安田しん二レコーディング日記
私、安田しん二のスタジオ、FAB ROCKS REC. HOUSEでの奮戦記です。
FAB ROCKS REC. HOUSEはNon DIGITALにこだわった、
ANALOG専門のレコーディング・スタジオです。

2003年11月4日火曜日
 明日から長期のレコーディングが始まります。今日はその為の食事の準備です。私とよすおさんのこれから食べるカレーを作ります。このレコーディング期間は、カレーが主食です。レコーディングの途中で食事に出掛けたりするのは気分転換にもなりますが、私が“集中モード”に入る時は、あまり出掛けたりしません。ですから自炊するわけですが、毎回メニューを考えたりするのも辛いので、カレーにするのです。ですが、やはりいくらなんでも毎日カレーじゃ飽きますよね。

2003年11月5日水曜日
 今日から永い永いレコーディングが始まります。この大クールの目的は完パケを創ること。つまり、今まで録ったモノに新たに楽器を足したり、気に入らないパートを入れ替えたりします。

 先ずは、「高校生になったら」と言う曲にギターを入れます。
 この曲は、私が中学生の時に書いた曲で、マイナー・コードを一つも使ってないと言う曲です。これまでに、サイド・ギター、ドラムス、ベースのベーシックに、タンバリン、エレクトリック・シタール、タブラ、コーラス、アディティショナルなギターと録って来ましたが、今日はギター・ソロとオーケストレーション・ギターを録ります。このオーケストレーション・ギターと言うのは、クイーンのブライアン・メイを参考に、ギターのダビングでキーボードやオーケストラ、ブラス・セクションの代わりをするというモノです。
 使うギターは、最初、先日配線を改造した“偽リッケン”を使ってたのですが、どうも音が伸びず、出だしのフレーズを録った後は、結局全てギブソンのES−335を使う事にしました。
 ギター・ソロは私が弾きましたが、この曲のソロ・パートは随分と長いので、後半は私とよすおさんのツイン・リードで演りました。私は1968年製のギブソンES−335、よすおさんは私の1973年製のフェンダー・ストラトキャスターを使いました。
 ギター・ソロを弾いてる時、私が「よぉ〜っし、次はジェフ・ベックで…」とかって言いながら演るのですが、私のヘタクソなギターが全然似てなく、2人で大笑いしながら演ってました。よすおさんは「腹が痛いよぉ〜」と言ってましたね。
 ツイン・リードを演っていて、昔懐かしいウイッシュボーン・アッシュや初期のクリエイションを思い出してしまいました。勿論、私のソロは所謂“ヘタウマ”なので、それとはまたちょっと違うのですが……。

2003年11月6日木曜日
 午前中は、昨日の曲のラフ・ミックスを創ります。
 あらためて聴くと、前奏前のギター(偽リッケンで演ったところ)のチョーキングが上がり切っておらず、音程が低いです。ま、しかし、これは他にも音が入ってるので、ミックス次第でどうにかなりそうです。一応そのままにしておきます。
 しかしそれにしても、やはり前のヴァージョンよりも数段良くなりました。

 今日から例のカレーを食べます。ラフ・ミックスを私が創ってる間によすおさんが米を研ぎ、そろそろ炊飯器のスイッチを入れてる頃でしょう。ラフ・ミックスをDATに録り、CD−Rに焼き、これでラフ・ミックス完成。さあカレーを食べるぞぉ!と思ったら、よすおさんは何もしてなかった……。ただポォ〜っとしてたらしい……。これから米を研ぎ、数十分おいて、それから炊飯するとなると……、ン〜、時間のロスだぁ…。「しょうがない、イライラせずに何か演れる事を探そう…」、そう言いながら、また2人でカレーの鍋をかき混ぜ始めました。

