小ネタ集
2011年春時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2011年5月22日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


4万円台のFAX付き複合機
 
 エプソン、キャノンそれぞれのFAX付き複合機の上位モデルである。エプソンのEP-903FとPX-673Fは共に39,980円、キャノンのPIXUS MX7600が46,800円と約7千円の価格差がある。また見た目にも機能面でも大きな差のある3機種だが、どのような違いが有るのだろうか。

メーカ
エプソン
エプソン
キャノン
品番
EP-903F
PX-673F
PIXUS MX7600
製品画像
予想実売価格
39,800円
39,800円
46,800円
プリンタ部
インク
色数
6色
4色
5色+クリア
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
フォトブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
クリア
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立
顔料/染料系
顔料
(つよインク200)
染料
(つよインク200X)
顔料
(LUCIA)
ノズル数
1080ノズル
768ノズル
3584ノズル
全色:各180ノズル
カラー:各128ノズル
黒:384ノズル
C/M:各1024ノズル
Y/PBk/BK:各512ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(Advanced-MSDT)
2pl(MSDT)
2pl
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
4800×1200dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A4
L判〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(普通紙除く)
前面
○(120枚/A4以下)
○(2L・ハイビジョン以下)
○(250枚)
○(250枚)
○(150枚/普通紙のみ)
その他
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
○(ハガキ非対応)
特殊機能
DVD/CDレーベル印刷
○(トレイ内蔵)
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)ダイレクト印刷時は自動写真補正
特定インク切れ時印刷
○(カラーインク切れ時モノクロ印刷可・最長5日)
メーカー公称印刷速度
L判写真(縁なし)
14秒
56秒
36秒
A4普通紙
カラー
N/A
9.5ipm
7.3ipm
モノクロ
N/A
15ipm
8.8ipm
スキャナ部
読み取り解像度
4800dpi
2400dpi
4800dpi
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
ADF
○(30枚)
○(30枚・両面)
○(35枚・両面・600dpi)
ネガフィルム読み取り機能
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
SD/MS/xD/CF
SD/MS/xD/CF
SD/MS/CF
PCからドライブとして利用
外付けドライブ/USBメモリへ保存
○(外部機器共有対応)
外付けドライブ/USBメモリから印刷
手書き合成シート
PictBridge対応
赤外線通信
Bluetooth通信
各種デザイン用紙印刷
塗り絵印刷(メモリカード対応)
ノート罫線印刷(罫線・マス目・便箋)
ノート罫線印刷(罫線・マス目・便箋)
コピー部
拡大縮小コピー機能
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
CD/DVDレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
○(退色復元対応)
2アップ/4アップ
○/−
○/−
○/○
バラエティコピー
BOOKコピー
ミラーコピー
領域判定コピー
領域判定コピー
枠消しコピー
繰り返しコピー
絵はがき風プリント
FAX機能
○(スーパーG3)
○(スーパーG3)
○(スーパーG3)
液晶ディスプレイ
3.5型(角度調整可)
3.5型(角度調整可)
1.8型(角度調整可)
操作パネル
静電式タッチパネル(7.8型・角度調整可)
