哀しき弁当


1985年9月29日、第24回日本爬虫両棲類学会大会が横須賀市博物館で開催されたときのこと、昼食の弁当が食べられなくて悔しい思いをしたまま、その感情をずっと今日まで引きずっている(1)。

小さな学会なので、一日限りの開催であった。当日は「博物館周辺に食事の出来る店が少ない」という理由で、大会事務局から500円(600円だったかもしれない)の弁当が配られることになっていた。朝の受け付けで、お金を払って弁当を頼んだ人には引換券が渡され、昼食時に弁当と交換する手はずになっていた。ところが、昼の休憩時間帯になると、弁当を頼んだ(ことになっている)人が会議室のようなところに一斉に集められ、席に着かされると、引換券と交換することもなく弁当が配られていった。部屋の入り口近くに陣取った大会事務局のAさんが、弁当をひとつずつ先頭にいる人に手渡すと、それを順繰りに後ろに回していくという方法であった。

しばらくして私のところに弁当が回ってきたので、それを後ろの人に回すという行為を、幾度か繰り返した。後ろの人に弁当が行き渡り、さて私の番というところで、見事に私の前の人のところで弁当の配給がストップしてしまった。待っても弁当が回ってこないので、席を立ってAさんのところへ行き、私の分の弁当がない旨を告げると「もう弁当が切れた」とのことであった。Aさんに抗議しても「誰か、お金を払わないで弁当を受け取った人がいるのだろう」の一点張りで、私の分の弁当を再手配しようともせず、弁当代を返そうともしなかった。仕方がないので、元いた席に戻り、他の人たちが食べ終わるのを黙って眺めているよりなかった。周りにいる人たちからは「こういうのは、先に自分の分を確保して、それから後ろに回すものだよ」と、慰めにもならない言葉をかけられるばかりであった。

日本爬虫両棲類学会への大会参加は、そのときが初めてであった。当然、知り合いもなく、一緒に参加した指導教官だった教授は、昼食を採りながらの幹事会とかで、その場にはいなかった。どういう学会なのか分からないので、不安感だけが先に立ち、誰に助けを求めることもできなかった。

こうして、苦い思い出だけが、記憶に刻み込まれてしまった(2)。

[脚注]
(1) 夢にまで出て来るくらいだから、よっぽど悔しかったのだろう。大会事務局の皆さん、今からでも遅くないから、私に謝罪して、弁当代を返してくれませんか?
(2) 関係者に誤解なきよう言っておくが、今回の独り言は、日本爬虫両棲類学会を非難するものではない。当時の大会事務局のAさんが、独自の判断で、何もしようとしなかったことを問題にしているわけである(初見参で侮られたのか、単に面倒くさかっただけなのかは分からないが......)。


Copyright 2003 Masato Hasumi, Dr. Sci. All rights reserved.
| Top Page |