小ネタ集
2009年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2010年1月29日著)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。

1万円台のA4単機能プリンタ
 
 複合機がラインナップの中心になり、すっかり影の薄くなったA4単機能プリンタだが、エプソンとキャノン併せて5機種がラインナップされている。その中で1万円台の3機種を比較する。エプソンは2機種で、EP-302は16,980円、PX-201は13,800円、キャノンのPIXUS iP4700は14,800円となっており価格差があるが、数千円のことである。しかし3機種はそれぞれ異なった特徴を持っているのである。比較してみよう。

メーカ
エプソン
エプソン
キャノン
品番
EP-302
PX-201
PIXUS iP4700
製品画像
予想実売価格
16,980円
13,800円
14,800円
プリンタ部
インク
色数
6色
4色
5色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
顔料
(つよインク200X)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100+)
ノズル数
540ノズル
768ノズル
4416ノズル
全色:90ノズル
C/M/Y:各128ノズル
Bk:384ノズル
C/M:各1536ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
顔料BK:320ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(Advanced-MSDT)
2pl(MSDT)
1pl(3サイズドロップレット)
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
9600×2400dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
カード・名刺〜A4
L判〜A4
名刺〜A4
給紙方向
背面給紙
背面給紙
前面給紙(普通紙のみ)
背面給紙
自動両面印刷
特殊機能
DVD/CDレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファインEX)
○(オートフォトファインEX)
○(自動写真補正II)
パソコンからの印刷時のみ
特定インク切れ時印刷
カラーインク切れ時モノクロ印刷可
(5日間のみ)
PictBridge対応
メーカー公称印刷速度
(L版縁なし)
22秒
55秒
17秒
インターフェイス
USB2.0
USB2.0
有線/無線LAN
USB2.0
外形寸法(横×奥×高)
450×289×187mm
435×250×161mm
431×296×153mm
重量
5.5kg
4.0kg
5.7kg