 「サヨナラ僕の想い出」と言うバラードで、一音だけベースがぶつかってる所があります。ベースをソロで聴いてみますと、弾いた音は合ってるのですが、ピックが同時に何か他の弦に触れてしまってる様です。もう随分昔に録った所なので、トラック・シートを見てみます。すると、使った機材が解りました。
 先ずは他のトラックにその辺りの個所を1小節程弾いて録ります。それにコンプやイコライザーでなるべく近い音にします。実際は同じ音にするのは不可能なのですが、案外一音だけですと判らないものです。それを今度は元のトラックに一音(4分音符)だけピンポンします。その時、元のアタック部分(言葉に例えると子音)の音は残し、倍音部分(言葉で例えると母音)の部分だけを入れ替える事にしました。これは、テープ・レコーダーを扱う“パンチ・イン&アウト”の技術としては、かなりのテクニックを必要とします。先ずは少し遅めにパンチ・インして、次の音のアタックのギリギリ直前でパンチ・アウトします。その次は今度はパンチ・アウトは早めに抜き、パンチ・インの個所をギリギリまで前に持って行きます。これらは全て手動でやります、アナログですから…。勿論失敗は許されませんのでかなり緊張します。

2003年11月7日金曜日
 「サヨナラ僕の想い出」は、アコースティック・ピアノを中心にレコーディングした曲です。その他の楽器は、よすおさんが弾いたシタールや3種類のメロトロン(フルート、チェロ、ストリングス)、アコースティック・ギター、それにギター・ソロ(テスコ)、オブリガートのエレキ・ギター(ギブソンES−335)、それにベースです。曲調は、ブリティッシュな雰囲気のバラードですが、サビのメロディーはカントリーっぽい感じもします。今までコーラスが入ってなかったので、今日はコーラスを録りました。
 先ずは、今まで入ってたリード・ヴォーカルに、ダブリング用にユニゾンのヴォーカルをもう1本重ねます。私は元のヴォーカルを聴きながら同じ様なニュアンスでヴォーカルを重ねていきます。何しろ2年位前に録った曲ですので、私自身の歌い方が、当時と随分と変ったかと思ってたのですが、以外とそんな事は有りませんでした。
 その他のコーラスですが、サビをハモらせる事で、かなりカントリーっぽい雰囲気が出ました。このコーラスが入る事で曲の完成度はかなり上がったと思います。実はまだ数パート分まだ録って無い所が有るのですが、私の咽の調子も考えて(実はちょっと風邪ぎみ)、それは後日に回し、今日はここで終わりです。ン〜〜、あと一歩で完パケだったのしにぃ〜!

2003年11月8日土曜日
 今日は昨日の続き、「サヨナラ僕の想い出」のコーラスです。昨日はメロディー・ラインのユニゾンとハモリでしたが、今日は所謂「ウー・アー」と言うヤツを演ります。この曲は全部でサビは4回出て来ますが、最初の1回目は「ウー・アー」を入れないので、全部で3回演ります。
 最近の巷のレコーディング現場ではアナログ・レコーダーはほとんど使われておらず、プロ・トゥールスなどを使ったハード・ディスク・レコーディングが主流ですので、こう言う場合は1回だけ歌って、あとは「コピー&ペイストではめて行く」と言う方法がとられます。つまりそう言う時のスタジオでは、「コーラスをレコーディングする」と言うよりも、「素材をとる」と言うニュアンスで言われている様です。ハード・ディスク・レコーディングが主流になる以前も、コーラス素材をサンプリングしての“タタキ”と言う方法で同じ事が行われていました。当時のスタジオの標準機であったソニーのデジタルMTR、3348にはそのサンプリング機能がMTR本体内に有りました。勿論、現在のハード・ディスク・レコーダーの方がモニター画面で波形を見ながら操作出来るので、この作業は気軽簡単に行えます。実は、サンプリング以前にも、そのコーラスなどの個所をサンプリングする替わりに別のアナログのテープ・レコーダーに録り、それをMTRに合わせて同時に走らせ、ダビングしていく方法がありました。実は“タタキ”と言う表現は、この時、コーラスなどが入ってる方のテープ・レコーダーのプレイ・スイッチを素早く叩く事からこの名前が付いたと聞いた事が有ります(タタキにもテクニックは必要でした。これを演るのは、大方アシスタント・エンジニアの役目。つまりアシスタントも優秀でなければならないのです)。最近の巷のスタジオでは、このアナログ・タタキを演ってる所はほとんど無いのではないでしょうか?
 私達のレコーディングでは、このタタキと言う方法は使いません。アナログの場合、タタクよりも実際に歌ってしまった方が手間が掛からないからで、万が一タタク場合はやむを得ない場合のみになります。しかし、私達がタタキをしないのは、「結局歌ってしまった方が早いから」と言う理由だけでは有りません。3回のサビの個所はノリも微妙に違いますし、実際に3回歌う事で、3回ともそれなりのニュアンスに変える事が出来るのです。それにハモりの和音の積み方のパターンも微妙に変えたりも出来ます。私はこれこそがアナログ録音の醍醐味だと思ってます(勿論、デジタルでもその気にさえなれば演れますが…)。つまり、もしも私達がタタイてしまったら、今回の場合、まったく同じコーラスが3回も出て来る事になるのです。
 勿論、デジタル(ハード・ディスク・レコーディング)でも同じ様にタタキをしないで演れば良いのですが、あまり手間や時間を掛けてしまうのは、デジタルを使ってる意味の一部が損なわれます。ハード・ディスク・レコーディングの長所(?)の一つには、スタジオで歌ったり演奏する時間を最小限に抑える事が出来ると言う事が挙げられます。しかしそのかわりその録った素材をエディットする作業時間は永くなりますが……。

