JOURNAL 2003.mars.
〜東京幻想旅行記〜






☆2003年3月1日(土)雨☆

ビデオで「オーブラザー」を見る。




☆2003年3月2日(日)晴れ・強風☆

日本橋高島屋、春季創画展にて土方朋子さんの「ワインの海で」を見る。
数多くの絵の中から彼女の絵を見つけると、何故だかほっとする。
この、穏やかでやさしい作品を生み出すまでに
いったいどんな苦悩の海を渡らなければなかったのか
などとあらぬ事を思ったりするが、それは余計な事と思い直す。
彼女の作品が与えてくれる静かな感動に
再び出会えたことの幸福を、ただ素直に受け止めれば
それでよいのだと思う。
国分寺カフェ・スローにてオーガニックビールを飲みながら
臼杵旅行の思い出を、ノートに書きつける。
臼杵出身の作家、野上弥生子の小説「迷路」を古本屋で購入。
帰りの電車の中で読み始める。








☆2003年3月4日(火)晴れ☆

森田童子ベストコレクションを購入。






☆2003年3月5日(水)晴れ☆

森田童子の20年ぶりの新録音『ひとり遊び』を聴く。
ピアノ、ギター、ハーモニカ、そして少し枯れた歌声のアンサンブルに魅了される。
甘い感傷をはるかに超えた地平に見出される、
森田童子だけがたどりつくことができた薄明、寂寞の美の世界。
20年のブランクの間、彼女がその内面にこれだけの
世界を保ち、育ててきたということは、実は予想を超えていた。
彼女は現在もまぎれもなく森田童子であり、
まぎれもなく、ひとりの芸術家であると思う。
なぜなら彼女は、昔の歌を昔のように歌うのではなく、
まさにいま現在の彼女の生の表現として歌っているからだ。
昔の歌声と変わらない、というのは事実ではないし、
変わっていて当然だと思う。
森田童子が今の自分を表現したことこそが
なによりも感動すべきことなのだ。











☆2003年3月6日(木)雨☆

神楽坂の沖縄料理店にて友人と泡盛を飲む。少々酔っ払う。
沖縄そばも食べればよかった・・・・。


              神楽坂






☆2003年3月7日(金)雨☆

職場の飲み会。




☆2003年3月8日(土)快晴☆

吉祥寺、ギャラリー人にて倉本麻弓展を観る。
小さな箱の中に収められた彼女の夢のイメージを
箱に開けられた穴から覗かせてもらう。
小さな空間に拡がる無限の宇宙。

ギャラリー人近くのラーメン屋“一圓”にて
ラーメンを食べる。






☆2003年3月9日(日)快晴☆

東高円寺の地下のライブハウス“Kaztou”で催された、
詩の朗読と音楽のイヴェント、「詠・唄・歌#01」に行く。
lu.la.vie のお二人と、そして民俗音楽をベースとした
バンドsorcererのoscarさんとも少しお話しできた。
3時過ぎに会場を後にして、女子美の脇を通り抜けて
迷路のような路地をどこまでも歩いてゆく。
ときわ荘という名のアパートがあったのでうれしくなる。
ところどころに古びた家屋があった。立ち尽くす過去。
善福寺川に出て、方南町から方南通りを新宿まで歩き、
地下鉄新宿線に乗り帰途につく。

姫乃さん、isa-miさん、oscarさん、
今日は素敵な音楽をありがとうございました。
楽しい一日でした。











☆2003年3月15日(土)曇り☆

江東区佐賀のタイ料理店にて、友人と夕食。
永代橋を茅場町の方へ渡ると、日本橋川の隅田川への合流地点に
豊海橋(フィーレンデール形式、1927年完成)が美しく架かっている。
夕霞の中の佃島の高層マンション群が、
すでに東京風景として馴染んでいる。
下町の路地のところどころに、沈丁花が香っている。







☆2003年3月20日(木)晴れ☆

対イラク戦争が始まる。
莫大な数の命が失われるだろう。
失われなくてもいいはずの命だ。
どんな理由も、それらの死を説明することはできない。






☆2003年3月21日(金)晴れ☆

人生は一度だけ。人生はいつか必ず終わりの時を迎える。
だからこそ淋しくて、だからこそかけがえがない。
“飛べない蝶”は、そんなかけがえのない生命の象徴。
そっと包み込んであげたい、いとおしい小さな存在だ。
森田童子の歌を自殺のBGMにする・・・・・
作家に対する、これ以上の侮辱はない。

“ぼくの
手のひらで
君は
ふるえているネ
ぼくの
やさしい
手の中で
このまま 君は 死ねばいい
飛べない ぼくの あげは蝶”

(「ふるえているネ」森田童子)

☆  ☆  ☆

国立にて、若きシンガーソングライター、りつさんのライブを観る。
彼女にはブルースの感性があるような気がする。









☆2003年3月23日(日)晴れ☆

恩師と旧友たちと昼食。
その後で、中目黒のギャラリーにて、
抒情の青年画家アニャン君の個展を観る。






☆2003年3月29日(土)晴れ☆

MXテレビにて、フィンランド映画「浮き雲」(1996)を観る。、
銀行の乗っ取りで老舗レストランを追い出された
スタッフたちが再結集して、新たなレストランを立ち上げてゆく物語。
資本主義の冷酷な仕組みの中で生きる
普通の人々の絶望と希望を淡々と描く圭作。
世界中のほとんどの国々で映画はつくられ、
それぞれの国に、個性的で感動的な作品はあるのだなあ。

監督:アキ・カウリスマキ
出演:カティ・オウティネン、カリ・ヴァーナネンほか





☆2003年3月30日(日)晴れ☆

下北沢BIGMOUTHにて、りつさんのライブを観る。
プロフェッショナルな歌いぶりだ。
「イナズマ」、「青春の悪あがき」といったビートの効いた歌が素晴らしい。
「月夜」、「あいたい」といった静かな歌も、
密度濃く、胸に沁みこんでくる。
本物の歌を心地良く聴きながら飲んでいると、
つい飲みすぎてしまう。美酒とはこのことだ。
もともとそんなに強くもないのにね・・・・。
最高に幸せなひと時だ。