第3章 濡れ手観音はなぜ濡れている!?

 

京都や奈良などの観光地では駐車場にバスを駐車する際、昔から保護のため、エンジンを止めることになっているそうだ。いい慣わしだな。ゆえに早く戻ってもクーラーを入れられないので、暑いかもしれないとのこと。では、ギリギリに戻った方がよいか。

清水寺の観光バス用の駐車場にバスを停めると、みなはバスから降りた。

この駐車場は坂下にあるので、ここからみやげ物屋が連なる参道の坂道を登って昼食会場へと向かう。

参道を歩きながら、

「そうだよね。清水寺へ行くには、ここを通って行かなくっちゃ! やっぱりこの前通ったところとは違うね〜」

と我が神子は神子ミズキに笑いながら言っていた。

前回我らは両側に墓が広がる細い道を延々と、本当に辿りつけるのかと途中少々不安になりながら、清水寺へと向かったのである。確かに辿りつけることは辿りつけたのだが…しかし、あの時、近道と書いてあったのでそちらへ行ったのだが、今日通ってみると、俄然こちらの方が近いと思うぞ??

 

参道は多くの店が立ち並び、なかなかいい雰囲気だ。ここでも修学旅行生らしき少年少女を多く見かけた。

歩くことしばし、昼食会場の梅山堂は本当に清水寺の入口のすぐ横にあった。

店に入ると、神子たちは誘導されるまま階段を昇って、2階の広い食堂へと向かう。

席は号車ごとだと言うことなので、我が神子と神子ミズキは神子SAKと神子ぱーぼぅの前の席に座った。食卓には山菜や魚などが並べられていた。そして、固形燃料を焚いている鍋が一人一つずつ。

 

「あっ、やつはし〜♪」

我らは思わず声を上げた。我が神子のところには抹茶風味の八つ橋が置いてあった。

「チビたちは明日ねv

そう言って微笑む神子。(←ちょっと「ぬいぐるみ遊びのお部屋」風♪・笑)

「みこ〜〜〜」

抹茶味のも食してみたかったよ〜(ぐすん)

 

魔法瓶に入っているお茶をついでもらって一口飲むと、我が神子は「あれっ?」という顔をした。

「冷たいお茶なんだ。」

我が神子はてっきり見た目から温かいお茶だとばかり思い込んでいたらしい。

だが、これが後で幸いだったと気づくことになる。

 

通路を神子誠馬らしき女人が手を振りながら、通って行った。

「誠馬さん…かな?」

我が神子は少々自信なげにそう言った。

前にお会いした時は長い髪をしていたが、今日お会いした神子はかなり短い髪をしている。

すると、今度はその女人がすぐそばに来て、我が神子の手を握って、挨拶をした。

確かに神子誠馬だ! 神子とは大阪ライヴ以来だ。久しぶりだな。

「お久しぶりで〜す」

二人は挨拶を交わした。

「誠馬さん、お風邪の方はいかがですか?

我が神子が聞いた。

「大丈夫です。治りました。」

神子誠馬は出発直前に風邪を引いたと聞いていたが、確かに目の前にいる神子は元気そうだ。まっ、先ほど突然最愛の井上友雅とお会いしたのだから、風邪の方もすっかり何処かへ飛んで行ってしまったのだろう。

「では、また後ほど。」

そう言うと、神子誠馬は自分の席の方へと戻って行った。

 

いつの間にか、少し席をはずしていた神子ぱーぼぅが席に戻って来て、別の食事を用意してもらえなかったとちょっと不満そうな顔で言った。神子ぱーぼぅはベジタリアンなので、肉や魚が入った食事はダメなのだ。前のツアーの時はちゃんと別のものを用意してくれていたそうだが、今回は事前に言っておいたにもかかわらず、用意されていなかったとのこと。う〜ん、やはり添乗員間の連絡は少々上手く伝わっていないのだろうか…旅行で満足な食事が出来ないのはさぞかし辛いことであろう…我らでさえそう思う。

 

鍋は湯豆腐だと言う話が出て、

「えっ? これ湯豆腐なの??」

と我が神子が言った。

「では、何だと思ったのだ。」

「てっきり湯豆腐って、“豆腐だけ”入っているものだとばかり思っていたから。これは寄せ鍋かと…」

我が神子は豆腐があまり好きではない。特に冷奴や湯豆腐、豆腐の味噌汁などは食べられぬことはないが、日ごろ決して自ら進んで口にすることはない。何でもそのものに味がないところが許せないんだそうだ。だから、冷奴と同様に醤油を後からかけて食す焼きナスも好きではないとのこと。

まあ、生まれてから数えるほどしか目にしていないのだから、湯豆腐を知らなくても仕方がないが…

だが、この時はタレの味が好みとか言って、結構パクパクと食していたように我らの目には映ったのだがな??

