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2012年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2012年11月26日公開/2013年1月24日追記)
新製品としては高性能ながら手に入れやすい2万円台中盤の機種である。この価格帯にはエプソンのEP-775AとキャノンのPIXUS MG5430がラインナップされている。EP-775Aは25,400円、PIXUS MG5430は26,800円だ。上位機種と共通の機能も多く、デザイン上も上位機種に似ているが、一方で省かれた機能もある。それぞれどのような機能を搭載し、どのような機能が省かれたのかを知ることで、どちらの機種が良いのかわかるだろう。
まずプリンタ部から見てみよう。EP-775Aのプリンタ部は基本的に最上位機種のEP-905Aと同等である。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色に加え、ライトシアンとライトマゼンダという色の薄いインクを使うことで、色の薄い部分でも粒状感がおさえられる。さらに、最小インクドロップサイズが1.5plと非常に小さいことと併せて、非常に高画質だ。一方のPIXUS MG5430は5色構成となるが、ブラックを2種類搭載しているため、実質4色印刷となる。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色のみとEP-775Aより劣るが最小インクドロップサイズは1plと非常に小さいため、こちらも非常に高画質だ。よく目を凝らして見ればEP-775Aの方が若干高画質と言えるだろうが、どちらの機種も満足いくレベルである。一方PIXUS MG5430は染料ブラックに加えて顔料ブラックも搭載しているため、普通紙などへのモノクロ印刷ではメリハリのある印刷が行えるというメリットがある。EP-775Aの普通紙への印刷画質も悪くはないが、年賀状の宛名面やモノクロ文書の印刷などはPIXUS MG5430の方が高画質だ。また両機種とも最小インクドロップサイズは非常に小さいが、EP-775AはAdvanced-MSDTという5つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化と高画質化を両立しており、PIXUS MG5430はノズル数を非常に多くすることで、最小インクドロップサイズは小さくても高速化を実現している。結果、L判縁なし写真印刷で、EP-775Aが17秒、PIXUS MG5430が18秒と非常に高速になっており、枚数の多くなる年賀状や、写真の印刷でもストレスのない速度となっている。一方、普通紙への印刷速度はEP-775Aは公表されていないため、比較することはできないが、PIXUS MG5430ではカラーが10ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、モノクロが15ipmとなっている。1分間にカラー原稿が10枚というのは非常に高速だと言えるだろう。このように印刷速度は互角で、画質はどちらも十分高画質だが、写真などの印刷はEP-775Aが、モノクロ文書の印刷はPIXUS MG5430がやや有利と言えるだろう。 インクはEP-775Aは「つよインク200」である。今年より採用された新インクであるため、アルバム保存300年、耐光性50年、耐オゾン性10年となる。一方、PIXUS MG5430は「ChromaLife100+」であり「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」を使用することにより、アルバム保存300年、耐光性40年、耐ガス性10年を実現している(キャノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]ではそれぞれ200年、50年、10年)。どちらも十分なレベルの耐保存性を持ったインクである。また、両機種とも各色独立インクとなっており、なくなった色だけ交換できる。 給紙に関しては、両機種とも前面給紙カセットが基本となる。EP-775Aは上位機種とは異なり1段となっており、セットできる用紙は1種類だけだ。L判からA4サイズまで対応しており、A4普通紙で100枚までセット可能だ。一方PIXUS MG5430は2段となっており2種類の用紙を同時にセット可能だ。下段はA4、A5、B5、レター、リーガルサイズ対応、上段はL判、KG、2L判、ハガキサイズ対応となっており、使用できるサイズが完全に分けられている。下段はA4普通紙なら125枚、上段はハガキなら40枚までセット可能で、2種類の用紙をセットしておける点だけでなくセット可能枚数でもPIXUS MG5430が便利である。 CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷機能は両機種が備えている。エプソンの機種も今年からトレイを挿し込むタイプに戻ったため、利便性では両機種に大きな差はない。トレイも、未使用時には前面給紙カセットの下に収納できるようになっている点も同等だ。一方、自動両面印刷機能はPIXUS MG5430だけ搭載している。同時両面印刷ではなく片面印刷後に乾燥時間も必要だが、普通紙だけでなくハガキなどにも対応するため、年賀状で通信面と宛名面を用紙の差し替え無しで印刷できるなど、便利である。写真の自動補正機能としては、EP-7755Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MG5430は「自動写真補正II」を搭載する。名称は違うものの、どちらも、逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われるという高性能な物だ。またパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷時にも利用できる。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はEP-775Aが1200dpi、PIXUS MG6330が2400dpiとなる。解像度に大きな差があるように見えるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも高解像度過ぎるレベルで、実際には300dpiや600dpiで使うことを考えると実際に使う上での差はあまりないと言える。いずれもCIS方式、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿は苦手だ。ちなみにスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能は、両機種とも搭載している。 ダイレクト印刷も両機種とも搭載している。対応メモリカードは、EP-775AがSDカードとメモリースティックDuo、PIXUS MG5430がSDカードとメモリースティックとなり、両機種とも上位機種より対応するメモリカードが絞られている。最近のコンパクトデジカメや携帯電話はSDカードの機種のみで、数年前までさかのぼってもメモリースティック対応の機種があるだけなので、これら2つに対応していれば問題ないとも言えるが、念のため手持ちのデジタルカメラのメモリカードを確認した方が良さそうだ。ちなみに、PIXUS MG5430は標準サイズのメモリースティックに対応、EP-775AはメモリースティックDuoに対応しているが、メモリースティックは標準サイズからDuoに移行したのはずいぶん前のことなので、問題にはならないだろう。むしろアダプタが不要なだけ、EP-775Aの方が細かい点で便利と言えるかもしれない。 これらメモリカード以外に、EP-775AはUSBメモリからの印刷にも対応している。さらに、各種メモリカードからUSBメモリへのバックアップが可能な他、USBメモリ以外に対応の外付けハードディスクや外付けDVDドライブへのバックアップやそれらからの印刷も行える。その上、EP-775AをLAN接続をしている場合、他のパソコンから外付けハードディスクのデータにアクセスが可能な「外部機器共有」機能も備えている。つまりEP-775A単体でメモリカード内の写真やスキャンした写真や原稿を外付けHDDに保存でき、それらに家庭内のどのパソコンからもアクセスできるわけである。PictBridgeは両機種とも搭載しているが、EP-775AはUSB接続方式のみ、PIXUS MG6330ではWi-Fi接続方式のみとなっている点は注意が必要だ。それぞれ一方のみの対応だが、現段階ではUSB接続方式の機種が多く、こちらに対応しているEP-775Aの方が対応機種は多い。 ダイレクト印刷時の機能として代表的な手書き合成シートも両機種とも対応している。またPIXUS MG5430はCD/DVD/Blu-rayレーベルの手書き合成にも対応している。その他、EP-775Aでは塗り絵風の輪郭だけの印刷や、写真を背景に印刷した便箋を始めとする罫線やマス目などの用紙が印刷できる。一方のPIXUS MG5430ではカレンダーや原稿用紙、方眼紙、五線譜などが印刷できる機能を備えている。さらに、「Web定型フォーム印刷」機能を搭載し、本体内蔵の定型フォームだけでなく、Web上から最新の定型フォームをダウンロードし、印刷できるようになっている点が目新しい。両機種とも単体でも機能は豊富であるといえる。 スマートフォンとの連携機能も両機種とも搭載している。いずれもiPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。専用のアプリを無料でダウンロードすることで行えるようになる。印刷できる内容としてまず写真がある。用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにドキュメント印刷にも対応している。ただしEP-775AはPDF/Word/Excel/PowerPointといった主要なファイルに対応しており(PowerPointはiOS版のみ)、Webページの印刷もできる一方、PIXUS MG5430はPDFのみ対応で、しかもAndroid端末はAndroid用アプリ上で作成したPDFファイルのみ対応している。ドキュメント印刷を行うならEP-775Aの方が便利だろう。また、両機種ともスマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。 さらにネットワークを利用したプリント機能として、EP-775Aは、印刷したい写真や文書を本機にメールすると自動で印刷できる「メールプリント」、スキャンした画像を離れた場所の対応複合機で印刷できる「メールdeリモート印刷」、通常のプリント同じ操作で、離れた場所のEP-775Aで印刷できる「リモートプリントドライバー」といった機能を搭載しているのが便利だ。ネットワークに接続されていることを最大限に生かしていると言えよう。一方のPIXUS MG5430は、本機にメールすると自動で印刷できる「メールからプリント」機能のみ搭載しているが、EP-775AがWord/Excel/PowerPoint/PDFの他、JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMPといった多種の画像形式に対応しているのに対して、PIXUS MG5430はPDFとJPEGだけの対応というのも少し寂しい。リモートプリント機能はEP-775Aの圧勝だ。ちなみにPIXUS MG5430の「メールからプリント」は2013年上旬対応予定で、本体のアップデートが必要なのは注意が必要だ。 