 次は「君がいるから」のコーラスです。実は、後で気付いたのですが、2ヶ所ばかりノイズがのってるのです。「そんな事録った時にチェックしないのかよぉ〜!」って言われそうですが、おっしゃる通り、お恥ずかしい……。

 今日はコーラスを2曲で終了……。随分悠長にやってますが、もっとスピード・アップしなけりゃいけないと反省…。しかし、反省はするものの、これは変らないかも…。あ〜自己嫌悪…。それでも今日は相当疲れたのか、夕食のビールがいつもより早く回ってしまいました。

2003年11月9日日曜日
 今日も歌を録ります。「大切な人」と言う組曲風の曲ですが、その後半のリード・ヴォーカルのパートをダブリングします(実はコーラスとリード・ヴォーカルの録音は既に終わってます)。ダブリングは所謂ユニゾンです。最近ではどこのレコーディング現場でも、ダブリングはデジタル・イクイップメントで気軽に出来ますが、私達はデジタル・イクイップメントを使わずに、わざわざ同じパートを2回歌って行ってます(天然ダブリング?)。因に、ダブリングを機械でやる方法はデジタル方式だけでなく、テープ・レコーダーなどを使っての、アナログ方式でも出来ます。勿論、デジタルの方が手間は掛かりませんし、色々なダブリング用のエフェクターが有ります。私達の場合、天然ダブリング(?)ですので、歌い方のニュアンスを多少変えるか、全く同じ様に演るかでダブリングの雰囲気を創りますが、大抵は同じ様に歌う様に努力します。後はそのダブリング・ヴォーカルとリード・ヴォーカルとの音量バランスで雰囲気を調整します。
 さて、ダブリングも上手く行き、最後にラフ・ミックスを創って今日はこれで終わり。なんたって日曜ですから……、って言訳です……。

2003年11月10日月曜日
 今日は「青い東京タワー」のニュー・ヴァージョン、「テレビ塔の空」のティン・ホイッスルの録り直しから演ります。何故録り直しかと言いますと、どうも棒吹きっぽい感じがしてならないのです。
 けっこう時間を要しましたが、何故かと言うと、ちゃんとピッチを合わせているつもりなのですが、どうもしっくり来ないのであります。元々ティン・ホイッスルは、チューニングとか結構怪しいので、その解決策として今回はダブリングする事にしました。が、結局、前奏部分は未だに怪しい感じですので、後日別のホイッスルでダブリングしてみるつもりです。
 次に、サンポーニャをダビング。そして中サビ(ニュー・ヴァージョンは中サビが有ります)にチャランゴとロンロコをダビングしました。いずれもフォルクローレの民族楽器ですが、出来るだけさりげなく、料理で例えるとかくし味の様に使いました。

