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2010年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 （2010年9月20日公開・10月2日追記）
エプソンのEP-903AとキャノンのPIXUS MG8130はどちらもFAX機能の無い複合機では最上位モデルとなる。価格もどちらも39,980円と約4万円である。高価な製品であるが、2機種にはどのような違いがあるのだろうか。
これらの2機種をまずプリンタ部から見てみよう。EP-903AとPIXUS MG8130は共に6色インクであるが、構成は大きく異なっている。EP-903Aはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えてライトシアンとライトマゼンダが採用されており、カラー原稿での色の薄い部分での粒状感が抑えられる。一方、PIXUS MG8130はブラック、シアン、マゼンダ、イエローに加えてグレーインクが搭載され、モノクロ原稿での階調表現が優れている。また染料ブラックに加えて顔料ブラックも搭載しているため、普通紙などへのモノクロ印刷ではメリハリのある印刷が行える。これによりカラー写真はEP-903Aが、モノクロ写真や普通紙へのモノクロ印刷はPIXUS MG8130が上となる。といっても、これはそれぞれの製品のインク構成から見た得意分野を述べただけであり、最上位機種だけあって、どんな原稿でもかなりの高画質で印刷が出来る。EP-903Aは1.5plのインク滴で5760×1440dpiの解像度、PIXUS MG8130は1plのインク滴で9600×2400dpiとインク滴が非常に小さい事からも、高画質である事が判るだろう。強いて言うなら、EP-903Aはカラー、PIXUS MG8130はモノクロが得意というレベルだと考えていただきたい。またインク滴は非常に小さいが、EP-903AはAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を、PIXUS MG8130も3サイズドロップレットという3つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載する事で、場所により大きなインク滴を使用する事で高速化と高画質化を両立している。結果、L判縁なし印刷で、EP-903Aが14秒、PIXUS MG8130が17秒と非常に高速になっている。 ちなみにインクだが、EP-903Aは「つよインク200」でありアルバム保存200年、耐光性50年となる。一方、PIXUS MG8130は「ChromaLife100+」であり「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」を使用することにより、アルバム保存300年、耐光性40年を実現している（キャノン写真用紙・光沢ではアルバム保存100年）。どちらも十分なレベルである。また、両機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。 給紙関連の部分を見てみると、EP-903Aが前面のみ、PIXUS MG8130が背面と前面の2方向となっている。EP-903Aでは前面給紙のみとすることで、コンパクトさとデザイン性を高めた形だが、背面給紙がないため、特に厚い紙や封筒などへの対応は少し心配だ（前面から給紙し前面から排紙するためプリンタ内部で曲げられるため）。またL判より小さな名刺サイズなどには対応しないのも残念である。一方で前面給紙トレイを2段とすることで、L判用紙やハガキなどとA4用紙が同時にセットできるようになり、利便性は確保されている。一方のPIXUS MG8130は背面からも給紙できるため、厚紙などへの対応も問題ない他、名刺サイズにも対応する。ただし、本体の薄型化のために、前面給紙は普通紙のみとなっている点は注意が必要だ。普通紙は前面に、写真用紙やはがき、厚紙は背面からという使い方が基本となるだろう。また、両機種とも自動両面印刷に対応しているが、EP-903Aは自動両面印刷機能が不要な場合に、自動両面印刷ユニットを取り外して、奥行きをよりコンパクトにすることができる。 特殊機能を見てみよう。DVD/CDレーベル印刷機能はどちらも備えている。さらにEP-903Aはトレイが内蔵されているため、内蔵トレイの上にディスクを置くだけとより簡単になっている点で、さらに便利である。写真の自動補正機能としては、EP-903Aは「オートフォトファイン！EX」、PIXUS MG8130は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。また最上位機種だけあって、パソコンからの印刷時、ダイレクト印刷時のどちらでも使用できる。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度は両機種とも4800dpiと非常に高い解像度となっているが、EP-903AはCIS方式、PIXUS MG8130はCCD方式となる点が異なる。CCD方式のPIXUS MG8130の方が、分厚い本など浮いてしまう原稿も得意である他、ネガフィルムのスキャンにも対応する。一方EP-903Aは紙原稿のみの対応となる一方で、ADFを内蔵しているため30枚までの原稿を連続読み取り出来る。CCD方式＋ネガフィルム対応するPIXUS MG8130とADFを搭載するEP-903Aという構図である。スキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能は、両機種とも搭載している。 ダイレクト印刷は、SDカード/メモリースティック/コンパクトフラッシュは両機種とも対応しているが、xDピクチャーカードに関してはEP-903Aのみ対応しており、PIXUS MG8130ではアダプタが必要である。また、EP-903AとPIXUS MG8130のどちらもUSBメモリからの印刷にも対応している。さらに、EP-903AではUSBメモリからの印刷だけでなく、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、EP-903AをLAN接続をしている場合、他のパソコンからドライブのデータにアクセスが可能である。つまりEP-903A単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。