2010年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2010年9月20日公開・10月21日追記)
2010年9月、エプソンとキャノンからプリンタの新機種が多数発表された。毎年恒例の年賀状の時期に合わせた新製品発表である。そこで、今年の傾向、そして両メーカーの傾向を検証した上で、複合機、FAX機能付き複合機、単機能プリンタ、コンパクトプリンタの4種類を価格帯別に比較していく。各比較は、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。
ここのところ、印刷画質やスキャン性能などは十分な域に達したためか毎年の変化が少なくなってきていたが、今年もエプソン、キャノン共に変化はない。最上位機種を見るとエプソンが6色構成で1.5plインク滴のAdvanced MSDTで解像度が5760×1440dpi、キャノンも6色構成で1plインク滴の3サイズドロップレットで解像度が9600×2400dpiとなっており、下位機種ほど色数が少なくなり、インク滴が大きくなっていく。スキャナも最高が4800dpiで、エプソンは全機種がCIS方式、キャノンは最上位のみCCD方式でフィルムスキャン対応というのも変化がない。また、下位モデルの底上げもほとんど行われておらず、複合機で見るとエプソンが4色構成で4plのインク滴で解像度が5760×1440dpi、キャノンが4色構成で2plのインク滴で解像度が4800×1200dpiである。これは昨年末と変わってない。 ただし今回は各社デザインと操作性に重点を置いている。エプソンは従来より上位機種を中心に前面給紙のみのすっきりしたデザインとし、本体サイズも小型化、本体カラーも工夫することでパソコンの周辺機器らしさを減らし、リビング合うデザインとしてきた。今回もそれを継続しつつ操作性を向上させている。従来はFAX付きとFAX無し複合機のそれぞれ最上位機種のみであった「静電式タッチパネル」と「操作可能なボタンだけ光る」という操作パネルを、上位から2番目と3番目の機種まで拡大し、操作のわかりやすさの向上と、一見してボタンが無いという点でより周辺機器らしさが減らす事に成功している(ただし液晶部分までタッチパネルなのは最上位機種のみ)。また前面に操作パネルを集約し、液晶ディスプレイと操作パネルごと角度調整ができる機能も上位3機種から、さらに下位2機種まで拡大し、液晶ディスプレイの内蔵しない最下位機種を除いて、すべてこの方式となった。 一方キャノンは、去年まではどうしてもプリンタらしいデザインであったが、2010年末モデルでは色をシルバーから鏡面仕上げのブラックとし、家電ライクなカラーとなった。これは継続販売の機種を除き、2010年末モデルは下位機種まで全てこのカラーとなっている。また、従来はボタンとホイールが並び、使用しないときは液晶ディスプレイ面を閉じてふたをする方式だったが、2010年末モデルでは、エプソンと同じ静電式のセンサーによるボタンと、使用できるボタンのみLEDで光るという方式がとられている。本体カラーとセンサー式のボタンのおかげで、だいぶリビングにもマッチしやすいデザインとなっている。また、使えないボタンは光っていないので、操作もわかりやすくなっている。ただしこのデザインは上位2モデルで、中位2モデルは従来のホイール+ボタン方式、下位2モデルはボタンのみとなっている。 そのほか、両メーカーに共通することとして、2010年末に発売された機種で無線LANに対応している機種は、軒並みIEEE802.11nに新たに対応している事が挙げられる。これで無線LAN接続時にも画像データのプリントやスキャンが高速に行える様になるだろう。ただし両メーカーともLAN接続機能を搭載した機種がより下位機種に広がったという訳ではない。 機種としては、エプソンはFAX付き複合機が2機種、複合機が6機種、A4単機能機が4機種、A3ノビ単機能機が4機種、コンパクト機が3機種となる。一方キャノンはFAX付き複合機が3機種、複合機が6機種、A4単機能機が2機種、A3ノビ以上の単機能機が4機種、モバイル機が1機種となる。2009年末と比べるとエプソンは機種数に変化はなく、キャノンはFAX付き複合機は1機種増えた形となる。エプソンはFAX付き複合機の1機種、複合機の5機種が2010年末の新機種で、FAX付き複合機のもう1機種も2010年2月に新機種に切り替わっている。複合機で継続販売なのは最下位機種の1機種だけである。コンパクト機も3機種中2機種が2010年末の新機種である。一方単機能機はA4単機能機の1機種のみが新機種で、A4単機能機の残り3機種とA3ノビ単機能機4機種は継続販売となる。エプソンは完全に複合機とコンパクト機がラインナップの中心となっている。一方のキャノンも、FAX付き複合機の3機種中1機種は継続販売だが、1機種は2010年2月にモデルチェンジ、1機種は同日に新たに追加された下位モデルである。複合機も6機種中5機種は2010年末の新モデルである。