 

「あっついね〜」

みなは盛んに暑がっていた。それもそのはず、これだけの人数が入っている部屋で、しかも固形燃料でばんばん火を焚いてるにもかかわらず、クーラーが入っていないのだ。窓はすべて開いているが、それだけで暑さを防げるものではない。

「こんなところでよりによって湯豆腐なんて…少しは考えてほしいよ〜」

神子たちは汗だくになりながら、ふうふう言って、湯気の立ち昇る湯豆腐を食していた。先ほどの冷たいお茶だけが唯一の救いであったと我が神子が言っていた。

 

早めに食事を終えると我が神子と神子ミズキは清水寺の散策へと出掛けた。

店の出口付近で神子ちると神子かずらに行き合う。今回は同じバスだったので、神子たちとはあちこちでお会いすることが出来た。

我が神子と神子ミズキは途中いろいろなところで写真を撮りながら、入口の階段を上って行く。

「雨の降ってない清水寺って初めてだね。いつも永泉さんが雨を降らしていたから(笑)この前なんて土砂降りだったし。」

神子ミズキがそう言った。

参道も人で溢れ返っていたが、今日は本当に人が多い。

何でも垂れ幕によると「奥之院御本尊御開帳」とやらを243年ぶりにやっているそうだ。ああ、だからなのか。時間があれば、我らもぜひ拝みたかったのだがな。

 

 

入ってすぐのところに大きな錫杖らしきものがあって、みなが持ち上げてみていた。イサトの錫杖と似ている。

さっそく神子ミズキと我が神子も持ち上げてみた。最初、片手で持ち上げようと試みていたようだが、ビクとも持ち上がらず、何とか両手で持ってやっと持ち上げていた。

「こんなものを持ち歩いているなんて、イサトくんてすごいね。」

我が神子が感心したように言った。

 

 

途中でまた神子誠馬とお会いした。そして、忘れないうちにとお名刺をお渡ししていた。ポスカもと思って、我が神子はバッグを見たが、どうやらバスの中に置いて来たようだ。

神子誠馬から衣装を持って来たので、夜部屋で撮影会をやるので来ませんかと誘われたが、我が神子は壊れ隊のみなと一緒に撮影会をやることになっていたので、

「私のサイトにいっぱい写真が載っている…あっ、『はる通』に帝の写真が載っていたお友達のみかんちゃんたちと撮影会をすることになってるんです。よろしかったら、こちらにいらっしゃいますか?」

と言った。

「じゃあ、あとで連絡しますね。」

と言って別れたのだが…

我が神子はこの時もそして後でも忘れていたのだ。神子誠馬の移動先での連絡手段を聞いていなかったことを…

 

3号車の壊れ隊の神子たちとも途中お会いした。

今回は前回と違って、号車が違っても結構お会い出来るらしい。我らも何となく嬉しいv

清水の舞台からは眺めもよく、天気が悪かったにもかかわらず、遠くに京都タワーまで臨むことが出来た。

 

我が神子たちは先に“濡れ手観音”をお参りすることにした。前回一度来ているので、迷うことなく観音像の前に出ることが出来た。

我が神子たちが見ていたところ、見知らぬ中年の女人が

「あの〜、この観音様はどうして濡れているのかわかりますか?」

と聞いてきた。

「さあ、わかりません。」

と我が神子が神子ミズキと顔を見合わせながら、答えると

「そうですよね。」

と言って、また今度は掃除をしていた男の人に同じことを聞いていた。

我が神子たちはお賽銭を入れてお参りをし、また写真を撮った。

 

 

そして、その場を離れようとした時である。

水の入った桶を持った一人の男性がこちらにやって来て、我が神子たちの目の前でその水を観音像にかけた。

「えっ?」

我が神子たちは一瞬何だろうと言う顔をした。

どうやら先ほど中年の女人に「どうして濡れているのか」と聞かれた掃除人が係の人に聞きに行って、“どうやって観音像を濡らすか”を実演してくれたらしい。

その場を後にしながら、我が神子が言った。

「あのおばさんが聞きたかったのはそういうことじゃないと思うよ。」

「私もそう思う。」

神子ミズキもそう答えた。

我らもそう思う。

 

それから、我が神子たちは音羽の滝の方へと向かった。

だが、今日は修学旅行生がいることもあり、我が神子たちが音羽の滝に到着した時はすでにそこは長蛇の列になっていた。

 

