小ネタ集
2011年春時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2011年9月26日公開/2011年11月1日更新)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


4万円以下のFAX付き複合機
 
 4万円以下のFAX付き複合機は4機種あるが、エプソンのPX-673Fは35,100円、PX-603Fは26.700円、とキャノンのPIXUS MX883が29,980円なのに対して、PIXUS MX420が19,980円と結構な価格差がある。PX-673FはPX-603Fの前面給紙カセットを2段した様な特殊な製品なので置いておいても、それ以外の3機種にも1万円の価格差がある。どの程度差があるのだろうか。

メーカ
エプソン
エプソン
キャノン
キャノン
品番
PX-673F
PX-603F
PIXUS MX883
PIXUS MX420
製品画像
予想実売価格
35,100円
26,700円
29,980円
19,980円
プリンタ部
インク
色数
4色
4色
5色
4色
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
各色独立
カラー一体+ブラック
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
顔料
(つよインク200X)
染料/顔料(ブラック)
(ChromaLife100+)
染料(カラー)/顔料(ブラック)
(ChromaLife100+)
ノズル数
768ノズル
768ノズル
4608ノズル
1472ノズル
カラー:128ノズル
ブラック384ノズル
カラー:128ノズル
ブラック384ノズル
C/M:各1536ノズル
Y/BK:各512ノズル
カラー:各384ノズル
ブラック:320ノズル
最小インクドロップサイズ
2pl(MSDT)
2pl(MSDT)
1pl
2pl
最大解像度
5760×1440dpi
5760×1440dpi
9600×2400dpi
4800×1200dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
L判〜A4
L判〜A4
名刺〜A4
名刺〜A4
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(150枚)
○(100枚)
前面
○(250枚)
○(250枚)
○(250枚)
○(普通紙のみ/150枚)
その他
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
○(普通紙のみ)
特殊機能
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
○(オートフォトファイン!EX)
○(自動写真補正II)
○(自動写真補正II)
特定インク切れ時印刷
カラーインク切れ時にモノクロ印刷可(5日間のみ)
カラーインク切れ時にモノクロ印刷可(5日間のみ)
印刷速度
L判縁なし写真(メーカー公称)
56秒
56秒
17秒
35秒
A4普通紙カラー(ISO基準)
9.5ipm
7.2ipm
9.3ipm
5.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準)
15ipm
15ipm
12.5ipm
8.7ipm
スキャナ部
読み取り解像度
2400dpi
2400dpi
2400dpi
1200dpi
センサータイプ
CIS
CIS
CIS
CIS
ADF
○(30枚/両面)
○(30枚/両面)
○(35枚/両面600dpi/FAX時は片面)
○(30枚/600dpi)
ネガフィルム読み取り機能
スキャンデーターのメモリカード保存
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)
○(JPEG/PDF)
ダイレクト
印刷部
カードスロット
対応メモリカード
SD/MS/xD/CF
SD/MS/xD/CF
SD/MS/CF
SD/MS/CF
PCからドライブとして利用
外付けドライブ/USBメモリへ保存
外付けドライブ/USBメモリから印刷
○(USBメモリのみ)
○(USBメモリのみ)
手書き合成シート
PictBridge対応
赤外線通信
Bluetooth通信
△(オプション)
△(オプション)
各種デザイン用紙印刷
ノート罫線印刷(罫線・マス目・便箋)
ノート罫線印刷(罫線・マス目・便箋)
フォーム印刷(原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳)
