第4章 雷が連れて来た喜び

 

自己紹介が終わると、バスガイドはまた次の目的地である随心院の説明を始めた。

随心院は正式には曼荼羅寺と言うとか、文塚というのがあって、そこにお参りをするとラブレターが上達するとか…

文塚はゲーム画面で見慣れている場所だ。そういうキーワードが出て来ると、神子たちの耳はサッとそちらの方へ向く。我らは人の気持ちを解するのは苦手な方だが、本当に神子たちはわかりやすいな(笑)

 

随心院ではバスごとの集合写真を撮ることになっている。

“随心院”と“集合写真”…この二つのキーワードには我が神子も我らも苦い思い出がある。もちろんそれはプレミアムツアー3で我が神子が転んで足に大怪我をおったことだ。

「神子、気をつけるのだぞ。」

「わかってるって! 今日は“ま○茶”を飲んでないから大丈夫♪」

「そ…そうか…?」

本当に大丈夫かと思いつつもここは神子を信用することにしよう。

 

バスガイドは説明の中で「うちわを必ず持って行ってください」と言った。

「えっ? うちわを持って行くの?」

そのころ、空は今にも雨が降りそうに一層どんよりとして来て、遠雷さえ聞こえ始めていた。

「もし、雨が降って来たら、濡れちゃうよ。持って行きたくないな…」

だが、「持って行け」という指示があるのだから、仕方がない。

我が神子は万が一のことも考え、しっかり傘をハンドバッグに入れた。

神子ミズキも我が神子と同じことを心配していたのだろう。

「もし、雨が降ったら、このうちわだけ濡れないようにお願いね。」

と我が神子に言った。

 

添乗員の説明によると今回は随心院内の見学もツアー代に含まれているとのこと。

神子たちの間から小さな歓声が上がる。今までのツアーでは中の見学は別料金だったからな。なかなか気が利いているではないか。

 

駐車場に着くと、神子たちは言われた通り、手にうちわを持って、次々にバスを降りた。

皆はバスガイドについて、白砂の道をザッザッと進む。先ほどからかなり雲行きが怪しくなっていたが、ふと見ると遠くの空に上から下へ一直線に雷が走った。

「キャッ」

我が神子は思わず声を出した。

またしばらくするとまた別の空に雷が走った。

遠雷はゴロゴロと先ほどからずっと耳に響いている。

「天真くん鎮めてよ。」

冗談まじりに神子SAKに言った。

 

歩いていると

「ここが、涙ちゃんが転んだところだよ。」

と神子ミズキが我が神子に言った。

「えっ?」

言われて、我が神子は足元を見る。

神子〜、あれほど言ったのに言われるまで注意深く足元を見ていなかったのか!?

本当に神子は学習能力に欠けている。はぁ〜

「もっと先じゃなかったけ?」

我が神子はそんなぼけぼけしたことを言った。

「ううん。ここだよ。」

神子ミズキがきっぱりと言い切った。

そこは前通った時、すなわち我が神子が派手に転んだ時は曲がった鉄板が置いてあったのだが、今はすっきりとコンクリートで固められている。

「前に私が転んだから直したんだったりしてv ははっ」

神子、そんなことは…いや、ないとは言えぬな。あの転び方はひどかったからな。

 

集合写真の撮影場所にはすでに台となる長椅子が置いてあった。

最初に写真を撮る1号車の神子たちはこぞって真ん中のポジションを取ろうとする。そう言えば、今日はおそらく井上友雅と宮田詩紋の二人もともに写るため、ここに来るはずだ。そう思うのだが、席順の抽選とかはないのだろうか? 神子たちの自由意志にまかせると??

まっ、結果的には混乱や争いもなくみながちゃんと並んだのだから、これでよかったのだろうが…

 

全員が並び終えたころ、井上友雅と宮田詩紋が登場した。

再び神子たちの間から歓声が上がる。そして、他の号車の、順番待ちをしている神子たちから一斉にフラッシュが焚かれた。二人はそんな神子たちに笑顔で手を振りながら応える。

我が神子たち1号車の神子はすでにもう撮影場所に並んで待っている状態なので、二人が歩いて来るところをカメラに収めることが出来なかった。我が神子は少し残念がっていた。

 

二人は撮影場所までやって来ると、空いている中央の席に座った。

我が神子は我らも写真に収めようと、我らがぶら下がっているバッグを高く持ち上げた。ありがとう、神子。いい記念になる♪

もちろんもう片方の手にはバスガイドに指示された通りうちわを持っている。

だから、みなが指を1本だけ立てて、1号車のポーズをとっていたが、我が神子はポーズを取ることが出来なかった。まあ、本当のところはそのポーズを取る合図の方も聞こえなかったらしいが…

