小ネタ集
2011年末時点のプリンタ
〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜
(2011年9月26日公開/2011年12月8日更新)

プリンタ比較の記事は、新製品が数多く発表される「年末」と「春」の2回に掲載しています。
古い記事も過去の情報として利用できると考え、新製品を掲載したものは、新たな記事として掲載していますので、現在この記事は既に古くなっている可能性があります。
プリンタ比較を参考にされる方は、プリンター徹底比較の一覧ページより、最新のものをご覧ください。


3万円台中盤のA3単機能プリンタ
 
 A3対応の単機能プリンタで3万円台中盤というと、購入しやすい価格帯と言えるだろう。。エプソンのPX-1200とキャノンのPIXUS iX7000がこの価格帯の製品となる。2機種とも上位機種とは異なる本体デザインで、前面給紙が行える大柄な機種である。PX-1200は34,980円、PIXUS iX7000は35,000円と価格はほぼ同じであるが、どのような違いがあるのだろうか。

メーカ
エプソン
キャノン
品番
PX-1200
PIXUS iX7000
製品画像
予想実売価格
34,980円
35,000円
プリンタ部
インク
色数
4色
5色+クリア
インク構成
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
フォトブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
クリア
カートリッジ構成
各色独立
各色独立
顔料/染料系
顔料
(つよインク200X)
顔料
(LUCIA)
ノズル数
768ノズル
3584ノズル
カラー:各128ノズル
黒:384ノズル
C/M:各1024ノズル
Y/染料Bk/顔料Bk:各512ノズル
最小インクドロップサイズ
2pl(MSDT)
2pl
最大解像度
5760×1440dpi
4800×1200dpi
給紙関連
対応用紙サイズ
L版〜A3ノビ
名刺〜A3ノビ
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○(普通紙以外)
前面
○(250枚)
○(250枚)
○(カセット・普通紙のみ250枚・A3まで)
○(手差し・普通紙のみ10枚)
その他
自動両面印刷
○(普通紙のみ)
○(ハガキ非対応)
特殊機能
CD/DCD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
○(オートフォトファイン!EX)
パソコンから印刷時のみ
○(自動写真補正II)
パソコンから印刷時のみ
特定インク切れ時印刷
カラーインク切れ時モノクロ印刷可
(5日間のみ)
PictBridge
メーカー公称印刷速度
L判写真(縁なし)
60秒
38秒
A4普通紙
カラー
8.0ipm
8.1ipm
モノクロ
15ipm
10.2ipm
インターフェイス
USB他
USB2.0×1
USB2.0×1
無線LAN
IEEE802.11n/g/b
有線LAN
100BASE-TX
100BASE-TX
外形寸法(横×奥×高)
558×414×264mm
647×519×260mm
重量
12.3kg
19.8kg

