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2010年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2010年9月20日公開・10月2日追記)
1万円台前半以下となると、複合機としてはかなり安い部類になる。しかもキャノンのPIXUS MP490は11,980円だが、残りの2機種エプソンのPX-402AとキャノンのPIXUS MP280に至っては9千円を切る価格になっており、単機能プリンタなみの価格である。この価格だと、かなり機能が省かれているが、エプソンとキャノンで省く機能に違いがある。どういった機能が搭載され、どのような差があるのだろうか。また、3千円高いPIXUS MP490にはそれだけの差があるのだろうか。
まずプリンタ部から見てみよう。PX-402Aは全色顔料インクのつよインク200Xを採用する。4色インクで4plのインク滴と上位機種より劣る事から、ある程度粒状感が出てしまう。とはいえ、上位機種と比較しなければ十分綺麗な画質であるため、写真印刷なども十分に行えるレベルである。しかし顔料インクであるため、写真用紙への印刷は行えるものの光沢感がかなり薄くなりポストカードのような雰囲気となる。一方でモノクロ、カラー問わず普通紙への印刷画質は染料インクに比べて高く、耐水性も高い。濡れた手で触ったりマーカーを引いたりしてもにじまないのがメリットである。写真印刷も出来なくはないが、普通紙へのプリントやコピー、年賀状印刷等に特化している機種と言える。一方、PIXUS MP490とPIXUS MP280のプリント機能は同等であり、カラー3色が染料インク、ブラックが顔料インクとなる。一見すると上位モデルと似た構成だが、ブラックの染料インクが搭載されていないため、写真印刷時にブラックインクが使用できず、カラー3色を混ぜて黒に近い色にするため、どうしても黒のメリハリが弱くなってしまう。またインク滴が2plと大きくなっているため、PX-402ほどではないものの粒状感がある。インク滴はPX-402より小さいがブラックインクが使えないため、画質面でどちらが上とは言いにくいレベルである。ただし、染料インクで写真印刷が出来るため、光沢感の失われない印刷が可能なため写真印刷にはPIXUS MP490/MP280が有利だ。一方、ブラックの顔料インクのおかげで普通紙への印刷やコピーはモノクロのみメリハリがある印刷となるが、顔料インクはブラックのみとなるため、普通紙印刷の画質や耐水性の面ではPX-402Aの方が上である。カートリッジ構成も両機種で異なる。PX-402Aは上位モデルと同じく各色独立だが、PIXUS MP490/MP280はカラー3色が一体となるため、3色の内どれか1色でも無くなると他の色が無駄になるためコスト面では不利だ。 3機種とも背面給紙のみとなる。前面給紙や自動両面印刷、CD/DVDレーベル印刷などの付加機能は省略されている。対応する用紙は、PX-402AはL判以上、PIXUS MP490/MP280は名刺サイズ以上となる。写真補正機能としてPX-402Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MP490/MP280は「自動写真補正II」をそれぞれ搭載しており、高いレベルで自動的に補正をしてくれるが、3機種ともパソコンからの印刷時しか使用できない点が上位機種との差である。印刷速度はL判縁なしでPX-402Aが144秒、PIXUS MP490/MP280が37秒と、上位機種より遅くなっているのは当たり前として、PX-402AとPIXUS MP490/MP280の間でも大きな差がある。写真や年賀状など印刷枚数が多い場合は結構な差になるかもしれない。ただし、PX-402Aはカラーのノズル数が極端に少なく、ブラックのノズル数はまだ多いため、モノクロ印刷に限ってはPXISU MP490/MP280に近い印刷速度になる。 続いてスキャナ部である。PX-402Aは600dpi、PIXUS MP490/MP280は1200dpiのCIS方式となる。CIS方式であるため分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手である。また上位機種と比べると解像度は低めだが、紙原稿のスキャンと言う事を考えると1200dpiでも写真などを高詳細にスキャンするにも十分な解像度であり、一般的なスキャンやコピーなら600dpiでも問題はない。もちろんADFやネガスキャン機能は搭載しないが、上位機種との解像度の数値の差ほど使い勝手が悪いわけではない。ただし、600dpiというのは少しでもきれいにスキャンしたいと思ったときには物足りなく感じる場合もあると思われるため、スキャン機能を少しでも重視するなら、1200dpiに対応したPIXUS MP490/280の方が有利と言える。またスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能は、価格が高いPIXUS MP490のみ搭載している。 ダイレクト印刷機能は、1万円を切るPX-402AとPIXUS MP280はメモリカードスロット自体が搭載されておらず、従ってメモリカードからのダイレクト印刷も行えない。この2機種は液晶ディスプレイが搭載されていないため、メモリカードスロットが搭載されていても写真を選択することが困難であるため、仕方がないだろう。唯一PIXUS MP470のみメモリカードからのダイレクト印刷に対応しており、SDカード/メモリースティック/コンパクトフラッシュに対応している。xDピクチャーカードには対応していない。またUSBメモリからの印刷にも対応している。さらに、PIXUS MP490は原稿用紙、方眼紙、楽譜などが印刷できる「フォーム印刷」機能にも対応しているなど、3千円の価格差だけあって機能は他の2機種より豊富だ。ただし、PictBridgeに関しては、PIXUS MP280のみ対応しており、上位機種のPIXUS MP490は対応していない点は注意が必要である。 