 3機種はそれぞれ基本となる複合機が存在している。インク構成やインク滴、ノズル数や印刷スピードを見ると、EP-302はEP-702Aの、PX-201はPX-502Aの、PIXUS iP4700はPIXUS MP640のプリンタ部とほぼ同スペックである。
 3機種の中で最も画質が高いのはEP-301である。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えて、ライトシアンとライトマゼンダを搭載する6色構成である。インク滴も1.5plと極小であるため、全体を通して粒状感がほとんど無い高画質な印刷が可能である。特にライトインクを搭載するのは3機種中でEP-302のみであり、ハイライト部でも粒状感が目立たないというメリットがある。また、この画質は複合機の最上位機種と同等であるため、画質面では最高レベルであると言える。インクは染料インクを採用しているため、写真用紙へ印刷した際に用紙の光沢感がそのまま出るため写真印刷に向いているといえる。一方で普通紙などへ印刷すると若干滲んだようになってしまう他、耐水性は弱いのは染料インクの宿命と言える。次に画質が高いのはPIXUS iP4700である。5色構成となるが、色はブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色となっており、ブラックインクのみ染料インクと顔料インクの2種類を搭載する。そのため写真印刷時は4色印刷となり、ハイライト部での粒状感が若干気になる。といってもインク滴が1plと極小であるため、よく目をこらしてみないと粒状感は感じられず、写真全体がザラザラと見えるようなレベルではない。十分に写真印刷に耐えうる高画質である。また黒だけだが顔料インクを搭載しているため、普通紙へのモノクロ印刷時にシャープな印刷結果が得られ耐水性も高いというメリットがある。ただしカラーインクは染料のみであるためカラー印刷時はこれらのメリットは得られない。最後にPX-201だが、こちらはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成で、インク滴も2plと他の2機種と比べると大きめでるため、粒状感は若干あると言える。それでも2plというと十分小さいため、比べてみなければPX-201でも十分写真画質である。それよりもPX-201の特徴は全色が顔料インクである事である。モノクロ、カラー問わず、普通紙への印刷時にもシャープな印刷結果が得られ、耐水性も高い。そのため、普通紙や年賀状印刷で便利な他、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないというメリットがある。一方で写真用紙へ印刷すると光沢感が薄くなり、ポストカードのようになってしまう点は注意が必要だ。PX-201は普通紙印刷に特化していると言える。
 インクを見てみよう。EP-302が「つよインク200」となりアルバム保存200年、耐光性50年、耐オゾン性15年である。PX-201は「つよインク200X」となりアルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年である。そしてPIXUS iP4700は「ChromaLife 100+」であり、純正写真用紙の中で最上級のキャノン写真用紙・光沢 ゴールドを使用する事で、アルバム保存300年、耐光性40年、耐オゾン性10年となる(キャノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]ではそれぞれ200/50/10年、キャノン写真用紙・光沢/光沢 プロフェッショナルではそれぞれ100/40/10年)。3機種とも耐保存性は非常に高いのはポイントである。さらに3機種とも写真印刷時に写真を自動補正する機能を備えている。EP-302とPX-201が備える「オートフォトファインEX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる。一方PIXUS iP4700の備える「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる。3機種とも高精度で自動補正をしてくれるのである。さらに、PIXUS iP4700はPictBridgeに対応しているため、PictBridge対応デジタルカメラとプリンタを直接繋いで、デジタルカメラの液晶画面でプリント操作が行える。ただし、PictBridgeを使用した印刷では、前述の自動写真補正IIは働かない点は注意が必要だ。
 対応用紙は、PX-201がL判からA4サイズまでなのに対し、EP-302とPIXUS iP4700はL判サイズより小さな名刺サイズにも対応している。始めから名刺サイズにカットされた用紙が使用できるため、名刺印刷を考えている人は便利である。また余談であるが、EP-302は複合機EP-702Aのプリンタ部とほぼ同スペックであるが、名刺サイズに対応している点だけは異なる点である(EP-702AはL判用紙以上)。給紙方向はEP-302とPX-201が背面給紙のみなのに対して、PIXUS iP4700は背面給紙に加えて前面給紙カセットを備えている。前面給紙は普通紙のみとなるが、前面と背面で2種類の用紙がセットできることになるため、例えば前面はA4普通紙を、背面はL判写真用紙をという風にセットしておき使い分けることが出来る点では非常に便利である。給紙関連はPIXUS iP4700が一歩リードと言える。ただし、PIXUS iP4700の前面給紙カセットは未使用時や小さな紙の時は本体に隠れているが、A4用紙などをセットする場合はカセットを伸ばすことになる。結果、カセットが本体より前方に飛び出す形となってしまうのは複合機のものとは異なるところである。その他、PIXUS iP4700は自動両面印刷にも対応している。同時両面ではないため、片面を印刷して乾燥時間があってから再度給紙され裏面が印刷されるため、時間はかかるが、両面原稿の印刷時や年賀状印刷などには便利だろう。またEP-302とPIXUS iP4700はCD/DVDレーベル印刷に対応している。
 印刷速度は、L判縁なし1枚がEP-302が22秒、PIXUS iP4700が17秒と、この2機種はかなり高速で、大量の印刷でもストレス無く行えるだろう。一方PX-201は55秒と、他の2機種と比べるとかなり遅い事が判る。少し前の下位機種では3分以上という機種もあった事を考えれば使えるレベルではあるが、PX-201は他機種より遅い事は確かである。ただしこれはカラー印刷に限った話である。というのも、PX-201はカラー3色は各128ノズルしかないのに対して、ブラックは384ノズルと3倍になっている。そのためモノクロ印刷は1分間に15枚とかなり高速になっている。確かに顔料インクであるPX-201では写真印刷を行う事は多くないと思われるため、カラーもモノクロも多少速くするよりは、モノクロ文書だけでも大幅に高速にする方が便利だとも言える。また、おもしろい機能として PX-201はカラーインクが切れた際にもモノクロ印刷は継続できる機能を備えている。通常は1色でもインクが無くなるとプリントが出来なくなるため、便利な機能である。ただし5日間限定であり、常にカラーインクを搭載せずに使用できるわけではない。
 さて、ここまで見てみて、PX-201は他の2機種に比べてスペック面で劣っていることが多いとは感じなかっただろうか。モノクロ印刷は高速で顔料インクという特徴はあるが、インク数やインク滴、カラー印刷速度、対応用紙、給紙方法で劣り、CD/DVDレーベル印刷機能も無しという点を考えると、他の2機種に比べてスペックが劣る割に価格の差が小さいと感じるだろう。実はEP-302とPIXUS iP4700はUSB2.0接続となるが、PX-201はそれに加えて有線/無線LAN接続に対応しているという大きなメリットがあるのである。有線/無線LAN接続に対応しているのはA4単機能プリンタではPX-201だけとなるため、家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているなら、どのパソコンからもプリントが行え非常に便利である。ちなみに無線LANの接続設定であるが、液晶ディスプレイが搭載されていないものの、AOSSやWPS対応したルータの場合は本体のボタンを押すだけで接続からセキュリティ設定まで行ってくれる。AOSSに非対応の場合や手動で設定したい場合は、パソコンから設定することになる。
 本体サイズはEP-302が450×289×187mmで5.5kg、PX-201は435×250×161mmで4.0kg、PIXUS iP4700は431×296×153mmは5.7kgとなる。PIXUS iP4700は奥行きが大きいが高さが低く、PX-201は全体的に小さく重量も軽いが、3機種とも比較的コンパクトである事に変わりはない。ちなみに複合機と比較してみると、上位機種の中でコンパクトなEP-802Aは446×385×150mmで9.0kg、コンパクトな下位モデルPIXUS MP490では450×335×155mmで5.5kgとなっているため、横幅に関してはほとんど変わらず、高さに関してはむしろ複合機の方が低いが、奥行きがA4単機能プリンタの方が小さい。やはりA4用紙を水平に置くスキャナを搭載する複合機ではどうしても奥行きは大きくなる。設置面積を考えるとA4単機能プリンタの方が置きやすいと言えるだろう。
 この3機種から選ぶとなると、まず写真印刷が主な目的なら、EP-301がオススメである。6色インクで印刷も高速であるためだ。一方、写真は最高レベルでなくても良いので普通紙への印刷画質も使い勝手も全体的に高いレベルを求めるならPIXUS iP4700がオススメである。インクは4色となるが十分高画質で印刷も速く、前面給紙やCD/DVDレーベル印刷にも対応する。写真は印刷しないので、A4普通紙への文書印刷や年賀状印刷主体なら顔料インクのPX-201が良い。多少インク滴が大きくても普通紙へのシャープな印刷が行える事を考えると、普通紙への画質は3機種中最も良いかもしれない。また、無線/有線LAN接続に魅力を感じる場合もPX-201が良いだろう(ただし顔料インクで問題ない場合ではあるが)。ただし、この価格と性能なら複合機を選ぶのも手である。例えばEP-302と同じプリンタ性能の複合機EP-702Aは22,980円、PX-201と同じプリンタ性能の複合機PX-502Aは19,980円、PIXUS iP4700と同じプリンタ性能の複合機PIXUS MP640は25,980円である。特にエプソンの2機種はそれぞれ6,000円プラスするだけでスキャンもコピーもダイレクト印刷も出来るようになる事を考えると、一度複合機もセットで検討してみてはいかがだろうか。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/