「教外別伝、不立文字」
 人間は、言葉を話し文字を使う。これは動物として弱い体力機能しかもてなかった人類が、お互いにコミュニケーションをとりあって集団で生き抜く為の手段である。つまり、鳥が空を飛び・カメレオンが色を変え・ライオンが肉を砕き・チーターが時速100キロで走る等と、同じ生命の補助手段の一つに過ぎない。しかるに、言葉を必要以上に有り難がり、人類は万物の霊長などと思い上がるのは、まさに人間の命の弱さをさらけ出した事なのだ。
道元禅師が「教外別伝、不立文字」と示されたのは、そのことをしっかりと心に刻み込んで修行せよと言う事である。決して学問をおろそかにしてよいわけではない。それどころか全ての学問を自分の物にする心づもりで勉学し、咀嚼(そしゃく)し、自分の物にしてのちにそれらを総てすみやかに、捨て去れと言うことである。