2009年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2009年11月17日公開・2010年1月6日&29日追記)
2009年9〜11月、エプソンとキャノンからプリンタの新機種が多数発表された。毎年行われる年賀状の時期に合わせた新製品発表である。そこで、今年の傾向、そして両メーカーの傾向を検証した上で、複合機、FAX機能付き複合機、単機能プリンタ、コンパクトプリンタの4種類を価格帯別に比較していく。各比較は、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。
ここのところ、印刷画質やスキャン性能などは十分な域に達したためか毎年の変化が少なくなってきていたが、今年もエプソン、キャノン共に変化はない。エプソンが6色構成で1.5plインク滴のAdvanced MSDTで5760×1440dpi、キャノンも6色構成で1plインク滴の3サイズドロップレットで9600×2400dpiというのが最高機種で、下位機種ほど色数が少なくなり、インク滴が大きくなっていく。スキャナも最高が4800dpiで、エプソンは全機種がCIS方式、キャノンは最上位のみCCD方式でフィルムスキャン対応というのも変化がない。また、本体デザインも昨年一新されたことから、大きな変化はない。 複合機ではエプソン、キャノン共に大型液晶と最高性能の最上位機種から、液晶無しの最下位機種までそろえており、それぞれ6機種ずつのラインナップとなっている。エプソンのPX-501Aを除いた11機種は新機種で、複合機が主流となっていることが分かる。一方FAX付き複合機の新機種投入は両メーカー共に行われていない。また、A4単機能プリンタに関しては両メーカー共に上位機種1機種のみ新機種が発表され、下位機種は継続販売となるなどあまり変化がない。一方のA3単機能プリンタは、両メーカとも下位機種に1機種追加している。また大きく変化したのはコンパクトプリンタで、液晶を大型化してフォトフレームとしても使用できるようになるなど、完全に一新されている。 両メーカーともハード面での変更点は少ないが、ソフト面で写真補正機能の性能向上を行っている。キャノンは名称も「自動写真補正II」へと変化し(下位モデルではパソコンからの印刷時のみ自動写真補正II対応で、ダイレクト印刷時は従来の自動写真補正となるものの)、全機種が対応を果たしている。エプソンは名称こそ「オートフォトファイン!EX」だが、精度を向上させており、今回発売された新機種は対応している。またLAN接続対応モデルがさらに増加しているのも今年の傾向だ。エプソンはFAX付き複合機2機種と、複合機3機種、A4単機能プリンタ1機種が対応している。キャノンはFAX付き複合機2機種と複合機3機種、A3単機能プリンタ1機種が対応している。特に複合機では去年よりも下位の機種にまで、LAN対応モデルが登場しており、かなり一般的になってきたと言えるだろう。
今年のエプソンのラインナップは去年と比べてどのようになっているか、まずは見てみよう。
複合機は全機種が新機種へと移行した格好である。ただしPX-501Aは新機種のPX-502Aが発売されたものの、PX-501Aもカタログから消えていないことから継続販売されると思われる。これはPX-502AがPX-501Aと比べて大幅にスペックアップし、上位機種と呼べるほどになっているためだろう。 PX-502A以外の機種は新機種へ移行したといっても、性能面で大きく変化したとは言えずマイナーバージョンアップ程度にとどまっている機種が多い。全機種の共通する改善点(機能が搭載された機種だけだが)として、まず「オートフォトファイン!EX」に「ノイズ除去・美肌補正」機能が追加されている事が挙げられる。また、「ナチュラルフェイス」機能は、従来は顔を小顔に見せる機能だったが、今モデルから体も細く見せる「スリム補正」が可能になっている。また手書き合成シートの文字飾りが追加された他、最大100枚まで一度に印刷できるようになった点も細かな変更点だ。また、従来はコピー時にしか使用できなかった塗り絵機能がメモリカードからも可能になった点も挙げられる。 さて、最上位機種のEP-902Aに関しては前述の全機種共通の改善点しか変更点が無く、ハード面でのスペックは同等となる。EP-802AもEP-801Aに対して大きな改善点は無いが、新たに有線・無線LAN接続に対応している。