フォーム印刷(原稿用紙・方眼紙・五線譜・レポート用紙・スケジュール帳・チェックリスト・漢字練習帳)
スマートフォン連携
対応端末
iPhone4 / 3G / 3GS / iPod touch / iPad / Android
iPhone4 / 3G / 3GS / iPod touch / iPad / Android
iPhone4 / 3G / 3GS / iPod touch / iPad / Android
iPhone4 / 3G / 3GS / iPod touch / iPad / Android
写真プリント
ドキュメントプリント
○(PDF / Word / Excel / PowerPoint)
○(PDF / Word / Excel / PowerPoint)
○(PDF・Androidは端末でスキャンし作成したPDFのみ)
○(PDF・Androidは端末でスキャンし作成したPDFのみ)
Webページプリント
スキャン
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
○(PDF/JPEG)
コピー部
拡大縮小コピー機能
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
○(25〜400%)
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
○(退色復元対応)
○(退色復元対応)
○(色あせ補正対応)
○(色あせ補正対応)
2アップ/4アップ
○/−
○/−
○/○
○/○
バラエティコピー
領域判定コピー
領域判定コピー
ページ順コピー
枠消しコピー
ページ順コピー
枠消しコピー
FAX機能
○(スーパーG3)
○(スーパーG3)
○(スーパーG3)
○(スーパーG3)
液晶ディスプレイ
3.5型(角度調整可)
2.5型(角度調整可)
3.0型
2.5型
操作パネル
静電式タッチパネル(7.8型・角度調整可)
ボタン式
デュアルファンクションパネル+ボタン式
ボタン式
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
446×368×300mm
446×360×226mm
491×448×218mm
458×415×198mm
重量
9.8kg
7.6kg
11.7kg
8.8kg

 まずはこれら4機種の概要を説明しよう。PX-603FはPX型番からも分かるように、全色顔料インクを用いた製品だ。またFAX無し複合機のPX型番は400番台しか無い事から、FAX付き複合機の顔料インクモデルというだけでなく、顔料インクモデルの中での上位モデルという位置づけにもなる。PX-673FはPX-603Fの前面給紙カセットを2段にし、一度にセットできる用紙枚数を倍にした製品だ。その他操作パネルが上位機種EP-904Fの前モデルEP-903Fと同等になっている。一方PIXUS MX883はFAX無し複合機のPIXUS MG5330にFAX機能とADFを追加した機種に近い。ただし完全に同じではなく、CD/DVDレーベル印刷に対応していない代わりに有線LANに対応していたり、ダイレクト印刷やコピー機能にも若干の違いがある。また、操作パネルは大きく異なる。PIXUS MX420はPIXUS MX883と似た本体ながら、様々な部分で機能が落とされており、プリント性能やスキャン性能的にはPIXUS MP4130に近い。
 では、まずプリンタ部から見てみよう。エプソンのPX-673FとPX-603Fは、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色構成で、最小インクドロップサイズも2plと上位機種EP-904Fより若干大きくなることから写真印刷画質ではEP-904Fに劣る。とはいえ2plでも十分に小さいため、色の薄い部分で目をこらせば粒状感が感じられる程度で、十分高画質である。ただし、全色が顔料インクを採用しているため、写真用紙のような光沢感の高い用紙に印刷しても、光沢感が薄れてポストカードのようになる点は注意が必要だ。ただ、その点さえ気にならなければインクは「つよインク200X」を採用しておりアルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年と耐保存性は高い。3つのインクサイズのインクを打ち分けるMSDTに対応しており、必要に応じて大きなインクを打ち分ける事で、カラーインクのノズル数がEP-904Fより少ない128ノズルはあるが、L判写真1枚は56秒とそれなりに高速に印刷できる。次にPIXUS MX883だが、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色の染料インクと、顔料のブラックインクを搭載する。