静電式タッチパネル(7.8型・角度調整可)
ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
466×458×198mm
466×385×198mm(自動両面ユニット非装着時)
446×368×300mm
500×535×257mm
重量
11.2kg
10.5kg(自動両面ユニット非装着時)
9.8kg
16.6kg

 この3機種は、FAX付き複合機の上位機種とは言っても、方向性は全く異なる。EP-903Fはその名の通り、FAX機能無し複合機のEP-903AにFAX機能を付けたような機種である。それ以外の機能面での違いはなく、見た目も液晶ディスプレイのメニュー項目やモジュラージャックを除いてほぼ同一である。そのため、写真印刷に強く、家庭向けに便利な機能が豊富に搭載されている。家庭向け複合機にFAX機能をプラスしたような製品だ。同じエプソンのPX-673FはFAX付き複合機の下位機種PX-603Fの下にもう一段給紙トレイをプラスして、合計でA4用紙を500枚までセットできるようにした製品だ。その他操作パネルをEP-903Fと同等のものとしている。PX-673F自体の機能はFAX無し複合機のPX-503Aに近く、4色の顔料インクを採用しているため、写真印刷は苦手であるが、普通紙への印刷は得意で耐水性も高い印刷ができる。さらにブラックのノズル数だけを極端に多くすることで、A4モノクロ原稿を毎分15枚という印刷速度を誇っている。EP-903Aには無いADF使用時の両面スキャンが可能であるなど、よりビジネス色の強い製品となっている。キャノンの、PIXUS MX7600に関しては、全色顔料インクを搭載する上にクリアインクも使用するなど、FAX機能無し複合機には元となる製品が存在していない。顔料インク+クリアインクによって普通紙への文書やFAXの印刷もきれいで、その上ADFも両面スキャンに対応している反面、印刷画質は複合機の下位機種並みで、CD/DVDレーベル印刷や手書き合成、写真焼き増し風コピーなど家庭で利用する機能は省略されている。PX-673Fよりもさらにビジネス利用寄りの機種であると言えるだろう。
 では、まずプリンタ部から見てみよう。エプソンのEP-903Fは6色インクとなる。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えてライトシアンとライトマゼンダが採用されており、カラー原稿での色の薄い部分での粒状感が抑えられる。また、インク滴が1.5plと非常に小さいため、粒状感は肉眼では感じられず、非常に高画質な印刷が行える。インクは「つよインク200」でありアルバム保存200年、耐光性50年、耐オゾン性15年と、保存性も高い。またインク滴は1.5plと小さいが、5つのインクサイズのインクを打ち分けるAdvanced-MSDTにより、L判写真1枚が14秒と非常に高速なのもメリットである。写真印刷は最高レベルと言える。
 続いてPX-673Fは、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成となる。インク滴も若干大きく2plになることから写真印刷画質ではEP-903Fに劣る。とは言え、インクサイズは十分に小さいため、色の薄い部分で目をこらせば粒状感が感じられる程度で、十分高画質である。しかし、元々PX-673Fは写真印刷には向かない。全色が顔料インクを採用しているため、写真用紙のような光沢感の高い用紙に印刷しても、光沢感が薄れてポストカードのようになる。一方で、普通紙やはがきなどに印刷する際はくっきりとした印刷が行えるメリットがあるため、それらに印刷する場合はむしろEP-903Fよりも高画質になる場合も多いだろう。耐水性も高いというメリットもあり、濡れた手で触ったりマーカーで線を引いても滲まない点で便利である。そのため、パソコンから普通紙への印刷や、普通紙コピー、年賀状印刷に向いている他、PX-673Fの特徴のFAX機能を使う時も、受信したFAXを普通紙に印刷する際に高画質、高耐水で印刷が出来る。インクは「つよインク200X」でアルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年と保存性も高い。写真印刷はL判縁なし1枚で56秒と遅く感じられるが、カラーのA4原稿なら毎分9.5枚とそれなりに高速である。さらにPX-673Fはブラックインクのノズル数がカラーの3倍あるため、モノクロのA4原稿は毎分15枚と非常に高速だ。