「そこの方、うちわで顔が隠れていますので、うちわをもっと下げてください。」

カメラマンが声をかけた。神子ミズキが写るまいとうちわで顔を隠していたのだ。

実は神子ミズキは大の写真嫌いである。ゆえにあれだけ我らとともに行動をしていながら、我が神子は神子ミズキの写真を一枚も持っていない。

神子ミズキは「いいのいいの」という仕草をして、ほんの少しだけうちわを下げた。

そして、スタンバイが出来ると、2台のカメラで何枚か写真を撮った。

 

1号車の撮影が終わるとみなは台を離れ、一斉にカメラマンの後ろに移動した。

そこで次の号車の撮影が始まるまでの間二人の写真を撮る。

我が神子は最初はいいのだろうかと思って躊躇していたようだが、ほかの神子に混じって後ろの方から1枚だけ写真を撮った。

 

あいにくすでに雨が降り始めていて、あたりがすっかり暗くなっていたため、写真を撮る時、フラッシュをたく必要があった。神子たちがフラッシュをたきながら写真を撮っていると前の方にいた女人が後ろの方をキッとにらみ、

「もう撮影が始まっているんだから、フラッシュはたかないでください!」

と怒鳴った。

「えっ? えっ? いつ撮り始めたの??」

それを聞いて、我が神子は当惑していた。

いつもは道徳的なことをくどくど言う我が神子であるが、今回ばかりはもしかしたら撮影中にシャッターを押してしまったかもしれないので、偉そうなことは言えないと言っていた。いつ写真を撮り始めたのかさっぱりわからないので、自信がないそうだ。

てっきり準備を終えていざ本番の写真を写すという時には

「それじゃあ、撮りま〜す。」とか「今から撮りますので、写真撮影はしないでください。」

などと言葉があるとばかり思っていたということだ。

本当にいつ撮り始めたのだろうか??

 

後になって冷静に考えると、やはりこのやり方自体が適切ではなかったように思われる。最初からカメラを写す位置の後ろに神子たちを立たせるべきではなかった。

添乗員がその場で、そこで立ち止まらないよう、ましてや写真を撮らないよう誘導し、指示するのが適切だったのではないだろうかと思う。みなが留まればそこに留まり、みなが写真を撮れば自分も撮るというのが集団心理というものだ。ましてやその神子たちに井上友雅や宮田詩紋が手を振ったりポーズを取ったりするものだから、ますますカメラを構える神子たちはエスカレートして行った。最初からそういう状況を作り出さなければこういう混乱した状況にはなり得なかったのではないかと今さらながら思ってしまう。

次のツアーではそのへんのところをしっかりやっていただけたらと我らは願う。

 

何台かの撮影が終わった後、休憩のために、井上友雅と宮田詩紋の二人は屋根のある小さな建物の方へと場所を移した。そこでまたそれを追いかけて行ったカメラを構える神子たちに二人は囲まれる。

我が神子も必死に写真を撮るが、すでに二人は多くの神子たちに囲まれていて、かなり後ろの方に場所をとらざるを得なかったため、あまりいい写真は撮れなかったようだ。

下の写真はその時のものだ。ちょうど運良く前にいた御仁が頭をどけた瞬間に写したものらしい。本当の写真はその二人が写っているのだが、肖像権の問題でサイトに上げることが出来ぬゆえ、我らが代わりにその位置に立たせていただいた。

だから、このレポートを読んでいる神子たちは我らの下にそれぞれ井上友雅と宮田詩紋を想像しながら、見て欲しい。

 

 どいて欲しいって? それはできぬ。すまないな、神子…

 

結局我が神子は二人が手を振って次の撮影へと戻って行くまでの間、激しくなって来た雨から我らとうちわを守ろうと傘を片手に、何とかもうちょっとましな写真は撮れぬかとあちこち動き回りながら、その場所に居続けたらしい。

 

二人が行ってしまうと、やっと我が神子は随心院の内部の拝観の方へと向かった。

建物に入る前に入口の横にある歌碑を写真に撮る。今回は時間的に文塚の方まで行けそうにないので、まあ随心院へ来たという唯一の記念とするそうだ。

 

 

入口を入るとちょうど左側の靴置き場がいっぱいになったので、右の方で靴を脱いでくださいと係員が言っているところだった。そこで、右の靴置き場で靴を脱いで中に上がる。ほぼ同時ぐらいに神子ミズキもやって来た。神子ミズキも今まで写真を撮っていたらしいが、何とどちらのポジションでも一番前で撮影していたらしい。すごいな、神子。

 

随心院の建物の中には始めて上がったが、庭園がなかなか素晴らしかった。ゆったりと時間をかけて眺めたら、さぞかし心が洗われることであろう。

 

 

随心院の中で我が神子は我らに例のレインコートを着せてくれた。雨はかなり激しくなって来たからな。ありがとう、神子。

 

神子ミズキの持っていたカメラは動画機能のついたデジカメだったので、動画で先ほどの二人を撮ったからと見せてくれた。おお! 声まで入っているではないか!? すごい!!

