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2011年春時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2011年5月22日公開)
1万円台前半の機種は複合機の中ではかなり低価格な部類に入る。この価格帯にエプソンはEP-703AとPIXUS MP493が該当するが、EP-703Aは価格が大きく下がりこの価格帯になったため、ラインナップ上はもう1クラス上の、上から3番目になる。一方、PIXUS MP493は上から5番目の機種となるため、価格差は820円あるが、元々はかなりクラスが異なる製品間の比較となる。
まずプリンタ部から見てみよう。EP-703Aは6色染料インクで、1.5plのインク滴、5760×1440dpiの解像度という点では最上位機種のEP-903Aと同等となっている。そのため非常に高画質であり、写真印刷でも粒状感はほとんど無いと言える。ただし、ノズル数が上位機種と比べると半減しているため、印刷速度がL判縁なし印刷で22秒と遅くなっている。とは言っても毎分3枚というのは十分に高速だ。また給紙は上位機種と異なり背面給紙のみとなる。デザイン上はシンプルではないが、その分厚紙や封筒などへの印刷面では安心と言える。また上位機種ではL判サイズまでだが、EP-703Aでは更に小さなカードや名刺サイズに対応している。一方PIXUS MP493は最上位機種と比べると2色少ない4色構成となる。一つ上位の機種と比べても1色少ないが、これは染料ブラックインクがなくなっている。つまりシアン、マゼンダ、イエローの染料インクと、ブラックの顔料インクの4色構成だ。写真印刷時にブラックインクが使用できず、カラー3色を混ぜて黒に近い色にするため、どうしても黒のメリハリが弱くなってしまう。またEP-703Aと比べると、インク滴が2plと大きくなっている上に、薄い色のインクも無いため、写真画質では大きく劣ってしまう。顔料ブラックインクのおかげで、普通紙へのモノクロ印刷はメリハリのある印刷が行える点はメリットだ。印刷速度もL判縁なし印刷で37秒とEP-703Aの倍近いため、印刷速度でも大きく劣ることになる。給紙はEP-703Aと同じく背面給紙のみとなる。 インクそのものは、EP-703Aは「つよインク200」でありアルバム保存200年、耐光性50年となり、PIXUS MP493は「ChromaLife100+」であり「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」を使用することにより、アルバム保存300年、耐光性40年を実現している(キャノン写真用紙・光沢ではアルバム保存100年)。どちらも十分なレベルである。しかし、EP-703Aは各色独立インクカートリッジとなっており、なくなった色だけ交換できる点が、PXIUS MP493はカラー3色は一体型カートリッジとなっているため、色が偏って使われると無駄が多く出てしまう。写真の自動補正機能も両機種とも備えている。EP-803Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MP493は「自動写真補正II」と名称は違うものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる。またパソコンからの印刷時、ダイレクト印刷時のどちらでも使用できる点も便利である。CD/DVDレーベル印刷に関してはEP-703Aのみ対応している。上位機種と異なりトレイが内蔵されてはいないが、CD/DVDレーベル印刷を行いたいという人はEP-703Aがオススメだ。またこの価格で対応しているのは珍しいと言えるだろう。これらを見ると、プリンタの機能自体はEP-703Aが圧倒的に高性能だ。 続いて、スキャナ部を見てみよう。EP-703AとPIXUS MP493は共に1200dpiのCIS方式となっている。両機種ともADFやネガフィルムのスキャン機能は搭載していない。またCIS方式であるため、分厚い本など原稿が浮いてしまう部分が苦手なのも両機種共通だ。上位機種と比べると解像度が低く見えるが、紙原稿しかスキャンできないため、1200dpiを超える解像度でスキャンすると、たとえL判写真でもファイルサイズが大きくなりすぎ扱いにくい。そのため、実際には最高でも1200dpi程度での利用が一般的であると考えられ、それほど気にするほどのものではない。両機種ともスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているのが便利である。 ダイレクト印刷は、SDカード/メモリースティック/コンパクトフラッシュは両機種とも対応しているが、xDピクチャーカードに関してはEP-703Aのみ対応しており、PIXUS MP493ではアダプタが必要である。またUSBメモリからの印刷にも対応しているのもEP-703Aだけである。