小ネタ集
2011年春時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2011年9月26日公開/2011年11月1日更新)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


4万円以上のFAX付き複合機
 
 FAX付き複合機としては高価な部類に入る、4万円以上の3機種である。いずれもエプソンの機種であり、A3ノビ対応のPX-1700FとPX-1600F、A4対応のEP-904Fである。PX-1700Fは59,980円、PX-1600Fは49,980円、EP-904Fは44,980円と価格差もあり、A3ノビとA4という風に対応用紙も異なるが、その他にどのような違いがあるのだろうか。

メーカ
エプソン
エプソン
エプソン
品番
PX-1700F
PX-1600F
EP-904F
製品画像
予想実売価格
59,980円
49,980円
44,980円
プリンタ部
インク
色数
4色
4色
6色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ライトシアン
ライトマゼンタ
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
顔料
(つよインク200X)
染料
(つよインク200)
ノズル数
768ノズル
768ノズル
1080ノズル
カラー:各128ノズル
ブラック:384ノズル
カラー:各128ノズル
ブラック:384ノズル
全色:各180ノズル
最小インクドロップサイズ
2pl(MSDT)
2pl(MSDT)
1.5pl(Advanced-MSDT)
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
5760×1440dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A3ノビ
L判〜A3ノビ
L判〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
前面
○(250枚)
○(250枚)
○(250枚)
○(120枚/A4以下)
○(2L・ハイビジョン以下)
その他
自動両面印刷
○(普通紙のみA4まで)
特殊機能
DVD/CDレーベル印刷
○(トレイ内蔵)
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
特定インク切れ時印刷
カラーインク切れ時にモノクロ印刷可(5日間のみ)
カラーインク切れ時にモノクロ印刷可(5日間のみ)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
60秒
60秒
14秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
8.0ipm
8.0ipm
N/A
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
15ipm
15ipm
N/A
スキャナ部
読み取り解像度
1200dpi
1200dpi
4800dpi
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
ADF
○(30枚/A3片面・A4両面)
○(30枚/A3片面)
○(30枚/A4片面)
ネガフィルム読み取り機能
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
SD/MS/xD/CF
SD/MS/xD/CF
SD/MS/xD/CF
PCからドライブとして利用
外付けドライブ/USBメモリへ保存
○(外部機器共有対応)
○(外部機器共有対応)
○(外部機器共有対応)
外付けドライブ/USBメモリから印刷
手書き合成シート
PictBridge対応
赤外線通信
Bluetooth通信
各種デザイン用紙印刷
ノート罫線印刷(罫線・マス目・便箋)
ノート罫線印刷(罫線・マス目・便箋)
塗り絵印刷(メモリカード対応)
ノート罫線印刷(罫線・マス目・便箋)
スマートフォン連携
対応端末
iPhone4 / 3G / 3GS / iPod touch / iPad / Android
iPhone4 / 3G / 3GS / iPod touch / iPad / Android
iPhone4 / 3G / 3GS / iPod touch / iPad / Android
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF / Word / Excel / PowerPoint)
○(PDF / Word / Excel / PowerPoint)
○(PDF / Word / Excel / PowerPoint)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
コピー部
拡大縮小コピー機能