写真印刷は4色で行う事になるが、最小インクドロップサイズは1plであるため、PX-673FやPX-603Fより高画質と言える。4色インクでの印刷でも最小インクドロップサイズがここまで小さいと粒状感は皆無である。また、染料インクで印刷するため、写真用紙への印刷時にも光沢感が薄れないのもうれしいところだ。インクは「ChromaLife 100+」であり、純正写真用紙の中で最上級のキャノン写真用紙・光沢 ゴールドを使用する事で、アルバム保存300年、耐光性40年、耐オゾン性10年を誇っている(キャノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]ではそれぞれ200/50/10年、キャノン写真用紙・光沢/光沢 プロフェッショナルではそれぞれ100/40/10年)。最小インクドロップサイズは小さいが、ノズル数を多くすることでL判写真1枚が17秒と非常に高速なのも魅力だ。最後にPIXUS MX420だが、一見PIXUS MX883と同じインク構成のように見える。しかし、染料のシアン、マゼンダ、イエローと、顔料のブラックインクの4色構成となり、染料のブラックインクが省略されている。そのため、写真印刷時にブラックインクが使用できず、カラー3色を混ぜて黒に近い色にするため、どうしてもコントラストが弱くなってしまう。またインク滴が2plと大きくなりPX-603Fと同じサイズになっているため、PIXUS MX883よりも粒状感が強くなる。ブラックインクが使えない事と併せて、画質面では4機種中一番下となるだろう。ただし、染料インクで写真印刷が出来るため、光沢感の失われない印刷が可能なため、写真印刷に向いているという点ではPIXUS MX883と同じだ。インクもPIXUS MX883と同様の「ChromaLife 100+」なので耐保存性も問題ない。ただし、PIXUS MX883よりノズル数が少ないため、L判写真1枚が35秒とやや時間がかかるが、これでもPX-673FやPX-603Fよりは高速だ。写真印刷の面では、PIXUS MX883が画質、印刷速度の両面から向いていると言えるだろう。
 しかし、普通紙への印刷となると状況は異なる。PX-673FとPX-603Fは全色が顔料インクを採用しているため、普通紙や年賀状などへもにじみの少ないくっきりとした印刷が行えるメリットがある。場合によってはインク数が多く最小インクドロップサイズの小さなEP-904Fよりも綺麗に見える場合もあるだろう。また、耐水性も高いというメリットもあり、濡れた手で触ったりマーカーで線を引いても滲まない点で便利である。そのため、パソコンから普通紙への印刷や、普通紙コピー、年賀状印刷に向いている他、FAX機能を使う時も、受信したFAXを普通紙に印刷する際に高画質、高耐水で印刷が出来る。一方のPIXUS MX883とPIXUS MX420も顔料インクは搭載している物の、ブラックインクだけであるため、モノクロ印刷時はPX-673FやPX-603F同様、メリハリがあり耐水性のある印刷が行えるが、カラー印刷では染料インクを使用するためどうしても滲んでしまい、メリハリが弱くなる。また、印刷速度の面でも、A4普通紙カラーで比較すると、PX-673Fが9.5ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、PX-603Fが7.2ipm、PIXUS MX883が9.3ipm、PIXUS MX420が5.0ipmとなる。写真印刷とは逆にPX-673が最も高速で、PX-603FもPIXUS MX420を抜いている。またPX-673FとPX-603Fではカラーインクに対してブラックインクのノズル数が3倍の384ノズルとなっているため、モノクロ印刷時はさらに高速で、両機種ともA4普通紙モノクロは15ipmという速度を誇る。これはPIXUS MX883より速い。モノクロ原稿の印刷やモノクロコピー、ハガキの宛名面や、受信したFAXの印刷はPX-673FやPX-603Fの方が高速だと言えるだろう。写真印刷に強いPIXUS MX883とPIXUS MX420、普通紙印刷に強いPX-673FとPX-603Fという構図だ。ちなみに、PIXUS MX420以外の3機種は各色独立インクカートリッジであるため、無くなった色だけ交換できるが、PIXUS MX420はカラー3色が一体カートリッジとなるため、3色の内どれか1色でも無くなると他の色が無駄になるためコスト面では不利だ。
