安田しん二レコーディング日記
私、安田しん二のスタジオ、FAB ROCKS REC. HOUSEでの奮戦記です。
FAB ROCKS REC. HOUSEはNon DIGITALにこだわった、
ANALOG専門のレコーディング・スタジオです。

2004年4月1日木曜日
 今日から、レコーディング最終チェックに入ります。先月も書きましたが、一応これまで録った曲を書き記しておきます↓。

曲名 解説
俺達、ミラクルシャドウ! ミラクルシャドウのテーマ・ソングです。ジャズ・ロック風に創ったつもりが、ブラック・サバスの様なハード・ロックになっちまいました。途中、リズム・チェンジが有り、南米チックにもなりますが、最後はドラマチックにメロトロンの洪水です。
ミラクルシャドウ大行進 2拍子のインスト小曲で長さは1分有りません。バンジョー。バンジョレレ、コンサンチーナ、ティン・ホイッスルなどの楽器でアンサンブルを構成しました。ベースはスーザフォンの様にも聞えます。
人生は楽しまなきゃダメさ/それもいい想い出 ドゥ・ワップ調のR&Bですが、途中リズムをチェンジさせます。「それもいい想い出」はア・カペラのナンバーで、コーラスだけで20音声以上は入ってると思います。歌もソウルフルに歌ってます。
大切な人 (Part I〜IV) ギターを使ってホルンやトランペットの様な音を創ってみました。曲はドラマチックな展開をみせ、パート1〜4までの組曲風です。パート4は歌詞が「万葉集」の頃の言葉を使い、とてもオリエンタルな感じです。
おやじジャム クラビネットを使ったファンキーなロック・インスト小曲です。ギター・ソロが1970年代風で、とてもシンプルな曲です。
気になる僕の未来の行く末 ハード・ロックですが、途中とてもドラマチックな展開になります。1970年代風のギター・ソロもそうですが、途中の展開で登場するチャランゴやケーナなど、中南米の民族楽器やメロトロンが印象的だと思います。
君がいるから/くよくよしないぞ 「君がいるから」はウエスト・コースト調のミッド・バラードでとてもメロウなナンバーです。SEとして波の音も入ってますが、それは私がハワイの海岸で録って来たものです。その海のサウンドが「くよくよしないぞ」でいきなりフォルクローレになります。ボリビアで活動してる、プロのフォルクローレのミュージシャンに聴かせましたら、「独特で面白い!」と言われました。
もしも今、会ったなら とても軽快なポップ・ナンバーです。ポップなスライド・ギターなども登場しますが、サウンド的にはアメリカンと言うよりは、むしろブリティッシュ寄りなんでしょうか。
憶えてるかい? とても構成がスムースなポップ・ナンバーです。音色的にはトッド・ラングレンとかの影響も観られますが、サビは“ちょっとだけフィル・スペクター風”に仕上げるつもりです。ですが、やはり“渚”を感じるサウンドです。
雲の上から カレッジ・フォークを思い出すメロウなナンバーです。キャッチーなサビは、バンジョーやペダル・スチール・ギターが登場しますが、それ以外のところはメロトロンなどを使い、ちょっとウエットな感じです。
高校生になったら 実は、これは私が中学生の時に書いた曲をアレンジしたナンバーで、歌中でマイナー・コードが一度も出て来ません。更にタブラやE.シタール、逆回転物などが登場する、とてもサイケデリックなハード・ロックです。
約束しましょう ハワイアンな4ビート(?)って感じでしょうか。歌&ウクレレとベースを先ずは一発録りし、あとからオーバー・ダビングしたのですが、最後はバンジョレレが登場し、ちょっとだけデキシーな感じになります。これも短い曲です。
荒野に用心/永遠の踊り子 「荒野に用心」はインディアン・フルートのイントロで、その後「永遠の踊り子」へと繋がって行きます。歌が出て来るところはハード・ロックなのですが、それを挟んで出て来るケーナのインスト部分が聴き所でしょうか。私はこの曲のクラップを聴くと、フラメンコを演ってる小さな小屋を連想してしまいます。何故でしょうか?
ただそれだけさ コーラスが重視されてるソフト・ロック調のナンバーです。タムの音が、ティンパニーの様で結構行けてます。サビはキャッチーですが、どこか悲しげ。
サヨナラ僕の想い出 バラード・ナンバーですが、ピアノのコンプレッサーが強めに効いていて気持良いです。途中のギター・ソロとギターのオブリ、メロトロンのチェロとフルート、それからコーラスなんかも結構行けてると思います。
青い東京タワー(テレビ塔の空) 1stにも収録した曲ですが、こちらはニュー・バージョン。ティン・ホイッスルの裏メロが良いと思います。メロトロンもかなり登場します。
朝日を見に行こうよ こちらもニュー・バージョンですが、ドラムスと二胡、それとリード・ヴォーカルは以前のトラックを使用しました。途中で中南米のハープ、アルパが出て来ます。オリジナル・ヴァージョンよりも音に厚みを持たしてあります。メロトロンも出て来ます。

 今日は先乗りで前日からスタジオに来てたタッキーとよすおさんに駅まで迎えに来てもらい、私がスタジオに着くなりいきなりレコーディングをスタートする事が出来る様にセッティングもお願いしておきました(ありがとう!)。

 さて、「俺達、ミラクルシャドウ!」のドラムを演り直しをしようと思います。理由は、ドラムとベースを同時録音する際、私が後のオーヴァー・ダビングの時の為のカウントを所々で打ってるのですが(スティックやハイ・ハットを打ちながら、「ワン・ツー・スリー」とかって言ってます)、それを編集で除くのなら、「もう一度録り直してしまおうか」と言う事になったのであります。
 使用するドラム・セットは前回と同じ、2タムのラディックのセットですが、スネア・ドラムだけはスリンガーランドのラジオ・キングを使う事にしました。それから、今回のドラムのレコーディングの為に、プラスティックのチップの付いたドラム・スティックを2セット用意したのですが、ものの3分も経たないうちに4本全てのチップが砕けてしまい、NGです。勿体ないです。これに懲りてもう二度とプラスティック・チップのスティックは買わないぞ!実はプラスティック・チップのスティックを使ったのは高校1年生の時以来なんですが、たしかその時も同じ事が起こり、それに懲りてそれ以来プラスティック・チップのスティックを使用してなかったのです。が……。
 早速試し録りしましたが、スネア・ドラムの音がどうもイメージと合わないので、やはりいつものラディック・スプラフォニック400(5インチ半)に換えました。ですが、これでもまだイメージに合わなかったので、ラディックの5インチ木胴、パイオニアに換えました。これでバッチリ。いよいよ本番録りです。
 それにしても今日は暑いです。最後はパンツ一枚になっての熱演となってしまいました。途中、「そうだ!最後のところは元のドラムを出して、ツイン・ドラムにしよう!」と閃いてしまいました。ですから、プレイの方も元のドラムとぶつからない様に叩く様にしました。
 最後は、一応ラフ・ミックスを創り、今日はこれでおしまい。

2004年4月2日金曜日
 朝起きて、いきなり「青い東京タワー」のサンポーニャをダビングです。以前、サンカと言うテナー(?)のサンポーニャをダビングしましたが、今日のは同じフレーズを更に一オクターヴ下げて録る為、トヨスと言う全長が1m35cmもある大型サンポーニャを使う事になりました。これは物がデカイ分、肺活量もかなり必要とします。ですから、午前中からかなり目まいが……。

 お昼はタッキーやよすおさんと一緒に『福々亭』へラーメンを食べに行きました。3人の大好物を腹一杯食べた後は、いよいよ気合を入れて(いつも入れてるつもりですが…)、お風呂場でエコーを録ります。名付けて、「バス・チェンバー」です。FAB ROCKS REC. HOUSEのお風呂場はとても良い音がします。床はと壁の一面だけが石、風呂桶が御影石、天井は木で壁の残り3面は窓と入り口(木の戸)です。これがどう言う理由か良いエコー感を生んでくれるのです。
 さて、「風呂場の音を録る」と言っても何をするかと言うと、既にテープに録ってある特定の音だけを風呂場のスピーカーに送って鳴らし、そこのエコーが掛った音をマイクで拾って録音するのです。しかし、1つだけ問題が……。ここFAB ROCKS REC. HOUSEは山奥なので、時折凄い音をたてて風が吹きます。その風の音が一緒に入ってしまうので、風が止んでる時を見計らって録らないといけません。ですから、バス・チェンバーを録る時は、“チェック要員”として、よすおさんかタッキーがヘッド・フォンでその音だけをモニターしてチェックします。私は全体の音としてバス・チェンバーがマッチングしてるかをチェックします。必ずしも全ての音にこのバス・チェンバーのエコーが合うとは限りません。勿論エコーなんて要らない音も沢山あります。それに空いてるトラックも限られてます。ですから、このバス・チェンバーを録る事はせいぜい1曲に付き、1つか2つと言う事になります。今日はこのバス・チェンバーの他に、AKGの「BX−20」と言う大型のスプリング・リヴァーブも録っておきます。このリヴァーブは持ち運びが非常に困難です。ですからミックス・ダウンのスタジオに持って行く事が出来ません………、かと言って、ミックス・ダウンで使わない手は無いです。ですから、「この音だけは絶対にBX−20で」と言うものだけでも録っておく事にしました。

 夜はまたまた歌のチェック。で、今日はこれで終りです。遅い夕食をして、更にミーティングなどをしたら、なんと朝の5時近くになってしまいました。早く寝ないと朝8時半には起きるつもりなのに……。

2004年4月3日土曜日
 私はどんなに夜遅く寝ても、次の日の朝は、目覚まし時計無しで、だいたい普段の時間通りに起きてしまうと言う習慣が有ります。結局今朝も8時半に起きてしまいました。ですが、他の2人をいきなり起こすのも可愛そうなので、先に御飯を(土鍋で)炊いておく事にしました。土鍋で御飯を炊くと、だいたい30分強は掛りますので、彼等はその分寝る事が出来ますね………と、御飯を炊いているとタッキーが起きてきました。よすおさんはしつこく起こさないと絶対に起きてこないので、御飯の支度が出来上がる直前に、私とタッキーとで交互によすおさんに声を掛け合います。どう言う理由か、“私とよすおさんの組み合わせの時”と、“私とタッキーの組み合わせの時”とでは、例え起きる時間が同じでも、動き出す時間が“私とタッキーの組み合わせの時”の方が1時間は早いのです。“私とよすおさんの組み合わせの時”は、例えば9時に起きると、動き出すのが早くて11時半、遅ければ12時近くまで掛ります。対して“私とタッキーの組み合わせの時”は、9時に起きたら、10時迄には動き始められます。つまり、最低でも「よすおさん、起きろー!!」を30分以上は演ってるのであります。この差は相当大きい!よすおさん、しっかりせんかい!………と言っても、よすおさんは夜食などの後片づけなどは必ず1人でもやってくれます。文句は言えません(イヤミは言うんだけど……)。むしろ感謝しなくては………、と言いながらも、「よすおさん、起きろー!!!!!」と大声で怒鳴って容赦なく起こします。タッキーなどは、よすおさんの布団をはいで起こしてました。ですが、今日は怒鳴る事は出来ません。この後は歌&コーラスのチェックをしないといけないのですから……。

 今日も昨日と同じ段取りで、バス・チェンバーとBX−20の録り、そして歌やコーラスの最終チェック、そして最後にミックス・ダウンで使う機材の車への積み込みをしました。これでいよいよ5日から始まる「ミックス・ダウン、第1クール」へ突入です。今後は、青ちゃんのスタジオ、『イデア・サウンド・スタジオ』(正式なスタジオ名はなんだったっけ?)に場所を移します。Go!!ミラクルシャドウ!!