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
○(退色復元対応)
○(退色復元対応)
2アップ/4アップ
○/−
○/−
○/−
バラエティコピー
領域判定コピー
領域判定コピー
BOOKコピー
ミラーコピー
領域判定コピー
FAX機能
○(スーパーG3)
○(スーパーG3)
○(スーパーG3)
液晶ディスプレイ
2.5型(角度調整可)
2.5型(角度調整可)
3.5型(角度調整可)
操作パネル
ボタン式(角度調整可)
ボタン式(角度調整可)
静電式タッチパネル(7.8型・角度調整可)
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
559×690×365mm
559×690×287mm
465×458×198mm
465×385×198mm(自動両面ユニット非装着時)
重量
18.9kg
15.6kg
11.3kg
10.6kg(自動両面ユニット非装着時)

 この3機種は、4万円以上のFAX付き複合機という分類ながら、方向性は全く異なる。PX-1700Fは同じFAX機能付き複合機のPX-673FをA3ノビ用紙に対応したような機種だ。PX-1600Fは同じFAX付き複合機のPX-603FをA3ノビ対応にしたいような機種だ。EP-904FはFAX無し複合機のEP-904AにFAX機能を追加した製品である。それでは細かく見ていこう。
 プリンタ部はPX-1700FとPX-1600Fが顔料の4色インク、EP-904Fは染料の6色インクである。EP-904Fではブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加えてライトシアンとライトマゼンダが採用されており、カラー原稿での色の薄い部分でも粒状感が抑えられる。また、最小インクドロップサイズが1.5plと非常に小さいため、粒状感は肉眼では感じられず、非常に高画質な印刷が行える。また、インクは「つよインク200」でありアルバム保存200年、耐光性50年、耐オゾン性15年と、保存性も高い。またインク滴は1.5plと小さいが、ノズル数が各色180ノズルある上、5つのインクサイズのインクを打ち分けるAdvanced-MSDTにより、必要に応じて大きなインクを打ち分ける事で、L判写真1枚が14秒と非常に高速なのもメリットである。写真印刷は最高レベルと言える。一方のPX-1700FとPX-1600Fはブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色構成となるだけでなく、最小インクドロップサイズも若干大きく2plになることから写真印刷画質ではEP-904Fに劣る。とはいえ2plでも十分に小さいため、色の薄い部分で目をこらせば粒状感が感じられる程度で、十分高画質である。ただし、全色が顔料インクを採用しているため、写真用紙のような光沢感の高い用紙に印刷しても、光沢感が薄れてポストカードのようになる点は注意が必要だ。ただし、その点さえ気にならなければインクは「つよインク200X」を採用しておりアルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年と耐保存性は高い。3つのインクサイズのインクを打ち分けるMSDTに対応しているが、EP-904FのAdvanced-MSDTより機能が劣り、またカラーインクのノズル数がEP-904Fより少ない128ノズルであるため、L判写真1枚は60秒と多少時間がかかるのは残念だ。
 一方、普通紙への印刷時は状況が異なる。染料インクのEP-904Fでも十分綺麗に印刷できるが、普通紙に印刷すると多少にじんでしまい、文字が太く見えたり、白抜き文字がつぶれやすくなるなど、メリハリが弱くなる。一方、顔料インクのPX-1700FとPX-1600Fではにじみの少ないくっきりとした印刷が行えるメリットがある。場合によってはインク数が多く最小インクドロップサイズの小さなEP-904Fよりも綺麗に見える場合もあるだろう。また、耐水性も高いというメリットもあり、濡れた手で触ったりマーカーで線を引いても滲まない点で便利である。そのため、パソコンから普通紙への印刷や、普通紙コピー、年賀状印刷に向いている他、FAX機能を使う時も、受信したFAXを普通紙に印刷する際に高画質、高耐水で印刷が出来る。また印刷速度も、EP-904Fの速度が公表されていないため何とも言えないが、PX-1700FとPX-1600Fの、A4普通紙カラーが8.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)というのは決して遅くはない。さらにこの2機種ではカラーに対してブラックインクのノズル数が3倍の384ノズルとなっており、これはEP-904Fの倍以上である。そのため、モノクロ印刷時はさらに高速で、A4普通紙モノクロは15ipmという速度を誇る。これならばモノクロ原稿の印刷やモノクロコピー、ハガキの宛名面や、受信したFAXの印刷はストレスのない速度で印刷ができると言える。写真が綺麗に印刷でき、写真用紙も普通紙も、カラーもモノクロも平均的に速いEP-904Fと、普通紙印刷が綺麗で耐水性もあり、印刷も速いPX-1700F、PX-1600Fという構図である。