2003年11月13日木曜日
 昨日、一昨日とレコーディングはお休み。今日はまたまた「テレビ塔の空」の前奏、ティン・ホイッスルの録り直しです。ティン・ホイッスルを吹くのも、もうそろそろいい加減嫌になって来ましたが、だけどそうも言ってられません(頑張らなくっちゃ)。
 因に、前回録ったティン・ホイッスルのトラック、2つのうちの1トラックだけは残しておきます。
 今日はギネスと言うメーカーのティン・ホイッスルを使います。多分あのギネス・ビールのギネスだと思います。このギネスのティン・ホイッスル(多分1000円位)、管がD管なので、キーがCのこの曲を吹くとなるとちょっと面倒ですが、ま、最近ティン・ホイッスルばっかり吹いてる感じなので、皮肉にも大して難しくは有りませんでした。勿論、テイク1で出来ました……当たり前です…。こんなに何度も演ってるんですから……。
 更に今度は同じ個所に鍵盤ハーモニカのメロディオンを入れます。フレーズは少しでも高級感を出そうとオクターブで吹きいて録音しました(こんなんで“高級感”が出るのでしょうか?)。鍵盤ハーモニカと言うのはそれぞれのメーカーによって呼び名が違い、このメロディオンと言うのは、スズキと言うメーカーの呼び名です。因にヤマハとトーカイ(オリジナルらしい)はピアニカ、全音がピアニー、ホーナーはメロディカ・ピアノって言うのだそうです。しかしこの楽器、やっぱり小学生用なのか、管が小学生の身体に合わせて少し短い様な気がします。それとも私の胴が長いのでしょうか?蛇腹のその管の端のマウス・ピースを口にくわえて吹くのですが、蛇腹管がピ〜ンと張っていて、ちゃんとくわえないとマウス・ピースがビヨ〜ンと何処かへ飛んで行ってしまいそうです。お陰でしっかり噛んでいるので顎が凄く疲れます。ですが、このメロディオンは某社のものよりもチューニングもしっかりしてますし、音量も有ります。
 さて、流石に鍵盤ハーモニカを入れるとちょっと小学校っぽい感じがしますが、ま、それも良しです(なんだか投げやりになってる?)。
 ここで昼ご飯の準備です。今日は朝、TBSテレビの『ハナマル・マーケット』で土鍋を使ったご飯の炊き方を特集してたので、土鍋でご飯を炊きます。実は朝もそれでした。その後はよすおさんとウォーキング。帰りに100円ショップに寄り、何やら必要なものを買って帰ると結構な時間になってしまいました。
 「よぉ〜っし!次は歌録るぞ!」。「テレビ塔の空」の歌を歌い直す事にしました。これまでに入ってる歌は、なんか少し粗い感じがするのであります。
 この曲の歌はとても難しいです。ですからコンディションはかなり良い状態にしておかなくてはいけません……が、さっきウォーキングした時からとても頭が痛いのです。なんだか風邪をひいてしまった様です。
 さぁ〜て、風邪気味となると歌を録るのは難しいです。ですが、今日は気分がノッてるので(珍しい?)、頑張って録ります。歌を歌う場合、咽も大事ですが、実は鼻のコンディションはかなり重要です。先ず、“鼻シュッシュ”とかって言う、鼻洗浄液で鼻を洗い、続いて点鼻薬を注します。これで鼻腔を広げ、次は咽。私の経験上ですが、歌を歌う時の飲み物はウーロン茶や緑茶、紅茶などはNGです。それならブラック・コーヒーの方がベターです。インスタントもイマイチです。それからある程度歌ったら、そこからはホット・ハチミツ・レモン。これはかなり効きます。ハチミツ・レモンは出来合いの缶ジュースのやつとかではダメです。ちゃんと自分で作らなくては…。ハチミツとレモンをお湯で割ります。それもかなり濃い目に。レモンはポッカ・レモンとかでOK。それからビックス・ドロップのレギュラーも必需品です。ホールズとかはやっぱりNGです。しかし、これらは全て“私の場合”です。皆それぞれ合う合わないは有ります。
 無事歌録りも終り、やはり出来たモノを聴くと仕上がりは上々。他の楽器も良い感じに聴こてきます。これって不思議です。
 明日はダブリングの方の歌を録り直しますが、更に今録った歌のチェックをもう一度します。

2003年11月14日金曜日
 今日は「テレビ塔の空」のバック・ヴォーカルの録りと、昨日録ったリード・ヴォーカルの再チェックからです。普段午前中には歌わないのですが、このところ結構歌ってるので、朝からでも意外とすんなり声が出ます。勿論、喉をひどく嗄らしてしまったり、あまりにも疲れてるとこうは行きませんが…。
 余談ですが、私はよく、バック・ヴォーカルの事を「コーラス」と言いますが、海外のレコーディング現場などでは、コーラスと言うのはサビの事で、向こうでは日本で言うコーラスを“Background Vocal”と言う様です。ま、でも私はそんな事は気にしないで「コーラス」って言ってしまいますが……。
 やはり、日を替えて歌をチェックしてみると、新たに気になる個所は出て来ます。一日経つ事で、耳もリセットされてよく聴こえる様です。余所の現場では(昔は私もこの方法をとってました)、歌を録る時、空いてるトラックを沢山使って、何本かヴォーカルを録り、後でそれをセレクトし、繋ぎ合わせながら1つのトラックにまとめると言う事をしますが、今回の様に最後になって録り直す時などは、もう既に空きトラックも無く、1つのトラックに完成形を作らなくてはなりません。これは作業的にはしんどいですが、何処かの個所を録り直す時でも、前後の流れを聴きながら出来るので、そう言う面では完成度が高いです。しかし、逆に丁寧に歌い過ぎて、勢いがなくなってしまう事も有るので、そこは要注意です。