さて、ここからは、吉岡よすおのレポートも雑えての
レコーディング日記、『ミックス・ダウン編』です。

2004年4月5日月曜日 レポートByよすお
 さてさて、今日から場所を『イデア・サウンド・スタジオ』に移して、ミックス・ダウンの開始です。ミックス・ダウン中はしんちゃんは大忙しなので私、吉岡よすおがミックス・ダウン日記をレポートします。
 私とタッキーは12時にスタジオ入りして、機材を全部下ろして準備を開始します。1時間ほどでセッティング終了、スタジオの機材と一緒に並ぶと壮観です!そうこうしているうちにしんちゃんが到着、しかし、昼食のためすぐ居なくなってしまいました、あらら。

 今回の『イデア・サウンド・スタジオ』のアシスタントは村石君、萩谷君です、よろしくね。

 13時半からいよいよミックス・ダウンのスタートです。17時からMTRのメンテナンスが入ってしまうために、それまでに仕上げられる短い曲からということで、「おやじジャム」から。SSLのミキサー卓の使い方を教わりつつ始めましたが、9トラックしか使っていないので凄く早く終わってしまいそうです。最初と言う事もあり、いろいろ試しながら音を作って行きます。

 途中で青野さんも登場です。MTRのオート・リワインド、オート・リピートを設定しようとしましたが、久々にアナログMTRを使用したのでどうやら忘れているようです。どうにか思い出して設定出来たので、いちいちMTRのリワインド・ボタンやプレイ・ボタンを押さなくてもいいので快適です。
 試しにミックスしましたが、予定時間よりも早くMTRのメンテナンスの人が来てしまい(こないだ伊豆に来てもらった人でした)、ちょっと早いですが15時半で一旦中断です。その間に暫く使ってなかったローランドのテープ・エコーのチェックをしましたが、普段あまり使ってない割には問題なく動きました。

 17時にメンテナンスが終り、ミックス・ダウン再開です。先程のテイクに別テイクのドラムスが有る事が判明、もう一度やり直しますが、こちらの方が音がグッと前に出てきました。1時間ほどでミックス完成。結局、それまで有ったクラビネットのパートを一部分カットしました。

 夕飯はみんなで代々木上原駅近くの『大勝軒』に行って、チャーハン、焼売+付け麺のセットを注文しました。美味しいんだけど、ほとんど炭水化物と脂肪分って言う感じで思いきりお腹いっぱいっす、もうこれ以上食えません!

 次の曲は、「おやじジャム」から続く「気になる僕の未来の行く末」です。先ずは音作りから(20時スタート)。

 スネアはディスクリートのコンプを掛けてみたら、意外な事にかえって音が遠くなってしまったので却下し、別の真空管の物に繋げました。
 メロトロンにはスプリング・リヴァーブを掛けました。
 それから、しんちゃんのテレフンケンのU373(ディスクリートの方のコンプ)が一台調子悪いようです。結局は使用しませんでした。
 大体音が決まったところで、青野さんに意見を聞こうと思ってそっちを見ると……食事後のうとうとタイムで、気持ち良さそうな寝息を立ててお休みになっておられました。早い話、「おじいちゃん状態」です!
 続きは明日、22時45分で今日はお開き。お疲れさまでした!

レポート:吉岡よすお

2004年4月5日月曜日
 今日から、いよいよミックス・ダウンが始まります。待ちに待ったと言う感じでしょうか。胸が高鳴ります。日取りも良く、今日は“大安”……って、結構こう言うのって気にするんですよ、私は。

 よすおさんとタッキーは12時から、私はそれより1時間遅い13時入りと言う事でスタジオに入るつもりでしたが、道が混んでたわりには予定より若干早く着き、まずは腹ごしらえ。タッキーと一緒に代々木上原の『大勝軒』に行きました。私は野菜つけめんの大盛りを注文し、体力をアップです。何しろ、お腹が減ってると集中力が無くなりますから……。で、お腹がイッパイになると今度は眠くなる……。

 さぁ〜て、どの曲からミックスしようかなぁ〜っと…。私ったら、なんのプランもたてずにスタジオ入りしてしまいました。やはり血液型がO型だからでしょうか?……と、先ずは簡単な曲から始めたいんですが、あいにく今日は17時にMTRのメンテナンスが入るので、最初の曲はその時間までに仕上がる曲でと言う事になります。となると、「ミラクルシャドウ大行進!」や「約束しましょう」と言った小曲からとなりますが、いきなり小曲からってのも、何だし……。結局は「おやじジャム」をメンテ前までに、その後は「おやじジャム」とメドレーで繋がっている「気になる僕の未来の行く末」と言う事になりました。おやじジャム」の方は使用トラックが少ないのですが、対する「気になる僕の未来の行く末」の方は、同じトラックの別個所に別の音が入ってたりとかで(例えば、1つのトラックにギター・ソロが入っていて、その後にタンバリンが入ってたりとかってする事)、結構大変そうです。実際、今回使うSSLのEシリーズでのミックス・ダウンは実に5年振りです。もうすっかり卓の使い方は忘れてしまってます。ま、その辺はアシスタントに随時聞きながら演る事になると思いますが、ここは自分のスタジオではないので、更にモニターとかにも慣れるのに時間が掛るのです。今回使うスタジオ、『イデア・サウンド・スタジオ』は、青ちゃんのスタジオで、モニターもかなりしっかりと調整されていて使い易いです。しかし、やはりそれでも余所のスタジオに慣れるのには時間が掛るのであります。そんな場合、「リファレンスCD」を用意しておくのですが、今回私が最初にCDケースから取り出したのは、トッド・ラングレンの『シングルズ』。ところが、実はこれはあまりベース・サウンドが下に下がっておらず、今回私が基準にしてる音像とは違っていたので、やはりビートルズの『アビー・ロード』をリファレンス用に選び直しました。リファレンスCDとは、主に、普段聴き慣れたCDをそこのスタジオで掛ける事により、自分の耳の照準を定める為の物です。リファレンスCDを聴く事により、「ん、なるほど、ベースはここのスタジオではこれ位出しても良いんだな。あ〜、なるほど、この辺の音は僕が思ってるよりよく出てるなぁ」とかって感じに耳を慣らして行きます。それにしても、ここのスタジオで聴く『アビー・ロード』はとても良い音です。流石、青ちゃんのスタジオなだけの事はあるなぁ。

 「おやじジャム」は全部で9トラックで、キック、スネア、トップ、ベース、サイド・ギター、よすおさんが弾いたギター、私の弾いたソロを含んだリード・ギター、それにクラビネットです。基本的には、ただフェーダーを上げるだけでもOKだったのですが、せっかくだからコンプを繋いだりしましたら、やっぱり格段に音が良くなりました。この曲に関しては、コンピュミックスせず、そのままの状態でトラック・ダウンするつもりです。とりあえず、今日はこの後MTRのメンテ(定期点検みたいなものかな?)が入ってしまうので、それまでに2トラに落としてしまおうかと思ったのですが、落とす直前で止め、メンテに入って貰いました。落とすのは、メンテが済んで、MTRが万全な状態での方が良いと思ったからなんです(が、本音を言えば、別にメンテ前のMTRの状態がそんなに悪かったわけでもないのですが…)。それに、休憩を取ってる間に耳が客観的なるって事は多々有るので、これも結構良い機会だったのかもしれません。

 メンテの間、よすおさん、タッキー、それから青ちゃんとバカ話などしながら、ついでに最近使ってなかったローランドのスペース・エコー、RE−555のチェックをしたりして時間を潰しました。

 メンテが終り、「おやじジャム」を2トラックに落として、先ずは「イッチョアリ〜!(1丁上がり)」、完成です!

 続いては、「気になる僕の未来の行く末」です。しかし、これは今日は最後までやらず、キリの良いところで止め、続きはまた明日って事にしました。それにしても、1日目、疲れました……。今回のクールは後2日です。がんばるぞぉ!

