授業時間


日本国内の普通の中学校・高等学校では、午前中に4時限、午後から2時限の「50分間6時限(300分間)」授業をするのが一般的である。土曜日が休みになってからは、それぞれの学校で授業の単位時間を延長したり、また逆に短縮したりと、授業時間確保のための試行錯誤が繰り返されている。最近では、授業の合間の休憩時間を10分間から8分間に短縮して、たった2分間の授業延長をすることへの是非が論議されている(1)。

しかし私は、このような「50分間授業」を受けたことがない。

現在でもそうなのか知らないが、私が中学生だった当時(1973年4月〜1976年3月)、山形市立金井中学校は、午前中に4時限、午後から2時限の「45分間6時限(270分間)」授業の後、1時限当たり5分間ずつ短縮した授業時間(30分間)を利用して「40分学活」なるものを実施していた(一日当たりの時間は普通より10分間ほど多い計算になる)。これは、その日の授業で分からない箇所を生徒が互いに教え合ったり、担任から生徒への連絡事項やクラスでの話し合いをおこなう、授業というよりは学級活動の時間であった。

これに対し、山形県立山形東高等学校(山形東高)は、現在でもそうだが、午前中に3時限、午後から2時限の「65分間5時限(325分間)」授業を実施していた(一日当たりの授業時間は普通より25分間ほど多い計算になるが、休憩時間の10分間が省略されるので、授業の終了時間は15分間ほど遅れるだけで済む)。これは昭和33年(1958年)から実施されている単位授業時間である。高校への入学当初は、かなり大変な思いをした記憶がある。なにしろ中学時代の45分間授業から、いきなり65分間授業になったのだから、1時限の授業時間が長く感じられて、たまらなかった。でも、この授業時間に慣れてみると、例えば世界史だったら世界史といった「ひとつの課目で考えれば、授業毎の中断が少ない分、授業が進む」というメリットがあることに気付いた(2)。

メリットは他にもあった。大学の授業時間は一般に「1時限が90分間」なので、高校時代の65分間授業に慣れ親しんだ身には、90分間授業が非常に楽であった。山形東高の大学への進学率は、ほぼ100%と言ってもいいくらいなので「この65分間授業というのは、大学の授業時間に慣れさせる意味もあるんだろう」と、個人的には解釈している。

そこで提案なのだが、休み時間に食い込んでまで、効果があるかどうか分からない「52分間授業」をおこなうよりも、いっそ思い切って、山形東高のような「65分間授業」を実施してみてはどうだろうか?

[脚注]
(1) 1998年に改定された文部科学省の学習指導要領で、授業の単位時間は、各学校が弾力的に運用することが可能となった。これを受けて、東京都世田谷区教育委員会は、2004年4月から区立中学校の単位授業時間を、現行の50分間から2分間延長して52分間とする「世田谷授業時間」を各学校に提案した。この2分間の積み重ねで、年間の学習時間は39授業時間分ほど増えることになる。
(2) 進学校はどこもそうらしいのだが、山形東高では、2年生の2学期までに数IIBを終わらせ、3学期には数IIIを片付けてしまう。そのため3年生になると、理系クラスの数学の授業では、オリジナルやスタンダードといった大学受験用の演習問題ばかり解かされていた記憶がある。その中でも忘れられないのは木曜日で「5時限の内、数学の授業が『数I、数IIB、数III、数I(共通一次試験用)』の4時限あって、残りの1時限が地理の授業」という、数学が苦手な私にとっては地獄の一日であった。ちなみに、山形東高3年生の理系クラスは物理IIと化学IIが必修課目で、生物IIの授業はなかった。そのため、生物学科志望で大学受験に生物IIが必要だった私は、2〜3名の仲間と一緒に、生物実験室で人知れず課外授業を受けていた。


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