 まずはインクを見てみよう。PX-1200はブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色インク構成となり、最小インクドロップサイズは2plである。複合機などの上位機種と比べると劣るが、最小インクドロップサイズが2plと比較的小さいため、粒状感はそれほど無い。十分写真画質であり、ライトインクがないため薄い色の部分でよく見ると粒状感を感じてしまう程度である。ただし、インクは全色が顔料インクの「つよインク200X」となっているため、写真用紙への印刷は可能ではあるが、用紙本来の光沢感は薄くなり、ポストカードのような鈍い光沢感になってしまう点は注意が必要だ。一方、顔料インクの特徴として、普通紙への印刷では染料インクに比べシャープな印刷が行える事がある。そのため普通紙への印刷画質は高いと言える。さらに水に強いという特徴もあるため、濡れた手で触ったりマーカーを引いても滲まないという特徴がある。これらの特徴は普通紙への印刷だけでなく年賀状への印刷でも重宝するだろう。ちなみに耐保存性は、アルバム保存200年、耐光性45年、耐オゾン性30年となっており、かなり高いレベルである。そのため、光沢感が薄くなることさえ気にならなければ、写真を印刷した際の色あせなどの問題はクリアしており、写真印刷にも十分耐えうるものである。
 一方、PIXUS iX7000はインクは5色構成となる。構成はフォトブラック、マットブラック、シアン、マゼンダ、イエローとなり、ブラックは2種類搭載されるが、写真時はフォトブラック、普通紙モノクロ印刷時はマットブラックと使い分けられるため実質4色印刷となる。また最小インクドロップサイズは2plとなるため、色数や最小インクドロップサイズのどちらもPX-1200と同等と言える。そのため色の薄い部分などで若干粒状感が出る程度で十分写真画質に印刷できる。インク自体も、PX-1200と同じく全色顔料で、LUCIAインクを使用する。そのため、普通紙印刷時のシャープさや耐水性の高さといった特徴も同じで、濡れた手で触ったりマーカーを引いても安心である。そして、PIXUS iX7000では、顔料インクの得意とする普通紙印刷画質をさらに高めるためにクリアインクと「PgR」テクノロジーを搭載している。これは、インクの染み込みやすい普通紙の表面全体にこのクリアインクを塗布することで、顔料インクを用紙に染み込ませず表面近くに定着させるという技術である。これにより、顔料インクの特徴であるシャープで発色の良さがさらに際だつこととなる。雰囲気としては、普通紙でもファイン紙のようなコーティングをした用紙のような印刷が可能になるわけである。クリアインクは用紙全体に塗布するため、通常のインクを搭載する所とは別の所の本体左奥に、かなり大型のものを搭載する。塗布もプリントヘッドを左右に動かす方式ではなく、印刷前に塗布用ローラーを通過させ、そこで塗布する形となっている。一方でクリアインクの塗布は用紙設定を普通紙以外に設定すると一切行われないため、写真用紙への印刷では光沢感が失われてしまい、ポストカードのようなくすんだ光沢になってしまう点はPX-1200と変わらない。
 両機種とも写真印刷はやや苦手だが、印刷画質は比較的高く、普通紙への印刷では画質、耐水性共に非常に優れている。PX-1200のレベルでも十分だと言えるが、より普通紙への高画質印刷を求めるならPIXUS iX7000となるだろう。
 対応する用紙は、最大サイズがA3ノビまでとなるのは同等だ。ただし最小サイズは、PX-1200がL判サイズなのに対して、PIXUS iX7000は名刺サイズと、より小さな用紙サイズに対応する。名刺サイズの用紙に直接印刷したいならPIXUS iX700という事になる。給紙に関しては、PX-1200が前面給紙カセットのみ、PIXUS iX700が背面給紙と前面給紙カセット、前面手差し給紙となる。PX-1200は、前面給紙カセットを2段搭載でき、それぞれに普通紙で250枚までセットできる。カセット2はB5より大きな用紙で、封筒やハガキ用紙はセットできない物の、組み合わせの自由度は比較的高い。A4とA3や、ハガキとA3、L判写真とA4というように自由に組み合わせられる他、2段ともA4やA3サイズをセットし、500枚の給紙を行うこともできる。給紙枚数はかなりの物である。しかし背面給紙がないため、特に厚い紙や封筒、ラベル用紙などへの印刷は問題ないとは言われていても、前面から給紙し前面から排紙するため用紙がプリンタ内部で曲げられるため少し心配だ。一方のPIXUS iX7000は、まず前面給紙カセットがある。最大A3ノビ用紙までセットできるだけでなく、普通紙で250枚という大量の用紙をセット可能である点は、PX-1200の前面給紙カセットと同じだ。ただし、PIXUS iX7000は前面給紙カセットは1段で、代わりに背面給紙も行える。しかし、ここでいくつか注意が必要なのが、前面給紙カセットはハガキや写真用紙には対応せず普通紙のみであること、逆に背面給紙トレイは普通紙には対応しない事である。特に背面給紙が普通紙に対応しないのは他機種にはない事であり注意が必要だ。よって前面給紙カセットには常に普通紙をセットしておき、背面は写真用紙をセットしておいたり、封筒やハガキなどに印刷するために空けておくという事になるだろう。使い分けが可能なのは便利だし、背面給紙があるため、厚紙やラベル用紙や封筒などへの対応も安心だが、セットできる用紙の制限は多く、両方にA3普通紙をセットして、給紙枚数を増やすことができないのは残念だ。PIXUS iX7000ではこれ以外に、排紙トレイ部分から手差しによる普通紙の給紙にも対応する。A3用紙までで最大10枚となるが、例えば前面給紙カセットにA3用紙をセットしている状態で、数枚のA4原稿の印刷を行う必要が出たといった状況でも、前面給紙カセットの用紙を入れ替えずに対応できるのが非常に便利である。給紙に関する部分では、それぞれ特徴があるので、使い方に併せて選びたいところだ。ちなみに両機種とも、前面給紙カセットは、A3などの大きな用紙をセットすると、本体より前に飛び出す点は注意が必要だ。実際に使用するときは排紙トレイを開けるため、使用時には気にならないが、使用しないときでも設置面積が必要だ。また、PX-1200はA4サイズ以下の用紙の場合は本体に完全に収まる長さにできるが、PIXUS iX7000では用紙サイズに合わせて長さは短くなる物の、本体に完全に収まる所までは短くならない。