2004年4月6日火曜日 レポートByよすお
 今日は13時からミックス・ダウン開始です。
 早速昨日の曲、「気になる僕の未来の行く末」の音をチェックしましたら、やはり昨日聴いた印象とちょっと違って聞こえたので、音作りの修正から始めます。キックのコンプを色々と差し替えたりして試してみます。コーラスの音像を変えてみたり、スネアには更にコンプを通して音像を締めてみます。ベースの音も少しいじってました。
 1時間ぐらいで音がまとまったので、いよいよコンピュ・ミックスに突入です!先ずは初期設定をアシスタントの村石君にやってもらいます。その後、細かいことを教わりながら進めていきます。以前にも使ったことが有るはずなんですが、もう何年も触ってないんですっかり忘れているようです。青野さんからもちょっとしたコツを教わり、段々仕上がって行きます。何しろ楽器の数も多いので結構時間がかかりますが、その分カッコ良く仕上がってます!
 タッキーがテープ編集を行い、昨日の「おやじジャム」と繋いで完成です。終わったら21時になってました。

 夕食にはちょっと遅くなったので店も閉まってしまい、『松屋』に行くことにしました。お腹が空き過ぎちゃったのか、青野さんがちょっと変、壊れかかっています。店員さんが「豚めし1丁!」「チキンカレー1丁!」とオーダーを言うたび「冷や飯1丁だって…」「ボンカレーだって」などと一人で顔を真っ赤にして笑ってます!耳が良いはずなんだけど、空腹には勝てないんですかねぇ?それはそれで楽しい夕食でしたが。

 夕食後は「サヨナラ僕の想い出」に取り掛かります。また音作りから始めます(22時スタート)。

 ベースには真空管のコンプを掛けて、コーラスはバスから送ってディメンジョンを掛けてみました。
 どの曲もそうですが、録音の時点で音の方向性が見えているので、大幅に音色をいじることはまず無いです。大体音色が決まったところで一度ステレオに落としてみます。聴いてみて良ければこれで完成なんですが……。
 この時点で、まだSSLのコンピューターにはフェーダーの動きを書き込んでないのですが、一応、SSLのコンピューターに書き込みするのと同時に、リアル・タイムでマスター・テープにトラック・ダウンしてみました(1時終了)。

レポート:吉岡よすお

2004年4月6日火曜日
 ミックス・ダウンの2日目です。

 「気になる僕の未来の行く末」の続きからです。この曲のリファレンスCDはシカゴの初期の作品、『シカゴV』です。何故かと言いますと、シカゴのベーシスト、ピーター・セテラは当時、ギブソンEB−IIIを使ってまして、私達もこの曲でやはりギブソンEB−IIIを使用してるからなのです。しかも、私はこのアルバムのベース・サウンドが結構好きなんです。ところが、何回と聴いて行くうちに、やはり最後はビートルズの『アビー・ロード』になってしまいました。
 「気になる僕の未来の行く末」は実に色々な楽器を使っております。ドラムスで4トラック、ドラムスのエコー・トラック、タンバリン、ベース、エレキ・ギター4台4トラック、アコースティック・ギター、チャランゴ系3トラック、ケーナ3トラック、メロトロン3種類3トラック、タンブーラ、コーラス6トラックを2トラックにピンポン、それにリード・ヴォーカルにサイド・ヴォーカルで2トラック……。この時点で既に24トラックを越えています。多分、今回ミックスする曲の中でも、最もトラックを沢山使ってる曲ではないかと思います。24トラック以上パートが有る場合どうするかと言うと、1つのトラックの中で、パートが出て来る個所が異なる場合に限り、同じトラックに複数のパートを混在させてしまうのです。しかし、これをやると、ミックスする時に、一つのフェーダー・チャンネルから次々と別の楽器が出て来るわけで、頭もこんがらがるし、EQなどはどちらかに掛けると、当然もう一方にも同じセッティングで掛ってしまい、エライ事になってしまうのであります。ですから、その場合、チャンネルをパラで分ける必要が有ります。ですがもし2つに分けた場合、どちらかのチャンネルが出てる時は当然もう一方はオフにしておかないといけないのであります。これがけっこう面倒をおこすので有ります。それからSSLのEシリーズのコンピューターは先にオン/オフ情報を入れてからフェーダーの上げ下げを書き込む事になるので、かなり面倒な作業です。
 それにしても、のっけかからなんて大変な曲で始めてしまったのでしょうか……。スタジオの音に慣れると言う事はなんとかなるものの、やはりコンピューターを使いこなすのは慣れが要ります。ま、何度か使って行くうちにきっと、「なんであんなに苦労したんだろう?」と思う様にはなるとは思いますが、それにしても今のところはよくよく自分なりに使い方を工夫する必要が有ります。
 「気になる僕の未来の行く末」も夕方までには出来上がりましたが、思ったよりも時間が掛りました。

 さて、次は「サヨナラ僕の想い出」です。こちらも、今日はキリの良いところまで演り、残りは明日と言う事で。

2004年4月7日水曜日 レポートByよすお
 今日は13時集合だったんですが、みんなちょっと疲れがたまってきて微妙に遅刻です。昨日の続きで「サヨナラ僕の想い出」の細かい直しから始めます。昨日のでほぼOKですが、ドラムのフィルのタム一発だけとか、そんな世界です。ですがねぇ、「じゃあ次はベースの入り口の所を少し上げよう!」って言いながら、その部分まで来てもちっとも変ってないんですよ。曲が始まった瞬間に別のこと考えて忘れちゃった様です……って、ニワトリじゃないんだから…。
 一通り完成してミックスが終わったところで青野さん登場。「フェードアウトの一番最後の“ピっ”がちょっと……」って言い出した。だったら録る前に言ってよ〜!って感じですよ。それを直してもう一度録り直して完成です!

 少し休憩して気分をリフレッシュして、「青い東京タワー(テレビ塔の空)」のミックス・ダウン開始です。同じトラックに色々な音が入っているので振り分けるだけでも大変です。卓のチャンネルも入っている楽器の数だけ使うので一つのトラックに複数入っているものもその数だけチャンネルを使うので、キャスター付きのイスで右に左に大忙し!

 大体音作りが終わったところでちょっと休憩。アシスタント君達と、「音を録る時って、周辺機器の使い方やマイクの事を勉強するのももちろん大事だけど、楽器の事をよく知ってるともっとイイよ」と言う話しをしてましたが、お腹も空いてきたので夕食にします。今日は蕎麦屋に行く事になってたんですが、行ったら満席で、結局違う所に行きました。駅の改札脇なんですが、立ち食いそばでもなく、かといってちゃんとしたテーブルはなく、カウンターだけで、でも手打ちで…って言うちょっと妙な雰囲気の店でした。味は、美味しかったです!

 帰ってきてからはコンピュ・ミックスの情報(フェーダーの上げ下げなど)を書き込みます(20時スタート)。それから個々の楽器の音量を調整します。何しろ楽器の数が多いのでどうしても時間がかかってしまいます。エンディングのエレクトリック・シタールは、「カットしようかなぁ…」と言ってましたが、結局小さい音で出す事にしました。2Chステレオに落としてCD−Rに焼いて、ラジカセで聴いても良いバランスで聴こえたので、ミックス完成です。ミックスが終わったのは午前零時、3日間お疲れさまでした、次回はまた来週。さぁ、撤収だ〜!

レポート:吉岡よすお

2004年4月7日水曜日
 昨日「サヨナラ僕の想い出」を途中まで演りましたから、今日は続きからです。
 スタジオに到着して、アシスタントがいれておいてくれたコーヒーを飲みながらリファレンスCDを聴きます。リファレンスCDは今日もビートルズの『アビー・ロード』です。そして、直後に「サヨナラ僕の想い出」を聴きました。耳が良い具合にリセットされてたのか、一回聴いただけで、直しのポイントが幾つか浮かんで来ました。そこを即修正し、いよいよ2トラック・レコーダーにトラック・ダウンします。
 ミックス・ダウンとはMTRに入ってる音をまとめて2トラックに落とす事ですが、その2トラックのフォーマットとしてはデジタルとアナログが有り、アナログはテープの幅とそのテープを廻すスピードで分かれます。因みにリールの大きさはテープに何分録れるかと言う事で、音には関係有りません。2トラックには2分の1インチ幅の「ハーフ」と呼ばれてる物と、4分の1インチ幅の「シブイチ」又は「ロクミリ」と呼ばれてる物とが有ります。これは私の印象で、一概には言えませんが、「シブイチ」と言う呼び方をするのは主にレコーディング業界の人が多いと思います。対して、ラジオの業界の人は「ロクミリ」と呼んでいるのをよく聞きます。ラジオでのアナログ・フォーマットは、シブイチを19cmで廻すのですが、この19cmと言うのは、「1秒間に19cmテープが走行する」と言う意味です。レコーディングでの走行フォーマットは76cmが一般的だと思いますが、私達は一時代前の38cmで、しかもシブイチであります。テープ幅もシブイチよりもハーフの方が需要が多いのではないでしょうか?実際、私も今までほとんどハーフの76cmと言うのが多かったです。

 さて、今回のクールのトリを務めるのは、「青い東京タワー」です。こちらも、トラックがかなり入り交じってて、難しいかと思いましたが、私の方もコンピューターとの相対仕方が少しは慣れたのか、結構スムースに出来上がりました。

 今回のクールは初回と言う事も有って、先ずは新しい環境に慣れる事が先決だったのですが、結構満足度は高いです。もしも余裕有れば、FAB ROCKS REC. HOUSEでも同じ曲をミックスしてみるつもりではいますが、やはりここのスタジオ、『イデア・サウンド・スタジオ』は良いスタジオです。良い感じでミックスが出来ます。あとは、私がここに慣れたら完璧だと思います。
 …と言う事で、第2クールは来週の水曜日からです。がんばるぞぉ!

2004年4月14日水曜日 レポートbyよすお
 ミックス・ダウン第2クール開始です。お昼12時ちょい過ぎに『イデア・サウンド・スタジオ』に到着したらしんちゃんは先に来てて、Tシャツ1枚でやる気満々モードに入ってました!今日は「もしも今、会ったなら」からです。時間をかけてドラム、ベース、ギターなど念入りに音作りして行きます。タッキーはちょっと遅れて到着です。ヴォーカルの音決めはしんちゃんとタッキーで進めて行きます。が………。
 遅れて来たタッキーが、せっかく念入りに作ったギターに掛かっているコンプのつまみをヴォーカルのもとだと思い込み、間違えていじってしまいました!
 やってしまったものは仕方がないので、発展的に考えて、違うエフェクターに繋ぎ変えました。まぁ、遅れてきちゃイカンと言う事だね!
 約2時間半で音作りを終えて、次に各トラックのレベルを決めて行きます。最後ににアシスタントの村石君に曲頭のチャンネルのカット情報を書き込んでもらいます。これは曲に入る前のカウントだとかギターやヴォーカル・マイクとかのノイズの類いをカットする作業です。その間タッキーと僕が外にたばこを吸いに行って帰って来たら、何だか大騒ぎになってます。村石君の背中が寂しそうなんですが……。最終的にエンターする前に青野さんがキャンセル・ボタン押しちゃったみたいで、村石君が書き込んだカット情報が消えてしまいました!もう一度最初からやり直しです。今日は事故が続くなぁ……。その後は再度他の楽器の音色・音質のチェックをして、20時くらいにひとまず完了です。そう言えば今日はまだ夕食を食べてません。どこかに食べに行こうと思うのですが、「あまり遅くなると流石にこの辺りでもお店が閉まっちゃう」って言うので、続きは食後に。

 夕食は、青野さんオススメのラーメン屋さんへ行きました。ナント、たまたまサービス・デーだったんでチャーシュー麺が600円でした、ラッキー!スープは和風魚出汁の醤油味です。青野さん曰く「今日は若い衆が作ったから味濃いめ、油多め、胡椒も多い」らしいです。それを差し引いても美味かったっすよ。ただ麺がちょっと少なめ、大盛りにしておいて良かった!