 給紙に関する部分を見てみよう。PX-603Fは前面給紙のみとなる。上位機種のEP-904Fと異なり、カセット内部は1段なので同時にセットできる用紙は1種類のみとなる。一方でセット可能枚数はA4普通紙で250枚と比較的多めで、大量印刷やコピーを行う場合や、FAXを頻繁に受信する場合でも安心である。しかし背面給紙がないため、特に厚い紙や封筒、ラベル用紙などへの印刷は問題ないとは言われていても、前面から給紙し前面から排紙するため用紙がプリンタ内部で曲げられるため少し心配だ。そしてその前面給紙カセットを2段にしたのがPX-673Fだ。純粋にPX-603Fの前面給紙カセットをもう一つ搭載したような形で、A4、B5、Legal、Letterサイズの普通紙がセットできるため、両カセットにA4用紙をセットして給紙枚数を500枚にすることも可能だ。もちろん上段にB5やL判写真用紙、下段にA4というような使い方もできる。一方、PIXUS MX887は背面給紙と前面給紙カセットの両方に対応する。前面給紙カセットは普通紙のみとなるが、前面にA4普通紙、背面にB5普通紙というようにサイズの異なる普通紙をセットしたり、前面に普通紙、背面に写真用紙をセットしたりという事もできるため便利である。セット可能枚数はA4普通紙で、前面背面共に150枚で、両方にA4普通紙をセットすれば300枚と、PX-603Fを超える事になる。大量印刷に備えることも2種類の用紙をセットすることもでき、また片方が背面給紙なので厚紙や封筒などへの印刷も安心だ。最後に、PIXUS MX420だが、3機種で最も価格が安いため背面給紙のみとシンプルである。セット可能枚数もA4普通紙100枚と他の3機種に比べると寂しい枚数だ。
 自動両面印刷にはPX-673F、PX-603F、PIXUS MX887の3機種が対応している。ただしPX-673FとPX-603Fは普通紙のみの対応である。対応用紙サイズは、PX-673FとPX-603FはL判サイズ以上でPIXUS MX883とPIXUS MX420は名刺サイズ以上である。名刺サイズに印刷する場合はキャノンの機種である必要がある。以上より、給紙関連の機能ではPIXUS MX883が若干便利だが、給紙枚数ではPX-673Fが一番多く、PX-603Fも十分に覆い。価格の安いPIXUS MX420は若干物足りない印象だ。
 写真印刷時の自動補正機能は、PX-673FとPX-603Fが「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MX883とPIXUS MX420は「自動写真補正II」である。名称は異なるが、どちらも逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる高性能なものだ。また、いずれもパソコンからだけでなくダイレクト印刷時にも使用できるので便利である。一方4機種ともCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷には対応していない。おもしろい機能としてはPX-673FとPX-603Fのカラーインクが切れた際にもモノクロ印刷は継続できる機能がある。通常は1色でもインクが無くなるとプリントが出来なくなるため、便利な機能である。ただし5日間限定であり、常にカラーインクを搭載せずに使用できるわけではない。
 続いて、スキャナ部を見てみよう。スキャン解像度はPX-673F、PX-603F、PIXUS MX883の3機種は2400dpi、価格の安いPIXUS MX420は1200dpiとなる。解像度に差はあるが、3機種とも紙原稿のみのスキャンであるため、たとえL判写真でも1200dpiでスキャンするとかなりのドット数になってしまい扱いにくくなってしまうので、通常は300〜600dpi、最大でも1200dpiで利用する事になるだろう。そうなると、スペック上の解像度の差ほど使用する上での差はないといえる。また、いずれもCIS方式であるため、分厚い本など浮いてしまう原稿は苦手だ。一方、4機種ともFAX機能を搭載しているため、ADFを備えている点は便利である。PX-673FとPX-603Fは30枚、PIXUS MX883は35枚、PIXUS MX420は30枚まで原稿を一度にセットできる。それだけ見ると差はほとんど無いように見えるが、実は大きな差がある。PX-673FとPX-603FはADF使用時には両面スキャンが可能になっており、両面原稿をコピーやFAXする場合に重宝する。またADF使用時にもスキャン解像度に制限はない。一方PIXUS MX883も両面スキャンが可能なADFとなっているが、両面スキャンはFAX時には使用できないという制限があるため、コピーやスキャンしてパソコンに取り込む際にしか使用できないのは残念だ。また、両面・片面に関わらずADF使用時にはスキャン解像度は最大600dpiになる。最後にPIXUS MX420は、片面読み取りのみのADFとなっている。また、ADF使用時にはスキャン解像度が最大600dpiとなる点はPIXUS MX883と同様である。