 給紙に関する部分を見てみよう。3機種とも前面給紙のみとなっており、いずれもカセット式である。前面給紙のみとすることで、背面給紙部分がなく上面がすっきりするほか、特にEP-904Fではコンパクトさとデザイン性を高めた形だ。しかし背面給紙がないため、特に厚い紙や封筒、ラベル用紙などへの印刷は問題ないとは言われていても、前面から給紙し前面から排紙するため用紙がプリンタ内部で曲げられるため少し心配だ。EP-904Fは前面給紙カセットは内部が2段になっているため、2種類の用紙を同時にセットできる。上段は2Lサイズ以下であるため、A4用紙を2種類と言ったことはできないが、L判用紙やハガキなどとA4用紙が同時にセットできるため、利便性は確保されている。下段に一度にセットできる枚数は、A4用紙120枚までである。一方のPX-1600Fの前面給紙カセットはA3ノビまで対応しており、しかも一度に250枚までセットできるなど、ビジネス用途でも問題ない給紙枚数だ。ただし前面給紙カセット内部が2段にはなっていないので、セットできる用紙は1種類のみだ。そして、PX-1600Fの前面給紙カセットを2段にしたのがPX-1700Fだ。純粋にPX-1600Fの前面給紙カセットをもう一つ搭載できるため、EP-904Fのようにセットする用紙にほぼ制限はなく(カセット2はB5サイズ以上という制限だけ)、同じ用紙をセットして、給紙枚数を倍にすることも可能だ。もちろん上段にA4用紙、下段にA3用紙というような使い方もできる。ただし、PX-1600F、PX-1700Fでは前面給紙カセットが完全に本体に収まるのはA4サイズ以下の用紙の場合で、それより大きな用紙をセットする場合は前面給紙カセットが本体より前に飛び出す事になる。もっとも使用するときは排紙トレイを出す必要があるため、前方に余分な空間が必要なわけではないが、注意が必要だ。ちなみに、対応用紙はPX-1700FとPX-1600FがL判〜A3ノビ、EP-904FがL判〜A4となる。
 写真印刷時の自動補正機能として、3機種とも最新の「オートフォトファイン!EX」に対応している。逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる高性能なものだ。また、3機種ともダイレクト印刷時にも使用できるのは便利だ。それ以外の機能として、自動両面印刷はPX-1700FとEP-904Fが対応する。ただし、PX-1700Fの自動両面印刷はA4用紙までとなる。また対応用紙も普通紙だけである。それ以外のおもしろい機能としてPX-1700FとPX-1600Fはカラーインクが切れた際にもモノクロ印刷は継続できる機能がある。通常は1色でもインクが無くなるとプリントが出来なくなるため、便利な機能である。ただし5日間限定であり、常にカラーインクを搭載せずに使用できるわけではない。
 続いて、スキャナ部を見てみよう。PX-1700FとPX-1600FはA3プリントに対応しているだけでなく、A3サイズの原稿のスキャンに対応しているのがメリットだ。EP-904Fは一般的なA4サイズの原稿までである。3機種ともCIS方式で、FAX機能付きなのでADFを搭載している点で共通する。ただし、それぞれ微妙に異なる点があるため注意してみていこう。解像度はEP-904Fが4800dpi、PX-1700FとPX-1600Fは1200dpiとなっている。スペック上は大きな差があるが、紙原稿のみのスキャンであることを考えると、写真を綺麗にスキャンする場合でもせいぜい1200dpiで、それ以上になるとファイルサイズが大きくなりすぎて扱いにくい。そのため、4800dpiというのはオーバースペック気味であるほど高い解像度なので、1200dpiでも十分であり、3機種にはスペック上で見るほどの大きな差はないと言える。また、前述のように、いずれもCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手だ。もちろんネガフィルムのスキャンには対応しない。またADFの機能にも違いがある。3機種とも30枚まで原稿をセットできるが、PX-1700FとPX-1600FはA3用紙まで対応している。さらに、PX-1700FはA4サイズの原稿なら両面スキャンが可能だ。PX-1600Fは片面スキャンのみである。EP-904FはA4用紙まで、片面スキャンとなる。また、3機種ともスキャンしたデータをパソコンを使わずにメモリカードにJPEG又はPDF形式で保存できる機能を搭載しており便利である。
