小ネタ集
2011年春時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2011年5月22日公開)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


3万円台のA3単機能プリンタ
 
 A3対応の単機能プリンタで3万円台というと、ちょうど購入しやすい価格帯となる。エプソンのPM-G4500とキャノンのPIXUS iX7000、PIXUS iX6530の3機種がこの価格帯の製品となる。3機種とも上位機種とは本体デザインが異なり、機能面でもかなり異なっている。また、PM-G4500は32,800円、PIXUS iX6530は32,980円とほぼ同価格だが、PIXUS iX7000は39,980円と価格にも6,000円の差があるが機能面でも異なる部分は多い。どのような違いがあるのだろうか。

メーカ
エプソン
キャノン
キャノン
品番
PM-G4500
PIXUS iX7000
PIXUS iX6530
製品画像
予想実売価格
32,800円
39,980円
32,980円
プリンタ部
インク
色数
6色
5色+クリア
5色
インク構成
ブラック
シアン
ライトシアン
マゼンタ
ライトマゼンダ
イエロー
ブラック
フォトブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
クリア
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
顔料
(LUCIA)
染料
(ChromaLife 100+)
ノズル数
540ノズル
3584ノズル
4416ノズル
全色:各90ノズル
C/M:各1024ノズル
Y/PBk/Bk:各512ノズル
C/M:各1536ノズル
Y/染料Bk/顔料Bk:各512ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(Advanced-MSDT)
2pl
1pl
最大解像度
5760×1440dpi
4800×1200dpi
9600×2400dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
カード・名刺〜A3ノビ
名刺〜A3ノビ
名刺〜A3ノビ
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(100枚)
○(普通紙以外)
○(150枚)
前面
○(カセット・普通紙のみ250枚・A3まで)
○(手差し・普通紙のみ10枚)
その他
自動両面印刷
○(ハガキ非対応)
特殊機能
DVD/CDレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
パソコンから印刷時のみ
○(自動写真補正II)
パソコンから印刷時のみ
○(自動写真補正II)
パソコンから印刷時のみ
特定インク切れ時印刷
PictBridge
メーカー公称印刷速度
L判写真(縁なし)
39秒
38秒
30秒
A4普通紙
カラー
N/A
8.1ipm
8.8ipm
モノクロ
N/A
10.2ipm
11.3ipm
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
有線LAN
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
615×314×223mm
647×519×260mm
549×299×159mm
重量
11.5kg
19.8kg
7.6kg

 まずはインクを見てみよう。PM-G4500は染料インクの「つよインク200」を採用している。6色構成となっており、ブラック、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンダ、イエローと標準的なインク構成である。特殊な色のインクを採用していないため、上位機種のような色再現性が特に高いということはないが、ライトインクを含む6色構成であり、またインク滴も1.5plと極小であるため、粒状感は皆無である。複合機の最上位機種と同じ性能であるため、画質面で不満はないだろう。また、染料インクであるため、写真用紙に印刷した場合でも光沢感が失われず、写真らしい印刷が行えるのがメリットである。一方、上位機種のような耐水性はなく、普通紙への印刷では顔料インクよりもやや滲んでしまうためシャープさは薄くなってしまう。一方、アルバム保存200年、耐光性50年、耐オゾン性15年と、上位機種のPX-G5300より耐光性や耐オゾン性は劣るものの、それでも耐保存性も非常に高いレベルとなっている。
