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2012年末時点のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2012年11月26日公開/2013年1月24日追記)
1万円前半以下の機種というカテゴリだが、実際には10,800円以下で、3機種中2機種は1万円を切っている。新製品の複合機としては驚くほど低価格だ。しかしながら3機種とも以前からの継続販売で価格が下がったのではなく、2012年末の新機種である。そのため、機能的にはかなりスペックダウン、または限定された機種だが、その中でもそれぞれの機種が特徴を出している。エプソンからはPX-405AとPX-045Aの2機種、キャノンからはPIXUS MG3230が該当する。それぞれ10,800円、7.980円、9,980円と価格差がそれなりにあるが、どういった基準で選べばよいのか見ていこう。
まずプリンタ部から見てみよう。インク構成は3機種とも4色構成だ。本体の価格を考えれば仕方のないところだろう。いずれもブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色構成だが、PX-405AとPX-045Aは4色とも顔料インク、PIXUS MG3230はカラーインクは染料インクでブラックのみ顔料インクだ。写真用紙などに印刷する場合は染料インクの方が用紙の光沢感がそのまま出るため、向いているといえる。顔料インクではポストカードのような半光沢風になってしまう。また、顔料インクに対応していない用紙も一部存在する。一方、顔料インクのメリットは普通紙などに印刷したときに滲みの少ないメリハリのある印刷が行えるという点である。普通紙や年賀状などに印刷した際に、写真やイラスト、グラフなどがくっきりするだけでなく、黒地に白文字の様な中抜き文字の場合に、染料インクではにじんで中抜き部分が消えそうになる事があるが、顔料インクではくっきりしている。また耐水性が高く、濡れた手で触ったり、マーカー等を引いてもにじまないというメリットがある。写真印刷に向いていて用紙も選ばない染料インクと、普通紙に向いている顔料インクがあるわけである。 PX-405AとPX-045Aは4色とも顔料インクであるため、顔料インクのメリット・デメリットがそのまま出ている。つまり写真印刷は光沢感が薄くなるが、普通紙などには高画質で、高耐水の印刷が行える。これはカラー、モノクロ問わずである。一方PIXUS MG3230は染料インクを搭載するため、写真印刷も得意だが、ブラックインクが顔料インクであるため、写真印刷時にブラックインクが使用できない。カラー3色を混ぜて黒に近い色を表現するが、メリハリはかなり弱くなる。比べてみるとはっきりと違いがわかるレベルであるため、全体にコントラストが低い様に見えるのは残念だ。一方顔料ブラックのおかげで、モノクロ印刷部では顔料インクのメリットは得られるが、カラー印刷部は染料インクになるので、そうはいかない。モノクロ原稿や年賀状の宛名面などに効果を発揮するだろう。PX-405AとPX-045Aは普通紙印刷に特化しており、PIXUS MG3230はよく言えばどちらにも向いていてオールマイティー、悪く言えばどちらもそれなりの画質で中途半端というような位置づけだ。 画質面ではPX-405AとPX-045Aが最小インクドロップサイズ3plで同等だ。上位モデルと比べると最小インクドロップサイズが大きい上に、ライトシアンやライトマゼンダも搭載しないため、画質面では劣ると言える。全体的に粒状感が出てしまうが、3plでも価格を考えればそれほど悪くないため、十分写真画質だといえるだろ。一方PIXUS MG3230は最小インクドロップサイズが2plとPX-405AやPX-045Aより小さいため粒状感はおさえられる。しかし前述の写真印刷時にブラックイングが使えないという問題があるため、画質は同レベルと考えても良さそうだ。使える用紙はいずれもL判からA4サイズである。印刷速度はPIXUS MG3230はL判縁なし1枚が37秒と、上位モデルほどではないが十分高速で、大量印刷でも待てる時間だ。ノズル数が比較的多いためと思われる。一方PX-405Aは75秒、PX-045は105秒とかなり遅い。ノズル数が、カラーインクではPX-405Aはが各59ノズル、PX-045Aは42ノズルしかないためだ。MSDTという3つのインクサイズのインクを打ち分ける機能を搭載しており、必要に応じて大きなインクサイズを打ち分ける事で高速化しているが、ノズル数が少なすぎる。