 最後に、キャノンのPIXUS MX7600だがインクは5色構成となる。構成はフォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンダ、イエローとなり、ブラックは2種類搭載されるが、写真時はフォトブラック、普通紙モノクロ印刷時はマットブラックと使い分けられるため実質4色印刷となる。またインク滴は2plとなるため、PX-673Fと同等のスペックとなる。EP-903Fと比べると粒状感が強くなるなど、画質面では劣るが、このレベルでもそれほど悪いわけではなく、十分に高画質である。またPIXUS MX7600もPX-673Fと同様、全色顔料インクのLUCIAインクを使用する点がメリットとなる。そして、顔料インクの得意とする普通紙印刷画質をさらに高めるために搭載されるのが、クリアインクと「PgR」テクノロジーである。これは、インクの染み込みやすい普通紙の表面全体にこのクリアインクを塗布することで、顔料インクを用紙に染み込ませず表面近くに定着させるという技術である。これにより、顔料インクの特徴であるシャープで発色の良さがさらに際だつこととなる。雰囲気としては、普通紙でもファイン紙のようなコーティングをした用紙のような印刷が可能になるわけである。クリアインクは用紙全体に塗布するため、通常のインクを搭載する所とは別の所に、かなり大型のものが搭載される。塗布もプリントヘッドを左右に動かす方式ではなく、印刷前に塗布用ローラーを通過させ、そこで塗布する形となっている。もちろん、顔料インクの特徴である耐水性もあるため、濡れた手で触ったりマーカーを引いても安心だ。一方でクリアインクの塗布は用紙設定を普通紙以外に設定すると一切行われないため、写真用紙への印刷では光沢感が失われてしまうのはPX-673Fと同様だ。また、L判写真1枚36秒と、EP-903Fよりは遅くPX-673Fよりは速いと言える。しかし、A4原稿ではカラーで毎分7.3枚、モノクロで毎分8.8枚とふるわない。印刷速度は遅めと考えた方が良さそうだ。以上より、写真印刷など家庭での使用に向いているEP-903F、普通紙への印刷画質が高いPX-673F、普通紙への印刷を極めたPIXUS MX7600といったイメージとなる。
 給紙に関する部分を見てみよう。EP-903Fは前面給紙のみである。前面給紙のみとすることで、コンパクトさとデザイン性を高めた形だが、背面給紙がないため、特に厚い紙や封筒などへの対応は少し心配だ(前面から給紙し前面から排紙するため用紙がプリンタ内部で曲げられるため)。一方で前面給紙カセットは内部が2段になっているため、2種類の用紙を同時にセットできる。上段は2Lサイズ以下であるため、A4用紙を2種類と言ったことはできないが、L判用紙やハガキなどとA4用紙が同時にセットできるため、利便性は確保されている。下段に一度にセットできる枚数は、A4用紙120枚までである。PX-673Fも前面給紙のみとなる。前面給紙カセットはEP-903Fとは異なり、内部はA4までセットできるものが1段のみとなっているため、カセット1つには1種類の用紙しかセットできない。しかし、PX-673Fは同じカセットが2段内蔵できるようになっているため、結果的にA4までの用紙が2種類セットできる事となり、EP-903Fと異なり自由な組み合わせが利用できる点で、より便利である。しかもカセット1つあたりA4普通紙が250枚までセットできるため、2段で500枚と、家庭用のプリンタとは思えないほど大量にセットできる。次々とFAXが来る場合や、複数ページの原稿を何十部も印刷したりコピーする場合に重宝するだろう。PIXUS MX7600は唯一前面給紙カセットと背面給紙の両方に対応している。ただし、前面給紙カセットは普通紙のみと言うのはFAX無し複合機と同じだが、逆に背面給紙は普通紙には対応していないというのはFAX無し複合機とは異なる部分であり注意が必要だ。そのため用紙の種類によって前面か背面のどちらかにしか対応できず、前面にA4普通紙、背面にB5普通紙というような組み合わせや、両方にA4普通紙をセットして大量使用に備える事ができない点はPX-673Fに比べて不便である。セット可能枚数は、A4普通紙に対応する前面カセットで250枚と、EP-903F以上PX-673F以下ではあるが、それなりに大量印刷にも対応できそうだ。ちなみに、対応用紙サイズは、EP-903FとPX-673FがL判サイズ以上、PIXUS MX7600は名刺サイズ以上となる。つまり名刺サイズカットされた用紙に印刷する場合はのPIXUS MX7600である必要がある。