ほかにも動画で撮っている神子がいて、神子ミズキはその神子たちとデータを後で交換する約束をして、互いに連絡先を教え合っていた。その一団の中に前のプレミアムツアー3でスタンプを押す時、何回もお会いした神子がいて、

「前のツアーでもいてはったなぁ」

と我が神子に声を掛けてくれた。我が神子も顔を見て、思い出し、ご挨拶をした。

「あの時、台本が当たった人や♪」

とその神子は笑いながら言った。

「はははっ、よっぽどあの時の印象が強かったんだね。」

だが、あの時と服装がまるで違うのに覚えていてくれるとはありがたいではないか、神子。

「うん、そうだね♪ 嬉しいv」

 

神子ミズキがたくさんの人と連絡先を交換している間、そのうちわを預かりながら、結構時間があったので、我が神子はふと見つけた壊れ隊の方々のところへ行って、ご挨拶をした。神子藤菜や神子かなた、神子雪にはこの日初めてご挨拶をする。

そして、ほかの方にシャッターをお願いして、神子みかん、神子KYON吉、神子SAK、神子かなた、神子ぱーぼぅ、神子夕芽、神子雪、神子藤菜、そして我が神子と総勢9名で記念写真を撮った。今、それが我らの手元にあるのだが、うん、なかなかよく撮れているぞ。シャッターを押してくださった御仁に感謝だな、神子。

 

神子ミズキの方へと戻りながら庭に目をやると雨はものすごく激しくなっていた。

写真撮影の時はこれほどひどくなっていなくて本当によかったとしみじみ我らは思った。レインコートを着て写真を撮っていたら、きっとフラッシュの光が反射してしまって、我らの姿は写らなかっただろう。かと言ってレインコートを着なかったらずぶ濡れになって、たいへんなことになっていたはずだ。ああ、よかった〜(ホッ)

 

庭を見やる手すりにもたれながら神子SAKと神子ぱーぼぅがまったりとくつろいでいた。すごい絵になる。

「シャッターチャンス!」

と我が神子が写真を撮ろうとした時、やっと神子ミズキが連絡先交換を終えて、こちらに戻って来た。それを確認してから、また先の二人に目を戻すとポーズが変わっているではないか。

「惜しかったなぁ…」

我が神子がそっとつぶやいた。

そろそろ時間がなくなって来たからと我が神子と神子ミズキは出口の方へと向かった。

 

建物を出て、バスへと向かう通り道に、屋根囲いのある一角があって、そこに絵馬がかけてあった。

「そう言えば、前に誰かのレポで「随心院の絵馬が…」というのが、あったけど、ここだったのね!」

と我が神子が言って、

「ちょっと見て行こうよ♪」

と神子ミズキに言った。

そして、二人でその屋根囲いの中へと入って行ったのだが…これが正解だった。

 

三、四人の神子たちが一つの絵馬を見ていたので、そちらに行ってみたところ

「井上さんと宮田さんが書いた絵馬があるの!」

と教えてくれた。

「うそ!」

我が神子と神子ミズキがそちらへと向かったことは言うまでもない。

「本当だ。へぇ〜、来てみてよかったね♪」

そう言うと二人はその絵馬をカメラにしっかり収めていた。

それが下の写真だ。なかなかよく撮れているだろう?

 

 

バスに戻るとまもなくバスは出発した。

バスが走り出すと、添乗員がこれから写真の焼き増しの希望を取ると言った。

「えっ? 焼き増し?」

「自分の号車の1枚はもらえるはずだよ。」

神子ミズキが言った。以前は別料金で買っていたのだが、前回のツアーから旅行代金に含まれるようになったとのことだ。今回もそのはずだという。

「でも、もし、申し込まなくて1枚ももらえないと困るから、確認しようかな…」

そんなふうに我が神子が迷っていると、別の神子から

「写真を見てから申し込みたいんですけど。」

という声が上がった。

それを受けて、添乗員が携帯電話で確認したところ、渡すのが明日になってもいいならよいとのこと。みな、それで納得して、出来た写真を見てから申し込むということになった。

1万枚や2万枚になったら明日じゃ無理かもしれないですけどね。」

などと付け加える新人添乗員。頑張ろうとしていることは伝わって来るぞ。あと一歩だ。頑張れ!

