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2009年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2010年1月6日公開)
A3対応の単機能プリンタで3万円台というと、ちょうど購入しやすい価格帯となる。エプソンのPM-G4500とキャノンのPIXUS iX7000がこの価格帯の製品となる。どちらも上位機種とは本体デザインが異なり、機能面でもかなっている。また、PM-G4500は33,800円、PIXUS iX7000は39,980円と価格にも6,000円の差があるが機能面でも異なる部分は多い。どのような違いがあるのだろうか。
まずはインクを見てみよう。PM-G4500は染料インクの「つよインク200」を採用している。6色構成となっており、ブラック、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンダ、イエローと標準的なインク構成である。特殊な色のインクを採用していないため、上位機種のような色再現性が特に高いということはないが、ライトインクを含む6色構成であり、またインク滴も1.5plと極小であるため、粒状感は皆無である。染料インクであるため、写真用紙に印刷した場合でも光沢感が失われず、写真らしい印刷が行えるのがメリットである。一方上位機種のような耐水性はなく、普通紙への印刷では顔料インクよりもやや滲んでしまうためシャープさは薄くなってしまう。一方、アルバム保存200年、耐光性50年、耐オゾン性15年と、上位機種のPX-G5300より耐光性や耐オゾン性は劣るものの、それでも耐保存性も非常に高いレベルとなっている。 一方、PIXUS iX7000はインクは5色構成となる。構成はフォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンダ、イエローとなり、ブラックは2種類搭載されるが、写真時はフォトブラック、普通紙モノクロ印刷時はマットブラックと使い分けられるため実質4色印刷となる。またインク滴は2plとなるため、PM-G4500と比べると写真印刷時の画質は劣ると言える。ハイライト部などで若干粒状感が出てしまうだろう。一方、インクは全色顔料インクのLUCIAインクを使用するため、普通紙印刷時のシャープさや耐水性はPM-G4500より上となる。濡れた手で触ったりマーカーを引いても安心である。そして、顔料インクの得意とする普通紙印刷画質をさらに高めるために搭載されるのが、クリアインクと「PgR」テクノロジーである。これは、インクの染み込みやすい普通紙の表面全体にこのクリアインクを塗布することで、顔料インクを用紙に染み込ませず表面近くに定着させるという技術である。これにより、顔料インクの特徴であるシャープで発色の良さがさらに際だつこととなる。雰囲気としては、普通紙でもファイン紙のようなコーティングをした用紙のような印刷が可能になるわけである。クリアインクは用紙全体に塗布するため、通常のインクを搭載する所とは別の所の本体左奥に、かなり大型のものを搭載する。塗布もプリントヘッドを左右に動かす方式ではなく、印刷前に塗布用ローラーを通過させ、そこで塗布する形となっている。一方でクリアインクの塗布は用紙設定を普通紙以外に設定すると一切行われないため、写真用紙への印刷では光沢感が失われてしまい、ポストカードのようなくすんだ光沢になってしまう。 これを見ると、PM-G4500は写真印刷重視のインクと画質の機種であり、PIXUS iX7000は普通紙への印刷画質を特に究めたような機種と言える。 対応する用紙は背面給紙からは最大A3ノビまでとなるのは同等だ。最小サイズもPM-G4500がカード・名刺サイズ、PIXUS iX7000も名刺サイズと、L判より更に小さなサイズまで対応している点も便利である。PM-G4500はこの背面給紙のみのシンプルな給紙方式だが、PIXUS iX7000はこれ以外にも前面給紙カセットと前面手差し給紙が行えるなど、給紙方法は豊富である。まず前面給紙カセットだが、複合機やA4単機能プリンタではおなじみの、排紙トレイより更に下に取り付ける給紙カセットだが、A3プリンタでの採用は初である。最大A3までセットできるだけでなく、普通紙を250枚セット可能である。PM-G4500の背面給紙トレイは普通紙を120枚までセットできるため、かなり大量の用紙をセットしておける点で便利である。ここでいくつか注意が必要なのが、前面給紙カセットはハガキや写真用紙には対応せず普通紙のみであること、逆に背面給紙トレイは普通紙には対応しない事である。特に背面給紙が普通紙に対応しないのは他機種にはない事であり注意が必要だ。よって前面給紙カセットには常に普通紙をセットしておき、背面は写真用紙をセットしておいたり、封筒やハガキなどに印刷するために空けておくという事になるだろう。使い分けが可能なのは便利だ。さらに、排紙トレイ部分から手差しによる普通紙の給紙にも対応する。