 一方、PIXUS iX7000はインクは5色構成となる。構成はフォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンダ、イエローとなり、ブラックは2種類搭載されるが、写真時はフォトブラック、普通紙モノクロ印刷時はマットブラックと使い分けられるため実質4色印刷となる。またインク滴は2plとなるため、PM-G4500と比べると写真印刷時の画質は劣ると言える。ハイライト部などで若干粒状感が出てしまうだろう。一方、インクは全色顔料インクのLUCIAインクを使用するため、普通紙印刷時のシャープさや耐水性はPM-G4500より上となる。濡れた手で触ったりマーカーを引いても安心である。そして、顔料インクの得意とする普通紙印刷画質をさらに高めるために搭載されるのが、クリアインクと「PgR」テクノロジーである。これは、インクの染み込みやすい普通紙の表面全体にこのクリアインクを塗布することで、顔料インクを用紙に染み込ませず表面近くに定着させるという技術である。これにより、顔料インクの特徴であるシャープで発色の良さがさらに際だつこととなる。雰囲気としては、普通紙でもファイン紙のようなコーティングをした用紙のような印刷が可能になるわけである。クリアインクは用紙全体に塗布するため、通常のインクを搭載する所とは別の所の本体左奥に、かなり大型のものを搭載する。塗布もプリントヘッドを左右に動かす方式ではなく、印刷前に塗布用ローラーを通過させ、そこで塗布する形となっている。一方でクリアインクの塗布は用紙設定を普通紙以外に設定すると一切行われないため、写真用紙への印刷では光沢感が失われてしまい、ポストカードのようなくすんだ光沢になってしまう。普通紙印刷に特化していると言えるだろう。
 PIXUS iX6530はシアン、マゼンダ、イエローの基本3色に、顔料ブラックと染料ブラックという2種類のブラックインクを搭載する。ブラックインクの名称が異なるが、ブラックインクは印刷する用紙や内容によって使い分けられるため、基本的にはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色で印刷する点はPIXUS iX7000である。ただし、インクは染料インクの「ChromaLife 100+」であるため、特徴は全く異なる。染料インクであるため、写真用紙の光沢感が失われないのがメリットと言える。インク滴が1plと小さいため、6色インクのPM-G4500よりは劣るものの、PIXUS iX7000よりは粒状感は抑えられる。また、PM-G4500より劣るといっても目をこらしてみれば多少PIXUS iX6530の方が色の薄い部分で粒状感があるといった程度であるため十分高画質である。一方で顔料インクはブラックを搭載しているため、普通紙へのモノクロ印刷時はメリハリがあり耐水性のある印刷が行える。ただ、PIXUS iX7000と異なり顔料インクはブラックインクのみとなる他、クリアインクも使用しないため、あくまで、限定的だと考えた方が良さそうだ。
 以上から、同じ価格帯の3機種ながら、得意な分野が異なることが分かるだろう。写真印刷に特化したPM-G4500、普通紙印刷に特化したPIXUS iX7000、その中間のPIXUS iX6530といった感じだろう。
 3機種とも対応する用紙は、背面給紙の場合では最大A3ノビまでとなるのは同等だ。最小サイズもPM-G4500がカード・名刺サイズ、PIXUS iX7000も名刺サイズと、L判より更に小さなサイズまで対応している点も便利である。そして、PM-G4500とPIXUS iX6530はこの背面給紙のみのシンプルな給紙方式だが、PIXUS iX7000はこれ以外にも前面給紙カセットと前面手差し給紙が行えるなど、給紙方法は豊富である。まず前面給紙カセットだが、複合機やA4単機能プリンタではおなじみの、排紙トレイより更に下に取り付ける給紙カセットであり、A3プリンタでの採用は初である。最大A3用紙までセットできるだけでなく、普通紙で250枚という大量の用紙をセット可能である点もメリットである。ちなみに、PM-G4500の背面給紙トレイは普通紙を100枚まで、PIXUS iX6530は150枚までとなる。ここでいくつか注意が必要なのが、前面給紙カセットはハガキや写真用紙には対応せず普通紙のみであること、逆に背面給紙トレイは普通紙には対応しない事である。特に背面給紙が普通紙に対応しないのは他機種にはない事であり注意が必要だ。よって前面給紙カセットには常に普通紙をセットしておき、背面は写真用紙をセットしておいたり、封筒やハガキなどに印刷するために空けておくという事になるだろう。使い分けが可能なのは便利だ。さらに、排紙トレイ部分から手差しによる普通紙の給紙にも対応する。A3用紙までで最大10枚となるが、例えば前面給紙カセットにA3用紙をセットしている状態で、数枚のA4原稿の印刷を行う必要が出たといった状況でも、前面給紙カセットの用紙を入れ替えずに対応できるのが非常に便利である。給紙関係の便利さで言えばPIXUS iX7000が圧倒的に便利である。一方で、前面給紙カセットが本体よりかなり前面に飛び出してしまっているのは残念だ。またA3サイズより小さな用紙をセットする際には、カセットの長さを短くできるため、その際には多少飛び出る大きさを軽減できるが、最も短くしたとしても、A4単機能プリンタの前面給紙カセットのように、完全に本体に収納できるサイズにまでは短くできない。さらにPIXUS iX7000は自動両面印刷にも対応する。これもA3プリンタで唯一である。前面給紙カセットと自動両面印刷に対応するというのは、A4単機能プリンタをそのままA3に対応させたような印象である。