 

それからアンケート用紙が配られた。我らが前に参加した2回はその日、バスを降りるまでに書いてくれとかなり無茶なことを言われたが、今回は明日解散するまでに書けばいいそうだ。事前アンケートといい、ちょっとずつ改善されているのだな。気持ち的に楽になったと我が神子が言っていた。

そして、次にいつも配られるミニフォトアルバムも配られた。第1回と第3回の時はこれにサインを書いて渡されたのだが、前回からはサインは別のものに書くようになったらしい。サインが書かれているともったいなくて使うに使えないので、この方がいいと我が神子は言っていた。

 

本日最後の行程は、寺町散策だ。大通りにバスを停め、そこから降りて自由に散策する。バスは道に留めて置けないので、また集合時間になったら戻って来るとのことであった。

バスガイドは鳩居堂の説明や新京極のアニメイトの場所の説明などをしていた。

ここで、アニメイトの案内があるというところがいかにも『遙か』ツアーらしいと我が神子が言っていた。

 

寺町の通りはアーケードがあるので、雨も平気だ。それにこのころはもうほとんど雨も上がっていた。なぜよりにもよって写真撮影の時だけに??とも思うのだが、あれはきっと音羽の滝で雨を降らしそこねた永泉が一つ遅れて降らしたか、友雅の好む土地に向かった神子にヤキモチをやいた天真が雷とともに降らせたのだろう(笑)

 

通りの入口際には本能寺があり、ちょうど祭りをやっていて、屋台がいくつも出ていた。『国取り物語』に昔少々はまっていた我が神子はそちらも覗いてみたそうであったが、今回は『遙か』で来たのだからと止めておいたようだ。

 

そして、やはり入口付近にある「鳩居堂」へと向かった。

店に入るとすでに神子たちで溢れ返っていた。

店の人も「今日はどうしてこんなにお客が多いのだろう??」と店員同士で盛んに言い合っていた。店員たちも『遙か』ツアーの神子様方がいっぺんにここに押しかけたのだということはきっと思いもつかぬのだろうな。

 

 

入ってすぐのところには綺麗な千代紙がたくさん並んでいた。我が神子は買おうかどうかちょっと迷っていたが、折れないように旅で持ち歩くのはたいへんだからとあきらめたようだ。あとはアドレス帳やメモ帳、便箋、いろいろな用途用の封筒などありとあらゆる興味を引く紙製品があった。さすが本店だ。池袋のテナントとは比べ物にならない品揃えだ。筆やすずりや墨などもなかなかいいものが並んでいる。

 

そして、奥の方に行くと、我が神子も通販で買ったことのある六種の薫物があった。我が神子は六種類あってもやはり菊花の香が一番好きだそうだ。ありがとう、神子v

さすがに今回は友雅・翡翠神子が多いらしく、侍従の残りが1箱しかなくなっていて、

「ここにあるだけしかないんですか?」

などと店の者にたずねる神子もいた。

その隣の棚には円錐形の香やハート型の香もあった。我が神子も神子ミズキもハート型の香を心のかけらみたいとえらく気に入ったようだが、伽羅と白檀しかなかったので、ガッカリしていた。あれなら神子がいつも嘆いている燃え残りもなさそうだ。台もハート型でとても雰囲気がいい。

「菊花のもあればいいのに〜」

我が神子は盛んに残念がっていた。

「友雅さんファンだったら、きっと買うね、あのハート型の。」

 

香炉なども形も大きさも様々なものがあった。

ものものしい名前の香炉が並ぶ中に“まるまる”(だったっけ?)というようなかわいい名前のものがあるのを神子ミズキが発見した。こういうものを見つけると、何となくなごむ。

 

鳩居堂を出ると、アーケード沿いに神子ミズキとともにつらつら歩いた。仏具屋も確かにあるにはあるが、ほかの店は東京の普通の商店街と何ら変わりがない。

ただたまに商店街の中に突然大きな線香立てのあるお寺(?)がお店と同じような感じで何気なく並んでいたのにはちょっと驚いたが…

 

時間の半分ぐらいまで歩いて行ったところでまた折り返して大通りに向かって歩いて戻る。

そして、先ほどバスを降りた大通りに出たところでちょうどバスがこちらに向かってやって来るところであった。

先ほど神子ミズキとアドレス交換をしていた神子たちとまたお会いして、少しだけ話をする。我が神子も名刺をお渡ししていた。

 

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