小ネタ集
2010年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2010年9月20日公開・10月21日追記)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。

6万円弱のA3単機能プリンタ
 
 A3用紙に対応した単機能プリンタの中で6万円弱の2機種を比較してみよう。エプソンはPX-G5300、キャノンはPIXUS Pro9000 MarkIIとなる。8万円台前後の機種のように完全にプロ向けという製品ではないが、PX-G5300は「エプソンプロセレクション」にラインナップされ、PIXUS Pro9000 MarkIIは型番に「Pro」の文字が入っている通り、両機種ともプロ向けの製品にラインナップされている。実際、価格はPX-G5300が59,800円、PIXUS Pro9000 MarkIIは59,980円とほぼ同等だが、複合機の最上位機種よりも高価な製品である。それではこの2機種にはどのような違いがあるのだろうか。

メーカ
エプソン
キャノン
品番
PX-G5300
PIXUS Pro9000 MarkII
製品画像
予想実売価格
59,800円
59,980円
プリンタ部
インク
色数
7色+透明
10色
インク構成
フォトブラック
マットブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
レッド
オレンジ
グロスオプティマイザ
ブラック
シアン
フォトシアン
マゼンタ
フォトマゼンタ
イエロー
グリーン
レッド
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
染料
(ChromaLife100)
ノズル数
1440ノズル
6144ノズル
全色:各180ノズル
全色:各768ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(MSDT)
2pl
最大解像度
5760×1440dpi
4800×2400dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A3ノビ
ロール紙
L判〜A3ノビ
半切
1.2mm厚紙
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(120枚)
○(150枚)
前面
ファインアート紙(手差し)
1.2mm厚紙・半切用紙(手差し)
その他
ロール紙(A3ノビ幅まで)
自動両面印刷
特殊機能
DVD/CDレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
パソコンから印刷時のみ
○(自動写真補正II)
パソコンから印刷時のみ
特定インク切れ時印刷
PictBridge
メーカー公称印刷速度
L判写真(縁なし)
38秒
21秒
A4普通紙
カラー
N/A
N/A
モノクロ
N/A
N/A
インターフェイス
USB他
USB2.0×2
USB2.0×1
無線LAN
有線LAN
外形寸法(横×奥×高)
616×322×214mm
660×354×192mm
重量
12.2kg
14.4kg

