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いよいよ、カルメン帰郷。
リリイ・カルメンと名乗るおきんと友人のマヤ・朱実が駅に降り立つ。出迎えた校長先生、一郎、ゆきの三人。
おきんら二人の派手な服装に呆然として立ち尽くす校長先生、暫し考え込む様子。
同じ列車で、村に観光ホテルを建てようと東京に出向いていた運送屋の丸十が戻り、早速二人に接近。「名刺代わりよ」とおきんが差し出すブロマイドにサインを入れてもらい有頂天。
おきんらのために「車を呼べ」と丸十が手配した馬車は、春雄の妻・光子の引く馬車だった。荷馬車に揺られて、おきんが主題歌「カルメン故郷に帰る」を歌いつつ一路、高原牧場へ。
わたしゃモダンな街娘 ちょいと散歩にニュールック 粋な殿御 と手を組んで ララ 歌う歌 甘いラブソング 恋のベニスの ゴンドラの歌 濡れます瞳が唇が ララむせび泣くよな セレナータ
牧場に到着し、丸十に歩合を払うのでと光子に五百円を請求されて「けちな丸十」と不本意ながら支払うおきん。
小高い草原へ駆け出すおきんと朱実。やがて浅間山をバックに、広々とした草原で大らかに歌い踊る二人の姿。。
やがて遠くに正さんを認めたおきんは「おとっつぁーん!」と呼び
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掛け、駆け寄って行くのだった。
村の小学校のグラウンドでは、先生と子供たちが甲斐がいしく運動会の準備を進めている。
片隅の鉄棒に寄り掛かりながら話し込む春雄とおきん。
「わたくしは踊り子じゃない。レビューなんてちゃちなもんじゃないのよ。芸術的で難しいの…わたくしは不幸。いくら人気を獲得したって、仕事を精神的に理論付けるから、結婚もできゃあしない」と、判るようでさっぱり判らぬこと言うおきん。
「わたくしと話し合えるのは、春雄さんしかいないわ。また話しに来てね」と、おきんが鉄棒を握る春雄の手に触れると、「もう帰る。清! 清!」と慌てふためく春雄だった。
朱実の方は、憧れの小川先生に声を掛けるが今一つ反応がない。「運動会、見に来るわね」と言い残して去る朱実。
「何話してたの?」と問う一郎に「話してたんじゃありませよ。脅かされてたんですよ」と小川先生。
高原牧場をゆく馬の群れ。
藁束を背負った正さんが丘の木の傍で荷を降ろし、座り込んで物思いに耽っている。
追いついたゆきが「元気がないね」と声を掛けると、正さんは「おきんのことを考えると頭が痛くなる…脚の見える服着て恥ずかしい。女が太ももまで出して、馬や豚なら裸でもええが…」と苦悶の表情で、おきんが牛に蹴られて泡を吹いた当時のことを話すのだった。
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