JOURNAL 2003.Janvier.
〜東京幻想旅行記〜




☆2003年1月2日(木)晴れ☆

千葉県志津市の叔父の家に行く。
昨年結婚したばかりの26歳になる叔父の娘が夫と共に来ていた。
彼女は僕のことを“たかしクン”と呼ぶ。
叔父が酔っ払って、それにイチャモンをつける。
もう、いいかげん大人なんだから“クン”はないだろう、と。
『だって、小さいときからずっとそういうふうに言ってきたのだし、
従兄妹同士なんだから、いいんだよ〜。
いまさら“さん”なんて言えないよ〜ッ!』
と娘は抗議して、勝利する。
そう、もちろん、それでいいのだ。




☆2003年1月3日(金)雨☆

吉祥寺Sにて友人と恋愛論で酒を飲む。
帰りに喫茶店“くぐつ草”でココアを飲んで暖まる。
寒い一日だったなあ。






☆2003年1月4日(土)晴れ☆

 新小岩の叔母一家が遊びに来る。
王子の自宅から駒込の古河庭園まで皆で散歩。
いつものように、母と叔母とで子供の頃に
西会津に疎開していた時の思い出話になる。
祖母とその子供たちは、用事で親戚の家へ出かけた帰り道、
夜の闇の中、カンザの坂を上っている。
後から針子手習いの帰りの娘達のものと思われる話声がついてくる。
坂の両側は密集した杉木立で、深い雪に閉ざされていて
逸れてゆく道はないのだが、ある瞬間に娘達の話声が消えてしまう。
カンザの坂には虹色の狐が住んでいて、
しばしば村人を驚かすという話を祖母は思い出す。
恐くなって幼い子供たちの手をひいて大急ぎで坂を・・・・。
隣町の新潟県津川町は狐伝説で有名な土地だ。
西会津(当時の群岡村)あたりにも、そんな雰囲気は
あったのかも知れない。狐火などは日常的に見えたようだ。
現在たまたま住んでいる王子もまた狐伝説で有名で、
王子稲荷などはけっこう迫力がある。
我が家は狐に縁があるのかな・・・。






☆2003年1月5日(日)晴れ☆

国分寺を散歩。
ほんやら洞にて珈琲を飲む。心やすらぐひと時。
中古CD店“珍屋”にて、柴草玲「あじさい」、
つじあやの「君への気持ち」を購入。
柴草玲さんはCoccoの「樹海の糸」、「星に願いを」、
「強く儚い者たち」などの曲の提供者だそうだ。
今月の29日に中山ラビさんと共演するとのこと。





☆2003年1月6日(月)晴れ☆

今日から仕事始め。
会社というところはなぜだか気疲れする。





☆2003年1月7日(火)晴れ☆

Lu.la.vie.のアコーデイオン奏者isa-mi さんから
彼女達のアルバムCD“Lu.la.vie.”が届く。






☆2003年1月8日(水)晴れ☆

仕事の帰り、神保町の喫茶店“クライン・ブルー”に寄る。
マスターと旅の話などをする。
店内では瀧浦秀雄氏の写真展「東京物産」が催されていた。
モノクロームの奇妙な東京風景。





☆2003年1月10日(金)晴れ☆

ひとからやさしくされても、何故だか素直になれなくて、
そんな親切なんていらないのさって顔をしてしまい、
胸の中には愚かな孤独がひろがる。
そんなことってないかな・・・・・・。

明日は臼杵。






☆2003年1月11日(土)〜13日(月)☆

大分県臼杵市。人口約35000人。
豊後水道に面する海辺の静かな城下町。
コンビニもファミレスも見当たらない清々しい町。
そして、僕以外の誰かの故郷で、僕の故郷ではない町。
この町をただ単純に好きだと言えるのは、とおりすがりの旅人だからかな・・・・。











☆2003年1月18日(土)☆

“WORLD PEACE NOW 1.18”という
アメリカによるイラク攻撃に反対する行動の一環としての
日比谷野音コンサートを観に行く。
知念良吉、パンタ withSKI(制服向上委員会)、千鶴伽 with 坂下秀実、、
といったアーテイストたちが出演。
知念良吉さんについては今日初めて知った。
まっすぐで力強いプロテストソングに胸打たれる。
パンタさんの“さようなら世界婦人よ”はさすがという他はない。
“世界で一番大量殺人兵器を持っているアメリカが嫌いです。”とのコメント。
シンガーソングライター千鶴伽さんは四人囃子の坂下秀実さんと共に出演。
コンサートの後、反戦デモ。老若男女、多種多様な人々が参加していた。
僕の後ろのほうにいたグループは、ギターを弾きながら、
“風に吹かれて”などを歌いながら歩いていた。
世界で一番大量殺人兵器を持っているのもアメリカ。
“風に吹かれて”のような歌を産み出すのもアメリカ・・・。

デモの後、竹橋の東京国立近代美術館でヴォルフガング・ライプ展を観てから
国分寺に足を延ばして、ほんやら洞でチキンカレーとビールの夕食。
ほんやら洞の手前でラビさんとすれ違って、ドキドキする。
食事しながらきよみさんとしばし歓談。

新宿までもどって友人とバーボンを飲む。
その席で高橋真樹君という旭川在住の21歳のフォークシンガーと知り合う。
“あきさめ”というタイトルを持つ美しい歌を生で聴かせてもらう。
極寒の旭川を舞うダイアモンドダストのように純粋な21歳の魂から発せられる歌。
静かに心に沁みこんで、深い印象がいつまでも胸に残る本物の歌。
願わくば彼が、5年後にも同じ歌を同じ気持ちで歌えますように。
大人たちの利害や思惑に、傷つきませんように。
もし傷ついても、それを乗り越えて、更なる高みに辿り着く
そんな強さを持ち続けていてくれますように・・・・・。











☆2003年1月19日(日)☆

自宅付近を散歩。
王子から庚申通り商店会を抜けて隅田川まで。
(新神谷橋付近)














☆2003年1月22日(水)☆

近所のCDショップにて、森田童子ベストとシングルを予約。











☆2003年1月24日(金)快晴☆

テレビで「千と千尋の神隠し」を観る。
“顔なし”の淋しさが印象に残った。






☆2003年1月25日(土)快晴☆

夕方、ほんやら洞にてビールを1杯飲んだ後、吉祥寺で友人と飲む。
飲んだ後で食べた蕎麦がすこぶる美味かった。
古書店にて雑誌「東京人」バックナンバー2冊、
野田宇太郎「東京文学散歩 隅田川」を購入。








☆2003年1月28日(火)快晴☆

子供の頃からの写真を整理していて、
自分には心から幸福だと思える時期というものが
あんまりなかったという事に気がついた。
いつでも何か気がかりな事があって
ちいさな棘のような不安を抱えていたような気がして、
ほとんどの写真を、ただ単純に懐かしむ気分にはなれなかった。
しかし写真というものの素晴らしさは、
それが生きることの瞬間を切り取っているという事だ。
稀に、ある瞬間の幸福を、偶然にも記録していたりする。
幸福とは雨上がりの虹のようなもので、
元来瞬間的なものなのだから、幸福を記録する手段として、
カメラほど適したものは他にないのかも知れない。









☆2003年1月30日(木)快晴☆

幸福な人っていいなと思う。
その人の近くにいるだけで、
なんだか温かくなってくるような気がする、
そんな人って、いいなと思う。
そんな人に、いつかなれるかな・・・・・。