 自動両面印刷機能は両機種が対応する。前面給紙カセット対応もそうだが、A3プリンタではこの2機種が唯一である。PX-1200は普通紙のみ、PIXUS iX7000もハガキには対応していないという制限はあるが、便利だろう。一方CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能は両機種とも備えていない。手軽に写真印刷が行えるよう、写真の自動補正機能としてPX-1200は「オートフォトファイン!EX」を、PIXUS iX7000は「自動写真補正II」を備えている。「オートフォトファイン!EX」は顔を自動判別し、シーンに合った補正をするもので、逆光写真や色かぶりも自然に補正してくれる機能である。一方「自動写真補正II」も顔を自動検出し、顔とそれ以外の部分の露光状態を別々に解析して、それぞれに合った明るさに補正してくれる機能である。つまり、両機種とも高精度で自動補正をする機能を搭載している。その他のおもしろい機能として、PX-1200はカラーインクが切れた際にもモノクロ印刷は継続できる機能を備えている。通常は1色でもインクが無くなるとプリントが出来なくなるため、便利な機能である。ただし5日間限定であり、常にカラーインクを搭載せずに使用できるわけではない。
 PX-1200は2plと最小インクドロップサイズが比較的小さい上に、ノズル数がカラーは各128ノズルとやや少ないが、3つのサイズのインク滴を打ち分ける「MSDT」に対応しているため、印刷速度はL判縁なしで60秒とそれなりに高速だ。一方のPIXUS iX7000も最小インクドロップサイズは小さめだが、ノズル数を多くすることで、L判縁なし印刷速度は38秒とPX-1200より高速だ。また両機種とも複合機の上位機種ほどは速くないが、それほどストレス無く使用できる速度だ。また、これは写真印刷の場合の事であり、普通紙への文書印刷では状況が異なる。A4普通紙カラーで比較すると、PX-1200では8.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、PIXUS iX7000が8.1ipmとほぼ同等の速度となる。またPX-1200ではカラーインクに対してブラックインクのノズル数が3倍の384ノズルとなっているため、モノクロ印刷時はさらに高速で、PX-1200のA4普通紙モノクロは15ipmという速度を誇る。これはPIXUS iX7000の10.2ipmより速い。もともと写真印刷には向いていない機種だけに、速度面ではPX-1200の方が有利と言えるだろう。
 インタフェースは両機種ともUSB2.0に加えてネットワーク接続が可能だ。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には、家庭内のどのパソコンからでも印刷できるため非常に便利だろう。ただしPX-1200Fは無線LAN、有線LANの両方に対応しているが、PIXUS iX7000は有線LANのみの対応となる。また、PX-1200の無線LANはIEEE802.11nに対応しているので、無線LAN接続時でもストレス無く使用できる。
 本体サイズは、PX-1200が558×414×264mm、PIXUS iX7000は647×519×260mmである。縦・横・高さ全てがPX-1200の方が小さい事になるため、PX-1200の方が設置しやすい。ただ、下位機種のPX-1004が616×322×214mmである事を考えると、奥行きと高さは大きめだ。また前面給紙カセットに大きめの用紙をセットする場合は、さらに前方にスペースが必要だ。前面給紙や自動両面印刷機能を備えたこの2機種は、大きめであることは確かである。購入前に一度店頭でサイズを確認した方が良いかもしれない。ただし大きいなりにもPX-1200の方がコンパクトなのは事実で、設置面積を考えるとPX-1200が有利だ。
 この2機種を見ると、普通紙やハガキなどへの印刷が得意という点で似ていることが分かる。写真印刷も行うなら、下位機種のPM-G4500やPIXUS iX6530がオススメだ。一方普通紙やハガキなどへの印刷が主体で、この2機種か選ぶ場合、それぞれ特徴的な部分のどちらに惹かれるかが決め手となる。クリアインクと「PgR」テクノロジーにより、より高画質な普通紙印刷が行える点に惹かれたならPIXUS iX7000だ。給紙の面では、大量給紙に惹かれるならPX-1200、組み合わせに制限はあるが背面給紙ができる点に惹かれるならPIXUS iX7000だ。普通紙印刷の高速さに惹かれるならPX-1200、名刺サイズへの印刷が気に入ったらなPIXUS iX70000だ。USB2.0や有線LAN接続なら、どちらの機種でも良いが、無線LAN接続を行いたいならPX-1200となる。このように使う機能、気に入った機能を明確にすることで機種は決まるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
エプソンhttp://www.epson.co.jp/
キャノンhttp://canon.jp/


PM-G4500
PIXUS iX7000
PIXUS iX6530