小ネタ集
2011年春時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2011年9月26日公開/2011年11月1日更新)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


2万円中盤の複合機
 
 2万円中盤の複合機は、購入しやすい価格ながら比較的高性能であるため、売れ筋となる価格帯の製品である。ここには、エプソンのEP-773AとキャノンのPIXUS MG5330が該当する。EP-773Aが26,980円、PIXUS MG5330が27,980円と1,000円の価格差があるがセールの状況によっては店頭では同価格や逆転も起こるので(もちろん差が広がることもあるが)、ほぼ同価格と見て差し支えないはずだ。この価格になると、必要な部分は上位機種と同等ながら、上位機種では必須の機能が省略されていたりという事がある。両者でどの部分の機能が省略されているのかを見ていけば、どちらの機種が自分の用途に向いているか分かるはずだ。

メーカ
エプソン
キャノン
品番
EP-774A
PIXUS MG5330
製品画像
予想実売価格
26,980円
27,980円
プリンタ部
インク
色数
6色
5色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
染料
(つよインク200)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100+)
ノズル数
1080ノズル
4608ノズル
全色:各180ノズル
C/M:各1536ノズル
Y/BK:各512ノズル
最小インクドロップサイズ
1.5pl(Advanced-MSDT)
1pl
最大解像度
5760×1440dpi
9600×2400dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(150枚)
前面
○(120枚/A4以下)
○(2L・ハイビジョン以下)
○(150枚/普通紙のみ)
その他
自動両面印刷
△(オプション)
特殊機能
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
○(トレイ内蔵)
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
17秒
17秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
N/A
9.3ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
N/A
12.5ipm
スキャナ部
読み取り解像度
2400dpi
2400dpi
センサータイプ
CIS
CIS
ADF
ネガフィルム読み取り機能
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
SD/MS/xD/CF
SD/MS
PCからドライブとして利用
外付けドライブ/USBメモリへ保存
外付けドライブ/USBメモリから印刷
○(USBメモリのみ)
手書き合成シート
○(CD/DVDレーベル対応)
PictBridge対応
赤外線通信
Bluetooth通信
△(オプション)
各種デザイン用紙印刷
塗り絵印刷
ノート罫線印刷(罫線・マス目・便箋)
カレンダー印刷
フォーム印刷(原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳)
スマートフォン連携
対応端末
iPhone4/3G/3GS/iPod touch/iPad/Android
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF・Androidは端末でスキャンし作成したPDFのみ)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
コピー部
拡大縮小コピー機能
○(25〜400%)
○(25〜400%)
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
○(色あせ補正対応)
2アップ/4アップ
○/−
○/○
バラエティコピー
塗り絵印刷
BOOKコピー
ミラーコピー
領域判定コピー
枠消しコピー
FAX機能
液晶ディスプレイ
2.5型(角度調整可)
3.0型(角度調整可)
操作パネル
LEDナビ(角度調整可)
ホイール+ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
外形寸法(横×奥×高)
446×385×150mm
450×366×166mm
重量
8.8kg
8.3kg