 その他の機能としてCD/DVDレーベル印刷機能はPM-G4500とPIXUS iX7000の2機種が備えている。また手軽に写真印刷が行えるよう、写真の自動補正機能としてPM-G4500は「オートフォトファイン!EX」を、PIXUS iX7000とPIXUS iX6530は「自動写真補正II」を備えている。「オートフォトファインEX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる機能である。一方「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる機能である。つまり、両機種とも高精度で自動補正をしてくれるわけだ。また、PM-G4500はPictBridgeに対応しているため、PictBridge対応デジタルカメラとプリンタを直接繋いで、デジタルカメラの液晶画面でプリント操作が行える。ただし、PictBridgeを使用した印刷では、前述の写真のオートフォトファイン!EXは働かない点は注意が必要だ。PIXUS iX7000とPIXUS iX6530は共にPictBridgeには対応しない。
 PM-G4500は1.5plとインク滴が小さいが、5つのサイズのインク滴を打ち分ける「Advanced-MSDT」に対応しているため、印刷速度はL判縁なしで39秒とノズル数が少ない割には高速だ。一方のPIXUS iX7000もL判縁なしで38秒とほぼ同等になっている。またPIXUS iX6530は30秒と3機種では最も速い。しかし、いずれも30秒台となっているため、大きな差はないと言える。また、複合機の上位機種ほど高速ではないが、それなりの速度で印刷可能であるため、数十枚のスナップ写真を印刷したり、年賀状印刷を行う場合もストレス無く行えるだろう。
 インタフェースはPM-G4500とPIXUS iX6530はUSB2.0のみ、価格の高いPIXUS iX7000はUSB2.0に加えて有線LANに対応している。無線LANには対応しないが、液晶ディスプレイの無い単機能プリンタで無線LANの設定は行いにくいので、有線LANだけで問題ないだろう。1機種と接続するだけならどちらの機種でも問題ないが、最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN接続が可能なPIXUS iX7000は非常に便利だろう。
本体サイズは、PM-G4500が615×314×223mmと、一般的なA3プリンタのサイズであるのに対して、前面給紙カセットを備えているPIXUS iX7000は「巨大」という印象である。PM-G4500と比べても、横が32mm、高さが37mm、奥行きにいたっては205mmも大きいため、設置面積はかなり必要になる。重量も、PM-G4500の11.5kgに対してPIXUS iX7000は19.8kgとかなり重い。それどころか複合機の中でもコンパクトな方のEP-803Aは446×385×150mmなので、設置面積で約2倍、高さが1.73倍と複合機と比べてもかなり大きい。PIXUS iX7000を購入する時は、大きさについては覚悟しておいた方が良さそうだ。一方PIXUS iX6530は逆にA3プリンタとしては小型な部類の549×299×159mmである。横幅がPM-G4500と比べても66mmも小さいのは、同じ用紙サイズのプリンタとしては驚くほどの差である。また高さもかなり抑えられており圧迫感が少ないのも魅力的だ。同社のA4単機能プリンタ「PIXUS iP4830」が431×297×153mmなので、どうしても用紙幅が必要な横幅以外はほぼ同じレベルになっているのが驚きである。
 この3機種を見ると、様々な点で違いがあり、これが選ぶ上での決め手になるだろう。最も特徴的なのはPIXUS iX7000だろう。写真印刷はせず、普通紙への印刷や年賀状印刷などが主な用途である場合や、前面・背面・手差しの3種類の給紙ができる点や、用紙を大量にセットできる点、LAN接続に魅力を感じるならPIXUS iX7000となる。ただ価格が6,000円高いため、これらに6,000円の価値があると感じ、さらに前述のように写真印刷は苦手で本体サイズも大きい事が問題ないならという条件付きである。LAN接続だけなら、他機種を買っても、プリンタ共有機能を使えばUSB接続しているパソコン経由で他のパソコンからも印刷できるし、別売りのネットワークアダプタを付ける事もできる。写真印刷を考えているなら、PM-G4500かPIXUS iX6530を選ぶ必要がある。特に写真印刷重視ならPM-G4500がオススメだがPIXUS iX6530でも悪くはない。一方、コンパクトなプリンタを探しているのなら、PIXUS iX6530がオススメだが、PM-G4500でも特に問題のあるレベルでは無い。とにかく写真が質重視ならPM-G4500が、少しでもコンパクトな本体や顔料ブラックインクに魅力を感じるならPIXUS iX6530がオススメとなる。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PM-G4500
PIXUS iX7000
PIXUS iX6530