例えば50枚印刷する場合、PIXUS MG3230では30分50秒だが、PX-405Aでは62分30秒、PX-045Aでは87分30秒もかかってしまう。写真や年賀状の大量印刷をする場合は、PIXUS MG3230の方が待たされないだろう。一方普通紙の印刷速度は、PIXUS MG3230はA4普通紙カラー印刷で5.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)、ノズル数の多いブラックインクのみを使うモノクロ印刷では9.2ipmとなる。上位機種ほどではないが十分実用的な速度だ。一方のPX-405AとPX-045Aは速度が公表されていないためわからないが、これまでのエプソンのプリンタの傾向としては、写真印刷ほどは遅くないと思われる。特にブラックインクはノズル数がカラーインクの3倍以上あるため、モノクロ印刷はある程度高速に印刷できそうだ。ちなみに、PX-405AとPX-045Aは各色独立インクタンクであるため、無くなった色だけ交換できるが、PIXUS MG3230はカラー3色は一体型なので、1色でもなくなると他の色が残っていても交換となるためコストパフォーマンスは悪くなる。特に、年賀状など使用する色が偏る場合は注意が必要だ。 用紙のセットは、PX-405Aが背面給紙で普通紙で100枚まで、PX-045Aが背面給紙で同50枚、PIXUS MG3230が前面給紙で同100枚となる。背面の方がセットしやすいとも言えるが上方にスペースが必要であり、前面給紙の方が手前からセットできる点では便利だ。ただ前面給紙で前面排紙なので、内部で紙が180度方向転換をすることになり、厚紙やラベル用紙などは対応しているとはいえ少し心配だ。ちなみにPIXUS MG3230はの前面給紙はカセット式ではなく、前面パネルを開いた上に用紙をセットする。そのため、用紙をセットしたまま排紙トレイや前面パネルを閉じることができない。PX-405AやPX-045Aの背面給紙では用紙をセットしたまま排紙トレイを閉じられることを考えると、利便性では劣るとも言える。PX-405AとPIXUS MG3230はそれぞれメリットとデメリットがあるため、甲乙つけがたいため、使い方を考えて選ぶと良さそうだ。PX-045Aのセット可能枚数50枚というのはかなり少ない。しかも普通紙では50枚だが、ハガキ用紙は20枚である。年賀状などの大量印刷を行う場合などには大変そうだ。最も低価格の機種だけに少しでもコストダウンという所かもしれないが、家庭で使う分にしても少ないと感じてしまう。自動両面印刷機能に関しては、PIXUS MG3230のみ搭載している。普通紙のみであるため、年賀状等の両面印刷には使えず、コピー時でも両面コピー機能自体を搭載していない事から使用する場面は限られる上、同時両面印刷でもないため片面の印刷後に乾燥時間が必要だが、この価格帯で搭載しているのは驚きと言える。パソコンからの両面印刷を良く行うという人は狙い目だろう。 写真の自動補正機能としては、PX-405AとPX-045Aは「オートフォトファイン!EX」、PIXUS MG3230は「自動写真補正II」という機能を搭載している。名称は違うものの、いずれも逆光や色かぶりをした写真でも、顔やシーンを認識して高いレベルで自動補正が行われる高機能な物だ。またパソコンからの印刷時だけでなく、後述のダイレクト印刷に対応したPX-405Aは、ダイレクト印刷時にも利用できる。ちなみに写真の耐保存性は、PX-435Aは新タイプの「つよインク200X」インクを採用しているので、アルバム保存300年、耐光性45年、耐オゾン性30年と十分なレベルであるため、速度と光沢感さえ気にならなければ、写真印刷にも耐えられる保存性である。一方のPIXUS MG3230は上位機種とは異なり「ChromaLife100」で、アルバム保存100年と十分なレベルだが、他の2機種と比べるとやや劣る印象だ。おまけ的な機能だが、PX-405AとPX-045Aはカラーインクが切れた際にもモノクロ印刷は継続できる機能を搭載する。通常は1色でもインクが無くなるとプリントが出来なくなるため、便利な機能である。ただし5日間限定であり、常にカラーインクを搭載せずに使用できるわけではなく、急になくなった際に、購入するまでの間使い続けられる程度の物だと考えた方がよい。 続いて、スキャナ部を見てみよう。解像度はPX-405AとPIXUS MG3230が1200dpi、PX-045Aが600dpiとなる。上位機種と比べて解像度に大きな差があるように見えるが、反射原稿(紙などの原稿)にしか対応しないため、1200dpiでも十分すぎる解像度で実際には300dpiか600dpiが現実的と言えるため、実際に使う上での差はあまりないと言える。