 まずはインクを見てみよう。PX-G5300は顔料インクの「つよインク200X」を採用している。といっても、複合機や単機能プリンタの下位機種が採用している「つよインク200X」とは異なり、同じ顔料インクでも上位機種とPX-5600の搭載している「K3インク」とも異なる。PX-G5300が搭載しているのは別名「PX-Gインク」と呼ばれているインクである。PX-Gインクは、「光沢顔料」と紹介されており、顔料を高密度化透明樹脂でコーティングしており、またインクの少ない所にはグロスオプティマイザと呼ばれる高密度化透明樹脂だけを打つことでプリント表面を均一になり、その結果光の乱反射が抑えられるため美しい光沢感が出るという。もちろん顔料インクのメリットである、普通紙へシャープな印刷が可能である点や、高い耐水性はそのままであり、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないというメリットがある。また顔料インクは色安定性が高く、染料インクのように印刷直後と乾いた後で色が変化する事が無く、印刷直後に色を確認できるため、何度も印刷して色調節をする場合にも便利である。つまり、顔料インクのメリットをそのままに、顔料インクでは光沢感が薄れポストカードのようなくすんだ光沢になってしまう写真用紙への印刷でも、光沢感のある印刷が行えるのである。アルバム保存なら200年、耐光性80年、耐オゾン性35年と、耐保存性も非常に高い。色数は、前述のグロスオプティマイザ以外に7色となる。構成はフォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジとなり、ライトシアンやライトマゼンダがない一方でレッドやオレンジというインクが搭載されている。オレンジインクは黄色やオレンジ色周辺の色再現範囲が高まるため、肌の色表現が良くなると言う。またイエローはただのイエローではなくややグリーン寄りのものを、マゼンダもややブルー寄りのものを、シアンはやや明るめとなっており、搭載するインクの色は出来るだけ色再現性が高まるよう細かく調整されている。さらに、上位機種のPX-5600の搭載する、論理的色変換システム「LCCS」を搭載しており、光源依存性(カラーインコンスタンシー)、階調性、粒状性、色再現性を数式アルゴリズムを用いた論理的制御でバランス良く最適化する事で、全体的な写真データのクオリティーを向上させている。写真をできるたけ美しく印刷できるよう工夫されていることが分かる。
 一方のPIXUS Pro9000 MarkIIは上位機種PIXUS Pro9500 MarkIIと異なり染料インクの「ChromaLife100」を採用している。これは複合機などが採用している「ChromaLife100+」の一世代前のインクで、アルバム保存100年、耐光性30年、耐ガス性10年となる。十分なレベルであると言えるが、PX-G5300と比べるとやや劣ってしまう。一方、色数は8色と、キャノンの複合機より多くなっている。構成はブラック、シアン、フォトシアン、マゼンタ、フォトマゼンタ、イエロー、グリーン、レッドである。6色プリンタの基本構成にグリーンとレッドインクを追加したようなインク構成である。この2色のインクの分、色再現性が高くなっているという。また染料インクであるため、写真用紙に印刷した時に光沢感がしっかり出るのはメリットである。一方で、耐水性は弱く、普通紙への印刷では顔料インクよりもやや滲んでしまうためシャープさは薄くなってしまう。また、複合機のように、ブラックだけ顔料と染料の両方を搭載していると言う事もなく、8色全て染料インクである。つまり写真印刷に特化したプリンタと言える。
 インク滴はPX-G5300が1.5pl、PIXUS Pro9000 MarkIIは2plとなっている。両メーカーの上位機種のPX-5600とPIXUS Pro9500 MarkIIは共に3plであるため、下位機種ながらインク滴は小さくなっている。また、PX-G5300の1.5plは最小レベルであり、色数が多いこともあって粒状感は皆無と言える。一方のPIXUS Pro9000 MarkIIの2plもPX-G5300よりはやや大きいものの、十分小さく、色数も多いことから粒状感はほぼ感じないだろう。両機種ともA3などの大判印刷だけでなく、L判などの写真を近くで見ても美しい写真高画質を得ることが出来る点では上位機種より便利である。
 対応する用紙は背面給紙からは最大A3ノビまでとなるのは同等だ。一方最小サイズはPIXUS Pro9500 MarkIIはL判サイズであるが、PX-G5300はカード・名刺サイズに対応している。顔料インクのメリットを生かして、名刺を印刷する事も出来るため便利だろう。背面給紙以外では、PIXUS Pro9000 MarkIIは上位機種のPIXUS Pro9500 MarkIIと同じ本体を採用しているため、1.2mm厚の厚紙に対応している。前面から1枚ずつの手差しとなるが、通常のプリンタ用の「超厚口」をうたっているものでも0.3mm強であるため、4倍の厚みの用紙に対応しているのはメリットである。また、同じく前面から1枚ずつ手差しとなるが、A3ノビ(329x483mm)より幅が広い、半切(356mm×432mm)に対応している。半切は銀塩写真の印画紙のサイズであるため、額などの種類が多いというメリットがある。一方PX-G5300も、上位機種のPX-5600と同じ本体であるものの、前面からの手差し部分がCD/DVDレーベル印刷用のトレイの幅に固定されており、厚紙の印刷には対応していない。ただし、ロール紙には上位機種と同じく対応している。純正用紙に長さが10mのロール紙があるため、幅はA3ノビの329mmとなるが、長さは3276.7mm(Windowsの場合。Macでは1117.6mm)まで対応している(アプリケーションによっては更に長い用紙にも対応できる)。そのため、パノラマ写真の印刷も可能になっている。名刺・カードサイズとロール紙に対応するPX-G5300と厚紙と半切に対応するPIXUS Pro9000 MarkIIという図式である。
 その他の機能としてCD/DVDレーベル印刷機能は両機種とも備えている。また手軽に写真印刷が行えるよう、写真の自動補正機能としてPX-G5300は「オートフォトファインEX」を、PIXUS Pro9000 MarkIIは「自動写真補正II」を備えている。「オートフォトファインEX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる。一方「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる。両機種とも高精度で自動補正をしてくれるわけだ。また、PictBridgeに対応しているため、PictBridge対応デジタルカメラとプリンタを直接繋いで、デジタルカメラの液晶画面でプリント操作が行える。ただし、PictBridgeを使用した印刷では、前述の写真の補正機能は働かない点は注意が必要だ。また自動両面印刷機能は両機種とも備えていない。
 印刷速度はL判縁なしで、PX-G5300が38秒、PIXUS Pro9000 MarkIIが21秒となっている。PX-G5300は上位機種のPX-5600と全く同じ速度である一方、PIXUS Pro9000 MarkIIは上位機種PIXUS Pro9500 MarkIIから大幅に高速化しており印刷速度が逆転している。速いに越したことはないが、PX-G5300の38秒でもそれなりに高速なので、数十枚のスナップ写真の印刷や年賀状の印刷でも問題なく行えるだろう。
 インタフェースは両機種ともUSB2.0となり、有線LANや無線LANには対応していない。ただし、PX-G5300はUSB2.0ポートを2基の備えているため、パソコンを2台同時に接続できるのは珍しい所だ。本体サイズは、高さこそPIXUS Pro9000 MarkIIの方が小さいが、幅と奥行きはPIXUS Pro9000 MarkIIの方が大きく、設置面積はPX-G5300の方が小さい。奥行きはさておき、幅はPIXUS Pro9000 MarkIIの方が幅の大きな用紙に対応しているため、仕方がないと言えるだろう。また、PIXUS Pro9000 MarkIIは前面給紙による厚紙印刷に対応しているが、厚紙の場合は内部で曲げることが出来ないため、用紙の長さに近い長さが一度後方に飛び出すことになる点は注意が必要だ。マニュアルでは後方に400mm以上のスペースを確保する必要があると書かれている。また、PX-5600のロール紙も本体後部に取り付けるため、スペースが必要だ。

 この2機種から選ぶ時、一番の違いは顔料インクか染料インクかと言う事になる。PX-G5300の顔料インクは写真用紙へ光沢感のある印刷が行えるため、耐水性や普通紙への印刷画質を考えるとPX-G5300が有利である。写真も文章も綺麗に印刷したい人はPX-G5300がオススメだ。ただ、光沢感の特に強い写真用紙を使った場合、本来の光沢感を出せるのはPIXUS Pro9000 MarkIIである。写真印刷主体ならPIXUS Pro9000 MarkIIでも悪くない。これ以外の違いとして対応用紙の違いがある。 名刺・カードサイズとロール紙の印刷に魅力を感じるならPX-G5300が、厚紙と半切用紙の印刷に魅力を感じるならPIXUS Pro9000 MarkIIという選び方も出来る。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/