この価格となると、コピー機能もかなり簡略化されている。コピー機能と操作パネルを同時に見ていこう。一番価格の高いPIXUS MP470はこの3機種では唯一液晶ディスプレイを搭載している。操作パネルは本体正面の右側に縦長に搭載され、上位機種とは異なりホイール機能はないボタン式となる。液晶ディスプレイは上位モデルより小さな1.8型であり、視認性はかなり悪いが、搭載されているのと搭載されていないのでは大きな差があるとも言える。また角度調整ができるほか、液晶ディスプレイ部を閉じることで操作パネルにふたをすることができるのは便利である。液晶ディスプレイを見ながら設定が可能であるため、コピー機能使用時には様々な設定が行えるが、上位機種よりは機能が制限されている。上位機種と同じ最小25%、最大400%の拡大縮小コピーが可能だが、上位機種のような1%刻みで倍率設定は行えず、B5からA4というような定型変倍のみである。また濃度調整もオートのみとなる。枚数は1〜99枚で設定可能で、対応用紙もA4、A5、B5、はがき、L判、2L判、KGサイズ、名刺と各サイズに対応している点は上位機種と同等である。 一方、PX-402Aは前述のように液晶ディスプレイが搭載されていないだけでなく、LEDランプによる用紙選択などもないシンプルなものだ。操作パネルはスキャナ部の左側に並んでいるが、存在するボタンは「電源」「ストップ」「スキャン」「モノクロコピー」「カラーコピー」のみとなる。そのため、対応している用紙がA4普通紙のみとなり、B5やハガキ、L判サイズなどにコピーできない他、用紙も写真用紙やファイン紙などにもコピーできない。拡大縮小機能も、等倍と用紙サイズを認識してA4サイズへ自動拡大することしかできない。コピー枚数も1枚又は20枚となる。ちなみにLEDランプによって等倍か自動拡大か、また1枚か20枚かを選ぶ事すらできない。等倍の場合はモノクロ又はカラーの「コピー」ボタンを押すが、このボタンを3秒以上押すと自動拡大となる。また「スキャン」ボタンを押しながら「コピー」ボタンを押すと20枚コピーとなる。単純に1枚を等倍コピーするだけなら、原稿をセットして「モノクロコピー」又は「カラーコピー」ボタンを押すだけなので非常に簡単だが、一方で自動拡大や20枚コピーをする場合はその方法を覚えておかなければならず、操作性はあまり良くない。ただ、モノクロとカラーでコピー開始のボタンが分かれているのは便利だ。 PIXUS MP280はPX-402Aと同じく液晶ディスプレイこそ無いが、LEDで1桁の数字が表示できる他、使用する用紙をLEDランプで選択出来るようになっているため、PX-402Aよりは分かりやすい。ボタンも「電源」、「+」、「用紙選択」、「メンテナンス」、「自動変倍」、「スキャン」、スタートの「モノクロ」と「カラー」、「ストップ/リセット」とボタン数も多い。対応する用紙もA4普通紙とA4写真用紙、L判写真用紙が使用できる分、PX-402Aより豊富だ。拡大縮小は、等倍と自動拡大のみだが、コピー枚数も1〜9枚又は20枚の指定が可能だ。ボタン数が多い分、見た目は複雑だが、それぞれの機能に合ったボタンが用意される分使いやすい。例えば枚数を指定する場合は「+」ボタンを押すとLEDの数字が増えるため、目的の枚数にすれば良いし、自動拡大する場合は「自動変倍」ボタンを押せばよい。「用紙選択」ボタンを押せば、用紙の書かれた横のLEDランプが順に点灯するので、目的の用紙を選べばよい。そして「モノクロ」又は「カラー」のスタートボタンを押せばコピーが開始される。PX-402Aと同じくモノクロとカラーでコピー開始のボタンが分かれているのは便利だ。 インタフェースは3機種ともUSB接続だが、PIXUS MP490/MP280はUSB2.0と一般的である一方、PX-402AはUSB1.1である。USB2.0をUSB1.1にすることでどの程度コストダウンが計られるのかは不明だが、今では珍しいUSB1.1である。転送速度が遅いため、プリント開始までの時間が遅くなる可能性がある他、高解像度でのスキャン時にも影響が出る可能性がある。本体サイズはPX-402Aが434×327×185mm、PIXUS MP490が450×335×155mm、PIXUS MP280が450×335×153mmとかなりコンパクトである。また液晶ディスプレイを搭載しているPIXUS MP490が液晶ディスプレイを搭載しない2機種と同サイズになっている点はおもしろい。単機能プリンタであるEP-302が450×289×187mm、PIXUS iP4830が431×297×153mmである事を考えると奥行き以外はほぼ同サイズであり、複合機だからと言って置き場所に困ることはなさそうだ。 この3機種の中でおすすめと言えるのはPIXUS MP490である。液晶ディスプレイやメモリカードからのダイレクト印刷機能が搭載されているほか、コピー機能も豊富であるなど、3千円の価格差以上に機能が豊富である。また複合機でありながら液晶ディスプレイが搭載されていない場合、操作性が大きく損なわれるため、PIXUS MP490の使いやすさは有利である。一般的にはPIXUS MP490が良いだろう。しかし、少しでも安価に購入したいという場合はPX-402AやPIXUS MP280という選択肢もある。メモリカードからのダイレクト印刷は行わず、コピーもあまり行わない、つまりプリント機能とスキャン機能を主にパソコンから利用する場合は、この2機種でも問題ない。PX-402AとPIXUS MP280のどちらが良いかと言うことだが、これは何を印刷するかによって異なる。普通紙への印刷や、年賀状印刷が主で写真印刷を行わないなら、顔料インクのPX-402Aがおすすめと言える。一方、写真印刷を行う場合は光沢感のある写真が印刷できるPIXUS MP280がおすすめと言える。何を目的に購入するのかによって、機種は自然と決まるだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ ![]() ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||