小ネタ集
2009年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2009年11月17日公開・12月15日追記)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。

1万円以下の複合機
 
 エプソンのPX-402AとキャノンのPIXUS MP270は複合機の最下位モデルとなる。価格はどちらも9,980円と1万円を切ってきている。さすがにこの価格だと、付加機能だけでなく基本機能や画質、印刷速度にまでコストダウンの跡が見られる。はたしてどのような機能が搭載されているのだろうか。

メーカ
エプソン
キャノン
品番
PX-402A
PIXUS MP270
製品画像
予想実売価格
9,980円
9,980円
プリンタ部
インク
色数
4色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
カラー3色一体+黒
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
染料(カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100+)
ノズル数
177ノズル
1472ノズル
C/M/Y:29ノズル
Bk:90ノズル
C/M/Y:各384ノズル
顔料BK:320ノズル
最小インクドロップサイズ
4pl(MSDT)
2pl
最大解像度
5760×1440dpi
4800×1200dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A4
名刺〜A4
給紙方向
背面給紙
背面給紙
自動両面印刷
特殊機能
DVD/CDレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファインEX)
パソコンからの印刷時のみ
○(自動写真補正II)
パソコンからの印刷時のみ
特定インク切れ時印刷
メーカー公称印刷速度
(L版縁なし)
144秒
38秒
スキャナ部
読み取り解像度
600dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
ADF
ネガフィルム読み取り機能
スキャンデーターのメモリカード保存
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
PCからドライブとして利用
外付けドライブ/USBメモリへ保存
外付けドライブ/USBメモリから印刷
動画から印刷
手書き合成シート
PictBridge対応
赤外線通信
Bluetooth通信
各種デザイン用紙印刷
コピー部
拡大縮小コピー機能
○(自動拡大のみ、対応用紙はA4普通紙のみ、コピー枚数は1枚又は20枚のみ)
○(自動拡大のみ、対応用紙はA4普通紙/A4写真用紙/L判写真用紙のみ、コピー枚数は1〜9枚又は20枚のみ)
CD/DVDレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
2アップ/4アップ/16枚分ポスター
−/−/−
−/−/−
バラエティコピー
FAX機能
液晶ディスプレイ
数字1桁LED
操作パネル
ボタン式
ボタン式
インターフェイス
USB1.1
USB2.0
外形寸法(横×奥×高)
434×327×185mm
450×335×155mm
重量
4.6kg
5.6kg