 自動両面印刷は3機種共に標準対応となる。ただしPX-673Fは普通紙のみ対応、PIXUS MX7600もハガキには非対応であるため、年賀状印刷などで両面印刷を行うならはEP-903Fが便利である。CD/DVDレーベル印刷はEP-903Fのみ対応する。しかも、トレイが内蔵されているため、内蔵トレイの上にディスクを置くだけとより簡単になっている点もメリットである。写真印刷時の自動補正機能は、EP-903FとPX-673Fは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MX7600は「自動写真補正II」に対応している。どちらも逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるものである。ただし、EP-903FとEP-673Fはダイレクト印刷時にも使用できるのに対して、PIXUS MX7600ははパソコンからの印刷時のみで、ダイレクト印刷時は旧タイプの「自動写真補正」になる点は注意が必要である。それ以外のおもしろい機能としてPX-673Fのカラーインクが切れた際にもモノクロ印刷は継続できる機能がある。通常は1色でもインクが無くなるとプリントが出来なくなるため、便利な機能である。ただし5日間限定であり、常にカラーインクを搭載せずに使用できるわけではない。
 続いて、スキャナ部を見てみよう。3機種ともCIS方式でADFを搭載しているが、それぞれ微妙に異なる点があるため注意してみていこう。解像度はEP-903FとPIXUS MX7600が4800dpi、PX-673Fが2400dpiとなっている。スペック上は大きな差があるが、紙原稿のみのスキャンであることを考えると、写真を綺麗にスキャンする場合でもせいぜい1200dpiで、それ以上になるとファイルサイズが大きくなりすぎて扱いにくい。そのため、4800dpiというのはオーバースペック気味であるほど高い解像度なので、2400dpiでも十分であり、3機種には大きな差はないと言える。また、前述のように、いずれもCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手だ。もちろんネガフィルムのスキャンには対応しない。また、FAX機能搭載機と言うことで、両機種ともADFを備えている。EP-903FとPX-673Fでは30枚、PIXUS MX7600では35枚まで原稿を一度にセットできる。FAXなどの連続送信の他、連続コピーや連続スキャンが行えるため非常に便利である。さて、ここからが難しいところだ。まず、EP-903Fは片面スキャンのみとなる一方、PX-673FとPIXUS MX7600は両面スキャンに対応しているため、両面原稿をスキャンする場合はPIXUS MX7600の方が便利である。しかし、FAX時に両面スキャンが使用できるのはPX-673Fのみである。一方、EP-903FとPX-673FはADF使用時にも最大4800dpiでスキャン可能なのに対して、PIXUS MX7600は最高600dpiに制限される。原稿を高解像度でスキャンしたい場合はEP-903FやPX-673Fの方が便利である。つまり、両面スキャンがFAX時にも使用でき、解像度制限もないのはPX-673Fだけであり、PIXUS MX7600は解像度制限がありFAX時には両面スキャンができないというデメリットが、EP-903Fは解像度制限はないが両面スキャンができないというデメリットがある。それ以外の機能として、EP-903FとPX-673Fはスキャンしたデータをパソコンを使わずにメモリカードにJPEG又はPDF形式で保存できる機能を搭載しており便利である。
 ダイレクト印刷は、SDカード/メモリースティック/コンパクトフラッシュは全機種とも対応しているが、xDピクチャーカードに関してはEP-903FとPX-673Fのみ対応しており、PIXUS MX7600ではアダプタが必要である。また、EP-903FとPX-673FはUSBメモリからの印刷にも対応している。さらに、EP-903FではUSBメモリからの印刷だけでなく、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、EP-903FをLAN接続をしている場合、他のパソコンからドライブのデータにアクセスが可能である。つまりEP-903F単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。その他、3機種ともPictBridgeにも対応している。一方、手書き合成シートや赤外線通信はEP-903Fのみの対応である。加えてEP-903Fでは塗り絵風の輪郭だけの印刷が行える「塗り絵印刷」や、写真を背景に印刷した便箋を始めとする罫線やマス目などの用紙が印刷できる「ノート罫線印刷」機能に対応している。PX-673Fも「ノート罫線印刷」機能は搭載している。ダイレクト印刷機能はPIXUS MX7600が最低限の機能なのに対して、EP-903Fは非常に豊富であり、PX-673もある程度の機能を搭載している。全ての人が頻繁に使う機能ではないだろうが、場合によっては便利だったり楽しめる機能だけに、一般家庭向けの機種であると言えるだろう。