 夕食から帰ってきて、ヴォーカルのレベル(音量)を少し直して完成です(21時30分)。

 続いて「俺達、ミラクルシャドウ!」に取り掛かります(22時スタート)。
 いや〜、素で聴いてもカッコイイ!更にカッコ良くするために細かい音作りをします。チャンネルのカット情報を3人で一緒にやって時間短縮。その後、しんちゃんが音量の調整を簡単に書き込んで、本日は深夜1時ちょい過ぎに終了です。

レポート:吉岡よすお

2004年4月14日水曜日
 今日からミックス・ダウンの第2クールです。第2クールの最初の曲は「もしも今、会ったなら」から始めたいと思います。
 この曲はドラムのサウンドが比較的大人し目になっています。と言うのは、キックの音質がちょっとだけ軽いのです。これは別に悪い事ではなく、録ってる時は「この曲には合ってる」と思っていたのですが、他の曲との兼ね合いも考えて、「もうちょっとだけキックの低音を強めにしてもいいかな」と思いました。実はそう感じたのは今になってではなく、伊豆のFAB ROCKS REC. HOUSEにいる時からその様に思ってましたので、空いてるトラックに伊豆FAB ROCKS REC. HOUSEのお風呂にスピーカーでキックの音だけを出して、それをマイクで拾って録って“バス・チェンバー”として創ってあったのです。これをドラムの音に混ぜ、とても良い感じのドラム・サウンドが創れました。因みに元のキックのトラックはカットし、スネアやトップに回り込んで録られてるキックの音をコンプレッサーで持ち上げてやり、よりカッコイイサウンドに仕上げました。
 この曲ももちろんそうですが、私がミックスをする時に最も気を使うのはベースのサウンドです。ポイントは、単純に「ローが有るか」と言う事ではなく、「ちゃんと低音が下に抜けて来るか」と言う事です。これを言葉で説明するのは中々難しいのですが、単に「ベースの低音をEQで持ち上げてやれば良いのか」と言うとそうではないのです。そうとう昔の話になりますが、私が一緒に仕事をした若いエンジニアに「ベースが下に抜けてないなぁ」と言うと、「意味が分からない」と言われた事が有りました(これが1人だけではないのであります…)。案の定、その時は私が思う様な良いベース・サウンドが得る事が出来ませんでした。例えば、当然ですが、青ちゃんやタッキーには「ベースが下に抜ける」と言う言葉が通じます。彼等に言わせると、「ちゃんと下に落っこって来てるか」と言う言い方もします。つまり、私達の感覚で言うと、「ベースの低音が上に上がって行ってしまう」といくら低音をブーストしたとしてもダメなのです。
 ドラムとベースがしっかりしてると、自ずとサウンドはしっかりして来ます。これも録りの段階でちゃんとしておけば、後はミックス時には「更に良く」と言う事だけで済むのです。ところが「良くないもの」をミックス時に「良くする」のは流石に厳しいです。
 この曲はサイズも3分強と、私達の曲にしては短く、メロディーも軽快な感じのするナンバーなのですが、サウンドで工夫した点と言うのは、リズム・セクションだけではなく、クイーンさながらのギターのオーヴァー・ダビングにより音の壁を創ってあるところです(2種類有ります)。因みにそのサウンドをアシスタントに聴かせましたら、やはりギターだと言う事が分かりませんでした。一聴した時、まるでオーバーハイム系のアナログ・シンセのパッドの音にも聞えますが、やはり音の暖かみや深みはこちらの方が断然有ると思います。それからちょっと堅めの音でダビングされた方のギターはギターであると分かりますが、それでもかなり独特です。
 各楽器の音色が決れば、あとは各楽器のバランスをとります。この時助かるのが、タッキーや青ちゃんの助言です。青ちゃんは今回の場合、とても客観的に音を観てくれていて、時折アイデアも出してくれます。普通、客観的な意見と言うのは、その音楽の尖った所や面白みを削ってしまう危険性も有るのですが、青ちゃんに限っては客観的にものを言っても、決してヤボな結果にはなりません。ここは青ちゃんの抜群の耳の良さと、私と青ちゃんの絶妙なコンビネーションもいい結果を出してくれる様です。なにしろ、私と青ちゃん、付き合い永いですから…。
 対してタッキーは、伊豆(レコーディングの時)からの流れで、私達の演りたい事が逸れて行かない様に観てくれてます。例えば、タッキーが「ベースが小さいな」と言うと、私が本当に出したい位までベースが上がってなかったりします。ミックスをしてる本人としては、時に自分を見失ってしまい、サウンドが知らないうちにこじんまりとしてしまう事が有り、それが後で後悔する原因にもなるのです。私達はミックスに入る前にこの事に関してかなり話し合いました。タッキーは、エンジニアリング的にも、アレンジ面的にも、私達が何処を目指したいか最も理解してるうちの1人です。これは、私達とタッキーの信頼関係がしっかりしてるからこそと任せられるのです。
 と、言った訳で、今回のプロジェクトでこのスタジオ内には、私以外に2人のエンジニアが詰めています。それも私が最も信頼してる、タイプの異なる優秀な2人が……。
 さて、「もしも今、会ったなら」のミックスも完成し、とても良い仕上がりになりました。

 続いては「俺達、ミラクルシャドウ!」のミックスに入ります。
 今の時間は夜の10時位でしょうか。この曲をこのまま続けると朝方まで掛るのは必至ですので、今日はある程度のところまで形を創って、残りは明日やる事にします。しかし、そうは言っても、ここはかなり勝負所でも有りますので、サウンド面は今日中に創り込んでおく必要が有ります。この場合、次の日に最初に聴いた瞬間にポイントがハッキリ見え、そこを瞬時に正しい方向へ持って行く事が出来るからです。
 と言うわけで、頑張った結果、2〜3時間でキリの良いところまで持って行けました。実はここからが永いのですが、それはまた明日。

 帰りはようやく雨が上がり、自分で車を運転して帰ります。家に着くまで、夜中でもだいたい1時間強は掛りますが、その間カー・ステレオ(CD)で、好きなCDを聴いて帰ります。私の車は6連装のCDが付いてるのですが(つまりCD6枚入れておけます)、とりあえず、ここ最近はドゥー・ワップのオムニバス・ボックス・セット3枚組、スティックスのベストを2枚、ブロークン・ホームの1stです。特にドゥー・ワップはこんな時にとても心が癒されます。昔は、レコーディングの帰りに音楽を聴くのって嫌だったのですが、最近はとても楽しんで音楽を聴いています。

2004年4月15日木曜日 レポートbyよすお
 昨日の続きで「俺達、ミラクルシャドウ!」です。昨日の時点で大体出来ているので、細かい直しをしてミックスです。迫力が出てカッコ良く仕上がりました!他の曲と同じようにカラオケも録っておくんですが…、一生使う機会はないだろうなぁ(笑)。

 続いて「ただそれだけさ」のミックスです。
 空きトラックがあるので、先ずはコーラスを所々定位を変えてステレオ・ピンポンをします。ギターソロが何をやっても良い音にならなくて散々いじくり回してみたんですが……よくよく見ると、前の曲のミックスの時にコンソールの逆相スイッチを押したところがそのままになっていて、それを元に戻したら何の問題もない!スイッチ一つの事ですが、これで随分変わります。
 それが終わって、ちょっと早めですが夕食にします。先週満員で入れなかった蕎麦屋です。味も量も満足です。

 その後、音作りに取り掛かります。ラフ・ミックスが良い感じなので、それを聴きながら大体近づけて行って、それから細かく作り上げて行きます。この曲はいつもよりも歌、コーラスに時間を掛けてます。なんかコンプレッサーの感じが違うなぁ…と思って、しんちゃんがアシスタント君に言うと、ごそごそと色んなコンプが出て来ます、このスタジオは!流石青野さん、埋蔵量が違います!!INOVONIX、LA−4、LA−3Aと出て来ましたが、リード・ヴォーカルにはLA−3Aを使用しました。一気にバランスをとって、今日はこれまで!

レポート:吉岡よすお

2004年4月15日木曜日
 今日も『イデア・サウンド・スタジオ』にて、昼過ぎからのミックス・ダウンです。先ず、スタジオに着くなり、薬屋へ直行。ここでビタミン剤などを買い込み、それから昼食をとりました。どうも生活のパターンが変わってるせいか、疲れが直ぐに溜ってしまいます。更に悪い事に食事も外食中心で、炭水化物ばかり摂取してしまうのです。
 スタジオに戻って来るなり、食後のコーヒーなどを飲み、一息入れたところで、昨日まで演っていた「俺達、ミラクルシャドウ!」を聴きます。一回目に聴く時の感覚はとても大切です。ある意味、ここが勝負所だったりします。ですから、心と耳の準備が出来たところで一気に集中力を上げて聴きます。案の定、聴き終わった時点で、直すポイントを数ヶ所発見し、即時に直しました。そして、直したそれを聴きましたら、これだけでもかなり良い出来になって来たのが分かりました。この曲は、最後にツイン・ドラムになります。実質、2つのドラムで7トラック使ってますが、ツイン・ドラムで演ってる時にこの7つのトラック全てを開けてしまうと(使うと)大変な事になります。ですから、右チャンネルのドラムスはスネアのチャンネルだけを使い、左のチャンネルのドラムスはキックとスネアのチャンネルだけを使いました。勿論、コンプレッサーは強めに掛けて、スネアのチャンネルに回り込んだ、タムやシンバルの音をエキスパンディングさせておきます。ここのッスタジオには様々なコンプレッサーが用意されてます。その中でも目玉は2台のフェアチャイルド、モノ・チャンネルの660(レッド・ロゴ!!)とステレオ・チャンネルの670です。670は、ビートルズが使ったとされかなり有名ですが、私は数年前、イギリスの『エア・スタジオ』と『アビー・ロード』へ行って参りましたが、置いてあったのは660(もちろんレッド・ロゴです)の方でした。私が思うにはビートルズは670ではなく、主に660の方を使ってたのではないかと思うのですが……。670は660のステレオ・バージョンと言う事ですが、ン〜、どうなんでしょうか。コンプの効き方は660と670では違う気がします。でも、音は正しくどちらもフェアチャイルド!私は今まで、フェアチャイルドのコピーとか、フェアチャイルドを参考に作ったとされるコンプレッサーを使ってきましたが(チューブテックのLCA2Bまた2A、マンレーのバリアブルMu、ドローマー1960、EAR660等々)、それらはどれも素晴らしい物ですが、やはりフェアチャイルドとは違う物だと思います。EAR660などは良く出来ていて、かなり掛り方が似てる気がしますが、“ある事”をした時のフェアチャイルドの音と言うのは、やはりフェアチャイルドだけの独特のものだと思います。
 今回私が持ってきたコンプはLCA2B、1960、サミット・オーディオTLA100などの現行品の他、テレフンケンU73bを2台(タッキーも2台。但しタッキーのは改造してあって、ちょっと音が違う。それとU73を1台)、同じくU373(73bのディスクリート版。タッキーも2台持ってきました)、アルテック、ゲイツのSTA(ここにも更に1台有ります)などです。因みに、タッキーはフェアチャイルドのディスクリート版のコンプを1台持って来てますが、こちらも660や670とは全くの別物。ギターなどに掛けるととても良い感じになります。それから、ここにはテレトロニクス(ウーレイ)のLА2Aが2台置いてあります。私が持ってきたサミット・オーディオのTLA100はLA2Aのコピーとされてますが、音は全く違います。それから、ここには更にADLがLA2Aをコピーしたものが2台ありますが、それもキャラクターが違う物であります。往々にして「コピーする」と言うのはとても困難な事なんですね。しかし、コピーが似てなくてもそれはそれでちゃんと使い所が有るモンです。悲観する必要もまったく有りませんね。

