+ 月兎 +
月の大きな藍の晩だった。 シンとした丘の上。 大きな緑の葉櫻の下で、兎は小さく呟いた。 「ねぇねぇ、お月さん 僕をそこへ揚げてくださいな。 2人で一緒に月見をしましょう」 それはちょっとした思いつき。 1人で見るより2人で見たい。 こんな月の見事な晩だ。 「ここじゃ僕は見えないよ」 月は笑って答えた。 「じゃぁ、地球を見ましょう。 地球見です。 さぞかし綺麗なんでしょね、ここは」 兎は嬉しそうに跳ねる。 ぴょんぴょん跳ねる兎を見てたら、 月もなんだか楽しくなった。 「そうだね。なによりだ」 月から降る黄色い光り。 ちりちりと兎を照らす光り。 暖かい光りに包まれて兎は天に昇った。 それは、ある秋の晩。 中秋の名月のことだった。 |