 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、3機種とも等倍コピーや、B5からA4のような用紙を指定した拡大縮小の他に、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える点は同じである。それ以外の機能としては、CD/DVDレーベル印刷が行えるEP-903FはCD/DVDレーベルコピーが行える。またEP-903FとPX-673Fは原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来、この際、昔の色あせした写真を自動で補正してくれる「退色復元」機能も備えており抜かりはない。3機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップに対応する。さらにPIXUS MX7600は4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-903Fは見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」といった機能を備える。一方、PX-673Fは「領域判定コピー」機能だけとなる。PIXUS MX7600は厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能、ADFを使用して複数枚原稿を複数部コピーする際に、1部ずつまとめてコピーする「繰り返しコピー」、絵はがき風に自動的にレイアウトしてプリントする「絵はがき風プリント」といった機能を備えている。
 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。3機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。3機種ともADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。ただし、前述のように両面原稿を両面スキャンしFAXできるのはPX-673Fだけとなる。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiなのも共通である。ダイヤル機能ではEP-903FとPX-673Fは短縮ダイヤルに60件登録できる。一方PIXUS MX7600はワンタッチダイヤル8件と短縮ダイヤル100件を登録できる。PIXUS MX7600の方が若干便利だが、両機種とも家庭向けの複合機に付いているFAX機能だからといって手抜きはない。受信したファクスの最大保存ページ数はEP-903FとPX-673Fが180枚又は30件、PIXUS MX7600が250枚又は30件と、こちらも家庭で使う分には十分なメモリ量を備えている。その他、3機種ともグループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。さらに3機種ともモノクロ送信のみとなるなど制限はあるが、パソコン内のデータを直接FAXできる「PCファクス」機能を備えているのも便利である。
 操作パネルはEP-903FとPX-673Fは同等のものを搭載しているが、これが非常に優れている。液晶パネルが3.5インチと十分な大きさである事もあるが、液晶パネルを含む7.8インチ分がタッチパネルとなっているのが大きなメリットなのである。重要な操作は液晶に表示されタッチして操作できるので直感的だ。それ以外の所は表示内容は変更できないものの、使えるボタンのみバックライトがオレンジ色に光るので、その時点で使用できないボタンに惑わされることがない。また液晶パネルだけでなく操作パネルごと角度調整が可能というメリットもある。さらにFAX付きの機種は電話番号用のテンキーや短縮ダイヤルのボタンなど、どうしてもボタン数が増えてしまい、操作パネルが分かりにくくなるが、EP-903Fの場合は液晶ディスプレイ部にテンキー等を表示することが出来るため、ボタン数がFAX無しの機種のEP-903Aと変わらないレベルに抑えられるのも分かりやすくて便利である。一方、PIXUS MX7600は液晶ディスプレイの角度調整可能なものの、1.8インチとかなり小さいため視認性は悪くEP-903Fと比べると劣ると言わざるを得ない。また、FAXなし複合機の上位機種に搭載される、静電式タッチパネルの「インテリジェントタッチシステム」でも無いどころか、中位機種以上に搭載されてるホイール機能も搭載されず、全てボタン操作となるためボタン数がかなり多くなってしまう。バックライトによる誘導もないため、膨大なボタンの中から目的のボタンを探さなくてはならない上、ボタンが多いことからボタンが小さく、角度調整ができないこともあって、操作性はEP-903FとPX-673Fの圧勝と言えるだろう。