PX-045Aの600dpiでも特に小さな原稿を細かく読み取りたいといった事がなければ問題ないと言える。いずれもCIS方式、厚い本の綴じ目近くなど、ガラス面から浮いてしまう原稿は苦手だ。ちなみに上位機種が備えるスキャンした原稿をパソコンを使わずにメモリカードに保存する機能は、3機種とも搭載していない。 ダイレクト印刷を搭載しているのはPX-405Aのみである。対応メモリカードはSDカードとメモリースティックDuoのみと最低限となっているが、最近のコンパクトデジカメや携帯電話はSDカードの機種のみで、数年前までさかのぼってもメモリースティックDuo対応の機種があるだけなので、これら2つに対応していれば問題ないとも言える。ただ、念のため手持ちのデジタルカメラのメモリカードを確認した方が良さそうだ。これらメモリカード以外、USBメモリや外付けハードディスク、赤外線通信、PictBridgeなどからの印刷には対応しておらず、手書き合成シートにも対応していないため、シンプルにメモリカードの写真を印刷するという事になるが、パソコン無しで手軽に印刷できる点は便利だろう。一方、スマートフォンからのプリント、スキャン機能はPIXUS MG3230のみが備えている(そもそも他の2機種はネットワーク接続ができない)。iPhoneやiPod touch、iPadと、Android端末に対応している。いずれも、専用のアプリを無料でダウンロードすることで行える。専用アプリからは写真印刷が可能だが、用紙サイズや用紙種類、フチ無し設定まで行えるため、スマートフォンで撮影した写真を手軽に印刷できる。さらにPDFファイルの印刷にも対応している(ただしAndroid端末はAndroid用アプリ上で作成したPDFファイルのみ)さらに、スマートフォン上からスキャンを実行し、データをJPEG又はPDF形式で受け取ることもできる。出かける前に紙の情報をさっとスマートフォンに転送するといった使い方ができるため便利だろう。 コピー機能と操作パネルは関係が深いため、同時に見てみよう。コピー機の自体は3機種とも搭載しているが、PX-405A以外は液晶ディスプレイを搭載していないことから、細かな設定ができない。一方のPX-405Aのコピー機能は上位機種よりは劣る物の、他の2機種よりは高性能だ。まず、単純な等倍コピーだけでなく、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「オートフィット」機能、さらに25〜400%の間で1%刻みで拡大縮小コピーが行える機能を搭載しており、手軽に広範囲の拡大縮小コピーが可能だ。濃度調整もできる。ただし、上位機種が備えている、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」機能のみ搭載していない。また、写真の焼き増し風コピーや2枚の原稿を1枚に縮小してコピーする2アップにも対応していない。コピー時は、文字領域と画像領域を認識し、それぞれが見やすくなるよう別々の画像処理を行う「領域判定コピー」を行うため、文字はくっきり、画像はつぶれることなくコピーができる。これらの設定は液晶ディスプレイ上で行えるので便利だ。1.44インチと小型であるが、あるのと無いのとでは大違いである。操作パネルはボタン式で、液晶ディスプレイと共に本体前面に取り付けられているが、操作パネル全体を持ち上げて角度調整が可能だ。液晶ディスプレイも操作パネルも角度調整が可能なので、使いやすい角度に調整でき操作性は非常に良い。 一方PX-045Aは液晶ディスプレイがなく、操作パネルは本体前面に横並びに4つ搭載される。「電源ボタン」「モノクロコピーボタン」「カラーコピーボタン」「ストップ/メンテナンスボタン」しかない。LEDランプも「用紙切れ」と「インク切れ」のみだ。そのため、使用できる用紙はA4普通紙のみで、拡大縮小も一切できない。カラーコピーなら「カラーコピーボタン」、モノクロコピーなら「モノクロコピーボタン」を押すだけで1枚コピーできる。3秒以上長押しするとインクを節約する薄い色でお試しコピーができる。20枚コピーの場合、「コピーボタン」を押したまま3秒以内に「ストップ/メンテナンスボタン」を押す事になる。2〜19枚の場合は、コピーしたい枚数だけ用紙をセットしておき、用紙切れで止まったら、「ストップ/メンテナンスボタン」でキャンセルするというアナログな方法が指示されている。非常に簡易的なコピー機能なので、過度に期待しない方が良いだろう。 PIXUS MG3230も液晶ディスプレイがない。操作パネルは本体の左側(スキャナ部の左)に縦に配置される。