一方のA4単機能機は2機種とも新機種になっているものの大きな変化はなく、A3ノビ以上の単機能機は4機種とも継続販売、モバイル機も継続販売とこちらも複合機がラインナップの中心である。 エプソン、キャノン共におもしろいのは、複合機の上位から2番目の機種、つまり一番の売れ筋の機種の本体カラーが2色展開になっていることである。これまでコンパクトプリンタではカラーバリエーションがあったが、複合機は各機種1色であった。両メーカーとも、機種によって本体カラーが異なる事はあったが、同じ機種で本体カラーが選べるのは珍しいと言える。ちなみにエプソンはラインナップの上位機種の本体カラーがブラックで下位機種がホワイトだが、EP-803Aに限っては上位機種ながらホワイトモデルが選べる形に、キャノンは2010年末の新機種では本体カラーは全てブラックになっているが、PIXUS MG6130に限っては昨年までの本体カラーであるシルバーが選択できるようになっている。
今年のエプソンのラインナップは去年と比べてどのようになっているか、まずは見てみよう。
エプソンのラインナップ全体では、前述のような操作パネル関係の変更点や、無線LANのIEEE802.11nの対応以外に大きな変化として、オプション扱いだった自動両面印刷機能が標準搭載となった事が挙げられる。これまでは複合機のEP-902AとEP-802A、FAX付き複合機のEP-901Fの3機種のみが対応で、しかもオプションの自動両面印刷ユニットが必要であったが、2010年末時点では、複合機のEP-903A、EP-803Aに加え下位モデルのEP-503A、FAX付き複合機のEP-903F、単機能機のPX-203の5機種が対応しており、しかもEP-803A以外は標準搭載となっている。また、EP-903F、EP-903A、EP-803A、EP-703Aの染料インク搭載の複合機では、従来のインクに加えて小容量インクが選べるようになっているのがおもしろいところである。印刷コストは標準タイプと比べると30%ほど高くなるが、たまにしか印刷しない人は、インクを使い切る前にインクが固まってしまったりと使用できなくなることがあるため、そういった人には小容量インクは便利である。注意点として、2010年モデルより従来の機種が備えていた、メモリカードからのダイレクト印刷時に動画から1シーンまたは複数のシーンを写真として印刷する「動画から印刷」機能、およびコピー時に16枚の用紙に分割して印刷し、後でくっつけることで、大きなポスターを作る「ポスター16」機能が今回より省かれている。また、オプションのBluetoothアダプタが、2010年末モデルからは非対応となっており、対応しているのはそれより以前に発売されてある程度上位機種である、PX-602FとE-600のみとなる。これらは注意が必要である。 まずは複合機のラインナップを見てみよう。最上位機種のEP-903Aは従来よりタッチパネルを採用していることから、ラインナップ中、もっとも変化が少ない機種ともいえる。印刷画質やスピードスキャン機能などはEP-902Aから変わっていない。それでも、無線LANのIEEE802.11nの対応や自動両面印刷の標準対応などが行われている。また、従来より外付けHDDやUSBメモリに写真をバックアップしたり、それらから印刷できたが、今回からネットワークでつながっているパソコンからデータの共有ができるようになった。つまり簡易的なネットワークハードディスクとして使用できるわけである。写真データを入れておけばEP-903A単体でバックアップやダイレクトに印刷が行え、さらにパソコンから写真を見て楽しめるわけである。このように確実に機能アップしている。EP-803Aは操作パネルがボタン式から、使用できるボタンだけLEDが光る静電式のタッチパネルに変更され、操作性がアップしている。またホワイトモデルが用意されているのも特徴だ。一方プリント画質やスピード、その他の機能や、スキャナの機能は前モデルEP-802Aから変化していない。自動両面印刷もオプションのままである。EP-903A同様、外部機器共有機能を搭載していたり、無線LANがIEEE802.11nに対応しているのは同様である。EP-703Aも前モデルEP-702Aと比べると操作パネルが変更されている。しかし、プリンタ、スキャナ、ダイレクト印刷機能に変更はなく、EP-703Aは外部機器共有機能や無線LAN接続機能が非搭載であることから、操作面の変更がほとんどとなる。PX-503Aは前モデルからもっとも大きく変わった機種だろう。前モデルのPX-502Aは、本体上面の左寄りに操作パネルが並んでいるデザインだったが、PX-503Aでは本体カラーこそ下位モデルのホワイトとなっているが、デザインはむしろEP-703AやEP-803Aに近くなった。前面に液晶ディスプレイと操作パネルを配し、操作パネルごと角度調整が可能である。また、EP-903AやEP-803Aのような2段トレイにはなっていないが、前面給紙に対応しているなど、かなりスペックアップしている。