後述のPX-502Aも対応しているため、従来は最上位機種のみ対応していた有線・無線LAN接続対応機種が一気に3機種へと増加し、複合機ラインナップの半分まで拡大している。 上から3番目の機種、染料インクの機種では最下位のEP-702Aは一番変化が大きい。エプソンは昨年より品番の付け方が変更されているが、唯一複合機で旧来の品番の付け方になっていたPM-A840Sが、他機種と同じ品番の付け方であるEP-702Aとなり、空いていた700番台に入った。同時に本体デザインもEP-902AやEP-802Aと同じコンパクトでリビングに合う物へと変更されている。ただし、EP-802Aより上位モデルは前面2段給紙、EP-702Aより下位モデルは背面給紙となる。また、EP-802Aと比べて印刷速度やスキャナ解像度などに差が付けられている他、有線・無線LAN接続にも対応しない。 これより下位は顔料インクとなる。その中で最上位のPX-502Aは前モデルのPX-501Aと同等デザインながら、インク滴が3plから2plへ小さくなり、印刷速度も69秒から55秒へ高速化、スキャナ解像度も向上している。また、有線・無線LAN接続にも対応しPX-501Aからかなりのスペックアップとなる。機能的にはFAX付き複合機のPX-601FからFAX機能を省いた物に近く、600番台を名乗ってもおかしくない性能だ。そのため、従来のPX-501Aも下位モデルとしてラインナップに残っている。そして最下位のPX-402AはPX-401Aと同様に液晶ディスプレイとメモリカードスロットを省略したモデルとなる。ボタン類などが見直されているが、基本性能は変わっていない。 一方のFAX付き複合機は昨年末発売のEP-901Fと2009年2月19日発売のPX-601Fは継続販売となる。またA4単機能プリンタは最上位機種のEP-301のみEP-302の新機種が発売され、PX-201とPX-101は継続販売となる。また、新機種へと移行したEP-302も、EP-301と比べてスペック面で変化はなくデザインが変更された程度の違いである。性能的にはEP-702Aと同等のプリントエンジンを持つ機種である。ちなみに前述のEP-702Aが入ったことにより、ラインナップは複合機とA4単機能プリンタを併せて900番台から100番台までのラインナップが揃い、複合機は900番台から400番台まで、A4単機能プリンタは300番台から100番台で、数字の大きい方がスペックが上となる分かりやすいラインナップでになっている。ただしA4単機能プリンタの中でプロセレクションモデルに入る、8色顔料インクのモデルは2006年2月の以来新機種が発売されておらず、PX-G930が継続販売されており、この900から100番台の中にも入っていない。 A3ノビ単機能プリンタはPX-5600、PX-G5300、PM-G4500の3機種は継続販売されるのに加え、今年の5月11日最下位モデルPX-1001が追加され4機種体勢となっている。4機種は全てインクが異なり、PX-5600が顔料のK3インク、PX-G5300が光沢顔料のつよインク200Xである。PM-G4500が染料のつよインク200、PX-1001が通常の顔料タイプのつよインク200Xとなる。一方、外見は発売が最も前のPM-G4500以外は非常に似ており(前面からは色違いモデルに見える)、サイズも同じである。 今回、最も変化が大きかったのがコンパクトプリンタである。従来の中位機種のE-530が下位機種へと移り、さらに下位のE-330と上位のE-720は姿を消している。そしてE-530の上記機種として全く異なるE-800とE-600が発売されている。両機種とも7型800×480ドットの大型液晶を内蔵しフォトフレーム代わりに使用できるようになっている。また去年までの最上位機種はCD/DVDドライブを内蔵していたが、今年のE-800は年賀状作成機能を内蔵している。通信面に写真を印刷できると言うだけでなく、通信面にイラストや写真、文字を組み合わせてデザインでき、文章も編集可能な上に、宛名面も印刷可能である。そのためのワイヤレスキーボードが付属している。年賀状作成も行うならE-800、フォトフレーム機能が必要ならE-600、コンパクトなプリンタとして使用するならE-530となる。またE-720の販売終了に伴い、エプソンからCD/DVDドライブ内蔵の機種は姿を消すこととなった。