LEDで1桁の数字が表示できる他、使用する用紙をLEDランプで選択出来るようになっており、ボタン数もPX-045Aよりは多いため、機能はやや多い。それでもボタンは「電源」、「+」、「用紙選択」、「メンテナンス」、「自動変倍」、「スキャン」、スタートの「モノクロ」と「カラー」、「ストップ/リセット」のみとなっているため、設定できる内容は限られる。等倍コピーの他は、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「自動変倍」しか選べない。また、その使用する用紙もA4普通紙とA4写真用紙、L判写真用紙の3種類のみだ。コピー枚数も1〜9枚又は20枚の指定が可能だが、「+」ボタンしかないため、行きすぎた場合は一周するしか無く、また1〜9は1桁のLED表示で表されるが、20枚は「F」と表示されるため分かりにくい。またスタートボタンを2秒以上押すと、印刷品質を「はやい」にできるがやり方を覚えておかなくてはならないため不便だ。PX-045Aより機能は豊富で、少ないボタンでできる限りの機能を搭載しようとしている姿勢は良いのだが、逆に操作は複雑になってしまっているとも言える。こちらもコピー機能に過度の期待は禁物だ。 インタフェースはPX-405AとPX0-045AがUSB接続のみPIXUS MG3230ははUSB2.0接続に加えて、無線LAN接続に対応する。最近では家に2台以上のパソコンがあり、ルータで複数のパソコンがインターネットに接続できる状態になっているのも珍しくないはずだ。そんな人にはネットワーク接続によりどのパソコンでもプリントできるのは非常に便利だろう。無線LANはIEEE802.11nに対応しているため、無線LANで接続した場合も、遅さを感じさせなくなっている。ただし、有線LANは搭載していないため、無線LANの電波の届きにくいところでは使いにくい場合もあるだろう。ちなみにPX-045AはUSB2.0ではなくUSB1.1接続となっている。転送速度が重要なハードディスクなどとは異なり、プリントデータとスキャンデータのやりとりのみなので、低速なUSB1.1接続である事がどれほど影響するのか不明だが、プリントデータの内容やスキャンの解像度によっては遅くなる事もあるかもしれない。 本体サイズを見てみよう。PX-405Aは390×300×145mmと複合機としてはかなりコンパクトだ。液晶ディスプレイを搭載しながらこのサイズはなかなかといえるだろう。置き場所に比較的困らないはずだ。PX-045AのサイズはPX-405Aと同じで、液晶ディスプレイやその他の機能が省略された事によるサイズダウンはない。とはいえ十分コンパクトである。PIXUS MG3230は449×305×152mmとである。奥行きと高さはPX-405AやPX-045Aとほぼ同じだが、横幅が6cmほど大きい。こちらも十分コンパクトだが、設置可能なスペースは確認した方が良さそうだ。 3機種ともそれぞれ特徴があるので、選ぶのは簡単だろう。まず、ダイレクト印刷を行うならPX-405Aしか選択肢がない。ただし写真印刷時に光沢感が薄くなるのが気になるなら、ダイレクト印刷機能を我慢してPIXUS MG3230という事になる。写真印刷速度も速いので、パソコンからの写真印刷を主に考えるならPIXUS MG3230がおすすめだ。一方文書印刷やコピーが主ならPX-405AかPX-045Aである。顔料インクであるため普通紙コピーもメリハリがあり耐水性が高い。また、コピー機能を本格的に使うならPX-405Aである。高性能なコピー機能はこの機種だけだし、顔料インクのメリットである。一方パソコンからの文書印刷だけならPX-045Aでも良いが、印刷の遅さや用紙のセット可能枚数の少なさと、約3,000円の価格差のどちらをとるか考えなければならない。またネットワーク接続やスマートフォンからの印刷・スキャンをしたいならPIXUS MG3230になる。ただ、コピー重視でなおかつネットワーク接続をしたいなら、PX-405Aの上位機種のPX-435Aが5,000円アップで購入できる。また写真印刷重視だが、ダイレクト印刷や高機能なコピー機能が欲しいという場合は、PIXUS MG3230の上位機種PIXUS MG4230が6,000円アップで購入できる。予算に余裕がある場合は、上位機種も視野に入れて、使い方によって選べばよいだろう。 (H.Intel) 【今回の関連メーカーホームページ】 エプソンhttp://www.epson.co.jp/ キャノンhttp://canon.jp/
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