 ダイレクト印刷は、3機種ともSDカード/メモリースティック/コンパクトフラッシュ/xDピクチャーカードに対応しており、数年前以降のデジタルカメラの全ての種類に対応しているため安心だ。また、USBメモリからの印刷やPictBridgeによる印刷にも3機種とも対応している。さらに、USBメモリからの印刷だけでなく、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、複合機をLAN接続をしている場合、他のパソコンからドライブのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も搭載している。つまり複合機単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。その他、メモリカード内の写真と手書き文字や絵を合成して印刷できる「手書き合成シート」や赤外線通信、塗り絵風の輪郭だけの印刷が行える「塗り絵印刷」には、家庭向けの機種であるEP-904Fのみ対応している。また、EP-904Fは、塗り絵風の輪郭だけの印刷が行える「塗り絵印刷」や、写真を背景に印刷した便箋を始めとする罫線やマス目などの用紙が印刷できる「ノート罫線印刷」機能に対応している。PX-1700FとPX-1600Fも「ノート罫線印刷」機能は搭載しているが、EP-904Fのダイレクト印刷の機能の豊富さはかなりの物だと言えるだろう。
 スマートフォンとの連携機能も3機種とも搭載している。いずれもiPhone4/iPhone3G/iPhone3GS/iPod touch/iPad/Androidに対応しており、専用のソフトを用意する。撮影した写真がスマートフォンからの操作で手軽に印刷でき、その際、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、パソコンから印刷するのと変わらないレベルで印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。PDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応しており、Webページの印刷もできるまたスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。
 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、全機種が単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行えるだけでなく、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える高性能な物だ。それ以外の機能としては、CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷が行えるEP-904FはCD/DVD/Blu-rayレーベルコピーが行える。また全機種が原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来、この際、昔の色あせした写真を自動で補正してくれる「退色復元」機能も備えており抜かりはない。3機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。基本的なコピー機能は3機種とも不満はない。その他、EP-904Fは見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」といった機能を備える。一方、PX-1700FとPX-1600Fは「領域判定コピー」機能だけとなるが、「BOOKコピー」や「ミラーコピー」は頻繁に使う機能ではないと思われるため、大きな差はないだろう。
 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。3機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。3機種ともADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。ADFが両面スキャンに対応しているPX-1700Fは両面原稿を両面スキャンしFAXできる。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiなのも共通である。ダイヤル機能でも3機種とも短縮ダイヤルに60件登録できるため十分だ。受信したファクスの最大保存ページ数はPX-1700FとPX-1600Fは180枚又は100件、EP-904Fは180枚又は30件と家庭で使う分には十分なメモリ量を備えている。またPX-1700FとPX-1600Fは停電時も受信した内容が保持されるのがメリットだ。逆にEP-904Fは停電やコンセントが抜けるなど、電源の供給が切れた場合は受信したデータが消えてしまうため注意が必要だ。その他、3機種ともグループダイヤル、順次同報送信、手動送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。また、パソコン内のデータを直接FAXできる「PCファクス」機能を備えているのも便利である。EP-904Fは送信(パソコン上のデータを画像として送信)しかできないが、PX-1700FとPX-1600Fは受信(パソコン上にFAXのデータを受信して表示)することもできる。
