第5章 3枚のウェルカムカード♪

 

バスが位置を決めて停車すると、さっそく我が神子たちはそのバスに乗り込んだ。

この後はまっすぐ宿泊先であるリーガロイヤルホテル京都へと向かう。

「明日は車両が変わりますので、荷物を置いて行かないでください。」

との注意がバスガイドからあった。

「このうちわ、かわいいから、忘れていった際は私がありがたくいただきます。くださるという方はどうぞポケットに入れて行ってください。」

と冗談交じりに言った。それを聞いて神子たちはサッとバッグにうちわをしまう。一応の効果はあったようだ。

 

それから、プレミアムナイトの開始時間と会場の説明があった。

「プレミアムナイトは6時10分から開始します。会場は2階の“朱雀の間”です。」

それを聞くと、神子たちの間から少なからず、歓声が上がった。

“朱雀の間”とはな、今日の出演者の一人は詩紋だし…あまりにも出来すぎているではないか♪ 計算の上でのことなのだろうか?

 

その後プレミアムナイトでの注意事項が続いた。プレミアムナイトに来る際は必ず“バッジ”をつけて来ること。それが入場券代わりになるとのことだ。

それから、カメラ、録音機器、写真撮影機能付の携帯電話などは会場持込禁止なので、それらのものは手持ちのかばんに入れて、フロントへ預けてから来ることとの指示もあった。

「えっ? いちいちフロントに預けるの〜?? 部屋に置いといたらいけないのかな?」

何か少しものものしい感じがする。 まあ、先ほどの随心院でのこともあるので、これぐらい厳重な方がいいやもしれぬが…

さらに会場にはスタンプラリーのスタンプも設置してあるという説明もあった。

それならば押すための紙を持って来ればよかったな、神子。

 

ホテルに着くとバスの中でガイドが名前を読み上げながら、ルームキーと朝食券の入った封筒を神子たちに渡し始めた。

「鍵を受け取った人から降りちゃだめなんですか!?」

後ろの方から殺気だった声が上がった。

プレミアムナイトの開始時間までもうほとんど時間がない。時間のかかるコスプレをする予定の者などは一秒でも早くホテルの中に入りたいのだろう。

 

ホテルに着いてもバスはまだ少々位置を移動していたので、結局、全員キーを受け取り終えるまで、バスを降りることは出来なかった。

バスを降りるとみなは大急ぎでエレベーターの方へと向かう。

エレベーターホールは神子たちで溢れていた。それに加えて、他の客もいるものだから、なかなか乗ることが出来ない。2台見送って、我々はやっと3台目のエレベーターに乗ることが出来た。そして、割り当てられた部屋のある4階へと向かった。

ここでも神子SAKと神子ぱーぼぅは隣の部屋だ。

どうやら申込番号が1番違いだったため、今回の旅ではこういう配置になったようだ。

では、次回からツアーで一緒に行動したい者とはほぼ同じ時間に申し合わせて申し込めばいいわけだ(笑)

 

部屋を開けようと先ほどいただいた封筒から鍵を出す。このホテルはカードキーだ。しかもありがたいことに2枚入っているので、各自が持つことが出来る。

我が神子は夜は壊れ隊の方々の部屋にお邪魔することになっているので、これは好都合だと言った。これなら神子ミズキにご迷惑をかけずにすむ。

部屋はいつもツアーで泊っていた京都国際ホテルよりずっと広く、なかなかいい雰囲気の部屋だった。

 

机の上にはこれまた恒例の八葉からのメッセージカードが置かれていた。

袋の中には3枚のカードが入っていて、1枚はいつもの「神子殿へ」で始まる八葉全員からのメッセージカード、そして、後の2枚はそれぞれ彰紋と翡翠からのカードだ。

 

彰紋の姿絵のカードの裏には宮田詩紋のメッセージが書いてあった。

「わーい、京都だ! 京都!!!」

「京都で“時空を超えて”、一緒に素敵な思い出をつくろうね!」

とメッセージが書いてあって、そして、サインが入っており、さらに下の方に

「や・つ・は・し(ハートマーク)」

と書いてあった。

 

そして、翡翠の姿絵のカードの裏には井上友雅からのメッセージが書いてあった。

「さあ〜〜て おもいっきり楽しもう!」

と書いてあり、サインと日付が入っていた。

 

姿絵自身はよく見かけるものだったが、それぞれその姿絵に合わせた背景模様が入っているところがオリジナル感をかもし出していた。

カードをジッとよく見たが、一件手書きにも見えるのだが、どうやらこれは印刷のようだ。

神子ミズキの開けた袋に入っていたカードは印刷の際に前のカードの字が写ってしまっていたらしく、汚れていたので、後で換えてもらうように言いに行くと言っていた。

 

だが、そうそうまったりとしているわけにはいかなかった。

時計を見ると6時まであと10分を切っている!

「うわ〜っ!!」

というわけで、我が神子は急いでコス衣装に着替え始めた。

着替えの時間は3分もかからなかった。おそろしく早着替えだな。その着替えの早さには神子ミズキも少々驚いていた。泰継衣装と違って、この衣装はすごく着替えが楽なのだ。そして、素の髪形のままで行けるので、ウィッグも必要ない。おそらく泰継衣装だったら、ウィッグを被るのに手間取って、開始時間までにはとうてい間に合わなかっただろう。こちらの衣装にして正解だったと我が神子はつくづくと言っていた。

 

支度途中で呼び鈴が鳴った。出てみると、神子SAKと神子ぱーぼぅが立っていて、井上友雅と宮田詩紋の二人に花束と寄せ書きを贈るので、我が神子も一緒に加わらないかということであった。