 「俺達、ミラクルシャドウ!」のミックスも無事終わり、続いては「ただそれだけさ」のミックスに入ります。この曲も今日はある程度のところまで創ったらあとは後日と言う事にします。
 この曲は、実はラフ・ミックスをかなり真剣に創ったので、それをリファレンスにします。ラフの方のバランスはほぼ完璧な満足感が有るため、それと同じ様にバランスを付けていきます。ただ、完成度はラフを下回ったら当然ダメなので、音創りにはプレッシャーが掛ります。
 今回もベースにポイントを置き、太いサウンドを創るつもりですが、この曲の聴き所は何と言ってもコーラス。それにティパニーの様なヒップなタムです。コーラスは全部で5パート入ってるので、それを細かくバランスをとっていきます。そして、空きトラックにステレオでピンポン。ミックスでは、このピンポンしたコーラスを使います。それからヴォックス社のオルガンにゲイツのコンプを掛け、余計なレンジをEQでカットすると、抜けが断然良くなりました。歌に関してはタッキーにコンプを掛けて貰います。実は私、自分の声にはあまり関心が無いのかもしれません……と言うより、私にとって私の声は、いつも歌ってる時に出てる声が出てればそれでOKだったりするのです。しかし、やはりこう言う時こそ、他人の助言を受け入れるべきで、ここは一つタッキーにコンプを掛けて貰います。コンプに関してはウーレイの1176かLA3辺りが良いと思うので、それを一応指定しますが、タッキーの意見も同じ様です。タッキーは普段、声優の声を録る仕事を多く手掛けているので、声を録る事に関してはスペシャリストであります。基本的に私達は、録りの時もミックスの時も歌にはEQを使ってないので、「コンプを使って如何に音を前に出すか」と言う事にポイントを置いて声の音質を決めています。自分で自分の声を創ると言うのは、とても客観的には出来ないですし、案外、自分でやるよりも他人に任した方が、私の声の良い所を引き出し易いのです。

2004年4月16日金曜日 レポートbyよすお
 「ただそれだけさ」の昨日の残りから開始です(13時)。
 更に細かくトラックごとの音量の上げ下げをしたり、ベースの音を少し変えてみたりして、最終的にバランスを取ってOKテイクを作ります。しんちゃんが作業してる間、青野さんに連れられてタッキーも一緒に離れのスタジオに行ってきました。何やらネットで検索してますが、別荘探してますよ。今度はリゾートスタジオでも作るんですか??

 ミラクルシャドウの重要なスタッフのO氏が途中様子を見に来ましたが、今日は1時間ほどで帰られました。

 さて、今日の2曲目に取り掛かります、「朝日を見に行こうよ」行きまーす(17時スタート)。
 ドラムの音色、ヴォーカルなどは以前に作ってあるので、この曲は早く仕上がると思います。でも、後からダビングした楽器も結構有るからいつも通りかな?ベースの音が中々下に落ちないで難儀してます。青野さんは途中仕事で抜けてたんですが、良いところに帰ってきたので、細かいところを見てもらい、ベースもぐっと来ました。

 最終ミックスの段階で問題発覚!二胡にノイズが乗ってます!今迄気が付かなかったんですが、コンプを掛けたらノイズが増幅されてしまったようです。う〜ん、困った!もう一度ジャーさんを呼んで録り直す事になるかもしれません!

レポート:吉岡よすお

2004年4月16日金曜日
 今日は道路がとても混んでいて、いつもより30分ばかし遅れて来ましたが、ミックスの方は無事13時に開始しました。そろそろ3日目になると身体も耳も疲れてくる頃です。ミックスを演っていて疲れて来ると、自然とスピーカーの音量が上がって来ます。ですから、私も出来るだけ意識して音量を絞ってミックスしています。勿論音量を上げないと分からない部分に関してはしかたありませんが……。

 「ただそれだけさ」のミックス中、仲間のOさんがやって来てくれました。予想を超えるミックスの出来にOさんも嬉しそうです。実は私とOさん、深い因縁で結ばれてまして、私がこの業界のレコード会社のディレクター&プロデューサーで初めて名刺を頂いたのがなんと彼なのです。それから経つ事ン十年。青ちゃんが「いい人紹介するよ」と言って会わせてくれたのがなんとO氏でした。彼は音楽的にも抜群のセンスを持っていて、音楽の好みもとても会います。何か深い縁を感じます。

 さて、今回のクールの最後は「朝日を見に行こうよ」のニュー・ヴァージョンのミックスです。1stでのミックスを私はかなり気に入ってるので、それを越えなくてはならないプレッシャーが有りますが、ミックスが始まるやいなや、もう既に歌も胡弓もドラムスも(前のヴァージョンで残してあるのは、これらとタンバリン、クラップ、マラカスだけです)元よりも良い音になってます。歌は太くなり、胡弓もとてもナチュラルになりました。ドラムもタムの感じが更に説得力が有ります。それから新たに録ったギターやピアノ、そしてメロトロンのコーラスとコーラスのオーバー・ダブ。これが加わった事で、この曲は凄く良くなりました。しかし、この曲で困ったのはベースの音色です。私は少し考えた結果、自分でいじくり回して煮詰まるよりかは、こう言うのが抜群に上手い青ちゃんが来るのを待つ事にしました。先ずはベースを後回しにして、他の音をドンドン創って行きます。音の定位に関しては基本は前回の1stと同じにします。
 さていよいよ青ちゃん登場!どう言う風に言えば青ちゃんがやる気になるのか……私は良く知っております(^^v。その代わり、それは逆もそうなのです(青ちゃんに私が乗せられる事もしばしば)。私と青ちゃんの微妙なコンビネーションで上手く青ちゃんにベースを任せる事に成功し、当然ベースは気持ち良くなりました。青ちゃん、「畜生!また仕事させられちまったよぉ!」と言って思ってますが、顔は笑ってます。
 さてミックスも終わり、最後にデカイ音でマスターを聴き、エラーがないかの確認をします(一応、アナログでも、ノイズなどが乗る事が稀に有るのです)。それにここは最後、デカイ音で聴いて、「イエー!!」って感じで、最後を締めたいと思います。すると……、なんと胡弓の入り口にちょっとしたノイズが入ってます。これは恥ずかしながら私は今まで気付きませんでした。普通なら誰も気付かない程のものなのですが、何せ、たったの2拍とは言え、そこは曲の入り口でドラムのフィルと胡弓だけと言うところ……。困ってしまいました。結局朝まで掛って色々とやってみましたが、流石にデジタル処理をしても無理で、煮詰まってしまいました。と、その時、「そうだ、その2拍間は1stのCDから持って来れないかな!?」。幸運な事に、胡弓は定位が左、ドラムスは右と、しっかりと振り切っていて、今回も全く同じ定位です。ドラムスは当然そのままで、胡弓だけ2拍間抜き出し、そこに同じコンプを掛けて入れてみましたら、ありゃりゃ、全然分かりません。これでもうバッチリ!ついでと言っちゃなんですが、その間に「やっぱりここがぁ!」と言う個所が数ヶ所出て来たので、そこのバランスをとり直し、再度ミックス・ダウン!これで無事終了。自信作の完成です!!
 結局、終わったのは朝の6時を廻ってからでした。私は朝の渋滞が始まる前に、急いで家に帰ろうとしましたが、疲れてたのか、途中で道を間違え、変な所まで行ってしまいました。結局家に着いたのは朝の8時近くになってから…。私は抜け殻の様になってしまってました。

2004年4月21日水曜日
 20日の午後から久しぶりにFAB ROCKS REC. HOUSEに来てますが、今日はは久しぶりに私とよすおさん、タッキー、青ちゃんと4人揃ってゆっくりしました。
 で、4人で集まって何をやったかって言いますと、マイク・テストです。それもゼンハイザーの421ばかり。このゼンハイザーの421と言うマイクは通称「クジラ」と呼ばれてる物ですが、私とタッキーと青ちゃんとで持ち寄ったクジラは、通称「白クジラ」と呼ばれてる物で、現在発売されてる黒い421ではなく、新しくても30年以上前の色の白い421です。実は、この3人の持ってる白クジラは、全部で10本有ります。その中にスクリプト・ロゴの物が全部で4本有り、更にスクリプト・ロゴの4本は、私のと青ちゃんのとタッキーのとではヴァージョンが多少違うのです。スクリプト・ロゴとは、ゼンハイザーと書いてあるエンブレムが続け文字になってるバージョンで、421の初期の物と思われます。音色も、普通の421と白クジラではまるで別物で、更にスクリプト・ロゴの物は白クジラの普通の物とも多少違います。最後に青ちゃんが、「ン〜、次回は僕たちのD12とD19も聴き比べようかぁ!」ですって。私達、かなりマニアックな3人衆かもしれません。

2004年4月22日木曜日
 今日は、既にミックス・ダウンを終えた「おやじジャム」と「気になる僕の未来の行く末」のスレーブを創り、それを更にピンポンでトラックを10トラック程にまとめました。これを最終的に『イデア・サウンド・スタジオ』に持ち込み、間単にTDして、“ワイルド・ミックス・ヴァージョン”を創ろうと言うモノです。多分、ここまで創っておけば、後は1〜2時間で出来上がると思いますが、果してどうでしょうか。これは来週からのミックス・ダウン第3クールで、時間が余ったらやるつもりです。

ミックス・ダウンの第3クールは、
タッキーのレポートも加わります!