 インタフェースは3機種ともUSB2.0とLANの接続に対応している。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。ただし、EP-903AとPX-673Fは有線LAN、無線LAN共に対応しているがPIXUS MX7600は有線LANのみに対応している。EP-903FとPX-673Fの無線LAN機能は、2010年末以降の新機種の例に漏れず、IEEE802.11n接続に対応しており、無線LANでも高速接続が可能である。ケーブルレスでも印刷やスキャンが可能なEP-903FとPX-673Fの方がより家庭向けとも言える。
 最近はコンパクト化が進む複合機だが、EP-903Fはその流れに乗ってコンパクトボディとなっている。EP-903FはFAX無し複合機のEP-903Aと同デザインであるため、466×458×198mmとこれほどの機能にADFまで搭載されているとは思えないほどコンパクトだ。しかもこの高さ198mmというのは、ふくらんでいる頂点部分なので、実際にはもっと高さは低く感じる。また前機種では自動両面印刷ユニットがオプションだったため、標準搭載となったEP-903Fでも自動両面ユニットを取り外すことができる。自動両面印刷機能が不要なら、さらに奥行きが73mmも小さくなる。続いてPX-673Fだが、こちらも本来はコンパクトな機種のはずで、横幅が446mm、奥行きが368mmというのは、自動両面印刷ユニットを外したEP-903Fより小さい。ただ、単純に給紙トレイを2段重ねた形状にした結果、高さが300mmとかなり高く、インクジェットプリンタと言うよりはレーザープリンタのような形状になっている。設置面積の面では有利だが、圧迫感はあると言える。PIXUS MX7600は昔ながらの大型ボディとなっている。EP-903Fと比べると横幅が34mm、高さが59mm、奥行きに至っては自動両面ユニット搭載時と比べても77mm、非搭載時と比べると150mmも大きいため、見た目にも巨大な印象を受ける。PX-673Fのような高さだけが大きいのと異なり、全体に大柄な感じだ。またEP-903Fは周辺機器らしさを出来る限り消したデザインとなっている一方、PIXUS MX7600はいかにもパソコンの周辺機器といった印象である。LAN接続が可能になり、必ずしもパソコンの側に置く必要が無くなり、またFAX機能が搭載されていることからリビングなどに置く場合もあるだろうが、本体サイズやデザインを見るとEP-903Fの方が向いていると言えるだろう。
 このように比較してみると、3機種の方向性が全く異なることがわかるだろう。そして一般的な家庭内の使用であれば、EP-903Fで決まりと言えるだろう。印刷が非常に高画質で高速、その他も機能が豊富で、操作性も非常に良いため、FAXだけでなくありとあらゆる用途に使用でき、しかもそれが高いレベルで実現できていると言える。さらに、本体もコンパクトなので、家庭内に置いても違和感がない点も評価できる。一方、同じエプソンでもPX-673Fはかなり方向性が異なる。写真などは印刷せず、普通紙への印刷やコピー、そしてFAX送受信がメインなら、顔料インクで普通紙への印刷画質が高く耐水性もあり、ADFも両面スキャンが行えるなどEP-903Fにはないメリットを持つ。また500枚給紙できる点に魅力を感じるならPX-673Fがオススメだ。ただ、500枚まで行かなくても250枚で良いなら、カセットが1段の下位機種PX-603Fも選択肢に入る。1万円安く高さも74mm低くなるため、PX-673Fを選ぶ場合はPX-603Fとも比較していただきい。最後に、PIXUS MP7600だが、普通紙印刷が特に綺麗な点や両面スキャンが可能なADFなどメリットもあるが、かなり癖の強い機種であるため万人にお勧めできる機種とはとうてい言えない。やはり、一般的にはEP-903Fとなるだろう。写真などは印刷せずCD/DVDレーベル印刷も行わず、主な用途が年賀状や文書、FAXの印刷やコピーであると言うようなビジネス用と割り切ると、今度はPX-673FやPX-603Fの方がオススメとなってしまう。普通紙印刷に究極までこだわった点に特に魅力的に感じ、操作性の悪さと本体の大きさに目をつむれるのであれば、PIXUS MX7600でも良いだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-903F
PX-673F
PIXUS MX7600