今年のラインナップが去年と比べてどのようになっているか、まずは見てみよう。
キャノンも複合機は全機種が新機種へと切り替わっている。またラインナップは最下位の200番台が追加され、6機種体勢となっている。しかし新機種といっても、2008年末モデルと比べて大きな差はなく、細かい改良が行われた印象だ。例えば操作部分では引き続きEasy-Scroll Whellを採用するが、十字キーとホイールを一体化する事で、回転操作と十字キーを押す操作が指を移動させずに可能になっている。また、「自動写真補正」機能が「自動写真補正II」にバージョンアップしている点が挙げられる。画像をエリア別に解析し、露出不足の部分を特定した後、エリアごとに異なる明るさ補正を行う「エリア別明るさ補正」機能を搭載する事で、逆光写真のような明るさが大きく異なる写真などへの補正の威力がアップしている。また、ダイレクト印刷時がUSBメモリからも可能になった点も今年の機種の変更点だ。これはエプソンの機種が数年前から搭載している機能だけに、ようやく搭載したという印象だ。 それ以外の箇所を機種別に見てみると、最上位モデルのPIXUS MP990は前モデルPXIUS MP980と比べてインク滴やインク構成、解像度、印刷速度、スキャナ解像度、コピー機能などに大きな変化はなく、液晶ディスプレイが3.5インチから3.8インチに若干大型化している程度である。2番手のPIXUS MP640も液晶ディスプレイが2.5インチから3.0インチに大型化しているのみとなる。PIXUS MP560は従来のPIXUS MP620の後継機種だが、600番台から500番台へと落とされてる。といっても従来のPIXUS MP620は、本体デザインはPIXUS MP630と同じである物の、機能面ではPIXUS MP540に無線LAN機能を付けたような機種であり、今回は機能に併せて500番台になったと言える。機能面では特に変化していない。ただし、本体デザインが下位モデルの「液晶が本体の右側にある」デザインになったため、操作感が異なる他、液晶ディスプレイも2.0インチに小型化している。PIXUS MP550は前モデルと比べて、全機種共通の変更点以外に大きな違いはない。PIXUS MP490では、前モデルよりさらに低価格化が図られ、スキャナ解像度が落とされた他、PictBridgeにも非対応となった。そして今回追加されたPIXUS MP270は、キャノンとしては久しぶりの液晶ディスプレイ無しの複合機である。数字1桁のLEDとボタン類を駆使して操作するため、上位機種より使用しづらくコピー機の等にも差がある他、メモリカードスロットも搭載しない。ただし、こちらはPictBridgeに対応している。ちなみに、有線・無線LANは上位3機種が搭載しており、昨年より1機種増となっている。 FAX付き複合機は今年前半までに発売された2機種の継続販売となる。A3ノビ以上のサイズに対応した単機能プリンタは3機種から4機種へと増えている。半切対応のPIXUS ProシリーズのPro9500 MarkII/Pro9000 MarkII、A3ノビ対応のPIXUS iXシリーズはのX5000に関しては継続販売となり、PXISU iXシリーズの上位機種としてiX7000が追加されている。PIXUS ProシリーズとPIXUS iXシリーズのそれぞれ上位モデルは顔料インク(LUCIA)、下位モデルは染料インク(ChromaLife100)となっている。また今回追加されたPIXUS iX7000はA3ノビ以上のサイズの対応機として初めて、前面給紙トレイが採用されたほか、A4対応を含む単機能プリンタとして初めて有線LAN機能が搭載されている(無線LANは非対応)。A4対応単機能プリンタは、PIXUS iP4600はPIXUS iP4700へ切り替わり、下位モデルPIXUS iP2600は継続販売、中位モデルのiP3000番台は姿を消している。コンパクトプリンタのPIXUS iP100も継続販売である。
各機種を詳しく見てみよう。価格帯別の比較、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。なお価格は、このページの作成時点(2009年11月)でのものとなる。 (H.Intel) 今回の関連メーカー エプソンホームページ http://www.epson.jp/ キャノンホームページ http://canon.jp/ |