2004年4月26日月曜日 レポートBy タッキー
 今日は私もしんちゃんも夕方まで別件のお仕事があったので、18時過ぎにスタジオへ到着しました。開始の時間が遅くなった事もあって、早速「約束しましょう」のTD(トラック・ダウン)開始です(普段ならまずコーヒーを飲むところから始まり、耳が“ミックス・モード”になるまで音楽を聴いたり、馬鹿話をして一通り盛り上がってから開始なのです)。
 さくさくっとコンプをつないだり音を作っていったら… あれまぁ、なんと19時半にはもういい感じに出来上がってきました。この場に青ちゃんがいれば、「ん〜 ここから3時間はかかるかなぁ〜」なんて冗談言い出しそうですが、この時点では不在。それに、この曲はそんなに時間かからないんだよぉ〜。なんたって、“コンピュ・ミックス”(卓のコンピューターにフェーダーの上げ下げを覚えてもらってシビアなミックスを作ることに利用します)だって使わないんですから。
勢いイッパツ!そのノリがまた気持ち良いんです。昔はみんなそうやってミックスしていたんですから、ミラクルシャドウだって当然そういうミックスを創ります。フェーダーの上げ下げやミュートを私と打ち合わせて(さすがに1人ではフェーダーやミュートを一気にさばききれないので、2人でミックスします)、30分ばかりお話ししてくつろいでから、「えいやっ!」とばかりに2テイクほどミックスして完成!!ほーら20時45分には終わったもんね〜。時間はかけていませんが、ノリのよいミックスに仕上げる事が出来ました。

 21時30分、次の曲「高校生にったら」に突入です。突入と同時に青ちゃん登場!「もう一曲終わっちゃったのぉ〜?」なんて言いながら、少し寂しそう。だいじょうぶだよ、この曲ではいっぱい手伝ってもらうからねっ!。早速ドラムスのサウンド・チェックを青ちゃんに手伝ってもらいました。そしてボーカルにコンプをかけた時点で、「このボーカル、もっと怪しくしたいなぁ…。青ちゃん、やって」とのしんちゃんのおねだりにうれしそうに答える青ちゃん。とっておきのフェイザーを出して来て、バッチリ怪しくしてくれました。ついでにギターも怪しくしようとしたところで、またまた青ちゃん自主的に登場!これまたすばらしく加工してくれました。ここで今日のミックスダウンは終了して、続きはまた明日っ。今日は青ちゃんマジック大炸裂の日でした。

レポート:タキザワオサム

2004年4月26日月曜日
 今日は先ず、10時半に『イデア・サウンド・スタジオ』に入り、機材セッティングを終えたらそのまま六本木まで地下鉄で行き、そこでラジオの収録です。したがって、ミックス・ダウンは夕方18時頃からと言う事になります(因みに今回の御題目は「アラン・ホールズワース特集」)。で、その六本木で、何と偶然にもアラン・ホールズワースらしき人物とすれ違ったのでビックリ(きっと本人だよ)。

 夕方、『イデア・サウンド・スタジオ』に戻り、ミックス・ダウンの第3クールに突入です。今回は5日間。……長丁場です。

 最初の曲は、ちょっとハワイアンな感じの「約束しましょう」です。実は、今日はアシスタントの村石君も青ちゃんも暫く留守にしますので、コンピュ・ミックスを使わなくても出来る曲から取り掛かろうと思います。
 この曲、最初に録る時、私がウクレレを弾きながら同時に歌い、その横でよすおさんがギルドのアコースティック・ベース・ギター(ウッド・ベースとは異なる)を弾き、いわゆるマイクを3本立てたライヴでの録音でしたので、位相が狂ってる事が有ります。先ずはタッキーにそれをチェックしてもらい、そこからミックスが始まります。
 音を作りながら同時にバランスも取り、なんとなく出来上がって行きます。この「なんとなく」と言うのは、私のミックスは、「先ずは、ドラム、次はベース、そんでもって次は……」と言うパターンではやらないのです。どの音から創るかはその曲やその時の気分でいつも変ります。そして、バランスも音を作るのと同時に取って、最後はフェーダーの上げ下げに集中しますが、必要が有ればその時にも多少音をいじったりします。曲によってはドラムが最後と言う時もあります。つまり「自分が思うところがあるもの」から先に創っていきます。バランスも一度フェーダーを全部下げ、また一から取直すなんて事は、必ず2〜3度は有ります。
 気持の良いバランスになったところで、いよいよ2トラックに落とします。タッキーにもフェーダーの上げ下げを手伝ってもらい、2〜3回演ったところでお気に入りが出来たので、それでOKとしました。

 前曲のミックスが予定通りに早く終わったので、次の曲、「高校生になったら」に入ります。今日はこの曲の音を少しだけ創っておこうと思います。
 そうこうしてると、青ちゃん、続いて村石君も登場です。今日のミックスはこの辺で切り上げましたが、しかし既に時間は0時を廻ってました。

2004年4月27日火曜日 レポートBy タッキー
 今日は雨が結構降っているからか、渋滞でしんちゃん遅刻です。でも少々遅くなったって、「腹が減っては戦は出来ぬ」。先ずは近くのそば屋でカツ丼とミニ蕎麦のセットを食して準備完了。昨日の続きで「高校生になったら」の音創りを開始です。開始一発目に聴いた印象で、持って行きたいサウンドの方向性を再度確認します。2時間ほどで全体の音色とバランスが決まったので、ここでちょっとお休みします。このお休みもミックスダウン時には重要な事なんです。ずっと音を聞いていると、耳が疲れてきてバランスが崩れてしまう事が多々あります。それに、気分転換をしてリフレッシュするとやる気が出てきて、音にもそのやる気が漲るんですよね、ふしぎと。

 さて、一服したらミックス再開です。私たちがミックスをする時に気を付けている事の一つに、「勢いをそがない」と言う事が有ります。 あまりにも完璧なミックスを創ろうとすればするほど、どんどん平坦な音になって行って、音楽としてつまらなくなると言う事がプロのエンジニアでもよく有る事なので、そうならないように気をつけながら「完璧な音楽」を目指して行きます。

 ちょうどおなかがすいてきた頃に、怪しくパワフルなサウンドに仕上がって、この曲も完成!! 

 今日の天気は風も強く雨も降っているので、晩ご飯は出前に決定。最近お気に入りの中華屋、『大勝軒』のお弁当です。つけ麺が名物のこのお店、お弁当にもつけ麺が入っています。安いのにボリュームもあって、おいしかったぁ〜。

 おなかも満足した後は、次曲「大切な人」の音創りに突入です。と、そこにようやく青ちゃん登場!「あのマイクが欲しい」とか話をして一通り盛り上がったところで、またドラムのサウンド・チェックに駆り出します(青ちゃん、いつもありがとうねっ)。青ちゃんは「仕事があるから…」と言い残して一旦帰って行きました。
 しばらく音作りを続けていたら、 青ちゃん再登場。ここでスタジオ内は大爆笑!青ちゃん、“きょとん”としていますが、実は何故青ちゃんが一旦帰って行ったのか、みんな知っているのです。だって、さっき欲しいと言っていたマイクがオークションで落札されてるんだもん…。

 楽しくみんなでお話をしたところで、本日はここまでにして、「続きは明日」と言う事となりました。

 本日の教訓 「壁に耳あり障子に目あり」

レポート:タキザワオサム

2004年4月27日火曜日
 レコーディングやミックスなど、集中力を限界まで上げて演りますと、その日の夜はなかなか寝つけなかったりします。つまり、一種の興奮状態になってしまうのでしょう。都内の『イデア・サウンド・スタジオ』から我が家までは、夜中でも車で早くて1時間は掛ります。昨夜は結局寝たのが朝の4時……。この日も12時集合だったので、1日目からいきなり寝不足です。今回はクールが永いので、ちょっとヤバイかも……。しかも、朝起きたら右の耳が痛いのです……。
 しかし、普段の行いが良いのか(?)、起きてから暫くするとその耳の痛みはスッキリと消え、自分なりに耳をテストしましたが、右耳も左耳も、同じ様に音が聞えてるので一安心です。

 さて、今日のミックスは昨日の続きから。「高校生になったら」です。
 この曲のポイントは、ベースの音、ボーカルとバックグランド・ヴォーカルとのバランス、ツイン・リード・ギター……等々、沢山有ります。例えば、ソロ・ギターのトラックで、ギターが入ってない個所には逆回転で録ったピアノの音が入っていたりとか、トラック分けもかなり面倒です。
 そう言えば、最近はリファレンスCDをあまり聴いてません。耳がここのスタジオに慣れて来たと言うのも有りますが、でも、過信はいけませんね。ところが、この「高校生になったら」のサウンド・イメージに合ったCDって、私はあまり思い浮かばないのです。私の場合、リファレンスCDを選ぶ基準は、先ず当然ですが、私が好きなCD、それからサウンド構成的に共通点が有ると思われるCDを選びますが、大抵は低音のチェックが主なところですので、低音がしっかりしてるCDが多いです。実際にミックスしてる音とリファレンスCDの音量を合わせ、ミックスをしながら時折リファレンスCDに切り替えます。その時に違和感を感じない様に音を構成して行きますが、大音量でやるとあまり効果が出ません。私は基本的に、いつもなるべく小さな音でミックスする事を心掛けています。反対に、耳が疲れて来ると、自然と音量が上がって行ってしまう様です。と言うわけで、今日も小さい音量で、それでも迫力を感じる音を創る事を心掛けて行きたいと思います。
 この曲のベースは“中音ブリブリ系”で、いわゆるクリーム時代のジャック・ブルースやBB&Aのティム・ボガードなどのベースの様な感じです。しかし、それは巧くやらないと結構低音感の淋しいものになりがちです。その辺りを注意しながらミックスして行きましたが、いつもよりは試行錯誤しました。その後、今度はタッキーから「逆回転のシンバルが小さいよ」と指摘を受けたので、「んじゃあタッキーが上げてくれる?」と御願いしました。その間私は他の音を調整しました。これぞ余所のプロジェクトではなかなかお目にかかれない、ミラクルシャドウ名物“ツー・プラトン・ミックス”。ここでの決りと言うほどのものではありませんが、気が付いた事はその本人が演ると言うところが多々有ります。だって私は気が付かなかったくらいなのだから、それなら気が付いた本人がやった方がより良いと思うからです。何しろこのコントロール・ルームには私の他に青ちゃんとタッキーと言う2人のエンジニアが詰めているのですから。それから、私は困った時とかにはこの2人に直ぐに仕事を振ります。特に自分のヴォーカルなどは、かえって他人の方が標的がしっかりしてたりするのです。歌の場合、歌った本人である私が演った方が良いのは、“息使い”や“上げ下げ”などによるこだわってるビブラートなどの表現です。声質に関してはむしろタッキーや青ちゃんの方が普段私の声を直接聴いているので、的確にポイントを突いてきます。青ちゃんとタッキーでは、声質を創り上げる時のタイプがまるで違います。一言で彼等のタイプを言う事はまず出来ませんが、それでもあえて言うならば、車に例えて言うと、「高速道路を走るならタッキー」、「一般道路を走るなら青ちゃん」って感じでしょうか?私はミックスによってこの2人のどちらに御願いするか決めてます。本人達も、なんとなく「おっ!ここは俺の出番かな?」と言う感じに分かってるのかもしれませんが、一応カッコつけてるのか「え"〜っ!演るのぉ〜〜〜」って言います。フン、ホントは嬉しいくせに…。

