日本だったら、横断歩道では歩行者を先に行かせ、安全を確かめてから、自動車の運転手は右折なり左折なりするのが当たり前である。しかしながら、ウランバートルの自動車は横断歩道の手前で止まらないので、危険を避けるためには歩行者のほうが、横断歩道の途中で立ち止まらなければならない。そのため、右折車や左折車が何台も続いてしまうと、横断歩道の途中で信号機のシグナルが赤に変わり、得てして中央線付近で立ち往生することになる。
通訳のオトゴンさんによると、モンゴルの交通規則でも「横断歩道は歩行者優先」と明記されているらしいのだが、それを遵守しようとする自動車の運転手は誰もいないそうである。「歩行者が、無理に(というより、優先的に?)渡ろうとすると、どうなるの?」と尋ねてみると「そのときは仕様が無いから、たいていの自動車は止まるけど、止まらないで跳ねられる場合もある」というのが、彼女の答えであった。
以上のように、ウランバートルの横断歩道は危険がいっぱいである。そのせいなのかどうかは分からないのだが、この街に暮らす人々は、横断歩道のないところでも普通に道路を横断しようとする。主要道路は片側2車線の計4車線であることが多く、自動車の往来は引っ切りなしである。まず、片側の自動車の流れが途切れる瞬間を狙って、道路の中央線まで移動する。それから、もう片側の自動車の流れが途切れたときを見計らって、急いで反対側の歩道まで走る(2)。
これが、ウランバートルの市街地で、歩行者が道路を横断するための正しい方法である。
[脚注]
(1) ウランバートル市内の信号機は、日本の経済援助と技術導入で設置されたものだそうである。最新のLED技術を使った省エネルギーの信号システムで、日本でも余り設置されていないタイプのようである。頻繁に停電を起こすウランバートルの電力事情をかんがみれば、まことに理にかなったシステムと言えよう。
(2) ウランバートルでは、自動車は右側通行であるが、交通量の激しい道路の真ん中で立ち往生している歩行者を何度も見ている。1月の氷点下の気温でガチガチに凍っている道路が幾ら滑らないとはいっても、猛烈なスピードで駆け抜ける自動車の流れの中に身を置くのは、ちょっとした恐怖である。私の見たところでは、タイヤチェーンを着けている自動車は皆無であったし、スタッドレスタイヤやスパイクタイヤを履いている自動車も走っていないようであった(普通タイヤのみ?)。これじゃ、気温の上昇と共に氷の融け出す3月になったら、スリップ事故が増えるんだろうなあ。ちなみに、マンホールのフタが外れている箇所が道路のあちこちにあり、気を付けて歩かないと、落ちて大怪我をすることになる。冬場はマンホールから湯気が出ているから、フタが外れている箇所はすぐに分かるのだが、こういったところは温度が高いので周りの氷が融け出していることが多く、得てして滑りやすい。