 まずプリンタ部から見てみよう。EP-774Aとはインク構成やインクの種類、最小インクドロップサイズ、最大解像度、ノズル数など、全ての面に於いて最上位機種と同等の機能を持っている。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えてライトシアンとライトマゼンダが採用されており、カラー原稿での色の薄い部分では、シアンやマゼンダをまばらに打つよりも薄い色のインクが使えるため粒状感が抑えられる。さらに最小インクドロップサイズも1.5plと非常に小さいため、粒状感が肉眼では分からないレベルになっており、非常に高画質である。また、インク自体も「つよインク200」を採用しており、アルバム保存200年、耐光性50年と十分なレベルだ。写真印刷は超が付くほどの高画質で印刷できる。また最小インクドロップサイズは小さいが、Advanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立している。ノズル数も最上位機種と同等だが、L判フチ無し写真印刷速度は最上位機種の14秒から微妙に遅くなり17秒となる点は不思議だ。とはいえ非常に高速なのに変わりはない。一方のPIXUS MG5330は基本4色の染料インクに、ブラックの顔料インクを加えた5色構成だ。最上位機種とは異なりグレーインクを搭載していない点で画質はやや劣る。実際、写真印刷は4色で行うため、色の薄い部分ではEP-774Aより若干粒状感が出ることになる。とはいえ最小インクドロップサイズが1plと非常に小さいため、実際に目をこらして比べなければ分からないレベルの差で、PIXUS MG5330も非常に高画質だ。また顔料ブラックインクのおかげで、普通紙などへのモノクロ印刷ではメリハリのある印刷が行える点ではEP-774Aより上である。インクも「ChromaLife100+」であり「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」を使用することにより、アルバム保存300年、耐光性40年を実現している(キャノン写真用紙・光沢ではアルバム保存100年)。また、最小インクドロップサイズは小さいが、ノズル数を多くすることで、L判フチ無し写真印刷速度は最上位機種と同じ17秒となっており非常に高速だ。また奇しくもEP-774AとPIXUS MG5330は全く同じ速度となる。印刷速度の面では普通紙への印刷の場合、PIXUS MG5330はA4普通紙カラーで9.3ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが12.5ipmとなっているのも最上位機種と同等だ。EP-774Aは普通紙への印刷速度が公表されていないため、比較することはできないが、PIXUS MG5330の1分間にカラー原稿が9.3枚というのは十分高速だと言えるだろう。さらに、写真の自動補正機能も両機種とも備えており、EP-774Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MG5330は「自動写真補正II」と名称は異なるものの、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるものである。しかもパソコンからの印刷時、ダイレクト印刷時のどちらでも使用できる点も便利である。以上を見ると、写真印刷ではEP-774Aが、普通紙への印刷では特にモノクロではPXIS MG5330が高画質と言えるが、これはあくまでインクの構成や種類からの得意分野を述べただけであり、EP-774Aの普通紙への印刷画質も、PIXUS MG5330の写真印刷画質も十分すぎるほど高画質である。機能面での差はあるが、実際には高いレベルの中での差なので、この部分を理由に機種を選ぶのは難しいかもしれない。
 給紙関連の部分を見てみると、EP-774Aが前面のみ、PIXUS MG5330が背面と前面の2方向となっている。EP-774Aでは前面給紙のみとすることで、コンパクトさとデザイン性を高めた形だが、背面給紙がないため、特に厚い紙やラベル用紙などへの対応は少し心配だ(前面から給紙し前面から排紙するためプリンタ内部で曲げられるため)。またL判より小さな名刺サイズなどには対応しないのも残念である。一方で前面給紙トレイを2段とすることで、L判用紙やハガキなどとA4用紙が同時にセットできるため、利便性は確保されている。一方のPIXUS MG5330は背面からも給紙できるため、厚紙などへの対応も問題ない他、名刺サイズにも対応する。ただし、本体の薄型化のために、前面給紙は普通紙のみとなっている点は注意が必要だ。普通紙は前面に、写真用紙やはがき、厚紙は背面からとなるだろう。自動両面印刷はPIXUS MG5330が標準搭載、EP-803Aはオプション対応となるが、「同時」両面印刷ではないため、使う場面は限られるかもしれない。その他CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能は両機種とも備えているが、EP-774Aはトレイが内蔵されているため、内蔵トレイの上にディスクを置くだけで印刷が可能であるため、便利さではややEP-774Aが上だろう。
 続いて、スキャナ部を見てみよう。EP-774AとPIXUS MG5330は共に解像度2400dpiのCISスキャナを搭載している。上位機種のようなADFやネガスキャン機能は搭載していない。またCIS方式と言うことで、分厚い本など原稿が浮いてしまう部分が苦手なのも同様だ。解像度も上位機種より低くなってはいるが、実際には紙原稿のスキャンしか行えないことを考えると、一般的にはは300〜600dpiで高くても1200dpiでスキャンを行うため、2400dpiでも十分すぎるほど高解像度だ。つまり紙原稿をスキャンするにはこの両機種とも問題ないレベルになっていると言える。スキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能は、両機種とも搭載しているたね便利だ。
 ダイレクト印刷は両機種とも備えている。ただし、EP-774AはSDカード/メモリースティック/コンパクトフラッシュ/xDピクチャーカードに対応しており、数年前以降のデジタルカメラの全ての種類に対応しているが、PIXUS MG5330はSDカードとメモリスティックのみの対応となる。現在販売されているデジタルカメラはどちらかのカードを採用しているため、問題になることは少ないとは言えるが、持っているデジタルカメラのメモリカードの種類が対応しているか注意したい。両機種ともメモリカードだけでなく、USBメモリからの印刷やPictBridgeにも対応しているのは便利だ。さらに、EP-774AではUSBメモリからの印刷だけでなく、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。さらに赤外線通信にも対応しているなどダイレクト印刷の機能は豊富だ。一方PIXUS MG5330はオプションでBluetoothに対応している。ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートも両機種とも対応している。またPIXUS MG5330はCD/DVD/Blu-rayレーベルの手書き合成にも対応しているため、写真から手軽にディスクのレーベル印刷が行える。その他、EP-774Aでは塗り絵風の白黒印刷や、写真を背景に印刷した便箋を始めとする罫線やマス目などの用紙が印刷できる。一方のPIXUS MG5330もカレンダーや原稿用紙、方眼紙、楽譜などの印刷を備えている。両機種とも単体でいろいろと楽しめる機能を搭載しているのはうれしいところだ。