また、普通紙のみだが自動両面印刷にも標準で対応している。だだし印刷画質やスピード、スキャナの機能、ダイレクト印刷の機能は変更されていない。無線LANがIEEE802.11n対応になったくらいだろう。外見や操作性の変化ほどハード面は変化していない。PX-402Aは継続販売モデルとなる。 続いてFAX付き複合機である。上位モデルのEP-903FはEP-903AにFAX機能をプラスした製品であり、それ以外に違いはない。ただ、昨年末に複合機のEP-901Aは新機種のEP-902Aに移行したのに対して、FAX付き複合機の上位モデルはEP-901AにFAX機能をプラスしたEP-901Fが継続販売となっていたため、一気に2世代の進化となる。そのため、EP-901Fと比べると、外部機器共有機能の搭載やIEEE802.11nへの対応以外に、他機種は昨年対応していた「オートフォトファイン!EX」への「ノイズ除去・美肌補正」機能の追加や「ナチュラルフェイス」機能に体も細く見せる「スリム補正」機能の搭載、また手書き合成シートの文字飾りが追加され、最大100枚まで一度に印刷できるようになった他、従来はコピー時にしか使用できなかった塗り絵機能がメモリカードからも可能になった点も進化した点となる。FAX付き複合機の下位モデルPX-602Fは前モデルPX-601Fのマイナーバージョンアップ製品だが、新たにPC-FAXに対応したほか、トップメニューが1画面で全アイコンが表示されるようになり、操作性を向上している。 A3ノビ対応機は4機種とも継続販売である。また、A4対応機もPX-203を除いて継続販売である。一方、新機種が発売されたPX-203は大きな変化を見せている。機能的には複合機のPX-503Aのプリント機能そのままといったイメージである。そのため、前モデルPX-201と比べると、給紙が背面から前面に変更され、普通紙のみだが自動両面印刷にも対応している。また無線LANもIEEE802.11nに対応した。本体カラーもブラックからホワイトに変更されている。PX-201と比べると印刷画質やスピードに変化はないものの、大きくスペックアップした機種と言えるだろう。 コンパクトプリンタは大きな変化はないものの、3機種中2機種が新機種へと移行している。E-810はE-800とハード面は同一となる。一方ソフトウェア面は細かな点で強化されている。例えば写真を複数枚選ぶと、枚数に応じて自動的1枚にレイアウトされる「思い出の一枚アルバム印刷」機能が搭載された。写真に文字だけを入れて印刷できるため、写真川柳や俳句、メッセージフォトを作成できる他、スナップ写真に場所や思い出について書いておくことで、後で写真を見た時に楽しめるようにもできる。その他、スライドショーテーマなどの追加や、印刷プレビュー拡大機能の搭載、操作ガイドの拡充なども行われ、使い勝手も向上している。中位機種のE-600は継続販売となる。下位機種のE-340は、E-330Sとほぼ同一だが、天板の液晶モニタ用の窓が廃止されている。本体カラーがシルバーとピンクの2色展開となる。
今年のラインナップが去年と比べてどのようになっているか、まずは見てみよう。
キャノンの複合機は去年までPIXUS MPの後に3桁の数字という品番だったが、最大の990まで使用してしまったため、今年より4桁となる。またPIXUSの後のアルファベット2文字は、MPからMGへと変化している。4桁のうち上2桁がラインナップの上位・下位を表しており、下2桁は発売日によって同一のものがつけられている様である。2010年末モデルは下2桁は30である。ただし最下位機種のPIXUS MP280のみ従来の品番の法則に則っている。これは下から2番目のPIXUS MP490が継続販売であるため、仮にPIXUS MP280ではなくPIXUS MG2130のような4桁にすると、上位機種が490で下位機種が2130というような番号の大小に逆転現象が起きてしまうため、混乱を防ぐためではないかと思われる。また単機能プリンタは元々4桁の品番だったが、同時に発売されるPIXUS iP4830は、下2桁が30になり複合機と統一されている。 それでは複合機から見てみよう。最上位機種PIXUS MG8130は前述のようにデザインや操作パネルが大きく変更されているがプリンタ部やスキャナ部、ダイレクト印刷部の機能は変更されていない。無線LANがIEEE802.11nに対応しているのが大きな変更点と言える。操作パネルは使用できるキーのLEDだけが光る「インテリジェントタッチシステム」を採用し操作性がアップしている一方、液晶パネルはPIXUS MP990の3.8型から3.5型へとやや小さくなっている。ただしメニュー内容を一新し、よりグラフィカルなアイコンを採用してるほか、フォントも変更し、文字サイズも若干大きくすることで視認性を高めているため、それほど小さくなったという印象はないだろう。PIXUS MG6130はもっとも変化が大きな機種である。