コピー機能を見てみよう。単純なコピー機能としては、両機種とも単純な等倍コピーだけでなく、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載した高性能な物だ。またCD/DVD/Blu-rayレーベルコピーも両機種とも対応である。また原稿面に写真を複数枚置き、焼き増し風のコピーを行うことも出来る。この際、EP-775Aは「退色復元」、PIXUS MG5430では「色あせ補正」と名称は異なるが、両機種とも昔の色あせした写真も自動で補正してくれる機能も備えている。3機種とも2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応する。さらにPIXUS MG5430では4枚の原稿を1枚に縮小する4アップにも対応している。その他、EP-775Aはコピー時にも「塗り絵印刷」が行える他、見開きの本を左右ページで別々にコピーする「BOOKコピー」、アイロンプリント紙への印刷時に使える「ミラーコピー」、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」といった機能を備える。一方PIXUS MG5430には厚手の原稿など原稿台のカバーが浮いてしまう場合に黒くなる部分を消去する「枠消しコピー」機能を備える。それぞれ機能は異なるが、複合機単独で様々なコピーが行えるよう工夫されている。 操作パネルはEP-775Aが「LEDナビ」、PIXUS MG5430が「インテリジェントタッチシステム」となっている。名称は異なるが、どちらもタッチセンサー式のボタンを採用しており共通だ。表示内容に応じて使用できるキーだけが点灯するため分かりやすく、また電源をオフにしたときはボタンが見えなくなるため、デザイン的にすっきりしているというメリットがある。また、上位機種と異なり、液晶ディスプレイがタッチパネルではないのも共通だ。とはいえ、タッチセンサー式ボタンのため上位機種ほどではないが操作は比較的分かりやすいよう工夫がされていると言える。液晶ディスプレイは、EP-775Aが2.5型、PIXUS MG5430が3.0型と、PIXUS MG5430の方が上だ。2.5型でも小さいと言うことはないが、視認性の面ではPIXUS MG5430が良いだろう。一方、EP-775Aは液晶ディスプレイと操作パネルの角度調整が可能というメリットがある。液晶ディスプレイと操作パネルは本体前面に取り付けられているが、操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能だ。最大90度まで起こすことができるので、垂直から水平まで見やすい角度で操作ができるよう工夫されている。一方のPIXUS MG5430は、本体の上面から側面にかけて斜めに大きく面取りされた部分に埋め込まれている。残念ながら操作パネルも液晶ディスプレイも固定されていて角度調整はできない。斜めになっているため、どの角度からでもそれほど使いにくくはないだろうが、それでも高い位置に置くと、操作がしにくかったり、液晶ディスプレイが見にくいと言った事が起こりそうだ。液晶ディスプレイはやや小さいが、操作性はEP-775Aの方が上と言える。 インタフェースは両機種ともUSB2.0に加えて、無線LANに対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人には有線LAN/無線LANによりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANはIEEE802.11nに対応しているため、無線LANで接続した場合も、遅さを感じさせなくなっている点も両機種共通の便利な点だ。一方で、有線LANには対応しないため、無線LANの電波の届きにくいところでは使いにくいなどの点で上位機種よりは劣る。 本体サイズを見てみよう。両機種とも上位機種と同デザインを採用しているが、機能の差により若干サイズが異なっている。EP-775Aが390×341×138mm、PIXUS MG5430が455×369×148mmとなり、全体的にEP-775Aが小さい、特に横幅に関してはEP-805Aが約13.4%も小さいため、設置面積では約21%小さくなり、かなりの差である。高さもEP-775Aの方がわずかながら小さくなっており、圧迫感は少ない。PIXUS MG5430も従来機よりは低く抑えられているし、上面から側面にかけておおきく面取りされているため、数値より低く見えるが、横幅が大きいため余計に低く見えるともいえる。設置スペースを考えればEP-775Aの方が便利である。 両機種は似ているようで異なる部分も多いため、そのどちらに魅力を感じるかが機種を決める時の決め手となるだろう。まず、大きく違うのは本体サイズである。少しでも設置スペースを小さくしたいならEP-775Aがおすすめだ。操作パネルも角度調整ができるため、コンパクトでありながら操作性は上である。印刷画質に大きな差はないのだから、そういった点で決めるのも一つだろう。そして、逆に設置スペースは大きくても良いので、給紙が便利な方が良いというならPIXUS MG5430である。2種類の用紙が同時にセットでき、セット可能枚数も多く、自動両面印刷も行える点はメリットだ。一方、ダイレクト印刷時にUSBメモリや外付けドライブが使える点や、スマートフォントの連携機能、ネットワークプリントの豊富さという特徴がEP-775Aにはあり、それらに魅力を感じるならEP-775Aである。総合的に考えても良いし、自分の欲しい機能、魅力的な機能が搭載されている方を選ぶというのも良いだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/
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