 今日の2曲目は「大切な人」です。この曲は組曲で、しかも、レコーディングは私がピアノを弾きながら歌も同時に録ってますので、したがって、ピアノのトラックにヴォーカルが、ヴォーカルのトラックにピアノがかぶってるのです(但し、パート3からはヴォーカルは別録り)。その他にも楽器がドンドン変わったり、色々しますので、ミックスは困難をきわめそうです。今日は煮詰まらないうちに終わりにする必要がありますね。

2004年4月28日水曜日
 「大切な人」のミックス開始です。しかし、何故か今日は身体の動きが悪い様な気が……。それに今日のスタジオ内は私とアシスタントの2人、村石君と萩谷君の合計3人だけの淋しいものです。しかし、私も「淋しい…」なんて言ってる暇はありません。今日も楽しんでミックスしよっと。
 まず、私はアシスタントの2人にトラックの音を聴かせ、「これは何の音だぁ?」とクイズを出します。「ホ、ホルンですか?」、「ブブゥー、違います。正解はギターで〜っす!」。「じゃあ、次はこれは?」、「チェ、チェロっぽいですよね?」、「うん、これもギターだよぉん」。私はミックスもそっちのけで、ちょっと“自画自賛モード”に入ってしまいました。
 今日はやはり私の一つ一つの行動が自分でも遅く感じます。先程から休憩がいやに多いのです。しかし、結局は牛歩戦術も実り、最後はなかなか良い出来に仕上がりました。途中のハイ・トーンになるヴォーカルにはフランジャー等を掛け、ちょっとエフェクティヴな感じにしました(しかし、「フランジャー」と言っても勿論アナログのです)。それから、実は、この曲で初めてトータル・コンプを掛けましたが、この曲には大変合ってる様です。

 「人生は楽しまなきゃダメさ」〜「それもいい想い出」のミックスに入る前に、青ちゃんに相談。この2曲は続いてますが、「それもいい想い出」は全編ア・カペラで、これらを全部パラって卓に立ち上げると相当のチャンネル数になります。一気に続けてやるか、別々に演って、出来上がた物をテープで繋げるか。結局、クオリティーはテープで繋げた方が、ミックス時の制約が減る分良いと言う事になり、先ずは「人生は楽しまなきゃダメさ」を創ってしまう事にしました。因みに、「制約」と言うのは、使うアウト・ボードなどが両曲で共有になってしまう事から、例えば「今ミックスしてる「人生は楽しまなきゃダメさ」で使いたいコンプが有るのだけど、それはもう「それもいい想い出」の方で使ってるから使えない…」とかって言う様な事です。実は、こう言ったレコーディングやミックスでは、その「制約」が有る分創意工夫をして、更に独創的なもののなる場合が多々有るのです。ですがまあ、今回の場合は、アウト・ボードの数はそれほど要りませんでしたし、別々にミックスする事により、精神的負担を減らし、その分細かいところにも目が(耳が?)届く様になったので、この方向で良さそうです。

 「人生は楽しまなきゃダメさ」は1950年代〜1960年代のR&Bタイプの曲で、最初は8分の6拍子のイントロで始まり、歌が入ると同時に4拍子のシャッフル・ビートになり、最後は8分の6拍子のロッカ・バラードになります。コーラスもリード・ヴォーカルのラインに沿ってハモる、いわゆる“字ハモ”とドゥー・ワップ調のコーラスと、かなり多めです。ドゥー・ワップ調のコーラスは卓上でステレオにまとめ、フェーダーのコントロールが演り易くしておきました。それから、シャッフル・ビートを刻んでるアコースティック・ギターとウーリッツァーのエレピ、グレッチのエレキ・ギターの3つを一旦モノラルで出し、調整して行きました。御互いの相性が良くなったところで定位を3点に分けます。今回はベースのピックの音がとても良いので、この3つの楽器とも相性が良いです。前半はこの4つにドラムス、そしてバックのメインとも言えそうなコーラスで曲を支えます。あとはハモンド・オルガンが入ってるのですが、これは存在が分かればそれで良いと、録ってる時からその様に位置付けていましたので、なんの加工もせずただ普通にフェーダーに立ち上げました。
 この曲、意外と早く出来るかも。ですが、今日は時間も遅いので、こんなところで御開き。

2004年4月29日木曜日 レポートBy よすお
 今日は13時にスタジオ集合と言う事ですが、スタジオに来てみると、都内の道路が祭日で空いていたからか、しんちゃんは早めに到着していて、13時にはもう昨日の続き、「人生は楽しまなきゃダメさ」のトラック・ダウンを開始してました!しかし、タッキーは時間になっても現れないので電話してみると、「起きられなかった〜、今家出るところ〜!」と、慌ててました(^^ゞ みんな疲れが溜まってきてますねぇ…。 しんちゃんは「腹減った〜!」って言いながら作業してるし。結局タッキーは、30分くらい遅れて登場しましたぁ〜。
 「人生は楽しまなきゃダメさ」は、コーラスが多い曲なのでバランスを取るのが大変そうですが、しんちゃ んもすっかりミキサー卓にも慣れて、とてもスムーズに進行してます。最終的にヴォーカルをチェックして、この曲のトラック・ダウン終了です。
 次の曲の準備をしている間、しんちゃん&タッキーは遅めの昼食に出掛けて行きました。

 続いて「それもいい思い出」に取りかかります。「人生は楽しまなきゃダメさ」から続くアカペラの短い曲ですが、色々仕掛けがあるので短い割りには大がかりです。グッと広がる最後の部分をまず最初に 仕上げます。そこから前に戻って前半部分をミックスするんですが、丁度いいタイミングで青ちゃん登場! 青ちゃんに昔風なエッセンスを入れて貰ってイイ感じに仕上がっていってます。しんちゃ んは人の得意分野をうまく引き出すのがお上手!青ちゃんも完璧エンジニア・モードに入ってます、頼もしい!

 前半部分が完成したところで青ちゃん一旦退場、残りのみんなは夕飯を食べに行きまし た。
 帰ってきてからは、出来上がったテープの繋ぎをタッキーにやって貰いました。「おぉ〜!」って言う出来上がりです。劇的に展開する場面を早く皆さんに聴かせてあげたいです!!
 23時でいつもよりはちょっと早めですが、今日はここまでで終了です。

レポート:吉岡よすお

2004年4月29日木曜日
 昨日の帰りは、夜中だと言うのに2ヶ所も道路渋滞が有り、結局家へ帰って寝たのが朝の4時過ぎ。しかし、私ったらそんな日に限って早く起きてしまうのです。ミックス4日目ともなると、こんな感じで時差ボケ状態です。

 今日は「人生は楽しまなきゃダメさ」からですが、かなり早い時間に出来上がってしまいました。そこで、次の曲である、「それもいい想い出」、つまりア・カペラ部分のミックスに入ります。私、スタジオに来るまでの車の中で(実は昨日の帰りの渋滞中にも)、色々と考え、この曲の前半を「昔懐かしいモノ」、そして後半を「思いっ切りステレオ!!」と言う感じにしようかと思いました。と言うわけで、前半のモノは、それがいかにも得意そうな青ちゃんに任せ、私は後半のステレオのところをタッキーに手伝って貰いながら演る事にしました。「思いっ切りステレオ!!」のところは、本来ならデジタル・エフェクトを使えば容易にハイ・ファイ感も出るのでしょうが、やはりこのプロジェクトではそう言ったものは使いません。ここはアナログだけを使う事により、私達も創意工夫しなくてはならない状況を作る必要があるのです。結局、スプリング・リヴァーブなどで暖かみを出し、更にステレオ感も出す事が出来ました。
 続いては青ちゃんにモノの部分を演って貰いますが、私は「このコーラスはピアノのイメージ、そんでもってこれはストリングス代りね」と注文を出して行きます。青ちゃんが演ってる時、少しでも良い方向へ近づいたり、向いたりすると私は必ず「そうそうそれ!」と声を掛けます。こうする事により、より焦点が見えて来るのです。結局、青ちゃんマジック炸裂で、そこの部分はとても1950年代っぽい雰囲気になりました。それから私の消し忘れのコーラスに深いエコーが掛ってしまいましたが、青ちゃんに「これはカットしないで!使えそうだから」と言って、残しておいて貰いました。「消し忘れ」と言う事ですが、これは私がコーラスを歌う直前に確認の為に声を出した部分(音程確認とカウントの様なものでもあります)の事です。これが良い感じだったのでありました。
 最後はテープを繋ぎますが、これをタッキーに御願いする時に、私が「繋げて」と言った場所は、実は凄く困難をきわめてたのです。青ちゃんは始めから、「そこは無理!当然、繋ぐ所はここだよ」と思ってた場所が有り、当然タッキーもそこで繋ぐと思ってたらしいのですが、しかしタッキーは私の言った場所を真に受けていたのです。いつになってもタッキーの作業が終わらないので、私達と雑談して待っていた青ちゃん、とうとうシビレを切らし「随分遅いよね、繋ぐの…」と言いい出しました。私も「随分時間かかってるなぁ…」と思ってましたが、暫くするとタッキーが真っ青な顔をして、「ダメだぁ!ここはやっぱり繋がんない!」と。青ちゃん「えっ!?どこで繋げてるの。繋がるでしょ?」と言うと、タッキーは「しんちゃんに言われたのはココ」と。すると青ちゃん「えっ!?そこは始めっからダメだよ、繋がるわけないよ」と。みんなの冷たい視線は一気に私に向けられたのでした。すぐさまスタジオの空気を読んだ私は、「いいよ、だったらそこで。エヘヘヘ…」と言うと、みんなは「おい、逃げるなよ!」と言いながら私を睨むのでした。

