JOURNAL 2004.mai.
〜東京幻想旅行記〜



☆2004年5月1日(土)晴れ☆

午後、上野アメ横にある、
中国東北部(おそらく吉林省、北朝鮮国境の近く)
の羊肉料理を出す店にて友人B君と食事。
金串に刺した羊肉を炙って食べる料理。
大豆でできたきしめんのような平べったい食材と
豚肉と野菜をいっしょに炒めた料理。いずれもとても美味しい。
B君を上野駅で見送った後、僕はひとりで
上野公園を抜け、芸大の前を通り、池之端、根津、本郷の
路地裏を通り抜け、地下鉄南北線東大前駅から帰途につく。
夕暮れ時の昔町を歩いていると、ただそれだけで
何故か心が落ち着いてくる。
本郷通りに面する古風な紙屋の娘、若き日の友達のことを思い出した。
涼しい夕風が頬に心地良かった。





☆2004年5月2日(日)曇り☆

西武国分寺線・恋ヶ窪駅周辺を散歩。肌寒い一日。
帰宅すると、ネットで購入した『高間筆子幻景』
(窪島誠一郎著)が届いていた。
副題に“大正を駆けぬけた夭折の画家”とある彼女は
21歳の若さで自殺した“幻の”天才画家。
関東大震災でその全ての作品が焼失した。
後世に残ったのは、彼女の死後、その仲間達によって
刊行された『高間筆子詩画集』に載せられた作品図版のみ・・・。

* * * * *

米軍によるイラク人捕虜への組織的虐待という
ニュースに深い怒りを感じている。
小泉政権はこれにつきあってゆこうというのだろうか?
自衛隊がイラクにとどまるいかなる道義的理由も見当たらない。
即時撤退すべきだと思う。





☆2004年5月3日(月)曇り☆

ラピュタ阿佐ヶ谷にて、あがた森魚監督の『オートバイ少女』を観る。
夜9時からのレイトショー。終了後、外へ出ると、
人影もまばらな阿佐ヶ谷の飲み屋街のレトロな光景が
まるでいま観たばかりの映画の世界の延長のようだ。
淡い黄色の外灯、赤提灯、安っぽく点滅するネオンに
照らされたこの幻想の小路の奥の暗がりには
決して辿り着けないあの哀しみの場所がある。


                 チケット


                       主演;石堂夏央


* * * * *

とく君がエベレスト・ベース・キャンプからカセットテープを
送ってくれた。『ああエベレスト』という歌を仲間たちと
作って録音したのものだ。5人でワンフレーズずつ
詞をつくり、ボブ・デイラン風の曲をつけ、
ギターとハーモニカの伴奏で5人交代で歌っている。
なんとも言えず楽しい雰囲気がうらやましい。
中国からタイ、ラオス、チベット、ネパール、インド。
太宰と森田童子を愛する心優しき24歳。
とく君はいま、旅の途上にいる。


とく君が送ってくれた「ああエベレスト」の歌詞が書かれた手帳のコピーとメッセージ







☆2004年5月4日(火)曇り・強風☆

国分寺ラヂオキッチンにて古い友人Sと飲む。





☆2004年5月7日(金)曇り☆

本郷のお好み焼屋さんにて夕食。
この店のご主人はサラリーマンを定年退職後、
都内のお好み焼屋学校に通って、夢だったお店を
始められた方。夢を持って、それを実現する人は素敵だ。
僕の周りには、様々な世代に、夢に賭ける人がたくさんいる。





☆2004年5月8日(土)曇り☆

水道橋の日本エディタースクールにて本作り教室に参加。
夢への第一歩。年配の渋いベテラン編集者が講師だ。
彼の製本についての話は楽しく、刺激的だった。
夕方から国分寺ラヂオキッチンにて楽しい時間を過ごす。
アーテイストの写真を撮るカメラマンの方と知り合う。





☆2004年5月9日(日)雨☆

国分寺郊外、玉川上水の畔の町、鷹の台を散歩。
美しい春の霧雨の中、マイナスイオンが
いっぱいの空気を呼吸する。
住宅地の中の空き地に
無数のカモミールが自生している。
その花の香りに心癒される。
雨の中の散歩は素敵だ・・・・・


* * * * *

立川反戦ビラ事件で起訴・拘留中の3人に
東京地裁八王子支部が保釈を許可した。
これに対して検察は高裁に抗告をしたそうだ。
無意味な長期拘留(2ヶ月半)は異常と言う他はない。





☆2004年5月11日(火)快晴☆

立川反戦ビラ事件で起訴・拘留中の3人が今日の夕方保釈された。
ひとまず、良かった。本当に良かった。





☆2004年5月14日(金)曇り☆

国分寺ラヂオキッチンにて夕食。
毎年11月初旬に小金井市にある都立武蔵野公園で
開催されてきた『はらっぱ祭り』
今年は中止が決定されたという話を聞く。
ロックや民俗音楽のステージがあり、エスニックな料理や
アクセサリーなどの屋台が立ち並び、ヒッピー(の心を持つ人たち)
も全国から集まって来るという市民による手作りの祭り。
ウッドストックのようにワイルドでラブ&ピースな素敵な祭り。
この祭りの中止を聞いて、ぼくはただただ残念に思ったのだけれど、
これを企画運営している人々の極めて現実的な努力を
知るとき、その努力に参加することなく残念がっていることには
意味がないと思う。