その他、両機種とも赤外線通信やPictBridgeにも対応している。 ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートは両機種とも対応している。またPIXUS MG8130はCD/DVDレーベルの手書き合成にも対応している。その他、EP-903Aでは塗り絵風の輪郭だけの印刷や、写真を背景に印刷した便箋を始めとする罫線やマス目などの用紙が印刷できる。PIXUS MG8130ではカレンダーや原稿用紙、方眼紙、五線譜などが印刷できる他、証明写真サイズに印刷できる機能を備えている。両機種とも機能は豊富である。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える。またCD/DVDレーベルコピーも両機種とも対応である。また原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-903Aは退色復元、PIXUS MG8130では色あせ補正と名称は異なるが、両機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。両機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップに対応する。さらにPIXUS MG8130では4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-903Aはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」といった機能を備える。一方PIXUS MG8130には厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能や、絵はがき風に自動的にレイアウトしてプリントする「絵はがき風プリント」機能を備える。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。 操作パネルは両機種で大きく異なる。PIXUS MG8130はスキャナの原稿カバー前方に操作パネル、ちょうど真ん中あたりに液晶ディスプレイが配置される。液晶ディスプレイは原稿カバーと平面になるように埋め込まれた形だが、液晶ディスプレイを起こして角度調整が可能である。液晶ディスプレイは3.5型である。一方EP-903Aの操作パネルは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能だ。こちらも液晶ディスプレイは3.5型である。そして、それぞれ操作ボタンにも工夫がなされている。PIXUS MG8130は「インテリジェントタッチシステム」と名付けられた静電式のタッチパネルで、使用できるボタンだけが白く光る。静電式になっているが、従来の「Easy-Scroll Wheel」の流れをくんでホイール操作が可能になっている。一方、EP-903Aも静電式タッチパネルだが、こちらは液晶ディスプレイ部分もタッチパネルになっており、液晶ディスプレイを含む7.8インチ分がタッチパネルである。「ホーム」などのどの場面でも使用するボタンや、左右カーソルや「＋」「−」「OK」「スタート」といった比較的使用頻度の高いボタンは、液晶ディスプレイ外に配置され、使用できるボタンだけがオレンジ色に光る。そして、「コピー」や「スキャン」といった機能の選択や、例えば「どういったコピーを行うか」というような、表示内容がその時々によって大きく変化したり、詳しい説明が必要なボタンに関しては、液晶ディスプレイに表示され、直接タッチする事になる。両機種とも、静電式のタッチパネルを採用し、使用できるキーだけが目立つように工夫され、またタッチパネルと言うことで見た目もスマートである。操作性に関しては両機種とも良好だが、強いて言うならEP-903Aの方がより優れている。液晶ディスプレイ部までタッチパネルとなっているため、全ての選択肢を直接タッチする事で操作できる事に加えて、操作パネルも角度調整可能な点があるためだ。 インタフェースはUSB2.0に加えて、有線/無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANは新たにIEEE802.11nに対応しているため、無線LANで接続した場合も、遅さを感じさせなくなっている点も両機種共通の便利な点だ。 本体サイズを見てみよう。EP-903Aは466×458×198mmで、自動両面ユニットを取り外すと466×385×198mmとなる。一方PIXUS MG8130は470×392×199mmである。ちょうどEP-903Aの自動両面印刷ユニット非装着時のサイズとPIXUS MG8130のサイズがほぼ同じである。PIXUS MG8130は自動両面印刷機能が搭載されていてこのサイズなので、自動両面印刷を使うならPIXUS MG8130の方がコンパクトである。しかし奥行きさえ確保できるなら、見た目のサイズはEP-903Aの方が小さい。EP-903Aの高さはADFの最も高くなった部分であり、本体の両端にいくほど低くなっているのに対してPIXUS MG8130の高さは、ほぼ全体がこの高さになっているためである。また、EP-903Aは給紙トレイが前面のみであるため、2種類の用紙をセットしても用紙が見えずにスマートに見える。カタログスペック上のサイズだけでなく実際に店頭で一度確認していただきたい。 両機種とも複合機の最上位機種に相応しい機能を備えている。印刷画質や印刷スピード、スキャナの性能、ダイレクト印刷やコピー機能の豊富さなど、両機種とも最高レベルで、差があるとしても小さい物である。その中で大きく異なる点がいくつかあり、そこがEP-903AとPIXUS MG8130のどちらを選ぶか決める部分となるだろう。まず前面給紙のみでスッキリしたEP-903Aか、背面給紙も行える安心のPIXUS MG8130かという事がある。またスキャナ部で、CCDタイプでネガフィルムのスキャンも出来る点に惹かれるならPIXUS MG8130、ADF機能に惹かれるならEP-903Aという選び方もある。また操作パネルにも違いがあるため、どちらが使いやすく感じるかという点も重要だろう。そのためにも一度店頭で触って決めていただきたい。 （H.Intel） 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/   | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