 

「どうする?」

神子ミズキが聞いた。

まったりと散策しすぎたために、すでにその時、集合時間まであまり残り時間が残っていなかった。

「あの参道をバスまで戻るには少なくとも10分ぐらいかかるし、どうしようか?」

また神子ミズキが聞いた。

「ギリギリまで待ってみて、もし、間に合わなくなりそうだったら、バスに戻ろう。」

我が神子が答えた。

「うん、そうしよう。」

さすがに人数が多くて、列はなかなか進まない。

「2時までに順番が回って来なかったらバスに戻ろうか?」

「でも、この感じだと何かきわどくなるんじゃない?」

「はははっ、きっとあとちょっとだったら、2時を回っても待ってるかも。」

などと二人が会話をしているうちに、本当に2時ギリギリになって、やっと我が神子たちの順番が回って来た。

我が神子は前回と同じように私(あっきー)と同じ真ん中の滝の恋愛成就の水を飲んだ。

まあ、当然だな。

 

 

飲み終えると時間がないはずなのにまた写真を写して、二人の神子は大急ぎでバスへと向かった。

「私、足速いほうだから、大丈夫♪」

そう我が神子が言った。

「前のように転びさえしなければね(笑)」

 

参道でやはりバスへ向かっていた神子SAKと神子ぱーぼぅと一緒になった。

そして、4人でバスの駐車場へと向かう。

せっかくいいお店がいっぱいあるのに見て行けないのが残念だと我が神子は言っていた。

いいではないか、また来れば。

 

急いだかいあって、我が神子たちは集合時間前にちゃんとバスに辿りつくことが出来た。

バスに乗り込むと、すでに多くの神子たちが席に着いていた。

我が神子は先ほどぐずぐずしているうちにバスが動き出してしまって、お渡しすることが出来なかった名刺とスプリング・ライヴで写したお写真、それに大阪ライヴでお渡ししそこねたポスカを、後ろの席にいた神子ちょまにお渡しした。そして、今回のポスカも。

それから、以前にスプリング・ライヴで一度お会いしている今回の神子ちょまの同行者、神子友夢にも、名刺とポスカをお渡しし、お名刺をいただいていた。

そんなこんなしているうちに、ほどなくしてバスは再び動き出した…

 

バスガイドが

「時間がなくて音羽の滝の水まで飲めなかったかもしれませんね。」

と皆に言った。

我が神子たちは時間がなくてもしっかり音羽の滝の水を飲んで来たぞ。

きっと神子たちの大多数は、時間など何のその、我が神子と同じように音羽の滝に駆けつけて、お目当ての八葉と同じ水を飲んだに違いない。

 

「次に向かうのは随心院。小野小町の寺へとバスは移動いたします。」

とバスガイドが簡単な案内をすますと、また先ほどの自己紹介の続きが始まった。

やはり参加者の大多数は井上氏のファンらしい。これがいつもとちょっと違うところの一つだ。いつもなら、「友雅さんが好きですv」とか「翡翠さんが好きですv」とか言うのだが、今日は「井上さんが好きですv」と言った女人が多かった。

もしかしたら、中には『遙か』ファンではない一般の井上ファンの女人も混ざっていたのではないだろうか?

それから、今日は名古屋で高橋イノリのライヴがあるとかで、「そちらにも行きたかったんですが、こちらに当たったんで、こちらに来ました!」という名古屋神子も多くいた。

また、「本当はほかの方が好きだったんですが、さっきのあれで井上さんにかなり傾いております。」と言っていた神子もいた。

途中、マイクのコードが届かないらしく困っていたら、一人の女人がサッとマイクの差込口からプラグを抜いて、別の差込口に差して、また席へと戻って行った。

当たり前のことではあるが、実際にやろうと思うとなかなかすぐに行動出来るものではない。偉いぞ、名も知らぬ神子。そして、その行動のおかげでバスの中の雰囲気はますますよくなった。

自己紹介をしていて、またマイクのコードが上手い具合に行かなくなるとまたさっきの女人が来て、サッとちょうどいい差込口に差し替えた。一度ならず、二度までも…本当に頭が下がる…

 

一通り自己紹介が終わったが、もともとのお知り合いのほかは一人ぐらいしか名前を聞いたことのある神子はいなかったと我が神子は言っていた。それから

「今回は同人サイトや同人誌をやっているって自己紹介で言った人はいなかったね。」

と少々淋しがってもいた。

だが、自己紹介そのものは拍手とちょっとした明るい歓声の中、終始とても和やかなよい雰囲気で進んだと思う。

 

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