☆2004年5月15日(土)曇り☆

夜、ETV特集「“フォーク”であること〜高田渡と高石ともや」を観る。
フォークブームの後、北陸の山の中の廃校で暮らしていた時代に、
高石さんがいかに生きることに向き合ったのかという話が非常に印象的。
俺は自然の中で、人間らしく生きているのだぞ〜という主張のなかに
“やせガマン”の要素が少なからずあったと率直に語る彼にむしろ共感した。





☆2004年5月16日(日)雨☆

書店・青山ブックセンターの店内にて
版画家早川純子さんの絵本の原画展を観る。
版画の原版(樹木の幹を輪切りにしたもの。直径15センチくらい)
なども見ることができて興味深かった。
早川さんご自身が物語りを書いた版画の絵本『不眠症』(パロル舎)を購入。
早川ワールドへの入り口だ。





☆2004年5月21日(金)晴れ☆

田町慶應通りの居酒屋“瓢”(ひさご)にて
沖縄の青年S君の送別会。





☆2004年5月22日(土)曇り☆

国立地球屋にて花&フェノミナンライブ。
久しぶりにジャンベ奏者さっちゃんが参加。
自由という言葉は、極めて抽象的な“言葉”として
普段使っていることが多いのだが、溌剌と歌い
演奏する彼女とメンバー達を見ていると、
その言葉が何を意味しているのかが
ひとつの体験として伝わってくる。
“稲穂”におけるツインギター(薫さんと堀田さん)の
“ハモる”アレンジに感動。
花&フェノミナンという最高のロック体験。

対バンに福岡からのハイリミッツ。
明るく楽しいポップな感じだが、
確かなロック魂も感じさせてくれた。





☆2004年5月23日(日)曇り☆

谷保かけこみ亭にて花&フェノミナンのジャンベ奏者さっちゃんと
三多摩ロックシーンの雄 “国分寺エクスペリエンス
のセッションライブを観る。さっちゃんは今夜はギターを
持って、オリジナルのブルースを歌う。
ジャニス・ジョプリンばりの魂を揺さぶる熱演。
“獄中のブルース”は拘留中のつらい体験を
ユーモアも交えて歌いあげた熱い曲。
強いなあ・・・・さっちゃん。
さっちゃんから、生きることへの励ましとエネルギーをもらう。
そう、励まされているのはこちらなのだ。
国分寺エクスペリエンスの女性ボーカルおちょこさんは
“世界のお母さん”で、平和への願いは
世界中のお母さん共通の気持ちだと
あたたかく、切実に、そして感動的に歌う。
胸が熱くなって、思わず涙がこぼれそうになった・・・。





☆2004年5月27日(木)曇り☆

昨日から泊り込みの仕事。
帰宅すると、旅本屋さんから
『東京装置』(小林紀晴著/幻冬社)
が届いていた。

深夜、テレビで、井上陽水のギターとハーモニカ、
ELTの持田香織のボーカルで『いつのまにか少女は』を聴く。
なかなか、いいな・・・・・。





☆2004年5月29日(土)晴れ☆

谷保かけこみ亭に行くために
友人Sと国立の大学通りを歩いていて、
通りに面した喫茶店の中に、花&フェノミナンの
ジャンベ奏者さっちゃんを見かけた。
声をかけて(かけられて?)、しばし立ち話をした。
彼女が友達と発行している“並木道”の編集会議中とのことだった。
その最新号(第22号)をいただいた。
巻頭の記事はさっちゃん自身による拘留中の体験記。
その他、社会問題、音楽論、映画紹介、書評、エッセイなど
30ページほどの小冊子ながら充実した“読ませる”内容だ。
掲載中の太田DOKOさんの漫画にそうだそうだの共感の大笑いをする。
私有地内に建つアパートに住む友人宅に、自衛隊の幹部候補生募集の
チラシが入っていたことを知った主人公の若い女性が、
テメエダッテ、ヤッテンジャナイカヨ!ジエイタイ!と憤る内容。
まったくその通りで、いったいどうやって
この正論に彼等は答えることができるのか?
不思議で仕方がない。

かけこみ亭では三多摩ロックシーンの
愉快な仲間達が盛大な酒盛り中で
僕と友人もとても楽しい時を過ごさせてもらった。





☆2004年5月30日(日)晴れ☆


八王子の浅川河川敷でのお祭り
みんなちがってみんないい
に行きたかたのだけれど、
なにやら疲れがたまっていて、
今日は一日中、家にこもっていた。
明日は久しぶりのりつライブ。
充電期間後の初ライブ、楽しみ。





☆2004年5月31日(月)晴れ/雨☆

表参道FABにてりつライブ。
彼女の名曲のひとつ、『守るべきもの』が
胸に響き続けている。