 私の感覚ですと、ミックスを4日間も続けるのは、体力的にもかなりきついものが有ります。いつもですとここで明日の曲の準備をしてから御開きにするのですが、今日は「なんとか日付が変わる前に終わりにしよう」と言う事で、先程の曲のテープの編集が終わったところで御開きとなりました。しかし、タッキーは「うぉー、疲れたぞぉ〜」とまるで生き血を抜かれた“ゾンビ状態”です。私の方はと言うと、タッキーがテープを編集してる間に青ちゃん達とバカっ話しをした事でリフレッシュ完了。あとはお家に帰ってビール飲んで寝るだけ。今日は夜中の1時には家に帰れるし、なんだか気分はさわやかで、“田中星児のビューティフル・サンデー状態”です。と言うわけで、明日はいつもより早く11時から。張りきって行きましょう!「はあっ、はあっ、はあっ、びゅーてふーさーんで〜♪」。

2004年4月30日金曜日 レポートBy よすお
 今日は11時集合で「憶えてるかい?」のトラック・ダウンからです。但し、青ちゃんとタッキーは前半はお休み。今日もしんちゃんは1人でミックスです。しかし、しんちゃんはいつも以上にハイ・ペースです。途中バカ話を1時間半ぐらいしてたんですが(大体そう言うときは、僕が集中的に攻められることが多いんです…)、それでも15時までには音創りが終わって、17時には1曲完成しました。さわやかで、気持ちのいい出来上がりです!

 続けて「雲の上から」に突入です。今日のしんちゃんはかなり“やる気モード”に入り込んでいるので、2曲目に入ってもペースが衰えません!2時間くらいで音作りを完了してから食事に行きました。いつもですと全員で食事に出ちゃうんですが、今回はアシスタントの村石君、萩谷君に後の作業の準備をして貰って、その間にこちらは先に食事を済ませて、後で交代と言う事にしました。時間を効率的に使えて、GOODです!
 その後もハイ・ペースは変わらず、20時にはほぼ完成しました。しかし、青ちゃんが「一カ所だけ気になる…」と言い出しました。一カ所直すと言う事は、それに伴って他のバランスも変わって来るし、「だったらヴォーカルのエコー感も変えてみようか?」となり、結局それから2時間くらい掛かりました。作品の完成度を上げる為なので妥協はしません!さらに良くなったのでみんな大満足です。青ちゃんも「やっぱり2時間余計に掛かっちゃったね〜」と笑ってました。

 青ちゃんのご厚意で明日もスタジオが使えることになったので、今日はここで御開きです。お疲れさまでした!

レポート:吉岡よすお

2004年4月30日金曜日
 今日は11時スタートですが、私は道路の渋滞で30分遅刻してしまいました。最初の予定では、11時スタートし、13時頃に外に食事を食べに行くはずでしたが、時間節約の為、渋滞中によすおさんへ電話を掛け、「マックでハンバーガー買っておいてくれない?」と言って、私がスタジオに着く時間に昼食の用意をしておいて貰いました。これで30分の遅れは取り戻した……つもりです。今日はなんだかやる気満々って感じです。それから、今日はタッキーが所用が有り、スタジオに来るのは14時か15時頃になるとの事(実際は20時過ぎにスタジオに到着。遅いぞタッキー!)。

 やっぱり今日は、いつもより身体の調子が良い感じがします。今回のクールから、私は靴と靴下を脱ぎ、ゴム草履に履き替えてミックスに取り掛かることにしました。以前も私は、やはりゴム草履に履き替えてスタジオでの作業を行ってました。と言うのは、長時間のレコーディングやミックスですと足がむくんでしまい、疲れがそこから溜る気がするからです。それから、前回のクールからはサプリメントも多少摂取してますが、かなり効果が有る様です。レコーディングやミックスなどをやってますと、食事は大抵店屋モンなどで、栄養のバランスはかなり偏ります。若い時は有る程度偏った食事をしていてもびくともしませんでしたが、この頃はちょっと違う様です。体調管理も仕事をしっかりする為の重要な要素ですね。

 さて、今日は「憶えているかい」をやります。先ず、この曲のドラムは、聴く前に既にイメージとして私の頭の中にしっかりと残ってる感じがしますので、これは後回しにします。一番最初、ベースを立ち上げ、それにフェンダーのローズ・ピアノとギブソンJ−160Eアコースティック・ギターを出し、倍音構成を微調整します。更にガット・ギターで弾いたアルペジオも出してみます。これらの調整にはものの数分で出来上がり、それぞれの相性が良くなった分、音の抜けも良くなりました。更にリード・ヴォーカルと3本のサイド・ヴォーカルを出し、簡単にバランスをとりました。今日はかなりテキパキとしてる感じがします。泳ぐ事に例えると、潜る前に大きく息を吸って、一旦潜ったら行ける所まで行くって感じです。バランスも有る程度出来上がり、アシスタントにカットをやって貰い(音が出てない時のトラックのフェーダーを下げるかチャンネルをオフにする事により、SNを稼ぐ事)、その間しばしの休憩。1時間半位はポケ〜っとしながら雑談し、また気分が盛り上がって来たところで一気に潜ります。結局、17時頃にはこの曲は出来上がってしまいました。

 御次は「雲の上から」。今日の私はまだまだガンガン行けそうです。夕食の前にはキリの良いところまで終わり、カットをアシスタントの村石君にやって貰って、私とよすおさんはその間に食事に出掛けました。私達が戻ったところでアシスタントの村石君と萩谷君は食事に出掛けます。少しでも時間を節約する為です。「それじゃあ、休憩も時間の無駄?」…いやいや、それは違います。私にとって休憩と言うのは、時間を無駄にしてるとは考えません。むしろ休憩が有るから一気に行けるのです。それから、ミックスでもレコーディングでも、「煮詰まりそうになったら一息入れる」が私のモットーなんです。私は煮詰まる事で時間を喰う事の方が、何よりも時間の無駄の様な気がしてしまうのです(ホントはそうじゃないんでしょうけども…)。
 私は音を創って行く上で、この曲でのデッド・ポイントは「案外、ヴォーカルの音像かなぁ?」と感じて来ました。他の音が良くなって自分の理想に近づくにつれ、ヴォーカルの音像がボケてくる様です。いつもですと他の楽器の音に平行してヴォーカルの音像も創り上げて行くのですが、今日は別です。このままですと五里霧中になりそうですので、「ここは無理に俺が気張らずに、青ちゃんかタッキーに振〜ろおっとぉ」とこの時点で考えてました。しばらくミックスを続けて行くと、案の定青ちゃんから、「ン〜、ヴォーカルがぁ…」と物言いが。来た来た…、しめしめ。こうなると青ちゃんの頭の中には、このヴォーカルを何処に持って行ったら良いか明確に見えてるはずです。私は「だったらついでにエコー感も変えてね」とちゃっかり追加注文し、あら見事!ちゃんとヴォーカルが行くべきところを見つけそこに巧く収まってます。流石、青ちゃん!でも、普通の人よりも何倍も勘の鋭い青ちゃん、「なんだか、仕向けられてるみたいだぞぉ!オイ!」と言ってます。私は知らんぷり……、これに限ります。
 さて、ヴォーカルが良くなったら、今度はメロトロンのフルートとチェロ。これがヴォーカルに絡ませてあるので、そのバランスを巧くやる必要が出て来ます。因みに他の物とはバッチリ。つまりあとはこの2本のバランスだけなんです。しかし、青ちゃんったら、「ン〜、ここから2時間掛るな…」とポツリ。青ちゃんもタッキーもラフ・ミックスをかなり聴いてます。ですからラフ・ミックスよりも“ヴォーカル&メロトロンの絡み”の印象が薄いと物言いが出るのです。これは当然でしょう。しかし、これが思った以上に難しかった。“ヴォーカル&メロトロンの絡み”が印象的だったので、私、青ちゃん、タッキー、それによすおさんの4人全員が納得出来るところを探さなくてはいけません。これは決して「妥協案を出す」なんて事ではないのです。4人のベクトルは一緒。「ヴォーカルに対して、フルートとチェロがしっかり絡む!」と言う事です。ただ4人ともこだわりのポイントをそれぞれ持ってるので、それを全てクリアしてこそOKが出せるのです。
 先ずはチェロの上げ下げを何度かトライし、タッキーやよすおさんからOKが出た時点で、今度はフルート。青ちゃんはメロトロン・フルートのポイントを聴いています。良い感じでフルートが上がった時点で、「ン?今度はまたチェロが……」、そうです。“ヴォーカル&メロトロンの絡み”は3つのトラックがちゃんと絡まないとダメなのであります。青ちゃんは先程から目を閉じてます。私はそう言えば、いつもだったらメロトロンにはEQなどはしないのですが、今回はチェロの低音がベースやヴォーカルと干渉し合わない様に、少しだけ削ってあったのを少しだけ戻しました。つまみで言うと1〜2mmだけです。私は「これだ!」と思い、直した後「やれやれ」と言う感じで、青ちゃんの座ってる席の横に腰掛けましたら、目を閉じたままの青ちゃん、「ン〜、その方向で良いかもね」と言うのです。私が「えっ?」と聞き返すと、青ちゃん「チェロ…」ですって。あ〜、恐ろしい、なんて耳の良いおやじなんだ。恐るべし青ちゃん……。
 これで“ヴォーカル&メロトロンの絡み”もバッチリ。タッキーもよすおさんも青ちゃんも、勿論私も満足です。最後に青ちゃん、ニッコリ笑って、「あ〜!やっぱりあれから2時間だぁ!僕の予想が当たっちゃたぁ!」と言って子供の様にはしゃいでました。んもぉ〜、参ったなぁ…。


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