JOURNAL 2003.décembre.
〜東京幻想旅行記〜



☆2003年12月1日(月)雨☆

青山の画廊、新生堂にて土方朋子個展。
“ゆるい温度”、“my room”などの
身のまわりにあるささやかな風景を描いた小品に、
彼女がまだ美大生だったころの作品の面影を感じて懐かしくなった。
小さなものたちへの画家の愛情。眼差しの温もり。清浄な心。
(過ぎ去ってゆく“時”への愛惜・・・・。)
そのことが、生きることの重さから僕を救ってくれる。
彼女の絵に宿る天使のチカラで、明日を生きてゆける気がする。
美は苦悩する魂から生まれ,そしてまた、苦悩する魂だけがその美を見出す。
魂はその場所で出会うだろう。

夜、吉祥寺の串揚げ屋さんにて友人と楽しくて幸福な食事。
お店から、“鳥さしサラダ”をサービスしていただいた。
非常に美味しかった。





☆2003年12月2日(火)晴れ☆

テレビで小津安二郎『東京の女』を見る。サイレント。
岡田嘉子が美しい。




☆2003年12月3日(水)曇り☆

下北沢CLUB251にてりつライブ。
5組ほどのバンドの共演。かなり混みあう。
ステージ上のりつさんを観ながらも、
若い観客達の反応にもつい目がいってしまう。
りつさんがウケていると、ああ良かった、などと思う。
友人のふたりの漫画家と会場で会ったので少し話をする。
疲れていたので、りつさんの出番が終わったところで彼等と別れ、先に帰る。




☆2003年12月6日(土)曇り☆

午後、渋谷シネマライズにてヴィンセント・ギャロの新作、
“The brown bunny”を観る。ロードムービー。
この映画の主題そのものは、昔からよくあるものだと思う。
だが、その見せ方、切り口が完全に独創的。
新たなる忘れがたい名作の登場。ヴィンセント・ギャロに脱帽。

帰りに、渋谷ロフトに隣接する地下の喫茶店『OLD TIME』で
珈琲とチーズトーストの軽い食事。




☆2003年12月7日(日)曇り☆

旧友Oが入院したので、船橋までお見舞いに行く。

その帰りに立ち寄った本屋で立ち読み。
ミュージック・マガジン12月号の小さな記事で、
森田童子が紹介されている。内容は目新しくないが、
久しぶりのマス・メデイアへの登場。




☆2003年12月9日(火)晴れ☆

58年を経て、ついに日本は戦争に参加する。
理由として聞こえてくるキレイな言葉は風に舞い、
政権の真意が見えてこない。納得がいかない。
30年前に反戦行動を起こした数十万人の人々は
いったいどこに消えたのだろう・・・・・・・。




☆2003年12月10日(水)晴れ☆

テレビで小津安二郎『彼岸花』を見る。




☆2003年12月14日(日)快晴☆

友人のきよみさんのご自宅での味噌作りの会に参加。




☆2003年12月18日(木)快晴☆

坂庭省悟さんがお亡くなりになられた由。
心からご冥福をお祈りします。




☆2003年12月20日(土)快晴☆

今年の仕事も昨日でヤマを超し、少し気も楽になったし、
天気も良いので朝から武蔵野方面にフラヌリ(散歩)に出かけ、
ほんやら洞で珈琲でも飲んで来ようかと思ったのだけれど、
身体の隅々に疲労が蔓延していて外出に踏み切れず、
二時過ぎまで部屋の中でぐずぐずしていた。
遠出を避けて、しばらく足が遠のいていた神保町に行った。
この本の街を歩いていたら、ただそれだけで元気が出てきた。
中野重治、神山茂夫編著『日本共産党批判』を購入。







☆2003年12月21日(日)快晴☆

ほんやら洞にてチキンカレーとビールで夕食。
ほんやら洞は今夜はクリスマスパーテイーの由。
僕はほんやら洞を後にして下北沢BIGMOUTHでのりつライブに行く。
朝から感じていた憂鬱が、りつさんの元気で楽しそうな
歌いっぷりで吹き飛んでしまった。
りつライブに来ていた森田童子ファンのMさんとしばし童子談義。
楽しいひととき。僕とMさんは、りつさんを無名時代の童子に
イメージを重ね合わせ、りつさんの成功を夢見ている。




☆2003年12月25日(木)曇り☆

版画家・早川純子さんから来年のカレンダーが完成した旨、
連絡をいただく。ファンキーでアナーキーなカレンダー。
届くのが楽しみだ。

谷保かけこみ亭などで活動している
女性シンガーソングライター松野葉月さんのCD“マシュマロ”が今日届く。

りつさんへのインタビューを彼女のHPに掲載した。




☆2003年12月27日(土)快晴☆

ほんやら洞にて沖縄の友人Sと飲む。




☆2003年12月28日(日)快晴☆

新宿リキッドルームにて、元ストリートスライダーズのHARRYライブ。
オープニングアクトとしてりつ、JAMES&マッチャが出演。
1000人の聴衆の前で歌い、あたたかな拍手と声援を受けていた。




☆2003年12月29日(月)快晴☆

下北沢440の向かいの居酒屋“第十八順洋丸”にて旧友Sと飲む。
その後二人でBIGMOUTHの前の通りから北沢川沿いに歩き、
淡島通りに出て渋谷までフラヌリをする。
途中で厄病退散のご利益のある〆切地蔵に手を合わせ、
入院中の、我々共通の旧友Oの快復を祈る。




☆2003年12月30日(火)快晴☆

仕事納め。

旧友Oの退院の知らせが来る。




☆2003年12月31日(水)快晴☆

東京という土地に、幻想を見続けようとした一年だった。
夢を見ることができなくなったとき、生きることに意味はない。
幻想を探しながら、東京の街から街へ、
路地から路地へと旅を続けてゆこうと思う。
その曲がり角の思いもかけない出会いや再会という幸福に
時に胸躍らせながら。