もちろん本体デザインや「インテリジェントタッチシステム」の採用、液晶の表示内容の一新といった変更点もあるが、プリンタ部が特に強化されている。前機種のPIXUS MP640ではブラック2種(顔料と染料)にシアン、マゼンダ、イエローの5色構成で、下位モデルと同一であったが、PIXUS MG6130では上位機種と同じグレーインクを追加した6色構成となっている。ノズル数も同一であるため、プリント部に関してはPIXUS MG8130と同一になった。その他スキャナ部やダイレクト印刷部はPIXUS MP640から変化していない。無線LANはIEEE802.11nに対応している。PIXUS MG5230も前機種PIXUS MP560と比べるとプリンタ部が強化されている。インク構成は同一ながら、ノズル数が2368ノズルから4608ノズルに増えたことで、L版写真縁なし印刷が1枚33秒から、上位機種と同じ17秒に高速化されている。またCD/DVDレーベル印刷機能も搭載され上位機種と同等になった。その他の機能やプリント画質、スキャナ部やダイレクト印刷部の機能は変わっていない。デザインは上位機種と同じく変更されているものの、操作パネルはPIXUS MP560と同じ本体上面の右寄りに配置され、「インテリジェントタッチシステム」ではなくホイールとボタンの組み合わせとなる。液晶は2.0型から2.4型に大型化しているほか、上位機種と同じく表示内容が一新されているため、操作性はやや向上している。またIEEE802.11nの無線LANに対応している。PIXUS MG5130はPIXUS MP550からの変更点は大きくはないものの、本体デザインが変更されている。それに伴って、自動両面印刷機能を搭載した。一方でスキャナ解像度は2400dpiから1200dpiへとダウンしている。PIXUS MG5230とは異なり、こちらは印刷スピードもPIXUS MP550から変わっておらず、印刷画質や機能、スキャナ部やダイレクト印刷部の機能も、前述の自動両面印刷とスキャナ解像度以外は同一である。操作パネルはPIXUS MG5230と同じく上面右側にホイールとボタン式のものが搭載される。液晶パネルは2.4型に大型化し、表示内容も一新されている。PIXUS MP490は継続販売である。PIXUS MP280は液晶パネルやメモリカードスロットを搭載しない機種である。前機種のPIXUS MP270と比べると本体カラーは上位機種と同じくブラックになっているが、デザインは同一で、機能面でも変化はない。印刷スピードがL版写真縁なしで38秒から37秒になっているが誤差程度のものである。 FAX付き複合機は、最上位機種のPIXUS MX7600は継続販売だが、2010年2月にPIXUS MX860は新機種のPIXUS MX870になり、同時に下位機種のPIXUS MX350が追加されている。PIXUS MX870はPIXUS MX860と本体デザインは同一だが、操作パネルが一新され操作性が向上している。ハード面では大きくは変わっていないが、ダイレクト印刷時の写真補正機能が、「自動写真補正」から他機種と同じ「自動写真補正II」に変更されたほか、USBメモリからの印刷にも対応した。また、受信したFAXをメモリカードにPDF形式で保存する機能や、FAX情報をパソコン上から編集できる機能も搭載しており使い勝手が向上している。無線LANは発売時期が2010年末では無いためIEEE802.11nには非対応だが、PIXUS MX860と比べて接続設定にAOSSが使用できるようになり便利になった。下位機種のPIXUS MX350はPIXUS MX870に近い本体デザインだが、プリンタ部は染料ブラックインクが省略され、インク滴も2plになる他、前面給紙や自動両面印刷機能が省かれており、スキャナ部も解像度が低くなっており、ADFも片面スキャンになるなど、基本スペックがかなり抑えられている。 A3ノビ以上に対応した単機能プリンタは4機種とも継続販売である。A4単機能プリンタは上位機種が2010年末に、下位機種が2010年頭に新機種へ移行している。上位機種PIXUS iP4830はPIXUS iP4700の後継機種だが、スペック面では大きな変更が無く、付属のソフトウェアの変更程度となっている。下位機種のPIXUS iP2700は前機種のPIXUS iP2600と比べて印刷画質や速度などの変更はないが、さらに高さを抑えたコンパクトデザインになっているほか、インタフェイスがUSB1.1からUSB2.0に変更されている。一方排紙トレイが省略されるなど、さらにコストダウンが計られている。
各機種を詳しく見てみよう。価格帯別の比較、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。なお価格は、このページの作成時点(2010年9月)のものとなる。 (H.Intel) 今回の関連メーカー エプソンホームページ http://www.epson.jp/ キャノンホームページ http://canon.jp/ |