4機種はスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能を搭載しているのは便利だ。以上より、スキャナの機能はスキャン解像度が高く、ADF使用時にも解像度に制限が無く、両面スキャンも行えるをPX-673FとPX-603Fが便利だと言えるだろう。ちなみに、4機種に共通する注意点としては、対応する原稿サイズはA4、レターサイズ、リーガルの3種類のみで、それより小さなB5などの原稿には対応しない点である。そのため雑誌や漫画等をスキャンしてデジタル化する、いわゆる「自炊」用途には、原稿サイズによっては行えなず、完全にドキュメントスキャナ代わりに使用する事は難しいだろう。
 ダイレクト印刷は、SDカード/メモリースティック/コンパクトフラッシュは4機種とも対応しているが、xDピクチャーカードに関してはPIXUS MX883とPIXUS MX420は対応しておらず、アダプタが必要である。ただ、最近のデジタルカメラはSDカードかメモリースティックのどちらかなので、問題になることは少ないだろう。念のため持っているデジカメのメモリカードの種類を確認した方が良さそうだ。さらに、全機種がPictBridgeに対応している他、USBメモリからの印刷にも対応しているなど、様々な方法でダイレクト印刷が可能である。さらにPX-673FとPX-603FはUSBメモリだけでなく対応の外付けドライブへのメモリカードからのバックアップが可能であったり、それらからの印刷も行えるようになっている。それ以外に、PX-673FとPX-603Fはパソコンを使わず写真を背景に印刷した便箋を始めとする罫線やマス目などの用紙がパソコンを使わずに印刷できる「ノート罫線印刷」機能を備えている。一方のPIXUS MX883とPIXUS MX420の2機種も似た機能を備えており、原稿用紙、方眼紙、五線譜、レポート用紙、スケジュール帳、チェックリスト、漢字練習帳の印刷が行える「フォーム印刷」機能を備えている。一方上位機種では一般的な手書き合成シートや赤外線通信は、4機種とも搭載していない。
 スマートフォンとの連携機能も全機種が搭載している。いずれもiPhone4/iPhone3G/iPhone3GS/iPod touch/iPad/Androidに対応しており、専用のソフトを用意する。撮影した写真がスマートフォンからの操作で手軽に印刷でき、その際、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、パソコンから印刷するのと変わらないレベルで印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。ただしPX-673FとPX-603FはPDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応しており、Webページの印刷もできる一方、PIXUS MX883とPIXUS MX420はPDFのみで、しかもAndroidはAndroid端末でスキャンして作成したPDFファイルのみ対応している。ドキュメント印刷を行うならPX-673FとPX-603Fの方が便利だろう。またスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。
 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、全機種が単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行えるだけでなく、25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える高性能な物だ。それ以外の機能としては、4機種とも、写真を複数枚原稿面に起き、一度に数枚の写真の焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、名称はPX-673FとPX-603Fが「退職復元」機能、PIXUS MX883とPIXUS MX420は「色あせ補正」機能と名称は異なるが、昔の色あせした写真を自動で補正してくれる機能を備えており、なかなかの精度なので、コピー目的ではなく色の復元目的での焼き増しも行える。4機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応している。さらにキャノンの2機種は4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。バラエティコピーを見てみると、エプソンの2機種は文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」機能のみを備える。一方でキャノンの2機種は厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能と、ADFを使用して複数枚原稿を複数部コピーする際に1部ずつまとめてコピーする「ページ順コピー」機能を備えている。