 スマートフォンとの連携機能はPIXUS MG5330のみの対応となる。対応機種はiPhone4/iPhone3G/iPhone3GS/iPod touch/iPad/Androidで専用のソフトを用意する。撮影した写真がスマートフォンからの操作で手軽に印刷でき、その際、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、手軽んがらパソコンから印刷するのと変わらないレベルで印刷できる。さらに、PDFファイルの印刷にも対応している(ただしAndroidはAndroid端末でスキャンして作成したPDFファイルのみ対応)。またスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。
 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベルコピーも対応している。また原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-774Aは退色復元、PIXUS MG5330は色あせ補正と名称は異なるが、両機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。両機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップに対応する。さらにPIXUS MG5330では4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-774Aはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」といった機能を備える、最上位機種と比べても遜色ない。一方PIXUS MG5330には、厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能を搭載している。
 操作パネルは両機種で大きく異なる。PIXUS MG5330は本体上面(スキャナの原稿カバー部)の前方に操作パネル、ちょうど真ん中あたりに液晶ディスプレイが配置される。液晶ディスプレイは原稿カバーと平面になるように埋め込まれた形だが、液晶ディスプレイを起こして角度調整が可能である。これは最上位機種と同じである。液晶ディスプレイも3.0型と1つ上位機種のPIXUS MG6230と同サイズであり、十分なサイズが確保されている。ただし、 PIXUS MG5330では、上位機種で採用されているインテリジェントタッチシステムと名付けられた静電式のタッチパネルではない。ちょうどタッチパネルをボタンに置き換えたようなイメージだ。そのため、使用するボタンだけが光って分かりやすいということもなく、電源を切ってもボタンが見えるためスマートさでも上位機種に劣る。一方、EP-774Aの操作パネルは本体前面に取り付けられ、液晶ディスプレイだけでなく操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能だ。最大90度まで起こすことができるので、見やすい角度で操作ができる。液晶ディスプレイは2.5型でありPIXUS MG5330より一回り小さいが、1つ上位機種のEP-804Aと同サイズで、視認性を損なうほどではない。PIXUS MG5330と異なり、EP-774Aでは上位機種同様の静電式タッチパネルの「LEDナビ」を採用する。旧機種の本体デザインであるため、上位機種のようにグリーンではなくオレンジ色に光るが、使用できるボタンだけが光るため、非常にわかりやすい。また電源を切ったときにボタンが見えなくなるため、外見上もスマートである。操作パネルごと角度調整ができる事に加えて、LEDライトによる分かりやすい操作性という点でEP-774Aに軍配が上がる。
 インタフェースはEP-774AはUSB2.0のみとシンプルだ。一方PIXUS MG5330はUSB2.0に加えて、IEEE802.11n/g/bの無線LANにも対応している。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。ただし、上位機種の対応している有線LAN接続には対応しないため、無線LANの電波の入りにくいところに設置する場合は注意が必要だ。
 本体サイズはEP-774Aが446×385×150mmと上位機種EP-804Aと同サイズ、PIXUS MG5330は450×366×166mmと上位機種PIXUS MG6230より横幅が少し小さくなっている。また両機種を比べると奥行きはPIXUS MG5330の方が小さく、高さはEP-774Aの方が小さい。設置面積はPIXUS MG5330の方が小さいため、小さいスペースに置くならPIXUS MG5330の方が良いが、どちらの機種でも置けるスペースがあるなら、高さの小さいEP-774Aの方が圧迫感は少ない。ただ、両機種とも大きな差ではなく、また両機種ともコンパクトなので、本体サイズはそれほど気にする必要はないかもしれない。

 こうやって見てみると、2機種の違いが浮き彫りになってくる。EP-774Aは最上位機種と同等の印刷画質と機能を持っていて、印刷速度もわずかに遅いだけ、スキャナも紙原稿なら問題ないレベルで、ダイレクト印刷時の対応メモリカードの豊富さや機能の豊富さでも最上位機種に劣らず、コピー機能も豊富、操作性も非常によい。最上位機種と比べて価格差が大きい割に機能の差は非常に小さいため、万人にお勧めできる機種だ。ただし、接続がUSB2.0だけという点が上位機種と比べて大きく劣る点だ。その点で、PIXUS MG5330は無線LANだけとは言え、LAN接続に対応しており、それに伴ってスマートフォントの連携機能も上位機種同様に搭載しているのがメリットだ。ただし、対応メモリカードが少なかったり,ダイレクト印刷やコピー時の機能が多少省かれていたり、操作性という面では、上位機種やEP-774Aに劣る部分である。無線LAN接続やスマートフォントの連携に惹かれるならPIXUS MG5330が、USB接続だけで問題ないという場合はEP-774Aがオススメと言えるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


EP-774A
PIXUS MG5330