A3用紙までで最大10枚となるが、例えば前面給紙カセットにA3用紙をセットしている状態で、数枚のA4原稿の印刷を行う必要が出たといった状況でも、前面給紙カセットの用紙を入れ替えずに対応できるのが非常に便利である。給紙関係の便利さで言えばPIXUS iX7000が圧倒的に便利である。一方で、前面給紙カセットが本体よりかなり前面に飛び出してしまっているのは残念だ。またA3サイズより小さな用紙をセットする際には、カセットの長さを短くできるため、多少飛び出る大きさを軽減できるが、A4単機能プリンタの前面給紙カセットのように、完全に本体に収納できるサイズにまでは短くできない。さらにPIXUS iX7000は自動両面印刷にも対応する。これもA3プリンタで唯一である。前面給紙カセットと自動両面印刷に対応するというのは、A4単機能プリンタをそのままA3に対応させたような印象である。 その他の機能としてCD/DVDレーベル印刷機能は両機種とも備えている。また手軽に写真印刷が行えるよう、写真の自動補正機能としてPM-G4500は「オートフォトファインEX」を、PIXUS iX7000は「自動写真補正II」を備えている。「オートフォトファインEX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる。一方「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる。両機種とも高精度で自動補正をしてくれるわけだ。また、PM-G4500はPictBridgeに対応しているため、PictBridge対応デジタルカメラとプリンタを直接繋いで、デジタルカメラの液晶画面でプリント操作が行える。ただし、PictBridgeを使用した印刷では、前述の写真のオートフォトファインEXは働かない点は注意が必要だ。PIXUS iX7000はPictBridgeには対応しないが、インク構成を見ると普通紙印刷に特化しているため仕方がないだろう。 PM-G4500は1.5plとインク滴が小さいが、5つのサイズのインク滴を打ち分ける「Advanced-MSDT」に対応しているため、印刷速度はL判縁なしで39秒とノズル数が少ない割には高速だ。一方のPIXUS iX7000もL判縁なしで38秒とほぼ同等になっている。複合機の上位機種ほど高速ではないが、それなりの速度で印刷可能であるため、数十枚のスナップ写真を印刷したり、年賀状印刷を行う場合もストレス無く行えるだろう。 インタフェースはPM-G4500がUSB2.0、PIXUS iX7000はUSB2.0に加えて有線LANに対応している。無線LANには対応しないが、液晶ディスプレイの無い単機能プリンタで無線LANの設定は行いにくいので、有線LANだけで問題ないだろう。1機種と接続するだけならどちらの機種でも問題ないが、最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN接続の機能は非常に便利だろう。本体サイズは、PM-G4500が一般的なA3プリンタのサイズであるのに対して、前面給紙カセットを備えているPIXUS iX7000は「巨大」という印象である。PM-G4500と比べても、横が32mm、高さが37mm、奥行きにいたっては205mmも大きいため、設置面積はかなり必要になる。重量も、PM-G4500の11.5kgに対してPIXUS iX7000は19.8kgとかなり重い。それどころか複合機の中でもコンパクトな方のEP-802Aは446×385×150mmなので、設置面積で約2倍、高さが1.73倍と複合機と比べてもかなり大きい。PIXUS iX7000を購入する時は、大きさについては覚悟しておいた方が良さそうだ。 この2機種を見ると、前面給紙や自動両面印刷、有線LAN対応など機能面ではPIXUS iX7000の方が上である。ただ、その分が6,000円の価格差になるとも考えられるので、これらの機能に6,000円の価値があると感じればPIXUS iX7000を選べば良いだろう。また普通紙印刷や年賀状印刷等が主体で、写真印刷はしないという人は、クリアインクと「PgR」テクノロジーによって普通紙へ画質が非常に高いPIXUS iX7000がオススメである。ただし、PIXUS iX7000にも問題があり、本体サイズが大きい事と写真印刷が苦手なことである。写真印刷が主体であれば染料インクでインク滴小さくインク数も多いため写真用紙への画質が高いPM-G4500の方がオススメだ。普通紙への印刷もPIXUS iX7000と比べれば劣るものの、画質が悪いというほどではなく、価格も6,000円安く、本体も小さい。普通紙印刷専用ならPIXUS iX7000、少しでも写真印刷も行うならPM-G4500を選ぶのが無難と言える。また、PIXUS iX7000の本体サイズの大きさが気になる人も、PM-G4500を選ぶのが無難と言えるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ ![]() ![]() | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||