さらにEP-703AはメモリカードからUSBメモリへ写真のバックアップが可能である他、USBメモリだけでなく対応の外付けドライブへのバックアップやそれらからの印刷も可能である。PictBridgeや赤外線通信、手書き合成シートもEP-703Aのみの対応となる。PIXUS MP493では、カレンダーや原稿用紙、方眼紙、楽譜などがPIXUS MP493単体で印刷できる機能を備えているが、ダイレクト印刷の機能はEP-703Aが圧倒的に豊富だ。 コピー機能を見てみよう。両機種とも25〜400%の間で拡大縮小が行えるものの、EP-703Aは上位機種と同じく豊富な機能を備えているのに対して、PIXUS MP493はかなり簡易的なものだ。EP-703Aは紙原稿の場合、等倍コピーやオートフィットと呼ばれる自動的に用紙サイズに合わせるコピー、A5からA4といったような固定倍率コピーの他、25〜400%の間で1%刻みで倍率を設定できる。また濃度調整も9段階で可能で、1〜99枚の連続コピーも行える。さらに、CD/DVDを読み取り面に置くだけで、CD/DVDレーベルにコピーも可能である。さらに、原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを一度に行う機能も両機種とも備えている。この際、昔の色あせした写真も自動で補正してくれる「退職復元」機能も備えており、これがなかなか効果が高く、便利である。そのほか、2枚の原稿を1枚の用紙に印刷する「2アップ」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」機能や文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」を備えている。上位機種の備える「塗り絵印刷」「BOOKコピー」機能は省略されているが、かなり機能は豊富で、一般的な使用なら十分すぎるレベルである。一方、PIXUS MP493は紙原稿の場合、等倍と最大(400%)、最小(25%)以外は、A5からA4というような定型変倍か、自動的に用紙サイズに合わせる自動変倍しか使用できず、手動で倍率設定はできない。枚数は1〜99枚が選べるものの、濃度調整は自動で行われるのみだ。厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能は備えているが、写真の焼き増し風コピーや2アップコピーなどの機能は備えておらず、EP-703Aと比べると機能的には寂しいものである。 操作パネルは両機種で大きく異なる。EP-703Aの操作パネルと液晶ディスプレイは上位機種のEP-803Aに近く、本体前面に取り付けられている。そして液晶パネルだけでなく操作パネルごと持ち上げて角度調整が可能である。ただし上位機種のように90度まで持ち上げることはできない。液晶ディスプレイは2.5インチと比較的見やすいサイズとなっている。また操作パネルは、EP-803Aと同じ静電式タッチパネルの「LEDナビ」を採用する。ボタンの様に飛び出てはおらず、タッチパネルのようにタッチして操作する。使用できるボタンだけがオレンジ色に光り、使用しないキーは光らないという事で、操作のわかりやすさと、外見上のスマートさを手に入れている。一方PIXUS MP493は、本体の上面の右側に縦に並んでいる。液晶ディスプレイ部を開くことで操作パネルが現れる形で、液晶ディスプレイの角度調整が可能だ。ただし、液晶ディスプレイは上位モデルより小さな1.8型であり、EP-703Aと比べても視認性はかなり悪いと言える。また、EP-703Aやキャノンの上位機種のような静電式タッチパネルではなくボタン式となり、ホイール機能も搭載されないため操作性でも劣ることになる。液晶サイズや操作パネルのわかりやすさに加え、操作パネルごと角度調整が可能なEP-703Aの方が総合的には使いやすいと言える。 インタフェースは両機種ともUSB2.0だけとシンプルだ。価格を考えれば仕方のないところだろう。本体サイズはEP-703Aが451×386×195mm、PIXUS MP493は450×335×155mmである。幅はほぼ同等だが、奥行きと高さはPIXUS MP493の方が小さいため、狭いスペースにも設置しやすく圧迫感もやや小さいと言えるだろう。 この2機種は発売当初は価格帯が大きく異なる製品であり、元々の価格が高いEP-703Aが圧倒的に高性能だ。最上位機種と同じ印刷画質、高速な印刷と豊富な印刷機能、スキャナ部も十分な性能で、ダイレクト印刷機能も豊富、コピー機能も豊富と、この価格とは思えないほどの高性能さで、迷わずEP-703Aがオススメと言える。PIXUS PM493は本体サイズが小さいのが魅力だが、機能的な差が大きいため、よほどコンパクトさだけを重視するのでなければ、多少の本体サイズの差には目をつむって、EP-703Aが妥当なところだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/ ![]() ![]() | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||