専門馬鹿でなくて良かった


インドからの留学生と会話をしていて(もちろん英語で)、特に感じたのは「自国の文化を知らないで、他国の人間と会話はできない」ということであった。

例えば、日本が開発した独自のシステムである(らしい)『レンズ付きフィルム(1)』は、誰の目からみても『カメラ』である。これを私たちは、どう説明すればよいのだろう?

・なぜ現像のときカメラを店に預けても大丈夫なのか?
・なぜカメラは自分の物にならないのか?
・このカメラは今後どうなるのか?

インド人留学生の疑問には「なるほど」と考えさせられるものが多かった。どうも子供が発する純粋な疑問と、同じような感覚であるらしい。私は、たまたま知っていたので説明することができたが、このときばかりは本当に「専門馬鹿でなくて良かった」と思ったものである。

さて、皆さんなら、どう答えますか?

[脚注]
(1) 当初は『使い捨てカメラ』と称され、一般に広まった。しかし「フィルム以外の部品はリサイクルして捨てるわけじゃないんだから、これでは実態に合わないのではないか?」という意見が相次ぎ、一時期の『使い切りカメラ』という名称を経て、現在では『レンズ付きフィルム』という言い方が定着したようである(先日の某TV番組に登場した、某カメラ付き携帯電話の開発者が『レンズ付きフィルム』のことを未だに『使い捨てカメラ』と呼んでいたのには驚いてしまった)。「これはカメラではなく、あくまでフィルムである」というのが、メーカー側の見解である。


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