 この2機種が上位機種と大きく異なるのが、液晶ディスプレイが搭載されていないという事である。そして液晶ディスプレイが搭載されていないために、メモリカード内の写真を選びにくいということからか、メモリカードからのダイレクト印刷機能は搭載されていない。つまり、パソコンを使わずに行えるのはコピーだけとなる。
 まずプリンタ部から見てみよう。PX-402Aは全色顔料インクのつよインク200Xを採用する。4色インクで4plのインク滴と上位機種よりインク滴がかなり大きくなるため、それなりの粒状感がある。一見するとそれほど悪くはないため写真印刷も不可能ではないが、上位機種と比べるとザラザラした感じになる。また、顔料インクであるため、写真用紙への印刷は行えるものの光沢感がかなり薄くなりポストカードのような雰囲気となる。一方でモノクロ、カラー問わず普通紙への印刷画質は染料インクに比べて高く、耐水性も高い。濡れた手で触ったりマーカーを引いたりしてもにじまないのがメリットである。写真印刷も出来なくはないが、普通紙へのプリントやコピー、年賀状印刷等に特化している機種と言える。一方のPIXUS MP270はカラー3色が染料インク、ブラックが顔料インクとなる。インク滴が2plと上位機種より大きくなっているが、PX-402ほどではないため、粒状感はそれほど高くない。それより問題となるのが染料のブラックインクが搭載されていない事である。そのため、写真印刷時にブラックインクが使用できず、カラー3色を混ぜて黒に近い色にするため、どうしても黒のメリハリが弱くなってしまうのである。また、ブラックの顔料インクのおかげで普通紙への印刷やコピーはモノクロのみメリハリがある印刷となるが、一方で顔料インクはブラックのみとなるため、普通紙へのカラー印刷やカラーコピー、年賀状印刷などの際のメリハリ感や耐水性の面ではPX-402Aの方が上とも言える。ただし、染料インクで写真印刷が出来るため、光沢感の失われない印刷が可能なため写真印刷にはPIXUS MP270が有利だ。カートリッジ構成も両機種で異なる。PX-402Aは上位モデルと同じく各色独立だが、PIXUS MP270はカラー3色が一体となるため、3色の内どれか1色でも無くなると他の色が無駄になるためコスト面では不利だ。
 両機種とも背面給紙のみとなる。前面給紙や自動両面印刷、CD/DVDレーベル印刷などの付加機能は省略されている。対応する用紙は、PX-402AはL判以上、PIXUS MP270は名刺サイズ以上となる。写真補正機能はPX-402AはオートフォトファインEX、PIXUS MP270が自動写真補正IIがそれぞれ搭載されているが、パソコンからの印刷時しか使用できない点も上位機種との差である。印刷速度はL判縁なしでPX-402Aが144秒、PIXUS MP270が38秒となっている。PIXUS MP270は1つ上のPIXUS MP490とほぼ同じで、さらに上位の機種と比べても大きな差ではないが、PX-402Aは1つ上のPX-501Aと比べてもかなり遅く、最上位機種の10倍も時間がかかる。写真1枚2分24秒というのはかなり遅いため、写真や年賀状など印刷枚数が多い場合はPIXUS MP270の方がストレスは少ない。
 続いてスキャナ部である。PX-402Aは600dpiのCIS方式、PIXUS MP270は1200dpiのCIS方式である。CIS方式であるため分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手である。また解像度は上位機種と比べるとかなり低めであるが、コピーや通常の紙原稿のスキャンであれば600dpiで十分とも言える。ただ、写真などをできるだけ詳細にスキャンしたい場合などに紙原稿でも1200dpi程度でスキャンする事はあると思われるため、PIXUS MP270の方が安心感がある。それ以外としては、もちろんADFやネガスキャン機能は搭載しない。またスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能も搭載されていない。
 ダイレクト印刷機能は前述のようにメモリカードリーダが搭載されていないため行う事が出来ない。液晶ディスプレイが搭載されていないため、メモリカードリーダが搭載されていても写真を選択することが困難であるため、仕方がないだろう。ただし、PIXUS MP270はPictBridgeに対応しているため、対応のデジタルカメラを接続すれば、デジタルカメラ側からの操作で写真印刷をすることも可能である。また、 1つ上位機種のPIXUS MP490では省略されていたPictBridgeが、PIXUS MP270では搭載されているのはおもしろい所だ。
 コピー機能と操作パネルを見てみよう。PX-402Aは前述のように液晶ディスプレイが搭載されていないだけでなく、LEDランプによる用紙選択などもないシンプルなものだ。操作パネルはスキャナ部の左側に並んでいるが、存在するボタンは「電源」「ストップ」「スキャン」「モノクロコピー」「カラーコピー」のみとなる。そのため、対応している用紙がA4普通紙のみとなり、B5やハガキ、L判サイズなどにコピーできない他、用紙も写真用紙やファイン紙などにもコピーできない。拡大縮小機能も、等倍と用紙サイズを認識してA4サイズへ自動拡大することしかできない。コピー枚数も1枚又は20枚となる。ちなみにLEDランプによって等倍か自動拡大か、また1枚か20枚かを選ぶ事すらできない。等倍の場合はモノクロ又はカラーの「コピー」ボタンを押すが、このボタンを3秒以上押すと自動拡大となる。また「スキャン」ボタンを押しながら「コピー」ボタンを押すと20枚コピーとなる。単純に1枚を等倍コピーするだけなら、原稿をセットして「モノクロコピー」又は「カラーコピー」ボタンを押すだけなので非常に簡単だが、一方で自動拡大や20枚コピーをする場合はその方法を覚えておかなければならず、操作性はあまり良くない。ただ、モノクロとカラーでコピー開始のボタンが分かれているのは便利だ。一方、PIXUS MP270は液晶ディスプレイこそ無いが、LEDで1桁の数字が表示できる他、使用する用紙をLEDランプで選択出来るようになっているため、PX-402Aよりは分かりやすい。ボタンも「電源」、「+」、「用紙選択」、「メンテナンス」、「自動変倍」、「スキャン」、スタートの「モノクロ」と「カラー」、「ストップ/リセット」とボタン数も多い。対応する用紙もA4普通紙とA4写真用紙、L判写真用紙が使用できる分、PX-402Aより豊富だ。拡大縮小は、等倍と自動拡大のみだが、コピー枚数も1〜9枚又は20枚の指定が可能だ。ボタン数が多い分、見た目は複雑だが、それぞれの機能に合ったボタンが用意される分使いやすい。例えば枚数を指定する場合は「+」ボタンを押すとLEDの数字が増えるため、目的の枚数にすれば良いし、自動拡大する場合は「自動変倍」ボタンを押せばよい。「用紙選択」ボタンを押せば、用紙の書かれた横のLEDランプが順に点灯するので、目的の用紙を選べばよい。そして「モノクロ」又は「カラー」のスタートボタンを押せばコピーが開始される。PX-402Aと同じくモノクロとカラーでコピー開始のボタンが分かれているのは便利だ。
 インタフェースは両機種ともUSB接続だが、PIXUS MP270はUSB2.0と一般的である一方、PX-402AはUSB1.1である。USB2.0をUSB1.1にすることでどの程度コストダウンが計られるのかは不明だが、今では珍しいUSB1.1である。転送速度が遅いため、プリント開始までの時間が遅くなる可能性がある他、高解像度でのスキャン時にも影響が出る可能性がある。本体サイズは液晶ディスプレイがないこともあり、PX-402Aが434×327×185mm、PIXUS MP270が450×335×155mmとかなりコンパクトである。単機能プリンタであるEP-302が450×289×187mm、PIXUS iP4700が431×296×153mmである事を考えると奥行き以外はほぼ同サイズであり、複合機だからと言って置き場所に困ることはなさそうだ。
 この2機種の内、一般的にはPIXUS MP490の方がオススメだ。染料インクであるため光沢感のある写真印刷が行え、印刷速度も比較的高速だ。操作パネルもボタン数が多い分分かりやすく、コピー機能もPX-402Aよりは豊富だ。USBもUSB2.0に対応しているなど、上位機種よりは機能は大きく削減されているが、標準的な機能を搭載しているため、様々な場面で使いやすいと言える。PX-402Aは印刷速度が極端に遅かったり、コピー機能がかなり簡略化されていたり、USB1.1接続であるなどクセが強い。全色顔料インクであるため、写真印刷にも向かない。ただ、顔料インクの特徴として普通紙印刷時にメリハリのある印刷が行え耐水性も高い。そのため写真印刷は行わず、印刷速度も遅くて良いので、単純なコピーや普通紙へのプリント、年賀状印刷などが主体ならPX-402Aという選択肢も悪くはない。ただし、もう3,000円から4,000円出せば、液晶ディスプレイも搭載されより機能が豊富な上位機種PX-501AやPIXUS MP490が購入できるため、コチラも併せて検討していただきたい。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/