレビ塔の空(青い東京タワー)」の歌の最初の部分を歌詞を換えて歌い直そうと思って、演ってるウチに、結局最後まで歌い直してしまい、それから更にダブリングのトラックやコーラス・チャンネルも録り直してしまいました。今日はかなりハイピッチでレコーディング出来た気がしています。

2004年2月18日水曜日
 昨夜は夜通し飲んでしまい、寝たのは朝6時半でした…。ですが、私は10時に起き、スタジオの真空管器材の電源を入れました。その間朝飯の支度をして、みんなを起こし食事しましたが、全員二日酔い状態でドヨ〜ンとしています。私もこの調子ですと、今日は歌えそうもありません…反省。

 よすおさんと青ちゃんがお客さんを最寄りの駅へ送る為に出掛けてるうちにセッティングをしょうとしましたが、どうも調子が出ません。2人が帰って来ると、(まだ何もやってないのに)「気分転換に昼飯でも食べに」と出掛け、その帰りにウォーキングをして汗を流しました。この時点で既に夕方近くなってましたが、私も焦るつもりなど毛頭有りません。

 「テレビ塔の空(青い東京タワー)」のエレクトリック・シタール、アルペジオ、鈴を入れ替えました。以前のトラックはドラムとベースを差し替えた関係上、ノリが変ってしまってたので、これでまたスッキリしました。因にアルペジオにはロンロコを使い、それをよすおさんが弾きました。

 今日はなんと、こんなところでレコーディング終了。青ちゃんも帰って行きました。それと入れ替わる様に今度はタッキーが登場。タッキーはここへ来るのは何年振りでしょうか?たしか2002年の夏か春以来だった様な気がします。
 夜の11時を過ぎて、久々に私とよすおさんとタッキーで飲み会が始まりましたが、私はさすがに途中でリタイア。しかし、よすおさんとタッキーはその後も盛り上がってました。

2004年2月19日木曜日
 今日は朝起きると喉がガラガラでした。歌の録りは一日お休みします。

 昨日に引き続き、「テレビ塔の空(青い東京タワー)」の録り直しを行います。と言っても後はメロトロンと前奏だけで、完成も間近です。メロトロンの方は新たにメロトロン・コーラスでコード・パッドを入れ、以前から入ってたストリングスのフレーズはティン・ホイッスルに合わせて少しだけシンプルなメロに直しました。因みにフルートとチェロは以前のままです。
 この曲の前奏ですが、これまでにティン・ホイッスルとメロディオン(鍵盤ハーモニカ)で演ったヤツが、どうしても詞のイメージにマッチしないと言う事なので、録り直す事にしました。実は、昨夜からずうっと考えてたのです。結局朝起きた時に、暫く布団の中で考えてましたらアイディアが浮かび、それで行く事にしました。それは、オクターブのギターをダブリングで4トラック使ったギター・サウンドで、一聴しただけですととてもシンプルなサウンドなのですが、とてもこの曲の詞にマッチしたと思います。

 今日は早めですがこの辺りでレコーディング終了。今日も3人で鍋を囲み、好きなCDを聴いて盛り上がります。

2004年2月20日金曜日
 今日は「憶えているかい」にメロトロンを入れました。最近、私のメロトロンはとても調子が良く、ピッチもかなり安定してる方だと思います。
 このメロトロンを入れる事により、音の壁を作る事が出来ました。幾つかのパートで和音を構成しましたので、トラック節約の為もあって2つのトラックにステレオ・ピンポンしてしまいました。

 メロトロンのトラックを2つにまとめたところで、トラックの空きにコーラスを入れました。結局、珍しく夜中の12時頃までコーラスとラフ・ミックス創りを演り、最後はよすおさん、タッキー、そして私とでチェックをして出来上がり!この曲も一応ここで全てのレコーディングを終了しました。


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