 操作パネルは、いずれも本体の前面に配置される。そして液晶ディスプレイだけでなく操作パネルごと持ち上げて角度調整が可能である。見やすい・操作しやすい位置で使用でき便利だ。EP-904Fの操作パネルはFAX無し複合機のEP-904Aと同等であり、非常に使いやすい。液晶パネルが3.5インチと十分な大きさである事もあるが、液晶パネルを含む7.8インチ分がタッチパネルとなっているのが大きなメリットなのである。「ホーム」などのどの場面でも使用するボタンや、左右カーソルや「+」「−」「OK」「スタート」といった比較的使用頻度の高いボタンは、液晶ディスプレイ外に配置され、使用できるボタンだけがグリーン(メーカーはピュアグリーンと表現)に光る。そして、「コピー」や「スキャン」といった機能の選択や、例えば「どういったコピーを行うか」というような、表示内容がその時々によって大きく変化したり、詳しい説明が必要なボタンに関しては、液晶ディスプレイに表示され、直接タッチする事になる。使えるボタンだけが光る上に液晶ディスプレイもタッチできるので迷うことが無く操作できる上に、電源をオフにしたときにボタンが見えないためデザイン的にもスマートだ。さらにFAX付きの機種は電話番号用のテンキーや短縮ダイヤルのボタンなど、どうしてもボタン数が増えてしまい、操作パネルが分かりにくくなるが、EP-904Fの場合は液晶ディスプレイ部にテンキー等を表示することが出来るため、ボタン数がFAX無しの機種のEP-904Aと変わらないレベルに抑えられるのも分かりやすくて便利である。一方PX-1700FとPX-1600Fの操作パネルは一般的なボタン式で、液晶ディスプレイも2.5型とEP-904Fより小さくなる。ボタン式であるため、EP-904Fに比べるとどのボタンを押すのか迷いやすくなる。特にFAX用のテンキーが必要な分、ボタン数が多いため、操作パネルが複雑になりやすく、さらにボタン自体も小さくなってしまう。デザイン的にも、パソコンの周辺機器的な感じを残してしまうため、操作性の面でもデザイン性の面でも、EP-904Fが一歩も二歩も優れていると言える。
 インタフェースは3機種ともUSB2.0と有線/無線LANの接続に対応している。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANは、IEEE802.11n接続に対応しており、無線LANで接続した場合でもプリントやスキャンで待たされることが無いようになっている。
 最近はコンパクト化が進む複合機だが、EP-904Fはその流れに乗ってコンパクトボディとなっている。EP-904FはFAX無し複合機のEP-904Aと同デザインであるため、465×458×198mmとこれほどの機能にADFまで搭載されているとは思えないほどコンパクトだ。しかもこの高さ198mmというのは、ADFのふくらんでいる頂点部分なので、実際にはもっと高さは低く感じる。EP-904Fの自動両面ユニットを取り外すことができるため、自動両面印刷機能が不要なら、さらに奥行きが385mmと、73mmも小さくなる。一方のPX-1700FとPX-1600Fはそれぞれ、559×690×365mm、559×690×287mmと さすがに巨大だ。ただしA3スキャンとA3ノビのプリントに対応していることを考えれば仕方がないことだろう。PX-1700Fに関しては、給紙トレイが純粋に2段に増えた形なので、PX-1600Fと横幅と奥行きは全く同じで、高さだけが78mm増えている。ちなみに前述のように、PX-1700FとPX-1600FはA4用紙より大きい用紙をセットする場合は、前面給紙トレイが前に飛び出てしまうため、場合によっては設置面積はより大きくなる点は注意が必要だ。

 同価格帯の製品同士として比較したものの、製品自体の性格は全く異なるといえるだろう。EP-904Fは写真印刷からコピー、デジカメのダイレクト印刷までか高速に高画質に印刷でき、様々な機能が豊富に搭載されているため、一般家庭で1台目として使うというなら、この機種がオススメだ。一般家庭用の複合機に、さらにFAX機能が付いているというイメージだ。そのため、様々な用途で、高いレベルで満足できるだろう。一方、PX-1700FとPX-1600Fはなんと言ってもA3ノビのプリントとA3のスキャンが可能なのが特徴だろう。エプソン、キャノンの家庭向け複合機でこれらが可能なのはこの2機種だけなので、この点に惹かれるなら買いだろう。両面スキャンと2段給紙カセットに魅力を感じるならPX-1700F、そうでもないならPX-1600Fとなる。ただ、顔料インクによる普通紙や年賀状へメリハリがあり耐水性の高い印刷が行えることやモノクロ印刷が高速な点に惹かれるだけなら、ほぼ同機能でA4サイズのプリントとスキャンに対応したPX-673F(2段給紙)又はPX-603F(1段給紙)がオススメだ。PX-673Fなら35,100円、PX-603Fなら26,700円で購入できる上、本体サイズも小さい。どの機能を必要としているかによって機種は決まるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-1700F
PX-1600F
EP-904F