さすがに今の状況ではそこまでやる時間はないし、メッセージを書くにも寝不足でとてもいい文章がとっさに頭に浮かびそうもないので、我が神子は

「私はいいや。」

とそのお誘いをお断りした。いつもだったら率先して加わるところなのだが…寝不足で臨むからこういうことになるのだぞ。

「は〜い…」

そして、二人が帰ると、また支度を再開した。靴を履き替えて、お化粧を少し直して、準備完了。

「終わった〜」と神子ミズキの方を見ると、不思議なことにコスをしない神子ミズキの方が少々準備に手間取っていた。やはりあこがれの声優にお会いするのだから、支度もそれだけ念入りなのだろう。

待っている間、我が神子はそうだと思い出して、カメラをハンドバッグから出した。そして、それをカートの奥の方にしまった。やはりコス衣装でフロント付近をうろちょろするのにはためらいがあるからだということだ。本当か? ただ面倒くさいからではないのか、神子?

「へへっ」

携帯電話も一度はカメラと一緒にしまいかけたのだが、撮影機能がついていないからいいやとまたハンドバッグの方へと戻した。プレミアムナイトが終わってすぐに他の神子たちと連絡が取れるようにと…

我が神子がそんなことをしているうちに神子ミズキの支度も終わった。

その時の時間は開始時間の約5分前! たいへんだ!

 

慌ててエレベーターで2階へ急ぐ。こういうホテルでは階段で移動出来ないのでかえって不便だ。

2階に着くと、受付を探し、あたりを見回した。

今日も前に参加したプレミアムツアー3の時と同じように等身大パネルを会場に持って来てくれたらしく、壁沿いに立てかけてあった。だが、カメラがなければ写せないではないか! 我が神子は残念がっていた。

その横の方にはスタンプラリーの時のスタンプが白いテーブルクロスを引いた机の上に並べられていた。

 

我が神子と神子ミズキは受付らしき机を見つけ、そちらの方に向かった。

受付は三つに分かれており、一つはシングル、一つはトリプル、そして、もう一つはツインになっていた。我が神子たちが着いた時はシングルやトリプルのところは並んでいる者はいなかったが、ツインのところだけ長蛇の列。我が神子は急いでその最後尾に並ぶ。並んでいる時、詩紋のコス衣装を身につけた神子ちょまがその横を通りかかった。

「わぁ〜、それが自分で作った衣装なんですね。」

我が神子が言った。神子ちょまの今までの衣装は外注だったのだが、今回は初めて自分で作ったとあらかじめおうかがいしていたので、拝見するのを楽しみにしていたのだ。神子ちょまはかわいらしい神子なので、詩紋の衣装がよく似合っている。

「また、後で〜」

と言って、その場は別れたのだが、神子ちょまとはこれから後、衣装をつけた状態でツアー中再会することは二度となかった。せっかくの新作衣装だったのに、ましてやせっかくのノーマルカップリングでの出逢いだったのにと、我が神子はとても残念がっていた。

 

また、待っている間、神子詩伽ともお会いした。今回もスプリング・ライヴに引き続き彰紋の衣装を身にまとっていた。最愛の方に最愛の方の衣装でお逢い出来るとあって、神子詩伽はいつもにも増して、輝いていた

 

だんだん我が神子たちの順番が近づいて来た。

「ミズキちゃん、引いてくれる? 前回のげんをかついで…」

「いいけど、一番後ろになるような気がする。」

「私も今あんまりついてないしな…どうしよう…」

そう迷って、どちらがくじを引くか決めかねているうちに、我が神子の番になった。

ようやく順番が回って来た時はもうあと数枚しか、くじは残っていなかった。

まあ、開始時間ギリギリになってしまったのだから、仕方がない。

番号と名前を言って、出席確認をしてから、くじを引く。

くじは箱に入っているのではなく、机に数枚並べられていた。

二人で少し斜めになっているくじを引いた。

それにはT−5・T−6と書いてあった。

「Tって言うと、かなり後ろだね…」

二人の神子はガッカリした…

 

もうすぐに開始時間となるので(いや、実際にはすでに開始時間を回っていたかもしれぬが)、我が神子と神子ミズキは開いている扉から会場内へと入った。丸テーブルがいくつかあって、それぞれアルファベットの目印がついている。

「やっぱり後ろだったね。でも、この席…」

そう。その席はステージの正面の席だったのだ。

「ここだったら結構ステージ見やすいよ! 前の方の端の席よりずっといい!!」

我が神子と神子ミズキはそれなりに喜んだ。

 

 

そして、そのTというテーブルではもう一つ嬉しい驚きがあった。我が神子の左側の隣の隣に神子誠馬が、そして、右側の四つほど並びには何と神子ちると神子かずらがいるではないか! これはこれで幸運な席に違いない。しかも、ほかの初めてお会いする同席した神子たちもみな気さくで明るく、とても感じのよい神子たちばかりだった。そのおかげで我らはプレミアムナイトの間中、とても楽しく過ごすことが出来たのだ。

 

我が神子は忘れないうちにと神子誠馬に持って行ったポスカをお渡しした。考えてみればこの時、神子に携帯のアドレスを聞いておけばよかったのだ。そうすれば、後でお会いしそこなうこともなかっただろうに…

 

会場中をさりげなく見渡したが、今日のプレミアムナイトではコスをしている神子たちはいつもよりもずっと少なかった。このところいつもイベント時には必ず華麗なコス姿を披露している神子みかんでさえ、女の子らしいフォーマルドレスに身を包み、いつもの男装姿ではなかった。そのほかの壊れ隊の面々もみな私服…

さすがに本当に好きな男性の前ではみな女の子でいたいと見える。

なかなかかわいいではないかv

 

ほどなくして扉が閉められ、いよいよ神子たちが待ちに待った夢の饗宴が始まった…

 

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