 それでは肝心のFAX機能を見てみよう。4機種ともスーパーG3に対応しており、モノクロ、カラーFAXを行う事が出来る。全機種ともADFを搭載しているため、複数枚の原稿の送信も便利である。ただし両面原稿を一度にFAXするのはPX-673FとPX-603Fしか使用できない。33.6Kbpsで通信可能であり、その場合の伝送速度はモノクロで約3秒というのも共通だ。また読取走査線密度はモノクロで「8pels/mm×3.85line/mm又は8pels/mm×7.7line/mm、カラーで200×200dpiなのも共通である。更にキャノンの2機種はモノクロ時に300×300dpiのファインEXモードを備えているが、大きな差ではないだろう。ダイヤル機能としは、PX-673FとPX-603Fは短縮ダイヤルに60件登録でる。PIXUS MX883は短縮ダイヤル100件を登録できる。PIXUS MX420は短縮ダイヤル20件と少なくはなるが、価格を考えれば仕方がないだろう。また、全機種とも家庭向けの複合機に付いているFAX機能だからといって基本的な機能は搭載されているため安心と言える。受信したファクスの最大保存ページ数はPX-673FとPX-603Fが180枚又は30件、PIXUS MX883が250枚又は30件なのに対して、PIXUS MX350は50枚又は20件と少々劣る。4機種とも家庭で使う分には十分なメモリ量を備えているが、FAXの受信が多いとわかっている場合、PIXUS MX350は少し心許ない。その他、4機種ともグループダイヤル、順次同報送信、自動リダイヤル機能を備えているため、一般的な家庭用FAX電話以上の事が可能だ。さらに4機種ともモノクロ送信のみとなるなど制限はあるが、パソコン内のデータを直接画像データとしてFAXできる「PCファクス」機能を備えているのも便利である。
 操作パネルを見てみよう。PX-673FとPX-603Fは前面給紙カセットが1段か2段かの違いだけに見えるが、操作パネルは大きく異なる。PX-673Fの操作パネルは上位機種EP-904Fとほぼ同等であり、非常に使いやすい。液晶ディスプレイと操作パネルが本体前面に配置され、操作パネルごと持ち上げて角度調整が可能である。見やすい、操作しやすい角度に調整できるので便利だ。そして、液晶ディスプレイが3.5インチと十分な大きさである事もあるが、液晶パネルを含む7.8インチ分がタッチパネルとなっているのが大きなメリットなのである。「ホーム」などのどの場面でも使用するボタンや、左右カーソルや「+」「−」「OK」「スタート」といった比較的使用頻度の高いボタンは、液晶ディスプレイ外に配置され、使用できるボタンだけがオレンジに光る。そして、「コピー」や「スキャン」といった機能の選択や、例えば「どういったコピーを行うか」というような、表示内容がその時々によって大きく変化したり、詳しい説明が必要なボタンに関しては、液晶ディスプレイに表示され、直接タッチする事になる。使えるボタンだけが光るため迷うことが無く、さらに電源をオフにしたときにボタンが見えないためデザイン的にもスマートだ。さらにFAX付きの機種は電話番号用のテンキーや短縮ダイヤルのボタンなど、どうしてもボタン数が増えてしまい、操作パネルが分かりにくくなるが、PX-673Fの場合は液晶ディスプレイ部にテンキー等を表示することが出来るため、ボタン数がFAX無しの機種のEP-904Aと変わらないレベルに抑えられるのも分かりやすくて便利である。PX-603Fの操作パネルと液晶ディスプレイもPX-673Fと同じく本体前面に配置される。そして液晶ディスプレイだけでなく操作パネルごと持ち上げて角度調整が可能である。90度まで持ち上げることはできないが、見やすい角度に調整できる点で便利だ。液晶ディスプレイは2.5型と比較的見やすいサイズとなっているが、操作パネルは、PX-673Fのような静電式タッチパネルではなくボタン式となっており、液晶ディスプレイもタッチパネルではないため、ボタン数は多めなのは仕方のないところだろう。また、ボタン一つに1つの機能だけを割り当ててあるため、ボタン数が特に多く、またボタン自体も小さくなってしまうが、どのボタンなのかはわかりやすい。PIXUS MX883とPIXUS MX420の操作パネルは非常に似ている。本体は側面から上面に移る部分が大きく斜めに面取りされており、その部分に液晶ディスプレイと操作パネルが配置されている。斜めになっているため正面からでも上からでも見やすいようになっている。