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季節の節目に関する詩

(音楽は「ノクターン」より「楽しい農夫」(シューマン)をお借りしました。)

 

極暑に耐えかね

空を見れば

月も星も

大気の熱に

溶けて滲む

「大暑」 7月22日

 

「立秋」

照りつける日差し

降ってくる蝉時雨

汗が額をつたう

見上げれば

空が少し高くなっている

「立秋」 8月7日

 

盆の準備に疲れうたた寝した

夢の中に在ったのは

昔死んだ祖母の顔

よしよしと頭をなでるのは

皺だらけの手

その手の下には

泣くことしか出来ない幼い私

「盆」 8月14日

 

道の端に

茄子と胡瓜で作られた

いびつな馬

送り火の燃え滓は

風に飛んで消え

野菜に戻った馬だけが

ちょんとそこに残される

「送り盆」 8月16日

 

『秋の前足』

夏の隙間を通り抜け

夜の内から

細く染みていく

虫の囁き

「処暑」 8月23日

 

「夏の彼方」

遠くなって行く蝉時雨

柔らかくなる日差し

空の色は次第に薄くなり

気づけばひたひたと秋の訪れ

大気は微熱を含んだまま

過ぎ去った夏は何処へ消えた

「夏休み最終日」 8月31日

 

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