 昼ご飯を食べ、日課のウォーキングをして、続いては「気になる僕の未来の行く末」のケーナを録ります。と言っても、以前もう既にメイン(1st)・ケーナを録ってるので、最後にケーナがメインになる8小節のユニゾンとハモを録るだけなのですが…。ところが、私の持ってるボリビア製ケーナは、今の私が吹くとどれもチューニングが低いので有ります。巷のレコーディング現場では、A=441hzに設定してる所が多い様ですが、私達のレコーディングでは、A=440hzに設定しております。これは「昔の楽器が多い為」、と言うのが理由です。ですからピアノの調律もA=440hzで調律してもらってます(一般的にと言う事ですが、最近ではA=442hzと言うのが多い様です)。私の持ってるボリビア製ケーナは、私が吹くとA=438hzとか437hz辺りで、かなり低いです。勿論吹き方でA=440hzまでピッチを上げれますが(その作者が普通に吹くと、ちゃんとA=440hzになります)、今の私の吹き方ではA=440hzのオケにはかなりきついです。ハーモナイザー(デジタル)とかでピッチを変えるやり方も有りますが、しかしここは“アナログ・レコーディング”にあくまでもこだわってる私達は、MTR(テープ・レコーダー)の速度を調整して、ケーナにピッチを合わせます。本来、ケーナの方のチューニング(指穴を広げたりして調整する)をしてレコーディングに挑みたいのですが、せっかくのボリビア製ケーナを、私ごときがいじってしまうのはちょっと……。でも、いつかはそれもやらなくてはいけないのかもしれません(もっと勉強しなくては…)。因みに今回は、ルーチョ・カブールのケーナで上パート、アドリアン・ビリャヌエバのケーナで下パートを吹きました。

 ケーナを録り終った後は、そのまま同じ曲、「気になる僕の未来の行く末」のバック・ボーカルを録りました。先ずは中間部のヴォーカルにピッタリと合わせてユニゾン・ダブリングです。これは音程やリズムは勿論の事、息継ぎ(ブレス)やビブラート、声の強弱や声色に至まで、あらゆる所をピッタリと同じに合わせます。私の場合、歌うときにビブラートなどの掛け方を個所個所で微妙に変えてるので、ビブラートや声をデクレシエンド(歌いながら息を抜く事で、少しハスキーな声の雰囲気でおシリを切る事も有ります)させる所は、かなりシビアに演ります(これは神経が疲れる)。2声のハモの所はもう少しラフに録りました。これはキッチリ合わせるよりも勢いが出る事が有るので、あえてそうしました。しかし、例え「ラフ」と言っても音程がラフではしょうがありませんが……。それから他の個所もダブリングしました。これはヴォーカル・トラックの余りが3トラックも有ったので、あえてそれを使いました。ここは先程の個所のユニゾン・ダブリングの様にシビアで合わせるより、多少ラフな方がユニゾン効果が顕著に出るからです。ラフなユニゾン・ダブリングで録った場合、最後にミックスする時に定位を合わせないと結構みっともないです。しかし、キッチリと合わせた場合は、あえてお互いのパートの定位を違えるのも効果的です。

 「雲の上から」と言う曲のレコーディングは、随分前に完パケたはずなのですが、最近、よすおさんがペダル・スチール・ギターに凝ってるので、せっかくだからそれを入れてみる事にします。ですが、今回はバック・トラックに合わせて雰囲気を確かめたのと、フレーズ決めとその練習にとどめておきました。もしもこれが決れば、曲の聴き所の一つにもなって、相当カッコイイかもしれません。本番は後日、楽しみです。


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