また、液晶ディスプレイはPIXUS MX883が3.0型、PIXUS MX420が2.5型と大きく視認性は高めだ。一方で、操作パネルはおろか液晶ディスプレイも角度調整ができないのは残念である。両機種ともボタン式であるが、実際にはPIXUS MX883の方が便利に作られている。液晶の右側にある4×4個のボタンの内容が2種類に切り替えられるのである。FAX利用時には、右側3列がダイヤル用のテンキーになり、左1列が上下カーソルと「OK」「戻る」になっている。一方コピー使用時には、テンキーのあった部分に上下左右カーソルとその中心に「OK」ボタンがあり、左1列は「+」「−」「戻る」ボタンになる。このように、テンキーが必要ない時はテンキーが消えるなど、わかりやすくなっている。一方、PIXUS MX420は液晶の右側に十字カーソルキーがあり、その横にテンキーがある。PIXUS MX883の用に表示が切り替えられる訳ではないので、ボタン数が多くなる。操作パネルの使いやすさでは、1位がタッチパネルのPX-673Fで、2位がボタンの内容が切り替えられるPIXUS MX883、3位がボタン式だが操作パネルごと角度調整できるPX-603F、4位がPIXUS MX420だと言えるだろう。
 インタフェースは4機種ともUSB2.0と有線・無線LANの接続に対応している。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANはIEEE802.11nに対応しており、無線LAN接続時でも、プリントやスキャンがストレス無く行えるようになっている。
 本体サイズを見てみよう。PX-603Fは最近の複合機がコンパクトボディになっている流れに乗っており、446×360×226mmと比較的コンパクトである。上位機種のEP-904Fの465×458×198mmと比べると、高さは28mm大きくなっているが、横幅は12mm、奥行きは98mm小さくなっており、設置面積ではEP-904Fより小さい。デザインもブラックボディでパソコンの周辺機器らしさを抑えたデザインなので、リビングなどに置くことも可能だろう。置き場所は比較的困らないはずだ。PX-673Fは446×367×300mmで、横幅は同じで奥行きも8mm長いだけなので、設置面積はPX-603Fとほぼ同等だ。ただ、前面給紙カセットが2段になっている分高さは74mmも高くなっており、見た目にも「高い」と感じる。一方、PIXUS MX883は491×448×218mmで、PX-603Fと比べると高さこそ8mm小さいが、横幅が45mm、奥行きが88mmも大きいため、一目見てもかなり大きく見える。デザイン的にはブラックボディでパソコンの周辺機器らしさは減っているので、設置スペースさえ確保できればリビングなどでも置けそうだ。PIXUS MX350は機能が少ない分小型になっており458×415×198mmである。それでもPX-603Fと比べると横幅が12mm、奥行きが55mmも大きいため設置面積はPX-603Fより大きい。デザインはPXISU MX883と同じなので問題ない。
 機種は4機種あるが、それぞれ特徴が異なるので、非常に選びやすい。まず写真印刷もよく行うという場合はPIXUS MX883がオススメだ。光沢感のある写真印刷が可能で、しかも印刷が速い。その他の機能も豊富で給紙枚数も多く、操作パネルも優秀で、家庭内使用する1台目としてオールマイティーに使えるためおすすめできる。ただし本体サイズの大きさは一度確認してもらいたい。一方、写真印刷を行うが、少しでも安くと言うならPIXUS MX420である。エプソンとキャノンのFAX付き複合機の中で最も安価なモデルであり、少しでも安価にFAX付き複合機を購入したい人にはベストな選択肢となるはずだ。インクカートリッジがカラー3色一体であったり、写真印刷時にブラックインクが使えなかったり、両面スキャンが行えなかったりと省かれた機能は多いが、それらに納得いくなら、基本的な機能は搭載しているため問題はないだろう。逆にFAXやコピー、文書印刷、年賀状印刷を主体に考えるならPX-673FやPX-603Fがオススメだ。顔料インクであるためこれらには高画質、高耐水性の印刷が可能で、しかも高速だ。スキャンの機能なども両面スキャンが制限無く使用できるし、その他の機能も豊富だ。普通紙印刷主体ならPIXUS MX883よりもオススメと言えよう。一般的にはPX-603Fで十分だと言えるが、給紙枚数の多さや操作パネルの便利さに惹かれ、本体の高さがかなり大きい事が問題ないならPX-673Fという選択肢も有りだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PX-673F
PX-603F
PIXUS MX883
PIXUS MX420