+ 移ろう季節のあとさきに +
季節の節目に関する詩
(音楽は「ノクターン」より「楽しい農夫」(シューマン)をお借りしました。)
空を見れば
月も星も
大気の熱に
溶けて滲む
照りつける日差し
降ってくる蝉時雨
汗が額をつたう
見上げれば
空が少し高くなっている
夢の中に在ったのは
昔死んだ祖母の顔
よしよしと頭をなでるのは
皺だらけの手
その手の下には
泣くことしか出来ない幼い私
茄子と胡瓜で作られた
いびつな馬
送り火の燃え滓は
風に飛んで消え
野菜に戻った馬だけが
ちょんとそこに残される
夏の隙間を通り抜け
夜の内から
細く染みていく
虫の囁き
遠くなって行く蝉時雨
柔らかくなる日差し
空の色は次第に薄くなり
気づけばひたひたと秋の訪れ
大気は微熱を含んだまま
過ぎ去った夏は何処へ消えた